103 / 103
きまぐれSS
とある朝の光景―千早誕生日SS
しおりを挟む
大学三年生の、七月の終わり。
もうすぐ試験期間と言う事もあり俺も琳太郎も忙しく過ごしていたが、それでも琳太郎はうちに来ていた。
今日は日曜日。
明日から試験になる。
試験の準備もあるが、レポートの提出もあり琳太郎はうちに泊まりに来たものの、レポートばかりやっていて俺は手出しできなかった。
日曜日の朝、目が覚めると琳太郎の姿がなかった。
琳太郎が、俺より早く起きる?
そんなこと今まであっただろうか。
……なくはないが、姿が見えないと不安になってしまう。
それに……何だろう、リビングの方から物音がする。
俺はベッドから起き、そのままリビングの方へと向かった。
琳太郎が泊まった日の朝は服を着ていることなんて滅多にないから、着替えを探す必要のないことに変な感じがする。
リビングへと向かうと、音の正体はキッチンにあった。
エプロンをつけた琳太郎が朝食を作っている。
珍しいこともあるものだ……
パンの焼ける匂いと、ソーセージでも焼いているのだろうか。
琳太郎は俺の存在に気が付くと、笑みを浮かべて言った。
「千早、おはよう!」
「あぁ……どうしたんだ、琳太郎」
言いながら近づくと、琳太郎は俺から視線を外して、えーと、と呻る。
しばらく沈黙してから顔をあげずに言った。
「ほら、火曜日……二十三日はお前誕生日じゃん? でも試験中だし、何あげたらいいかわかんなかったから朝食作ろうって思って」
そして顔をあげてはにかむ。
たしかに明後日は俺の誕生日だ。
試験期間中だし、会うにしても夜少し会うだけで何かする気はなかった。
「それにほら、なんか驚かせたかったからさー」
と言い、琳太郎は頭に手を当てた。
その様子を見て俺は、どうしたらいいかわからず手で口を押えて下を向く。
どうしよう、この……愛おしくてたまらない存在を。
出来ればここでしてしまいたい。だけどさすがに朝からそんなことする気はないし、そもそも琳太郎が俺の為にご飯を作っている、なんてレアイベントが起きているわけだし、それはそれで大事にしたい。
「琳太郎」
俺はキッチンの方に回り、そして彼が何を用意しているのか確認した。
お皿の上に目玉焼きとソーセージ、それにキャベツやキュウリなどがのったサラダが用意されている。
それに揚げ物用の鍋の中でポテトが躍っている。
「琳太郎」
「え、あ、何?」
菜箸でポテトを摘みながら琳太郎が言った。
「飲み物用意するよ」
「え? あ、お前は座ってろよ」
「飲み物位いいだろう。グラスに入れるだけだし」
「わ、わかったよ」
俺はグラスを食器棚から出し、冷蔵庫からアイスコーヒーの入ったペットボトルを取り出す。
ポテトを全部あげ終えたらしい琳太郎は、油を処理してお盆にお皿をのせている。
さっきの様子だと箸の用意も怒られそうだな、と思い、俺はアイスコーヒーの入ったグラスだけをテーブルに運んだ。
テーブルに、トーストとバター、それにサラダなどの皿が並び、琳太郎はエプロンを外しやってくる。
そんな彼を背中から抱きしめて、俺は言った。
「ありがとう、琳太郎」
「え、あ……こ、こんなことしかできないけど……ほら、誕生日当日はケーキ予約してるから」
と、恥ずかしそうな声で琳太郎が言う。
「あぁ、楽しみにしてるよ」
「ほら、さっさと食おうぜ! 冷めるからさ」
言いながら琳太郎は俺の腕を振りほどいてしまう。
その背中を見つめながら、俺は考えていた。
……朝食の後、抱きたい、と言ったら怒るだろうか。
たぶん怒るだろうな。
何なら許してくれるだろうか。
そんなことを思いながら俺は椅子に腰かけた。
もうすぐ試験期間と言う事もあり俺も琳太郎も忙しく過ごしていたが、それでも琳太郎はうちに来ていた。
今日は日曜日。
明日から試験になる。
試験の準備もあるが、レポートの提出もあり琳太郎はうちに泊まりに来たものの、レポートばかりやっていて俺は手出しできなかった。
日曜日の朝、目が覚めると琳太郎の姿がなかった。
琳太郎が、俺より早く起きる?
