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実弾演習のために
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——俺が旅団の再編成に取り組んで、3ヶ月経過——
「遅い遅いッ!この程度の速度だと敵に追いつかれて殺されるぞ!」
「弾込めも遅いッ!貴様らが5発撃つ間に敵軍は10発を叩き込んでくる!」
俺がまずしたことは、小銃を全て騎兵用の小銃に装備転換した。魔法使い(だから女子でも戦える)という理由で掻き集められた混成部隊だ…幸いにも、七年戦争で解体された騎兵旅団から掻き集めることができた。
その銃身を参考に、新しく短銃身のミニエー・ライフルを作り上げるのだ。
クソ長い銃身で一部の発射を遅くしてでも射程を取るか、男女問わず素早く装填できる代わりに射程を犠牲にするか——マスケットライフルに対する論争では、歴史的には射程を取った。
しかし、それらの論争はミニエー・ライフル(参謀たちはユンガー・ライフルと呼んでいるが)の登場によって解決された。
騎兵用でも300m稼げるのだ、この時点で論争もクソもない。装填速度一択だ。装備だけなら1800年後半の英王王立陸軍の特殊部隊並なのだから。
そして、簡単なマニュアルの整備。図解を用いて先込め式のミニエー・ライフルの整備マニュアルを用意した。絵師に依頼するのはクソほど金を投じたが、兵を殺して俺の評価が下がるくらいならこいつらに生きてもらって評価をあげてもらった方が相対的にマシになる。
更に、文字の読み書きができない…差別されて、金がなく学校にいけないため——の連中のために、簡単に数字を使って、使った弾薬や装備、消耗品の報告マニュアルを整備した。
こいつらはライヒ語の書き方を知らないため、当然使い勝手が良いアレビアン数字を叩き込んだ。
後は、俺が処理速度をあげれば人力表計算装置の完成だ。最初は俺だけだが、奉公先の影響で計算ができる連中たちに教育している最中だ、後一年もすればこいつらも人力計算処理ソフトに変身してくれることだろう。
これで物資の管理が滅茶苦茶楽になった。俺に割り当てられた補給官は師団長の回し者であり、半分くらい要請した1ヶ月分の平均消耗品が半分ほど常にパクられていたから、管理面で考えたらむしろ天国である。
何せ、こちとら独立軍だ。扱いは第八師団長ではなく、ポラーブ戦線を担当している東部方面軍管轄になる。階級はともかくとして、軍の独立性と言えば第八師団と大差ないのだ。
そして、当然東部方面軍はかつての方面軍団長である第八師団長の悪行三昧——王政国家で大王の顰蹙を買っただけで十分すぎる悪行なのだ…を知っているため、奴の提言を聞きはしない。物資の配給のために支給される費用は今の所平均的だ。
こうして、残りは兵の練度を高めるための訓練——となったのだが。正直、ここが一番厄介であった。
まず、兵の練度が実質新兵である。弾込めはヴァロイセンの兵の平均的装填速度の半分以下だわ、同一歩調行進はできないわ、体力もないわ、銃の半分は整備不足で動かないわで散々だ。
こいつらをシュレージェン戦争に投入していたら、南部方面軍だろうが、西部方面軍だろうが、東部方面軍だろうが即座に壊滅していただろう。そして、それを押し付けられた部隊長は発狂するに違いない。俺が同じ立場だったら、ウッカリ誤射してしまうかもしれない。
先生代の軍人王陛下の御代の場合は、こいつらの半分が実弾訓練の中で血だまりに沈むことになることは確定事項だ。
そして、何よりの問題点が———
「砲兵だッ…砲兵が何故いないッ…!?」
騎兵は——ダメだ、諦めよう。騎兵自体が、この時代で言う戦車なのだ。クソ高い上に訓練に時間がかかるわ、クソオブクソだ。それは納得しよう。というか、師団でも騎兵は中隊がいれば良い方だ。
いやまぁ、ウチは騎兵の達人のポラーブに対抗するために2個中隊は最低限揃えるようになっているから、本音を言えば1個中隊は欲しくなってしまうのだが、そも旅団の基本的な人数定数が5000人だと考慮すると、まぁいなくても納得できる。
問題は、砲兵がいないことだ!
