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第3章 アリスと公爵家
29.不穏な王都
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「そう言えばまた聖女様が西側からの要請を断ったらしいわ」
「え?そうなの?」
「本当よ。宰相様が頭を悩ませていたわ。…近頃は王都でも流行り病が来るんじゃないかって噂よ」
「そんな!ああ、アリス様がいらっしゃったらそんなことにならないのに」
「…ねぇ、でも本当にアリア様は聖魔法を使えるのかしら?」
「確かに。私達はアリア様が聖女としてお勤めになったことを見たことないものね」
「…本当は聖魔法を使えないとか」
「しっ!そんなこと他の人に聞かれたら!」
「そうね。でも本当にアリア様は『聖女』なのかしら」
私が王宮を歩いていると聞こえてきたのは召使い達のしょうもない噂話だった。ただ気晴らしに王宮内を歩いていただけだと言うのに腹が立つ。
「アリア様、所詮は庶民の戯言です。」
「…そうよね。私が王妃になったらあんな召使い直ぐにでも牢獄に入れてやるわ」
「そうです。次期王妃の座につくのはアリス様ではなくアリア様なのですから」
サナは私に微笑むとまたすぐ後ろに下がって私の後を歩き始めた。サナはこういう時にすぐに私の気分を慰めてくれる。本当に良い侍女だ。私に逆らったことは一度もない従順な召使い。
―私が王妃になったらサナみたいな子だけ王宮使いにしようかしら
そんなことを考えながら私はクリスの元へと向かった。
「殿下!アリア様の我儘に付き合うのはもうお辞め下さい!」
「何度も言っているが聖女が行かないと言えばその地は呪われたも同然だ。そんな地にアリアを行かせることは出来ない」
クリスの部屋の前に来ると聞こえてきたのは宰相の声だった。またクリスに無理難題を仕掛けているのだろうか。私は気にせずに扉を叩いた。
「クリス様」
「ああ、愛しのアリア」
クリスは待ちきれなかったのか椅子から立つと私の元へとやってきた。
「僕の愛しい人」
「私も同じ気持ちですわ」
私達を見ていた宰相は一つ咳払いをするとまた話しを始めた。
「ご歓談中に申し訳ございませんが、アリア様も来られたことですしもう一度お話しを致します」
「もうよせ、アリアは僕と離れることを望んでないし、僕も望んでいない。流行り病といっても国として見れば深刻な問題ではないのだからいいだろう」
「ですが!」
「いいから下がれ」
「お言葉を返すようですが、既に聖女様の要請を断わられた西の辺境ではアリア様が本当に『聖女』なのかどうかを疑いの目を持つ国民も多くなっております」
「…そんな無礼なことをアリアの前で言うか!」
クリスが思わず剣を取ろうとしたのを私は手で制した。
「宰相様、つまりは私が『聖女』と証明できればそのような噂も無くなるということですか?」
「それはそうかもしれませんが…」
「それでしたら『聖女』として奇跡を皆様にお見せする宴を開きましょう。幸いなことにまだ私が聖女になってから王都で祝宴をしたことはなかったですから。」
「それは良い考えだ!皆にアリアの聖魔法を見せることが出来れば西側に行かなくてもよいからな」
「…それは」
宰相が何か言おうとしたがそれ以降はクリスが祝宴の話しに持っていき聖女の要請の件は宰相の口から出ることがなかった。ああ、私は何て機転が利くんだろう。私は祝宴のことで頭がいっぱいになっていた。
―どんなドレスを着ようかしら
私は先ほどの気分の悪さはなくなり、ドレスはどこに頼もうか意気揚々と部屋に戻った時だった。黒い小鳥が窓辺に来ていた。
―今日は何ていい日なのかしら
私が小鳥に触れると手紙が現れた。私のさっきまでの気分は消し去った。
「なんで!なんでよ!」
手紙を踏み潰すと跡形もなく黒い煙となって消えていった。手紙の内容は全く嬉しいものではなかった。
ーお姉様がまだ生きてるですって!しかもヴェンガルデン公爵家が私を疑ってるなんて冗談じゃない!こんなところでお姉様の暗殺計画が明るみになったら…
「…王妃になれないじゃない」
「アリアお嬢様、どうかなさいましたか?」
私の前にサナが現れた。サナにまた慰めて貰おうかと思ったが、私はサナを見て良いことを思いついた。
「ねえ、サナは私の言う事何でも聞いてくれるわよね?」
