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65 久しぶりの部屋★(5/19最後加筆)
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千早の匂いのする、千早の部屋。
玄関で思わず足が止まり、俺は目の前に続く廊下を見る。
ここに来ると玄関の壁に押し付けられて、キスされることが多かった。
性急な口づけと、身体を撫でる手と。
もちろん何もせずそのまま中に入ることもあったけど。
この廊下って、こんな風だったっけ?
廊下の先に扉がある。
玄関の左手には大きな靴箱。
廊下を行きまっすぐ行けばリビングで、右に行くと風呂やトイレがあったと思う。
何度も来ているはずなのに、知らない空間なような気がして、不思議な感じだった。
この部屋で俺は、平常でいる時間よりも快楽の中にいることの方が多かった。
「琳太郎?」
靴を脱いた千早が、動かない俺を振り返る。
「あ……ごめん」
我に返り、俺は靴を脱いで部屋に上がった。
廊下を歩きながら、俺は壁にイラストが飾られているのに初めて気が付く。
折り紙よりも小さな色紙が、等間隔に廊下の壁に飾られている。
その多くが猫のイラストだった。
寝ている猫や、座っている猫。武将姿をした猫のイラストもある。
このタッチは見たことあるような……
「千早」
「何」
「この絵……」
「俺が描いたやつ」
だよな。
何度か見たことのある千早のイラスト。
千早は手持無沙汰になるとイラストを描く癖がある。
高校の時、ノートなんかを借りると、片隅にちょっとしたイラストが描いてある事が多かった。
何度も来ているはずなのに、全然視界に入ってなかった。
「お前、勉強もできてスポーツもできて、絵もうまくてすげえよな」
それは純粋な感想だった。
それが、アルファってやつなんだろうけれど。
俺は今の大学に入るの、けっこうぎりぎりだったはず。
だけど千早は余裕だったはずだ。偏差値はそこそことはいえ、なんで千早が地元の大学を選んだのか、正直意味不明だった。
もっと上の大学に入れただろうに。
「だからって、欲しいものが手に入るわけじゃないけどな。悩んで足掻いて、手を伸ばして。それでも手に入れることができずに俺は……」
そう呟きそして、千早は黙ってしまう。
千早がずっと求めていたもの。
運命の番。
でもそれは、相手の強い意志で拒絶されて……千早はおかしくなっていった。
そして俺とあんな関係になって……
何が先なんだろう。
偽物と言われて抱かれた日々から想いは変化していったのか。それとも最初から想いはあったのか。
千早の手が俺の肩に伸びそして、身体を引き寄せる。
千早の匂いが、俺を包み込む。
「それでも今、手を伸ばせば届く場所にそれはあるから。諦めていたんだけどな。俺がお前にしたことは、赦されるものじゃないから」
「千早」
名前を呼び、俺はその背中に手を回す。
「いろいろあって、俺、わけわかんなくなって苦しかったけど……でも今は、大丈夫、だから」
どこまでが偽りで、どこからが本物なんだろう。
偽物の番じゃなくなったのって、いつなんだろう。
どこで間違えたのか。
そもそも間違えなんてあったのか。
宮田が千早を拒絶しなければ。
千早が俺を身代りにしようとしなければ。
瀬名さんが俺の匂いに気が付かなければ。
それらは全部、間違いだったんだろうか?