ぶっちゃけると、今の砲兵は炸裂弾じゃないから運が悪くなきゃ普通に生き残れるし、マスケットライフルでブッ殺される兵士の方が遥かに多い。しかし、砲兵というのは敵に与えるインパクトという意味で非常に強力な力なのだ。
(くそ、先代の旅団長押領してやがったなッ!?)
多分、一応は独立軍扱いなのだから、帳簿上は砲兵を(コツコツと溜めれば)用意し、最低限の実弾演習ができるだけの金が割り当てられていた……はずなのだが。
多分追い出し部屋だと理解していた先代や先々代は、目の前の快楽に戦場の女神に貢ぐための御布施を蕩尽遊ばされたらしい。
(今はミニエー兵がいるだけことを僥倖に思うしかないか…)
今は旅団(大隊)1000名の中で、2割…200名がミニエーライフルを装備しているが、これを宛てにするしかないだろう。俺の予感が正しければ、そろそろ食い詰めたポラーブ兵が定期便を出してくるはずだ。
「さぁて、諸君!吉報だ、来週から我らは楽しい楽しい演習に出かけることになる!相手は食い詰めたポラーブ兵と農民共だ!」
正確に言えばウチは行軍演習も兼ねてメーヴェルラントに派遣されるから、リヴォニア人なのだが。細かい民族の違いはどうでも良かろう。
「諸君らも知っていることだろう。政局が混乱している愚かなる貴族共和国の連中は政をマトモにすることさえ叶わず、結果として多くの兵を食い詰めさせて盗賊にさせて我が王国にブツけてくる。
今回は、旅団諸君で2ヶ月ほどかけて彼らを倒していく必要があるわけだ」
作戦目標をペーペーの中隊長・小隊長たちに訓示し、分かりやすく書いた(つもりの)日程表を出す。
まぁ時代背景を考慮してすっげぇアバウトだが、予定では川沿いを歩きながら、田園地方で食料を調達、そんだけで時速2.5㎞で700㎞を行軍してザックリ500時間、睡眠とか考慮すれば行きと帰りで40日。残り20日くらいは食い詰めた蛮族の掃討作戦だ。
秋から冬になりつつある今は、食い詰めたそーゆー輩が詰めかけてくるのだ。
知り合いがいる第七師団に書類を飛ばした所、快く受け入れてくれるとのこと。まぁ、盗賊の被害を受けやすい場所がメーヴェルラントだからね、仕方ない。
というのも、ポラーブの首都があるヴァルシャウ周辺…つまりは西ポラーブは比較的裕福な地域であり、一方で東ポラーブとリヴォニア領は貧乏な者たちが多い。結果として、そう言った食い詰めた者たちがメーヴェルラントに大挙するわけである。
——後、東リヴォニアはヴェルーシ帝国による小刻みな侵略を常々受けており、それによる国内難民が最終的にウチまで押し流されることも結構あったりするのだ。
とはいえ、ウチだって土地が無限にあるわけではなく、限りある土地を移民如きに渡すわけはいかない。むしろ、神聖グロウス帝国の南部諸邦は人余りでヴェルーシ帝国やニューティア合衆国(現13州)に移民させている始末なのだ。
彼らは、俺の知っている世界で《ドイツ系アメリカ人》として過ごすことになるだろう——
人が余っている故に、そう言った国外難民、特にスキルのない奴らは基本的にはデストロイ。ポラーブ騎兵はウチの農地を荒らすから問答無用でデストロイ、避難船は王立ヴァロイセン海軍の出番だろう。海賊以外にもジャンジャン潰していってくれ。
何度も言うが、ウチのヴァロイセン王国に、言葉も通じない連中を難民として受け入れるわけにはいかんのだ。そこまでウチの国は広くないし豊かじゃない。そりゃ、ポラーブの時代を考えれば作物の生産力は倍増していると言っても良いが…ドイツ式農法だって完璧じゃないのだ。
「ハッ、旅団長閣下、質問よろしいでしょうか!」
「質問を許可する、アールブレヒト第六中隊長」
「ハッ、何故メーヴェルラントにて実弾演習を行うのでありましょうか?」
「この旅団は一回も外に出たことがないらしいな。実戦に出向けば行軍・調達・徴発・衛生など様々な困難に遭遇することになる。幸いウチは水兵のようにウジの沸いたビスケットを齧らず、酒で消毒した水を飲まずに済むが、それでもこうして砦で籠っているよりも遥かに過酷な環境なのは違いない」
