【本編完結】偽物の番

麻路なぎ

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ハタチの誕生日―琳太郎

琥珀色の夢1―琳太郎ハタチの誕生日SS

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 十一月二十五日土曜日。
 町はすでにクリスマスのイルミネーションに飾られていて、夜を彩っている。
 日に日に太陽が顔を出している時間は短くなり、吹く風は凍てつくようになっていた。
 十二月四日まであと二週間ほど。それは琳太郎の誕生日であり、二十歳になる日だった。
 その日の為に俺は、酒を用意してある。
 結局何を買うか決められず、シャンパンやワイン、スパークリングの日本酒やら色々と購入していた。
 それを琳太郎の目に触れないよう隠してある。
 オンラインショップやデパートの酒売り場に行くたびに一本、また一本と増えてしまっていて、両手では収まらない数になっていた。
 そして以前琳太郎に、お前の誕生日まで飲まないと告げたように、俺は酒を口にしていない。
 その日まであと少しだ。
 十二月四日は月曜日で、俺もあいつも大学がある。
 夕食は配達を頼む予定でいて、琳太郎はうちに泊まるという話になっている。
 だから今日はあまり、琳太郎に無理をさせる気なんてなかったけれど、そう言うわけにもいかなかった。
 俺の下で琳太郎が喘いでいる。
 俺が動くたびに水音が響き、琳太郎の唇から甘い声が漏れ出る。

「う、あぁ……千早……ち、はや……」

 俺の名前を呼びながら腕を伸ばしてくる姿は愛らしい。
 相変わらず琳太郎は、俺に対して普段素っ気ない態度を取って来る。だからこう甘えられると嬉しくなってしまう俺は、単純だと自分でも思う。
 だから甘える姿は愛おしさが大きくなる。

「中……いぃ……千早、そこ……」

 琳太郎は奥を突くと、嬉しそうに中を締め付け自分から腰を振る。

「琳、イく……」

 俺は激しく腰を動かし、ゴム越しに琳太郎の中に出した。
 
「あ……」

 琳太郎は喘ぎ、ぶるりと身体を震わせてきゅうきゅうと俺のペニスを締め付けてくる。
 どうやら琳太郎は、出さずに達したらしい。
 可愛い琳太郎。
 ずっと俺の腕の中で喘いでいたらいいのに、琳太郎は共に暮らしたい、という俺の申し出を受け入れてはくれない。
 俺は琳太郎の中からペニスを引き抜くと、恍惚とした顔で俺を見つめる彼の身体を抱きしめて言った。

「愛してる、琳」

「ち、はや……」

 甘えた声で言い、琳太郎は俺の背中に手を回した。


 翌日、俺はソファーに座り本を読む琳太郎の首に腕を絡めて尋ねた。
 
「琳太郎」

「何だよ」

「欲しいものある?」

「欲しいもの?」

 琳太郎は首を傾げ、腕を組む。

「そう言われると欲しいものってないな。俺はお前がくれるものならんなでも嬉しいよ」

 なんて言いながら琳太郎は満面の笑みを浮かべた。
 せっかくなのだから何でも言えばいいのに、琳太郎は欲に薄い気がする。
 それだけ琳太郎は満たされているのだろう。俺は琳太郎が欲しくて仕方ないし、できるものなら今すぐここに閉じ込めたいのに。
 俺は、琳太郎の身体を引き寄せ、

「もっと何か望んでくれてもいいのに」

 と言い、こめかみに口づける。

「ちょ……だって、俺、本当に欲しいものなんて無いし……欲しかったら自分で買うっての」

「お前らしいな」

 言いながら俺は口付けを繰り返すと、琳太郎は頬を紅く染めつつ俺の方を見て言った。

「ん……くすぐったいっての。俺はふつうに日常を過ごせるのが一番幸せだっての」

 琳太郎が幸せに感じるならそれはそれでいいんだろうけど、でも俺としては何か特別なことをしたいと思う。

「っていうか、お前俺が頼まなくてもいつも食事はお前持ちだし、いつの間にか俺用の服は増えるし、俺向けの本まで増えるしで、わざわざほしいもの言える状況じゃなくね?」

 言われてみれば色々と心当たりがある。
 琳太郎は俺がいくら望んでもまだ一緒には住まないと言うし、それでもうちに滞在することが多かったので俺は琳太郎の着替えや本を買うようになっていた。
 そこまで意識しているわけじゃないけれど、服も本も増えているのは確かだった。

「それはお前が服を置いていかないからだろ」

「だって服、そんな持ってねえもん。置いていったら服減るじゃん」

「だから必要だろうと思って買ってるんだよ」

「それはありがたいけど、色んなものをおまえはくれるから、誕生日だからって欲しいもの言うほど俺は図々しくねえっての」

 そんな事を真面目な顔で言う琳太郎に対して、愛おしさが増してしまう。
 もっと抱きたいしもっと一緒にいたいのに、そう言うわけにもいかない。
 時間は刻々と過ぎていくし、琳太郎が家に帰ると言い出す時間が近くなってくる。

「とりあえず俺の誕生日はここですごすんだろ? あ、酒! 酒飲めるのは楽しみにしてる! 千早と一緒に飲めるんだろ? お前酔うとどうなるんだろうなあ」

 俺が酔うとどうなるか、それは俺も想像ができない。
 それは琳太郎も同じだろう。
 酔う琳太郎は俺にも想像できないし、そもそも酒に強いのか弱いのかもわからない。
 だから弱い酒から強い酒まで色々と用意してしたけれど、琳太郎の口に合うものがあるだろうか。
 琳太郎はごろん、と俺の太ももの上に寝転がり、俺の顔を見上げて言った。

「お前が俺の為に何かしてくれるなら俺はそれが嬉しいし、誕生日がすっげー楽しみだぜ?」

 その言葉に俺は思わず口に手をあてて、こみ上げてくる感情を必死に押さえつけた。 
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