そんなこと今まであっただろうか。
……なくはないが、姿が見えないと不安になってしまう。
それに……何だろう、リビングの方から物音がする。
俺はベッドから起き、そのままリビングの方へと向かった。
琳太郎が泊まった日の朝は服を着ていることなんて滅多にないから、着替えを探す必要のないことに変な感じがする。
リビングへと向かうと、音の正体はキッチンにあった。
エプロンをつけた琳太郎が朝食を作っている。
珍しいこともあるものだ……
パンの焼ける匂いと、ソーセージでも焼いているのだろうか。
琳太郎は俺の存在に気が付くと、笑みを浮かべて言った。
「千早、おはよう!」
「あぁ……どうしたんだ、琳太郎」
言いながら近づくと、琳太郎は俺から視線を外して、えーと、と呻る。
しばらく沈黙してから顔をあげずに言った。
「ほら、火曜日……二十三日はお前誕生日じゃん? でも試験中だし、何あげたらいいかわかんなかったから朝食作ろうって思って」
そして顔をあげてはにかむ。
たしかに明後日は俺の誕生日だ。
試験期間中だし、会うにしても夜少し会うだけで何かする気はなかった。
「それにほら、なんか驚かせたかったからさー」
と言い、琳太郎は頭に手を当てた。
その様子を見て俺は、どうしたらいいかわからず手で口を押えて下を向く。
どうしよう、この……愛おしくてたまらない存在を。
出来ればここでしてしまいたい。だけどさすがに朝からそんなことする気はないし、そもそも琳太郎が俺の為にご飯を作っている、なんてレアイベントが起きているわけだし、それはそれで大事にしたい。
「琳太郎」
俺はキッチンの方に回り、そして彼が何を用意しているのか確認した。
お皿の上に目玉焼きとソーセージ、それにキャベツやキュウリなどがのったサラダが用意されている。
それに揚げ物用の鍋の中でポテトが躍っている。
「琳太郎」
「え、あ、何?」
菜箸でポテトを摘みながら琳太郎が言った。
「飲み物用意するよ」
「え? あ、お前は座ってろよ」
「飲み物位いいだろう。グラスに入れるだけだし」
「わ、わかったよ」
俺はグラスを食器棚から出し、冷蔵庫からアイスコーヒーの入ったペットボトルを取り出す。
ポテトを全部あげ終えたらしい琳太郎は、油を処理してお盆にお皿をのせている。
さっきの様子だと箸の用意も怒られそうだな、と思い、俺はアイスコーヒーの入ったグラスだけをテーブルに運んだ。
テーブルに、トーストとバター、それにサラダなどの皿が並び、琳太郎はエプロンを外しやってくる。
そんな彼を背中から抱きしめて、俺は言った。
「ありがとう、琳太郎」
「え、あ……こ、こんなことしかできないけど……ほら、誕生日当日はケーキ予約してるから」
と、恥ずかしそうな声で琳太郎が言う。
「あぁ、楽しみにしてるよ」
「ほら、さっさと食おうぜ! 冷めるからさ」
言いながら琳太郎は俺の腕を振りほどいてしまう。
その背中を見つめながら、俺は考えていた。
……朝食の後、抱きたい、と言ったら怒るだろうか。
たぶん怒るだろうな。
何なら許してくれるだろうか。
そんなことを思いながら俺は椅子に腰かけた。
22
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(34件)
あなたにおすすめの小説
どっちも好き♡じゃダメですか?