ゴクリと唾をのむ音が聞こえる。俺は基本的に中隊だったからこそ、飲み水にも食料にも不便することはなかった。七年戦争のケルニヒスヴェルグ→ダルツィヒ→ポルメルン→ヴァルリンへの逃避行の時も、王国臣民は積極的に協力してくれたしな。弾薬も、調子に乗って進撃しているポラーブ兵たちを夜襲して奪って補給できた。
それに比べれば、遥かに楽な進軍であるが——それでもこいつらは音を上げることになるだろう。俺も最初の時はそうだった。
「諸君らには、行軍と盗賊退治という簡単な演習を通じて、実戦に対する心構えを持ってもらう——さもなくば、待っているのは全滅と潰走、七年戦争で我が王国が味わったポラーブ共による虐殺の憂き目だ」
まぁ虐殺なんてされてないけど。精々ちょっと人道に反してブッ殺された程度だろう。とはいえ、兵士たちの罪悪感を拭うためには人を殺すのではなく、化け物殺しだと思って殺した方が都合が良い。それは史実のイギリスが散々に示してくださったことである。
さもなくば、何百万のネイティブアメリカンや、オーストラリア原住民を虐殺し、殴殺し、病殺させた歴史に説明ができないから。
「さて、諸君——大規模演習の内容は理解できただろうか?民を守りつつ、軍で昇進するためのスコアも稼げる簡単な仕事だ」
俺がそう述べると、小隊長や中隊長たちは困惑したように周りを見渡し、ヒソヒソと意見を交わしていくのが良く見える。
「冬に作戦行動を取るのは少々厳しいため、出発時期を秋にしたのだ。感謝してくれないと困る——それでは全部隊解散!備品整理を忘れるなよ?」
最後に、ちゃんと背嚢に荷物を詰め込んでおくことを警告すると、彼らは頷いて会議室から退席していく。
そうして、一週間後《実戦に限りなく近い演習》が始まり、1000名の歩兵たちは行軍を開始する。
「遅い遅いッ!この程度の速度だと敵に追いつかれて殺されるぞ!」
「弾込めも遅いッ!貴様らが5発撃つ間に敵軍は10発を叩き込んでくる!」
俺がまずしたことは、小銃を全て騎兵用の小銃に装備転換した。魔法使い(だから女子でも戦える)という理由で掻き集められた混成部隊だ…幸いにも、七年戦争で解体された騎兵旅団から掻き集めることができた。
その銃身を参考に、新しく短銃身のミニエー・ライフルを作り上げるのだ。
クソ長い銃身で一部の発射を遅くしてでも射程を取るか、男女問わず素早く装填できる代わりに射程を犠牲にするか——マスケットライフルに対する論争では、歴史的には射程を取った。
しかし、それらの論争はミニエー・ライフル(参謀たちはユンガー・ライフルと呼んでいるが)の登場によって解決された。
騎兵用でも300m稼げるのだ、この時点で論争もクソもない。装填速度一択だ。装備だけなら1800年後半の英王王立陸軍の特殊部隊並なのだから。
そして、簡単なマニュアルの整備。図解を用いて先込め式のミニエー・ライフルの整備マニュアルを用意した。絵師に依頼するのはクソほど金を投じたが、兵を殺して俺の評価が下がるくらいならこいつらに生きてもらって評価をあげてもらった方が相対的にマシになる。
更に、文字の読み書きができない…差別されて、金がなく学校にいけないため——の連中のために、簡単に数字を使って、使った弾薬や装備、消耗品の報告マニュアルを整備した。
こいつらはライヒ語の書き方を知らないため、当然使い勝手が良いアレビアン数字を叩き込んだ。
後は、俺が処理速度をあげれば人力表計算装置の完成だ。最初は俺だけだが、奉公先の影響で計算ができる連中たちに教育している最中だ、後一年もすればこいつらも人力計算処理ソフトに変身してくれることだろう。
これで物資の管理が滅茶苦茶楽になった。俺に割り当てられた補給官は師団長の回し者であり、半分くらい要請した1ヶ月分の平均消耗品が半分ほど常にパクられていたから、管理面で考えたらむしろ天国である。
