宮本くんと事故チューした結果

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宮本くんと事故チューした結果

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 堀井翔太。(ほりいしょうた)
 16歳、都立高校2年。
 彼女は中学の時に2ヵ月付き合ってキスもできないまま振られた。
 原因は多分、思春期特有の周りの目が気になりすぎてそっけない態度をとっていたからだと思う。(今振り返るとクソダサい)
 そんなおれが昨日、やらかしてしまった。
 結論からいうと、学校の廊下の曲がり角で野郎と事故チューした。
 これが女子なら少女漫画展開でラブハプニングとしてめちゃくちゃ喜べる。
 でも野郎だ。同じ男同士だ。
「きしょ」
 と、吐き捨てながらすぐさま水で口元を洗う。ついでに事故チューの記憶も水に流してなかったことにする。
 そうできない理由はただひとつ。
 事故チューの相手があの、宮本だからだ。


 登校するなり女子に囲まれた宮本が廊下の窓際にいる。
 もともと接点のないおれは(つーかクラス違うし)宮本とその女子を横切って自分の教室に入って後ろの席に座った。
 開いてる教室のドアから宮本の姿がよく見える。
 同学年で隣のクラスの宮本。下の名前は知らん。
 身長はおれと同じ170ちょいだと思うけど、とにかく顔立ちが良い。甘いルックスと人当たりの良さが女子にやたらウケている。
 そして、同じ男として羨ましい。
 昨日うっかり重なった唇に自然と手がいく。
 
 宮本の唇、柔らかかったな。なんか良い匂いもした。香水か?

 事故チューのことを思い出してる自分に気づいて慌てて唇に触っている手を引っ込める。
 きっしょ、おれ、きしょいだろ。
 女子に人気あって羨ましいからって宮本は同じ男だって。
 近くにいるクラスメイトの男子がドン引きしながら宮本の悪口言ってるし。まぁ、茶髪だし見た目チャラいよな。
 楽しそうに女子たちとおしゃべりしてる宮本はめちゃくちゃいつも通りだ。
 昨日の事故チューなんてきれいさっぱり忘れてるんだろうな。つーか、女子との噂とかもよく聞くしキスなんて慣れてそう。
 こんなおれでマジすまん、と思ったけど、全然問題なさそうでよかった。
 どこかスッキリしない気持ちに無理やり蓋をして事故チュー事件の幕を閉じる。

 
 あれから1週間。

 学校に登校したらまず最初に宮本を探すのが習慣になってきた今日この頃。
 相変わらず女子に囲まれながら余裕な笑みを浮かべる宮本を横目でチラチラ見たり、何を話してるのか耳をすましたり。
 席に着いた後はいつもつるんでる石井と話すフリして廊下にいる宮本を盗み見たり。
 お、今日はカーディガン着てる。最近は肌寒くなってきたもんなー・・・って、おい!
 結論からいうと、どうやらおれは宮本のことが気になるらしい。
 事故チューのことはきれいさっぱり忘れることにしたはずなのに、気づけばあいつの唇の感触ばかり思い出すし、(もう何百回頭の中で再生したか)気づけば宮本を探しては目で追ったり、自販機に行けば宮本が飲んでた奴をポチってしまったり、女子が宮本の話をすればスッと気配を消してその会話に全集中して聞いたり。
 1日たりとも宮本のことを忘れたことがない。
 これはつまり、宮本と事故チューした結果、宮本のことが頭から離れなくなってしまった。つまりそれは?
「恋、なのか?」
「え、なに? 好きな子でもできた?」
 頭の中の呟きのはずが返事が返ってきたのにめちゃくちゃ驚いて顔をあげると石井がワイシャツのボタンをはずしている最中だった。
「?!」
 周りを見ると男子だらけでおれ以外の奴はみんな体育着に着替えている。
「なんか急な変更で1限目は2組と合同体育になったって。学級委員がデカい声で言ってたけど聞いてなかった?」
「・・・聞いてない」
 どんだけ頭の中宮本に支配されてるんだおれは。と呆れながら立ち上がってワイシャツのボタンをはずしにかかる。
「で? 好きな子って誰? このクラス? オレ知ってる?」
 興味津々の瞳で聞いてくる石井に、
「は? なにが? おれそんなこと言ってないけど」
 嘘をついてその場をやり過ごすことにした。石井は良い奴だし普通に友達だけど、相手が男の宮本だと言うのはハードルが高い。
 石井は諦めが悪くて、体育着に着替えて校庭に着くまでしぶとく聞いてきた。そのうち話題が変わりその話にのっかった。
 
 2組には宮本がいる。石井の話を聞きつつ視線はすでに宮本を探す。
 気になる奴ってなんですぐに見つけられるのか不思議だ。興味がない時は視界にさえ映らなかったのに。
 数人の男子と一緒にいる宮本は貴重だ。(いつも女子に囲まれてるから)同じ緑の線が入ったダサい体育着を着ていても宮本は明らかに別格で、輝いて見える。むしろ自分で発光してる?!
 ただ立っているだけなのにかっこいい。男のおれでも惚れ惚れする。(特にハーフパンツから出てる生脚とか)
「堀井、聞いてる?」
 石井の声にハッとして慌てて石井に顔を向ける。
「悪い、寝不足気味かも」
 嘘をついてごまかす。
「しっかりしろよ~次サッカーだぞ」
「顔面でボール受け止めるなよ(笑)」
 おれと石井のつるみにいつの間にか加わっていた荒木がケラケラ笑いながらちゃかす。
 ははと適当に笑い返しつつ、そらした視線をまた宮本に戻した瞬間、宮本と目が合い露骨にそらされた。(え)
 実はこの1週間、同じようなことが何度かあったりする。ただの偶然か気のせいだと自分に言い聞かせるけど正直地味にショックだ。ダメージ5は秘かに食らってる。
 平気そうに見えるけどやっぱり宮本はおれと事故チューしたこと、けっこう傷になってるんじゃ・・・。むしろ怒ってる?とか。
 あれこれ勝手に宮本の心理に妄想を膨らませていると荒木に体育倉庫に行って空気入れを取ってこいとなぜかパシられた。(行くけど)
 
