聖女ではないと婚約破棄されたのに年上公爵様に溺愛されました

ナギノサキ

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第3章 アリスと公爵家

25.公爵様とのティータイム

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「お嬢様起きて下さい!」
「…あら?もうそんな時間だったかしら?」
「いいえ、今日は公爵様とのティータイムに向けて朝から準備致します!」

 エマだけが張り切っているかと思ったら他の侍女達も張り切っていて私は人形のように動かされていた。

「お嬢様!次は髪を梳かします!」
「お嬢様、これはお肌にとても良いと聞きました。」
「お嬢様、ドレスはどちらにしますか?」

 目まぐるしく準備をする中、時刻はあっというまに約束していた時間になった。

 私は夜会にでも行くようなほどの侍女たちの張り切お陰でいつもよりも小綺麗になっていた。

「やはり私たちのお嬢様ですね」
「ええ、本当に!着せ替えがいがあります」
「お嬢様はそういったことに無頓着ですから」

 口々に侍女達が私を見て言う中、部屋の扉が叩かれた。そこにはお馴染みのノーマンがいた。ノーマンに案内されながら相変わらず公爵邸の広さに圧巻していると直に公爵様の部屋の前についた。中から公爵様の声が聞こえた。私はノーマンと一緒に部屋に入ると久しぶりに公爵様の姿を見たのだった。

ノーマンは私を座る場所までエスコートすると、公爵様がこちらにやってきた。公爵様は向かいに座ると私に話しかけた。

「…急にすまないな。少し直接話せないかと思い呼びつけてしまった。」
「いえ、こちらこそお茶のお誘いありがとうございます」
「怪我は如何ですか?」
「ええ、もう医者からも心配することはないと…」

 私達のやり取りを見ていたノーマンは「では私はこれで」と部屋を後にした。

―一体だれがお茶を淹れるのだろう?

 そう思っていると公爵様が手慣れた手つきでお茶を淹れる準備をしていた。

「…もしかして公爵様が淹れるのですか?」
「…ええ、もしやご不満でしたか?」

 心配そうな顔の公爵様に思わず首を振った。
公爵様は安心したようにお茶を淹れる準備を初めていた。

「公爵様はお茶が好きなのですか?」

 公爵様は少し考えたように口を開いた。

「…好きというのか分かりませんが、昔からよく自分で淹れていたので…それに茶を飲む時まで侍女や執事がいると落ち着かないのです。そうなれば自分で淹れたほうが効率がいいかと思いまして」

 そういうものなのかなと思いながら私は公爵様に話しかけた。

「あの!直接言えていなかったのですが、贈り物ありがとうございました。…そのとても面白くて夢中になってしまいました。」
「いえ、お気に召されたようで何よりです。」
「それとお手紙も。療養期間も退屈せずに過ごせました。とても嬉しかったです。」

 公爵様は一瞬動きが止まったように見えたが「それは良かったです」とだけ言うと先程と同じようにまた動いていた。

 公爵様が私の前にティーカップを置くととても良い香りがしてきた。

「とてもいい香りですね」
「そうですか。良かったです。」
「こちらの茶葉は何ですか?」
「…実は今日呼んだのはこちらの試飲をして頂きたくお呼びしたのです。」
「試飲ですか?」
「これはノースジブル領の特産品にしたいと考えている茶葉なのです。ご存知の通り、ノースジブルは1年を通して寒さが続くので、本来なら茶葉の育成には不向きです。ですが、最近は農業にも魔法を用いて気温を一定にして様々な作物を育てる研究をしているのです。これは試作品です。」
「そうなのですね。私も聞いたことがあります。最近、ノースジブルでは農業と魔法を融合した研究や薬品の研究に力を注いでいると」
「博識ですね。あまりノースジブル領のことなど王都では噂にもならないでしょう」

 公爵様は少し自嘲気味に笑っていた。私はそんな様子を見て話を続けた。

「王都で流行の話題はいつも誰かの色恋沙汰です。…今思えばそんな社交界の事情に私自身も飽き飽きしていたのにクリス殿下の婚約者だった時はそんな噂話すら頭に入れていました…」

―第一王子の婚約者として

 その言葉を言おうとしたが、私は公爵様の前であることを思い出して口をつぐんだ。

「…アリス嬢は茶は苦手ですか?」
「いえ、そのようなことは」

 私の前には公爵様が淹れてくれたお茶がティーカップの中で揺らめいていた。私はお茶を飲もうとティーカップに手をかけようとすると公爵様が慌てたように言葉を放った。

「気が回らず申し訳ない。私から先に頂きます。」
「え?」

 公爵様はお茶を口にすると少し考え込むようにしてティーカップを置いた。

「アリス嬢が口にしても大丈夫です。…ですが私的には何点か課題が見えてきました。」
「あの、なぜ公爵様は私に謝られたのですか?」
「…アリス嬢は先日あのようなことがあったので私の淹れたお茶にも警戒されているのかと」

 私は少し考えると公爵様の意味が分かって少しだけ笑ってしまった。

「何か可笑しかったですか?」

 私は公爵様の不器用な優しさが嬉しかった。

「私も頂きます」

 公爵様が淹れてくれたお茶は優しくて温かい味がした。
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