何せ、こちとら独立軍だ。扱いは第八師団長ではなく、ポラーブ戦線を担当している東部方面軍管轄になる。階級はともかくとして、軍の独立性と言えば第八師団と大差ないのだ。
そして、当然東部方面軍はかつての方面軍団長である第八師団長の悪行三昧——王政国家で大王の顰蹙を買っただけで十分すぎる悪行なのだ…を知っているため、奴の提言を聞きはしない。物資の配給のために支給される費用は今の所平均的だ。
こうして、残りは兵の練度を高めるための訓練——となったのだが。正直、ここが一番厄介であった。
まず、兵の練度が実質新兵である。弾込めはヴァロイセンの兵の平均的装填速度の半分以下だわ、同一歩調行進はできないわ、体力もないわ、銃の半分は整備不足で動かないわで散々だ。
こいつらをシュレージェン戦争に投入していたら、南部方面軍だろうが、西部方面軍だろうが、東部方面軍だろうが即座に壊滅していただろう。そして、それを押し付けられた部隊長は発狂するに違いない。俺が同じ立場だったら、ウッカリ誤射してしまうかもしれない。
先生代の軍人王陛下の御代の場合は、こいつらの半分が実弾訓練の中で血だまりに沈むことになることは確定事項だ。
そして、何よりの問題点が———
「砲兵だッ…砲兵が何故いないッ…!?」
騎兵は——ダメだ、諦めよう。騎兵自体が、この時代で言う戦車なのだ。クソ高い上に訓練に時間がかかるわ、クソオブクソだ。それは納得しよう。というか、師団でも騎兵は中隊がいれば良い方だ。
いやまぁ、ウチは騎兵の達人のポラーブに対抗するために2個中隊は最低限揃えるようになっているから、本音を言えば1個中隊は欲しくなってしまうのだが、そも旅団の基本的な人数定数が5000人だと考慮すると、まぁいなくても納得できる。
問題は、砲兵がいないことだ!
ぶっちゃけると、今の砲兵は炸裂弾じゃないから運が悪くなきゃ普通に生き残れるし、マスケットライフルでブッ殺される兵士の方が遥かに多い。しかし、砲兵というのは敵に与えるインパクトという意味で非常に強力な力なのだ。
(くそ、先代の旅団長押領してやがったなッ!?)
多分、一応は独立軍扱いなのだから、帳簿上は砲兵を(コツコツと溜めれば)用意し、最低限の実弾演習ができるだけの金が割り当てられていた……はずなのだが。
多分追い出し部屋だと理解していた先代や先々代は、目の前の快楽に戦場の女神に貢ぐための御布施を蕩尽遊ばされたらしい。
(今はミニエー兵がいるだけことを僥倖に思うしかないか…)
今は旅団(大隊)1000名の中で、2割…200名がミニエーライフルを装備しているが、これを宛てにするしかないだろう。俺の予感が正しければ、そろそろ食い詰めたポラーブ兵が定期便を出してくるはずだ。
「さぁて、諸君!吉報だ、来週から我らは楽しい楽しい演習に出かけることになる!相手は食い詰めたポラーブ兵と農民共だ!」
正確に言えばウチは行軍演習も兼ねてメーヴェルラントに派遣されるから、リヴォニア人なのだが。細かい民族の違いはどうでも良かろう。
「諸君らも知っていることだろう。政局が混乱している愚かなる貴族共和国の連中は政をマトモにすることさえ叶わず、結果として多くの兵を食い詰めさせて盗賊にさせて我が王国にブツけてくる。
今回は、旅団諸君で2ヶ月ほどかけて彼らを倒していく必要があるわけだ」
作戦目標をペーペーの中隊長・小隊長たちに訓示し、分かりやすく書いた(つもりの)日程表を出す。
まぁ時代背景を考慮してすっげぇアバウトだが、予定では川沿いを歩きながら、田園地方で食料を調達、そんだけで時速2.5㎞で700㎞を行軍してザックリ500時間、睡眠とか考慮すれば行きと帰りで40日。残り20日くらいは食い詰めた蛮族の掃討作戦だ。
秋から冬になりつつある今は、食い詰めたそーゆー輩が詰めかけてくるのだ。