「え?」
私はサナに微笑んだ。サナは怯えたように私を見ていた。
「え?そうなの?」
「本当よ。宰相様が頭を悩ませていたわ。…近頃は王都でも流行り病が来るんじゃないかって噂よ」
「そんな!ああ、アリス様がいらっしゃったらそんなことにならないのに」
「…ねぇ、でも本当にアリア様は聖魔法を使えるのかしら?」
「確かに。私達はアリア様が聖女としてお勤めになったことを見たことないものね」
「…本当は聖魔法を使えないとか」
「しっ!そんなこと他の人に聞かれたら!」
「そうね。でも本当にアリア様は『聖女』なのかしら」
私が王宮を歩いていると聞こえてきたのは召使い達のしょうもない噂話だった。ただ気晴らしに王宮内を歩いていただけだと言うのに腹が立つ。
「アリア様、所詮は庶民の戯言です。」
「…そうよね。私が王妃になったらあんな召使い直ぐにでも牢獄に入れてやるわ」
「そうです。次期王妃の座につくのはアリス様ではなくアリア様なのですから」
サナは私に微笑むとまたすぐ後ろに下がって私の後を歩き始めた。サナはこういう時にすぐに私の気分を慰めてくれる。本当に良い侍女だ。私に逆らったことは一度もない従順な召使い。
―私が王妃になったらサナみたいな子だけ王宮使いにしようかしら
そんなことを考えながら私はクリスの元へと向かった。
「殿下!アリア様の我儘に付き合うのはもうお辞め下さい!」
「何度も言っているが聖女が行かないと言えばその地は呪われたも同然だ。そんな地にアリアを行かせることは出来ない」
クリスの部屋の前に来ると聞こえてきたのは宰相の声だった。またクリスに無理難題を仕掛けているのだろうか。私は気にせずに扉を叩いた。
「クリス様」
「ああ、愛しのアリア」
クリスは待ちきれなかったのか椅子から立つと私の元へとやってきた。
「僕の愛しい人」
「私も同じ気持ちですわ」
私達を見ていた宰相は一つ咳払いをするとまた話しを始めた。
「ご歓談中に申し訳ございませんが、アリア様も来られたことですしもう一度お話しを致します」
「もうよせ、アリアは僕と離れることを望んでないし、僕も望んでいない。流行り病といっても国として見れば深刻な問題ではないのだからいいだろう」
「ですが!」
「いいから下がれ」
「お言葉を返すようですが、既に聖女様の要請を断わられた西の辺境ではアリア様が本当に『聖女』なのかどうかを疑いの目を持つ国民も多くなっております」
「…そんな無礼なことをアリアの前で言うか!」
クリスが思わず剣を取ろうとしたのを私は手で制した。
「宰相様、つまりは私が『聖女』と証明できればそのような噂も無くなるということですか?」
「それはそうかもしれませんが…」
「それでしたら『聖女』として奇跡を皆様にお見せする宴を開きましょう。幸いなことにまだ私が聖女になってから王都で祝宴をしたことはなかったですから。」
「それは良い考えだ!皆にアリアの聖魔法を見せることが出来れば西側に行かなくてもよいからな」
「…それは」
宰相が何か言おうとしたがそれ以降はクリスが祝宴の話しに持っていき聖女の要請の件は宰相の口から出ることがなかった。ああ、私は何て機転が利くんだろう。私は祝宴のことで頭がいっぱいになっていた。
―どんなドレスを着ようかしら
私は先ほどの気分の悪さはなくなり、ドレスはどこに頼もうか意気揚々と部屋に戻った時だった。黒い小鳥が窓辺に来ていた。
―今日は何ていい日なのかしら
私が小鳥に触れると手紙が現れた。私のさっきまでの気分は消し去った。
「なんで!なんでよ!」
手紙を踏み潰すと跡形もなく黒い煙となって消えていった。手紙の内容は全く嬉しいものではなかった。
ーお姉様がまだ生きてるですって!しかもヴェンガルデン公爵家が私を疑ってるなんて冗談じゃない!こんなところでお姉様の暗殺計画が明るみになったら…
「…王妃になれないじゃない」
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「ねえ、サナは私の言う事何でも聞いてくれるわよね?」
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私はサナに微笑んだ。サナは怯えたように私を見ていた。
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