藤宮りつか
BL
俺のファーストキスを奪った相手は父さんの再婚相手の息子だった――。
中学生活も終わりに近づいたある日。学校帰りにファーストキスを自分と同じ男に奪われてしまった七緒深雪は、その相手が父、七緒稔の再婚相手の息子、夏川雪音だったと知って愕然とする。
更に、二度目の再会で雪音からセカンドキスまで奪われてしまった深雪は深く落ち込んでしまう。
そんな時、小学校からの幼馴染みである戸塚頼斗から「好きだ」と告白までされてしまい、深雪はもうどうしていいのやら……。
父親の再婚が決まり、血の繋がらない弟になった雪音と、信頼できる幼馴染みの頼斗の二人から同時に言い寄られる生活が始まった深雪。二人の男の間で揺れる深雪は、果たしてどちらを選ぶのか――。
血の繋がらない弟と幼馴染みに翻弄される深雪のトライアングルラブストーリー。
【完結】いばらの向こうに君がいる
古井重箱
BL
【あらすじ】ヤリチンかつチャラ男のアルファ、内藤は、上司から見合いを勧められる。お相手の悠理は超美人だけれども毒舌だった。やがて内藤は悠理の心の傷を知り、彼を幸せにしてあげたいと思うようになる──
【注記】ヤリチンのチャラ男アルファ×結婚するまではバージンでいたい毒舌美人オメガ。攻視点と受視点が交互に出てきます。アルファポリス、ムーンライトノベルズ、pixiv、自サイトに掲載中。
ジャスミン茶は、君のかおり
霧瀬 渓
BL
アルファとオメガにランクのあるオメガバース世界。
大学2年の高位アルファ高遠裕二は、新入生の三ツ橋鷹也を助けた。
裕二の部活後輩となった鷹也は、新歓の数日後、放火でアパートを焼け出されてしまう。
困った鷹也に、裕二が条件付きで同居を申し出てくれた。
その条件は、恋人のフリをして虫除けになることだった。
変異型Ωは鉄壁の貞操
田中 乃那加
BL
変異型――それは初めての性行為相手によってバースが決まってしまう突然変異種のこと。
男子大学生の金城 奏汰(かなしろ かなた)は変異型。
もしαに抱かれたら【Ω】に、βやΩを抱けば【β】に定着する。
奏汰はαが大嫌い、そして絶対にΩにはなりたくない。夢はもちろん、βの可愛いカノジョをつくり幸せな家庭を築くこと。
だから護身術を身につけ、さらに防犯グッズを持ち歩いていた。
ある日の歓楽街にて、β女性にからんでいたタチの悪い酔っ払いを次から次へとやっつける。
それを見た高校生、名張 龍也(なばり たつや)に一目惚れされることに。
当然突っぱねる奏汰と引かない龍也。
抱かれたくない男は貞操を守りきり、βのカノジョが出来るのか!?
ノエルの結婚
仁茂田もに
BL
オメガのノエルは顔も知らないアルファと結婚することになった。
お相手のヴィンセントは旦那さまの部下で、階級は中尉。東方司令部に勤めているらしい。
生まれ育った帝都を離れ、ノエルはヴィンセントとふたり東部の街で新婚生活を送ることになる。
無表情だが穏やかで優しい帝国軍人(アルファ)×明るいがトラウマ持ちのオメガ
過去につらい経験をしたオメガのノエルが、ヴィンセントと結婚して幸せになる話です。
J.GARDEN58にて本編+書き下ろしで頒布する予定です。
詳しくは後日、活動報告またはXにてご告知します。
幼馴染は僕を選ばない。
佳乃
BL
ずっと続くと思っていた〈腐れ縁〉は〈腐った縁〉だった。
僕は好きだったのに、ずっと一緒にいられると思っていたのに。
僕がいた場所は僕じゃ無い誰かの場所となり、繋がっていると思っていた縁は腐り果てて切れてしまった。
好きだった。
好きだった。
好きだった。
離れることで断ち切った縁。
気付いた時に断ち切られていた縁。
辛いのは、苦しいのは彼なのか、僕なのか…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
イルミネーションを手と手であたためあいながらみるとかほっこりします。
番外編、とても、嬉しいです。
BL大賞応援しています!