どれが欠けても、今の状況にはならないだろう。
宮田と俺が出会った偶然。
瀬名さんが俺の匂いに気が付いた偶然。
通り過ぎてみれれば全て必然で、どれが欠けてもこうはならなかっただろうな。
犠牲は大きかったけれど。
でもどれひとつ欠けたとしても、俺は今、ここにいることを望まなかっただろう。
支配的に扱われたから、一緒にいたいと望んでるわけじゃない。
俺が、俺自身が、共にいたいと思ったから。
もしかしたら俺、まだどっか変なのかもしれない。
俺はベータだ。オメガじゃない。
こんな想いを抱いたところで本来、どうにもならないはずだったのに。
千早が俺を選んだように、俺も、千早を選んだ。
向けられた感情に、俺は答えを出したんだ。
「千早……きっかけは間違えた、と思うよ。俺ももう、お前とは会えないのかと思った。会えば苦しいのに、会わないとまた苦しくて。でもそんな苦しいのは正常じゃないって思って」
「……そうさせたのは、俺だな」
「でも俺は、後悔はないし……それに」
息を大きく吸い、俺は千早の顔を見つめる。
唇が震える。
視界が僅かに歪んでくる。
それでも俺は、口にしないといけない言葉がある。
「俺は……お前と一緒に、いたいって思う、から」
つっかえながら言うと、千早は大きく目を開く。
「琳太郎……」
一度口にすると、気持ちが随分と楽になる。
「俺は、お前と一緒にいたい、から」
「本当に、お前はそれで……」
「ちゃんと、考えて、決めたことだよ」
だからもう、迷わない。
千早の顔が、すぐ目の前にある。
切なげな眼で、俺を見ている。
「俺も……お前にそばに、いて欲しい」
そして顔が近づき、唇が重なった。
風呂場で身体を綺麗にし、俺と千早はベッドの上で重なり合う。
初めてじゃないのに。
何度も何度も抱かれているのに。
初めての日のような恥ずかしさが心を支配する。
唇が触れ、舌が割り口の中を舐め回す。
俺もそれに応えようと舌を出し、自分から舌を絡めれば、唾液が絡まる音が響く。
やべえ、キスだけでおかしくなりそう。
唇が離れたとき、俺は吐息を漏らして千早を見つめた。
「千早……」
「琳」
千早は俺の耳に唇を寄せ、囁く。
「愛してる」
この数か月の間、聞くことのなかった言葉。
たぶんきっと、ずっと俺が欲しかった言葉。
俺は千早の背に回した腕に力を込め、
「俺も……好きだ」
と、答える。
千早はそのまま俺の耳を舐め、耳たぶを食む。
そして首筋を舐めて口づけを落とし、手で俺の身体を撫でていく。
やべえ、息がすぐに上がってしまう。
千早によって開発された身体はすぐに反応し、身体の奥が疼きだす。
手が俺の胸を撫で、乳首を弾く。
するとそこからじりじりとした感覚が生まれ、俺は声を上げた。
「ああン……ち、はや……」
「久しぶりなのに、随分と敏感だな」
「ひ、久しぶりだから……あぁ!」
指が乳輪をなぞり、乳首を指先が抓る。
舌は首から胸へと下りていき、開いている方の胸に口づけ乳首を吸い上げていく。
「う、あぁ……胸、ばっか、やだぁ……」
「俺としては、もっとかわいく啼くところを見ていたいんだけどな」
そう呟き、千早は手をおろし腹を撫で、そして太ももに触れる。
俺のペニスはすでにガチガチに硬くなり、先走りを垂らして腹を濡らしていた。
「すごいな、これ。すぐにイくんじゃねえの?」
笑いを含んだ声で言い、千早は俺のペニスを指先で弾いた。
「ひっ……」
思わず腰が跳ねてしまう。
「千早……早く、欲しい」
「今日は、俺としてはもっと優しくしたいんだけど」
そう言って、千早は俺の腹に口づけた。
優しくしなくていいから、早く中に挿れてほしい。
俺の中に生まれた熱は、放出の時を待ちわびているんだから。
「千早……お願いっ」
涙目になりながら訴えると、千早は身体を離し、俺の足を抱え上げて尻を撫でた。
「あ……」
「さすがに狭そうだな、ここ」
と言い、千早は後孔の周囲を撫でた。
ローションのついた指の先端がそこに触れ、入り口をつつく。
「ん……」
そしてゆっくりと、指が差し込まれ、奥までつくとすぐに指は抜かれてしまう。
「あン……」
やべえ、まだ指一本挿れられただけだって言うのに。
