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大公の愚痴
しおりを挟むそもそもだ、七年戦争は絶対に勝てる戦争ではなかったのだ?
女系の女が大公に即位したことにフリードリッヒは同意したはずだ。それをシュレージェンと引き換えに!なんて戯けたことを言い出し、ひっくり返したのは奴であり、見事なまでの裏切りであった。
それに対して復讐しようと外交革命を起こしたら今度に巻き起こるのはこの大陸を巻き込んだ大戦争。気づけば周りは次々とハゲタカと海賊にボコられて離脱していき、大義ある戦争は何故か敗戦。多くの将兵を失った上、気狂いユンガーによって今大公の友も討ち取られてしまっている。
先代の大公は怒り狂い、最終的に死期を速めてしまったのは…今のフランツ大公が即位する時にまことしやかにささやかれていた。
最終的にシュレージェンはパクられ、外交上険悪ながらもルーシの壁になっていたポラーブは不可抗力とはいえ木端微塵、仲良し(大嘘)しないと両国から袋叩きにされる最悪の立地であり、南方はチラリチラリとムハンマドの異教徒がこちらの土地を狙っている。
国防体制を考えると頭が痛くなることこの上なし。
そもそもだ、あのイカれグラウスが起草した法律を以てポラーブ国家を再建したと聞いた時は、あんな狂犬が国を統治する法を起草するなどwwと、部下の前で深刻そうな表情を見せながらも今王の見る目のなさを笑っていたほどだ。
どうせ苛烈な法律を敷くか、合同共和国の法律を踏襲したものを作り上げ…どっちの道を選んだとしても、事実上合同共和国のように混乱するだけであろうと。
しかし、実態はどうだ?行政・立法・司法を整えた議会は紛糾しながらも上手く回っており、合同共和国と違って破綻するそぶりを未だに見せず、それでも紛糾する場合は君主大権という形で強引に決着をつけることで、内政は回り始めている。
停滞していたはずの経済は、官僚組織を再編成、領域が狭くなったことで集中的な監督下に置かれたことで、腐敗していた内部が強制的にたたき直されたことで何もかもが効率化し、回り始め…治安の改善も始まっていた。
確かに恥辱的な分割を受けたことには違いないが、内政が回り始め、生きていける環境が整い始めただけ前よりマシ…少なくとも、ポラーブ人を抑圧し、殺し続けている他の連中よりかは受け入れる価値がある…それがポラーブの一般市民の目線だと言われた時には、唖然とするしかなかった。
支配したガルツィアの土地の抵抗が激しいと前から思っていたが…彼らポラーブ人が手に入れた権利を目の前に知った、自らの支配領域のポラーブ人たちがあまりにもうるさく騒ぐものだから、連中にも一定の自治を与えないといけなくなってしまったのだ。忌々しいユンガーめ…と歯噛みするのは大公にとって至極当然の話である。
更には、その『ポラーブ一般ランド法』の文言は神によって授けられたとされる君主大権に真っ向から正論で喧嘩を売っている。
《愚かさは神の恵みであり、否定されるべきものではない》
わざわざ聖書に記されていることを引用することで君主の権利を制限する立法を制定するとか正気か!?
これが普通の段階を踏み提出されるのであれば、真っ向から否定されただろう。しかし、ポラーブという国家は一時消滅する憂き目にあり、行政から立法、裁判の何もかもがヴァロイセンに掌握され、結果としてこのような法律が制定されるチャンスを作ってしまったのだ。
文言として強力なのが、例えばこれが人民の意思がどうたらこうたらと君主論的に訳が分からんことを述べていればともかくとして、あくまでこの立法は神に与えられた国王陛下の裁量権を助けるものとして発布されており、それは前の条項でしつこいくらいに確認させられており…あくまで国の為、国王の為と王党派らしく、それでいて理論の全てが君主主義者に突き刺さる内容だったのだ。
様相はマトモだ。立法としてなに一つの問題がない。しかし絶対君主主義者たちにとっては許せない内容なだけで。
この法律が制定され、運用され、上手く回っているところを見て…我らに支配されるのを気に食わない勢力と、私が気に入らない奴らが連合して圧力をかけてきた。自治権を広げないと反乱を起こすぞ?と。
バジャール人は何回か反乱を起こしているほど気骨の強い民族だ。それは間違いではなく、新しく手に入れたポラーブ人と連合すれば大変厄介な事態になることは大公とて理解できた。
否、バジャールとポラーブ占領地域の蜂起だけに収まれば良い。向こうには形ばかりでもポラーブ人が自治する《国》があるのだ。同民族の保護のために《ポラーブ及びヴァロイセン王》が出兵してくることは十二分に予想できる事態である。
そうなれば、山間部と海岸部の狭い土地を支配するシュヴァーベルク大公国と、万全の状態でも我らと拮抗し、蹂躙できる可能性すらあるヴァロイセン王国とポラーブ、バジャール連合によって叩き潰される未来がありありと見える。
普段なら、ヴァロイセン王国に《神聖グロウス帝国盟主》として外交を行い、牽制を行うなどの外交的処置で対抗できるがために、自由に反乱を起こせ、かたっぱしから叩き潰してやるよこん畜生!とか、貴公の首は柱につるされるのがお似合いだ!とかいって追い散らすところなのだが。残念なことに、ブランタリア内戦で妹が危ない上に、緩衝地帯の南スラヴァの三王国…セルベロ王国、ボスニャク王国、モルテネグロ王国が危ないとなったら、ねぇ?
二重帝国を知っているグラウスは、ハンガリーの懐柔のために自治権を認めることを知っていたからこそ、この世界のハプストリアは優秀だなぁと思っていたのだが、実態は違う。
経済はともかくとして、政治的に追い詰められたからこその…まさに政治的妥協の産物であったのだ。
「おのれ、許せん…全てはあの裏切り者と扇動によって生まれた英雄のせいだ!」
あの2人さえいなければ、今の混沌とした国際情勢は生まれなかったに違いのにと大公閣下は歯噛みしながら、今日も書類に目を通し、決裁を行うと、国内外の有力な諸侯と会話を交わし、如何に国内の都合を押し通していくか思考を重ねていく。
お互いに苦労人気質を抱えていること、そして本人は意外と平穏を好んでいる気性を知っていれば、実の所、案外仲良くなれそうなのだが…それを知らない大公は一方的に彼を憎みながら、それでも世の平穏のために努力し続けるのであった。
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