知り合いがいる第七師団に書類を飛ばした所、快く受け入れてくれるとのこと。まぁ、盗賊の被害を受けやすい場所がメーヴェルラントだからね、仕方ない。
というのも、ポラーブの首都があるヴァルシャウ周辺…つまりは西ポラーブは比較的裕福な地域であり、一方で東ポラーブとリヴォニア領は貧乏な者たちが多い。結果として、そう言った食い詰めた者たちがメーヴェルラントに大挙するわけである。
——後、東リヴォニアはヴェルーシ帝国による小刻みな侵略を常々受けており、それによる国内難民が最終的にウチまで押し流されることも結構あったりするのだ。
とはいえ、ウチだって土地が無限にあるわけではなく、限りある土地を移民如きに渡すわけはいかない。むしろ、神聖グロウス帝国の南部諸邦は人余りでヴェルーシ帝国やニューティア合衆国(現13州)に移民させている始末なのだ。
彼らは、俺の知っている世界で《ドイツ系アメリカ人》として過ごすことになるだろう——
人が余っている故に、そう言った国外難民、特にスキルのない奴らは基本的にはデストロイ。ポラーブ騎兵はウチの農地を荒らすから問答無用でデストロイ、避難船は王立ヴァロイセン海軍の出番だろう。海賊以外にもジャンジャン潰していってくれ。
何度も言うが、ウチのヴァロイセン王国に、言葉も通じない連中を難民として受け入れるわけにはいかんのだ。そこまでウチの国は広くないし豊かじゃない。そりゃ、ポラーブの時代を考えれば作物の生産力は倍増していると言っても良いが…ドイツ式農法だって完璧じゃないのだ。
「ハッ、旅団長閣下、質問よろしいでしょうか!」
「質問を許可する、アールブレヒト第六中隊長」
「ハッ、何故メーヴェルラントにて実弾演習を行うのでありましょうか?」
「この旅団は一回も外に出たことがないらしいな。実戦に出向けば行軍・調達・徴発・衛生など様々な困難に遭遇することになる。幸いウチは水兵のようにウジの沸いたビスケットを齧らず、酒で消毒した水を飲まずに済むが、それでもこうして砦で籠っているよりも遥かに過酷な環境なのは違いない」
ゴクリと唾をのむ音が聞こえる。俺は基本的に中隊だったからこそ、飲み水にも食料にも不便することはなかった。七年戦争のケルニヒスヴェルグ→ダルツィヒ→ポルメルン→ヴァルリンへの逃避行の時も、王国臣民は積極的に協力してくれたしな。弾薬も、調子に乗って進撃しているポラーブ兵たちを夜襲して奪って補給できた。
それに比べれば、遥かに楽な進軍であるが——それでもこいつらは音を上げることになるだろう。俺も最初の時はそうだった。
「諸君らには、行軍と盗賊退治という簡単な演習を通じて、実戦に対する心構えを持ってもらう——さもなくば、待っているのは全滅と潰走、七年戦争で我が王国が味わったポラーブ共による虐殺の憂き目だ」
まぁ虐殺なんてされてないけど。精々ちょっと人道に反してブッ殺された程度だろう。とはいえ、兵士たちの罪悪感を拭うためには人を殺すのではなく、化け物殺しだと思って殺した方が都合が良い。それは史実のイギリスが散々に示してくださったことである。
さもなくば、何百万のネイティブアメリカンや、オーストラリア原住民を虐殺し、殴殺し、病殺させた歴史に説明ができないから。
「さて、諸君——大規模演習の内容は理解できただろうか?民を守りつつ、軍で昇進するためのスコアも稼げる簡単な仕事だ」
俺がそう述べると、小隊長や中隊長たちは困惑したように周りを見渡し、ヒソヒソと意見を交わしていくのが良く見える。
「冬に作戦行動を取るのは少々厳しいため、出発時期を秋にしたのだ。感謝してくれないと困る——それでは全部隊解散!備品整理を忘れるなよ?」
最後に、ちゃんと背嚢に荷物を詰め込んでおくことを警告すると、彼らは頷いて会議室から退席していく。
そうして、一週間後《実戦に限りなく近い演習》が始まり、1000名の歩兵たちは行軍を開始する。
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