中、気持ち良すぎる。
千早はローションを足しながら俺の後孔に指を挿れ、ゆっくりと中を拡げていく。
「てっきり、あいつとヤッたのかと思っていたけど、違うみたいだな」
「う、あ……そん、なの……してな……あぁ!」
指が前立腺を押しつぶし、俺の視界が白く染まる。
もっと欲しい。
そこだけじゃなくって、もっと奥までこじ開けてほしい。
千早に慣らされた身体は、快楽にどん欲だ。
「ね、え……中、欲しい。千早ので、俺の中、ぐちゃぐちゃに、して?」
息を切らせて訴えると、千早が息を飲む音が聞こえた気がした。
「そんなに煽られたら俺、お前の事抱き潰すかもしれない」
余裕のない声で呟きそして、千早は俺の後孔に先端を宛がう。
すぐに中に入り、亀頭が前立腺を掠めて徐々に奥へと入ってくる。
「あぁー!」
挿れられただけで快楽が腰から脳へと一気に駆け上がりそして、びくん、と身体が震える。
「挿れただけでイくとか、琳太郎、可愛いな。あと、少しだ、琳」
イッてると言うのに、千早は容赦なく腰を進めてくる。
狭い中を拡げるように。
最奥へとたどり着いたとき、千早は苦しげに、そして嬉しそうな顔で呟く。
「中、熱いな」
「ち、はや……」
千早は俺の身体の横に手をつきそして、激しく腰を動かし始めた。
それは、イったばかりの身体には強すぎる刺激だった。
千早が腰を打ち付けるたびに俺のペニスからは精液が溢れ、俺の口からは喘ぎ声が漏れていく。
「あぁ、あ……それ、変になる、からぁ……!」
「変になれよ、琳。俺の事だけ見て、俺の事だけ考えて」
「ち、はや……!」
開いたままの口から唾液が流れ、襲い掛かる快楽に頭がおかしくなりそうだ。
千早が一度達するまでに俺は何回イかされただろう?
千早が息を上げ、切なげに呟く。
「中……イく」
そして千早は目を細めそして、動きを止めた。
腹の中が熱い。
千早は息を切らせ、繋がったまま唇を重ねる。
触れるだけのキスをしそして、目を見つめて呟く。
「愛してる」
「千早……俺も……」
俺は彼の首に腕を絡めそして、口づけを求めた。
一度中に出されたあと、体勢を変え、うつ伏せにされて俺は身体を貫かれた。
さっきより深く入り込み、声が漏れ視界が歪む。
千早が腰をひくと、中に出された精液が中から漏れ出て太ももを垂れていく。
腰がやばい。
膝がガクガクと震え、快感が脳へと這い上がっていく。
「ち、はや……それ、だめぇ……」
最奥をこじ開けられ、チカチカと視界が点滅し俺はまた達してしまう。
「本当に、誰ともヤってないんだな?」
当たり前だ。
自分でもできなかったって言うのに。
「ひ……あぁ……!」
「琳太郎」
後ろから貫かれたまま、身体を抱きしめられそして、首に舌が這う。
この二週間でだいぶ薄れたであろう傷痕に、千早はかぶり、と噛み付いた。
「ひっ……」
「お前は、俺の物だ」
そう呟き、また、かぶりと噛み付く。
「ちは、や……」
これはきっと、本能的なものなのだろう。
俺はオメガじゃないのに。千早は首筋に噛み付き、歯を立てる。
獣の交尾って、オスがメスに噛み付くんだっけ? 逃げ出さない様に。
噛みつかれた痛みに涙が滲んでくる。
「い、あ……」
痛みはあるけれど、以前みたいな拒否の感情はない。
「俺の噛み痕しかないな」
噛み痕を舐めながら千早は言い、傷痕をぺろり、と舐めた。
当たり前だ。
誰ともヤってないし、誰にも噛まれてないんだから。
どんだけ疑うんだよまじで。
「あたり、まえ……だろ? 俺は、お前しか……あぁ!」
急に腰を動かされ、俺は天井を仰ぐ。
奥、気持ち良すぎる。
千早に開発された身体は、簡単に快楽に堕ちていく。
これなしで生きていける? それは無理だ。
千早だけが俺を。
満たすのだから。
「千早……ちは……」
「お前の中、気持ちいい……また、中に出そう」
余裕のない声で呟き、千早は腰の動きを早めていく。
そんなことをしても何も生み出さないのに。
それでも千早は動きを止めず、俺もそれを拒絶せず。
声を上げ、中に出して、とこいねがう。
「奥、ちょうだい……ちは、や……あぁ……っ!」
もう何度、俺は達しただろう?