 校庭の隅っこにある体育倉庫は六畳くらいの広さで中に入るといつもひんやりして薄暗い。あと、砂ぼこりと石灰の匂いであまり長く居たい場所とは思えない。
 壁の前に立っている背の高い棚の中からサッカーボール用の空気入れを見つけ手にする。すぐに戻ろうと振り返るとドアの前に宮本が立っていた。
 内心びっくりしすぎて心臓がバクバクと早打ちする。
「空気入れならおれが持って行く、けど?」
 いたたまれずつい声をかけてしまった。
 逆光で宮本の表情がよく見えないけど、女子に囲まれてる時に見せる余裕の笑みを浮かべては・・・ないな。
「・・・」
 返事すらしない宮本は数秒ほど入口の前に立ったあと、横開きの扉を閉めた。(閉めた?!)
 内心違う緊張が走る。
 は?! え? なんで閉めた?? 
 何か物を取りにきたのが普通の考えだけど、物じゃなくておれに用があって来たってこと? 扉を閉めてふたりっきりにならないといけない用って・・・人に聞かれちゃまずいこと? 相談とか?
 宮本がおれに相談??
 事故チュー以外の接点がないおれに??
 まさか、男と事故チューしたことを女子にバレそうだからおれに口止めをしにきたとか?! それなら納得。
「この前のことなら誰にも話してないし、これからも誰にも話す気ないから安心して。特に女子には絶対言わないから、な! あ、ほら、あれはノーカンってことで!」
 おれがペラペラしゃべってる間に宮本がスタスタと歩いておれの前の目に立って胸ぐらをつかんだ。(つかんだ?!)
 笑ってない宮本の顔立ちは整っていてキレイで、かっこいいを通り越して美しい・・・。と、見惚れながらそんな奴に殴られるおれ。と思っていたら、グイッと引き寄せられ唇が重なった。
 事故チューした時のことを思い出し反射的に宮本から離れる。
 何百回も頭の中で再生していた宮本の唇の感触にまた触れられて嬉しいのと、なんでという動揺で頭の中が混乱する。
 
 いきなりキスしてきた宮本はというと離れたおれにふてくされたのか、少し不機嫌な顔で、
「ノーカンて言うなよ」
「・・・え」
「急にごめん・・・だけど、今まで接点なかった堀井くんと事故とはいえキスできたのはもう運命だって思うんだ、オレ」
 グッと控えめにガッツポーズする宮本におれの目が点になる。
「え。運命?」
「そう! オレ、前から堀井くんのこといいなって思ってたんだけど多分ノンケだろうなって。わかるんだよねー同類の勘ってやつ?」
「同類? ノンケ?」
「事故チューでも一生の思い出にできると思ってたけど、事故チュー以来堀井くんの視線感じるし、何度も目合ったし、これはオレのこと意識してくれてるんだって・・・思ったらいてもたってもいられず」
「目合ったって、めちゃくちゃ露骨にそらしてたじゃん」
「・・・だって、恥ずかしくて」
 えへっと可愛く舌を出す宮本。(かわいいかよ)

 思ってたのと違う宮本のキャラに脳が全然ついていかん。
 まさかと思うが、いや、そのまさか。
 宮本って・・・。
「違ってたらごめん。もしかして、ホモ?」
「うん、オレ、ゲイだよ」
 サクッと即答する宮本が漢らしい。
「・・・女子との噂とかけっこーあるよな。いつも女子に囲まれてるし」
「表ではそうゆう設定っていうことで。隠してるわけじゃないけどさ、、みんながみんなゲイにウエルカムってわけじゃないじゃん? それに、女の子はこの外見のせいか自然と集まってくるからしょうがないっていうかさ」
 自然と・・・めちゃくちゃ羨ましいなこら。
 ちょっと不安そうな表情になる宮本。
「がっかりした? オレは知ってほしい人には隠さずちゃんと言おうって決めてる。けど、受け入れてくれるかは相手次第だし、無理ならそれは・・・」
「びっくりしたけど、おれはラッキー・・・? かな」
「!」
 というか、好きになった相手がゲイだからって今更だ。というか、宮本がおれのこと前から気になっていたことに喜んでる自分がいる。

「堀井くん、オレたちって」
 探るような上目遣いで聞いてくる宮本があざとい。(かわいいかよ)
「両想いでいいんじゃないでしょうか」
「やったー!」
 喜ぶ宮本がかわいく見える不思議。
「つーか、もう授業始まるから戻ろう。これ持って行かなきゃだし」
 照れくさくてもっともらしいことを言ってみる。というか、荒木が遅いと言いながら来そうだ。
 体育着の裾をツンッと引っ張られ振り返る。
「両想い記念にもう1回」
 そう言って宮本がチュッとキスしてきた。

 事故チューした結果、ゲイの宮本と付き合うことになりました。



 おわり。
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