もう何回、ドライでイっただろう?
俺は千早に与えられる快楽に溺れ、自分から腰を揺らしている。
もっと欲しいと、うわ言のように繰り返してる。
その願いを千早は聞き、そして、また俺の中を熱い欲で満たす。
楔が引き抜かれ、俺はぐったりとその場に倒れこむ。
だめだこれ、ぜってー明日、動けねえ。
それでも、俺に後悔はなかった。
千早と、ひとつになれた。
たくさんの代償を支払い。
「琳」
名を呼び、千早は倒れこむ俺の身体に覆いかぶさってくる。
首の噛み痕を舐め、そして、首に顔を埋めて囁く。
「もう絶対に離さない」
言葉は鎖のように俺の身体に絡みつく。
それに俺は悦びを感じるようになっていた。
怖くなるほどの執着と、溺れるほどの快楽。
それを嬉しいと、思う俺はまだ壊れているだろうか?
それでも。
これは俺が選んだ結論。
生まれた運命だ。
「愛してる」
そう呟き、覆いかぶさる千早の手に俺の手を絡めた。
玄関で思わず足が止まり、俺は目の前に続く廊下を見る。
ここに来ると玄関の壁に押し付けられて、キスされることが多かった。
性急な口づけと、身体を撫でる手と。
もちろん何もせずそのまま中に入ることもあったけど。
この廊下って、こんな風だったっけ?
廊下の先に扉がある。
玄関の左手には大きな靴箱。
廊下を行きまっすぐ行けばリビングで、右に行くと風呂やトイレがあったと思う。
何度も来ているはずなのに、知らない空間なような気がして、不思議な感じだった。
この部屋で俺は、平常でいる時間よりも快楽の中にいることの方が多かった。
「琳太郎?」
靴を脱いた千早が、動かない俺を振り返る。
「あ……ごめん」
我に返り、俺は靴を脱いで部屋に上がった。
廊下を歩きながら、俺は壁にイラストが飾られているのに初めて気が付く。
折り紙よりも小さな色紙が、等間隔に廊下の壁に飾られている。
その多くが猫のイラストだった。
寝ている猫や、座っている猫。武将姿をした猫のイラストもある。
このタッチは見たことあるような……
「千早」
「何」
「この絵……」
「俺が描いたやつ」
だよな。
何度か見たことのある千早のイラスト。
千早は手持無沙汰になるとイラストを描く癖がある。
高校の時、ノートなんかを借りると、片隅にちょっとしたイラストが描いてある事が多かった。
何度も来ているはずなのに、全然視界に入ってなかった。
「お前、勉強もできてスポーツもできて、絵もうまくてすげえよな」
それは純粋な感想だった。
それが、アルファってやつなんだろうけれど。
俺は今の大学に入るの、けっこうぎりぎりだったはず。
だけど千早は余裕だったはずだ。偏差値はそこそことはいえ、なんで千早が地元の大学を選んだのか、正直意味不明だった。
もっと上の大学に入れただろうに。
「だからって、欲しいものが手に入るわけじゃないけどな。悩んで足掻いて、手を伸ばして。それでも手に入れることができずに俺は……」
そう呟きそして、千早は黙ってしまう。
千早がずっと求めていたもの。
運命の番。
でもそれは、相手の強い意志で拒絶されて……千早はおかしくなっていった。
そして俺とあんな関係になって……
何が先なんだろう。
偽物と言われて抱かれた日々から想いは変化していったのか。それとも最初から想いはあったのか。
千早の手が俺の肩に伸びそして、身体を引き寄せる。
千早の匂いが、俺を包み込む。
「それでも今、手を伸ばせば届く場所にそれはあるから。諦めていたんだけどな。俺がお前にしたことは、赦されるものじゃないから」
「千早」
名前を呼び、俺はその背中に手を回す。
「いろいろあって、俺、わけわかんなくなって苦しかったけど……でも今は、大丈夫、だから」
どこまでが偽りで、どこからが本物なんだろう。
偽物の番じゃなくなったのって、いつなんだろう。
どこで間違えたのか。
そもそも間違えなんてあったのか。
宮田が千早を拒絶しなければ。
千早が俺を身代りにしようとしなければ。
瀬名さんが俺の匂いに気が付かなければ。
それらは全部、間違いだったんだろうか?
どれが欠けても、今の状況にはならないだろう。
宮田と俺が出会った偶然。
瀬名さんが俺の匂いに気が付いた偶然。
通り過ぎてみれれば全て必然で、どれが欠けてもこうはならなかっただろうな。
犠牲は大きかったけれど。
でもどれひとつ欠けたとしても、俺は今、ここにいることを望まなかっただろう。
支配的に扱われたから、一緒にいたいと望んでるわけじゃない。
俺が、俺自身が、共にいたいと思ったから。
もしかしたら俺、まだどっか変なのかもしれない。
俺はベータだ。オメガじゃない。
こんな想いを抱いたところで本来、どうにもならないはずだったのに。
千早が俺を選んだように、俺も、千早を選んだ。
向けられた感情に、俺は答えを出したんだ。
「千早……きっかけは間違えた、と思うよ。俺ももう、お前とは会えないのかと思った。会えば苦しいのに、会わないとまた苦しくて。でもそんな苦しいのは正常じゃないって思って」
「……そうさせたのは、俺だな」
「でも俺は、後悔はないし……それに」
息を大きく吸い、俺は千早の顔を見つめる。
唇が震える。
視界が僅かに歪んでくる。
それでも俺は、口にしないといけない言葉がある。
「俺は……お前と一緒に、いたいって思う、から」
つっかえながら言うと、千早は大きく目を開く。
「琳太郎……」
一度口にすると、気持ちが随分と楽になる。
「俺は、お前と一緒にいたい、から」
「本当に、お前はそれで……」
「ちゃんと、考えて、決めたことだよ」
だからもう、迷わない。
千早の顔が、すぐ目の前にある。
切なげな眼で、俺を見ている。
「俺も……お前にそばに、いて欲しい」
そして顔が近づき、唇が重なった。
風呂場で身体を綺麗にし、俺と千早はベッドの上で重なり合う。
初めてじゃないのに。
何度も何度も抱かれているのに。
初めての日のような恥ずかしさが心を支配する。
唇が触れ、舌が割り口の中を舐め回す。
俺もそれに応えようと舌を出し、自分から舌を絡めれば、唾液が絡まる音が響く。
やべえ、キスだけでおかしくなりそう。
唇が離れたとき、俺は吐息を漏らして千早を見つめた。
「千早……」
「琳」
千早は俺の耳に唇を寄せ、囁く。
「愛してる」
この数か月の間、聞くことのなかった言葉。
たぶんきっと、ずっと俺が欲しかった言葉。
俺は千早の背に回した腕に力を込め、
「俺も……好きだ」
と、答える。
千早はそのまま俺の耳を舐め、耳たぶを食む。
そして首筋を舐めて口づけを落とし、手で俺の身体を撫でていく。
やべえ、息がすぐに上がってしまう。
千早によって開発された身体はすぐに反応し、身体の奥が疼きだす。
手が俺の胸を撫で、乳首を弾く。
するとそこからじりじりとした感覚が生まれ、俺は声を上げた。
「ああン……ち、はや……」
「久しぶりなのに、随分と敏感だな」
「ひ、久しぶりだから……あぁ!」
指が乳輪をなぞり、乳首を指先が抓る。
舌は首から胸へと下りていき、開いている方の胸に口づけ乳首を吸い上げていく。
「う、あぁ……胸、ばっか、やだぁ……」
「俺としては、もっとかわいく啼くところを見ていたいんだけどな」
そう呟き、千早は手をおろし腹を撫で、そして太ももに触れる。
俺のペニスはすでにガチガチに硬くなり、先走りを垂らして腹を濡らしていた。
「すごいな、これ。すぐにイくんじゃねえの?」
笑いを含んだ声で言い、千早は俺のペニスを指先で弾いた。
「ひっ……」
思わず腰が跳ねてしまう。
「千早……早く、欲しい」
「今日は、俺としてはもっと優しくしたいんだけど」
そう言って、千早は俺の腹に口づけた。
優しくしなくていいから、早く中に挿れてほしい。
俺の中に生まれた熱は、放出の時を待ちわびているんだから。
「千早……お願いっ」
涙目になりながら訴えると、千早は身体を離し、俺の足を抱え上げて尻を撫でた。
「あ……」
「さすがに狭そうだな、ここ」
と言い、千早は後孔の周囲を撫でた。
ローションのついた指の先端がそこに触れ、入り口をつつく。
「ん……」
そしてゆっくりと、指が差し込まれ、奥までつくとすぐに指は抜かれてしまう。
「あン……」
やべえ、まだ指一本挿れられただけだって言うのに。
中、気持ち良すぎる。
千早はローションを足しながら俺の後孔に指を挿れ、ゆっくりと中を拡げていく。
「てっきり、あいつとヤッたのかと思っていたけど、違うみたいだな」
「う、あ……そん、なの……してな……あぁ!」
指が前立腺を押しつぶし、俺の視界が白く染まる。
もっと欲しい。
そこだけじゃなくって、もっと奥までこじ開けてほしい。
千早に慣らされた身体は、快楽にどん欲だ。
「ね、え……中、欲しい。千早ので、俺の中、ぐちゃぐちゃに、して?」
息を切らせて訴えると、千早が息を飲む音が聞こえた気がした。
「そんなに煽られたら俺、お前の事抱き潰すかもしれない」
余裕のない声で呟きそして、千早は俺の後孔に先端を宛がう。
すぐに中に入り、亀頭が前立腺を掠めて徐々に奥へと入ってくる。
「あぁー!」
挿れられただけで快楽が腰から脳へと一気に駆け上がりそして、びくん、と身体が震える。
「挿れただけでイくとか、琳太郎、可愛いな。あと、少しだ、琳」
イッてると言うのに、千早は容赦なく腰を進めてくる。
狭い中を拡げるように。
最奥へとたどり着いたとき、千早は苦しげに、そして嬉しそうな顔で呟く。
「中、熱いな」
「ち、はや……」
千早は俺の身体の横に手をつきそして、激しく腰を動かし始めた。
それは、イったばかりの身体には強すぎる刺激だった。
千早が腰を打ち付けるたびに俺のペニスからは精液が溢れ、俺の口からは喘ぎ声が漏れていく。
「あぁ、あ……それ、変になる、からぁ……!」
「変になれよ、琳。俺の事だけ見て、俺の事だけ考えて」
「ち、はや……!」
開いたままの口から唾液が流れ、襲い掛かる快楽に頭がおかしくなりそうだ。
千早が一度達するまでに俺は何回イかされただろう?
千早が息を上げ、切なげに呟く。
「中……イく」
そして千早は目を細めそして、動きを止めた。
腹の中が熱い。
千早は息を切らせ、繋がったまま唇を重ねる。
触れるだけのキスをしそして、目を見つめて呟く。
「愛してる」
「千早……俺も……」
俺は彼の首に腕を絡めそして、口づけを求めた。
一度中に出されたあと、体勢を変え、うつ伏せにされて俺は身体を貫かれた。
さっきより深く入り込み、声が漏れ視界が歪む。
千早が腰をひくと、中に出された精液が中から漏れ出て太ももを垂れていく。
腰がやばい。
膝がガクガクと震え、快感が脳へと這い上がっていく。
「ち、はや……それ、だめぇ……」
最奥をこじ開けられ、チカチカと視界が点滅し俺はまた達してしまう。
「本当に、誰ともヤってないんだな?」
当たり前だ。
自分でもできなかったって言うのに。
「ひ……あぁ……!」
「琳太郎」
後ろから貫かれたまま、身体を抱きしめられそして、首に舌が這う。
この二週間でだいぶ薄れたであろう傷痕に、千早はかぶり、と噛み付いた。
「ひっ……」
「お前は、俺の物だ」
そう呟き、また、かぶりと噛み付く。
「ちは、や……」
これはきっと、本能的なものなのだろう。
俺はオメガじゃないのに。千早は首筋に噛み付き、歯を立てる。
獣の交尾って、オスがメスに噛み付くんだっけ? 逃げ出さない様に。
噛みつかれた痛みに涙が滲んでくる。
「い、あ……」
痛みはあるけれど、以前みたいな拒否の感情はない。
「俺の噛み痕しかないな」
噛み痕を舐めながら千早は言い、傷痕をぺろり、と舐めた。
当たり前だ。
誰ともヤってないし、誰にも噛まれてないんだから。
どんだけ疑うんだよまじで。
「あたり、まえ……だろ? 俺は、お前しか……あぁ!」
急に腰を動かされ、俺は天井を仰ぐ。
奥、気持ち良すぎる。
千早に開発された身体は、簡単に快楽に堕ちていく。
これなしで生きていける? それは無理だ。
千早だけが俺を。
満たすのだから。
「千早……ちは……」
「お前の中、気持ちいい……また、中に出そう」
余裕のない声で呟き、千早は腰の動きを早めていく。
そんなことをしても何も生み出さないのに。
それでも千早は動きを止めず、俺もそれを拒絶せず。
声を上げ、中に出して、とこいねがう。
「奥、ちょうだい……ちは、や……あぁ……っ!」
もう何度、俺は達しただろう?
もう何回、ドライでイっただろう?
俺は千早に与えられる快楽に溺れ、自分から腰を揺らしている。
もっと欲しいと、うわ言のように繰り返してる。
その願いを千早は聞き、そして、また俺の中を熱い欲で満たす。
楔が引き抜かれ、俺はぐったりとその場に倒れこむ。
だめだこれ、ぜってー明日、動けねえ。
それでも、俺に後悔はなかった。
千早と、ひとつになれた。
たくさんの代償を支払い。
「琳」
名を呼び、千早は倒れこむ俺の身体に覆いかぶさってくる。
首の噛み痕を舐め、そして、首に顔を埋めて囁く。
「もう絶対に離さない」
言葉は鎖のように俺の身体に絡みつく。
それに俺は悦びを感じるようになっていた。
怖くなるほどの執着と、溺れるほどの快楽。
それを嬉しいと、思う俺はまだ壊れているだろうか?
それでも。
これは俺が選んだ結論。
生まれた運命だ。
「愛してる」
そう呟き、覆いかぶさる千早の手に俺の手を絡めた。
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生まれ育った帝都を離れ、ノエルはヴィンセントとふたり東部の街で新婚生活を送ることになる。
無表情だが穏やかで優しい帝国軍人(アルファ)×明るいがトラウマ持ちのオメガ
過去につらい経験をしたオメガのノエルが、ヴィンセントと結婚して幸せになる話です。
J.GARDEN58にて本編+書き下ろしで頒布する予定です。
詳しくは後日、活動報告またはXにてご告知します。
幼馴染は僕を選ばない。
佳乃
BL
ずっと続くと思っていた〈腐れ縁〉は〈腐った縁〉だった。
僕は好きだったのに、ずっと一緒にいられると思っていたのに。
僕がいた場所は僕じゃ無い誰かの場所となり、繋がっていると思っていた縁は腐り果てて切れてしまった。
好きだった。
好きだった。
好きだった。
離れることで断ち切った縁。
気付いた時に断ち切られていた縁。
辛いのは、苦しいのは彼なのか、僕なのか…。
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