私を追放した王子が滅びるまで、優雅にお茶を楽しみますわ

タマ マコト

文字の大きさ
18 / 20

第18話 祈りの光

しおりを挟む


 夕方の湖面は、指でそっと撫でたみたいに薄く揺れていた。静寂の館の梁が一度きしみ、家全体が「これからだよ」と背筋を伸ばす。私は窓を三分の一だけ開け、冷たい匂いを喉の奥へひと口。最初の湯はダージリンを軽め。蜂蜜は半匙弱。塩は入れない。現実は街のほうで充分に騒いでいる。

「風は湖から王都へ。弱いけど、道になる」  セドリックが影だけ置いて言う。 「弱い道は、静かに遠くまで届く」

 レーネが束ねたタイムを指で撫で、「今日もかわいい」と笑う。マリアベルは秤を撫で、「狂ってない」。ギルバートの鍋は低く腹を鳴らす。ジルは靴紐を固く締め、ハンスは拳を開いたり閉じたりで力の出口を確かめる。シモンは『順番』『退路』『香を薄く』『影から離れる』、そして新しく『ひ』の紙を束にした。

「『ひ』?」 「光の『ひ』。火の『ひ』でもある。——『ひ』は“息で点けて、息で消せる光”」 「いいね。今日はそれでいく」

 扉が二度、礼儀を思い出した指で叩かれた。間は短い。ハロルドだ。灰の外套の男は地図を開き、目だけで場を温める。

「殿下は鏡の間を出たり入ったり。玉座の根は剥がれたまま。祈祷師ミゼル、今夜“天へ光を上げる儀”を宣すると走り。香を厚くし、屋根の上に灯りを並べる計画。……舞台の光だ」 「ならこちらは“祈りの光”。——台所で灯す、小さくて消せる光」  私が言うと、ハロルドは頷いた。「兵は壁にせず、扉を作る。各区に『ひ』の紙。『火は小さく、窓は指一本。吸って、吐いて、消せる光』」

「北の倉は?」  セドリックが視線だけで問う。 「退路一本が通った。……二本目、今夜。順番は『民→水→影』のまま」 「エナスは」 「刻む。震えない指で」

 私はカップを口へ運び、胸の針の角度を確認した。真っ直ぐ。細く、強い。揺れを通った線は折れにくい。

「段取り、三つ」  指を折る。「ひとつ、各区に“祈りの光”のやり方を貼る。『ひ』の紙は子どもの目線。ふたつ、御堂の目地に溜まった香をさらに剥がす。みっつ、王宮の屋根で“舞台の光”が上がった瞬間に、街じゅうに“消せる光”を点ける。——合図は鐘じゃない。母音、『ひ』」

「怒鳴らない、刃は出さない、退路を残す」  セドリックが重ねる。「了解」



 王都の夕刻は、人の背中に色が戻る時間だ。広場の端に白い紙が揺れる。『退路』『順番』『ひ』。蜂蜜の小瓶が三口ずつ、手から手へ渡る。ハロルドが角で指だけの合図を散らし、兵は壁を“扉”に組み替える。怒鳴らない。怒鳴り声は刃だ。

「きょうは『ひ』だよ」  ミーナがアリを抱き上げ、ニコが指を一本立てる。シモンが子どもの字で読み上げる。「『ひ』は“息で点けて、息で消せる光”。『う』を言って吸って、『ひ』と言いながら小さく吐く。窓は指一本ぶんだけ開ける」

 私たちは区々に散り、台所の口火を借りて、小さな陶皿に芯を立てた。油は少し。大きくしない。大きい光は舞台になる。小さい光は生活になる。レーネがローズマリーを一本だけ束から抜き、香りを薄く足す。「芯を太く」。マリアベルは蜂蜜をひと滴、灯心に触れさせる。「甘い匂いは怖さを薄める」。

「御堂」  セドリックの声。私は頷いた。

 南の礎石は、今日も呼吸していた。目地の隙に薄く溜まった香の残滓を、刷毛と息で剥がしていく。若い神官が膝の位置で呼吸の高さを合わせ、リリアは小部屋で胸を開き、窓を指一本だけ。外の甘さが入ってくる。

「……よし」  私は指先から温度を離し、石の側で短く言う。「今夜、街に“祈りの光”を点ける。あなたは壇に上がらない。扉の内で、『ひ』を言うだけ」 「言う」  リリアの声は小さいけれど芯がある。鏡を忘れた声だ。



 王宮の屋根では、ミゼルが香の箱を開けた。黒衣の列。節の組み替え。彼は空を舞台にするつもりだ。屋根の縁に並ぶ灯りは、指二本ぶんの窓から溢れる眩しさで、人の目を奪う光。彼は計算にかけている。“目を奪うのは、心を奪う最短路”。職人の論理。

「殿下」  ミゼルが低く声を落とす。「光を上げる。街は見上げる。結果は、ここ」  アレクシスは鏡の間から半歩離れたまま、屋根の端に立つ。風が彼の裾をわずかに揺らし、喉が一度だけ上下した。「……退路は」 「不要」  ミゼルの答えは速い。速い答えは、たいてい危うい。

「殿下」  ハロルドの走りが息を切らせず現れ、短く言う。「街は“祈りの光”。——窓、指一本。『ひ』の紙。退路は開いている」  アレクシスの目に、鏡のない色が一瞬だけ差した。けれど彼は、まだ舞台を捨てない。捨てられない。私はそれを責めない。舞台にも退路が要る。



 薄闇が落ちて、王都が一斉に息を吸った。屋根の上で、祈祷師の光が高く上がる。白く鋭い。“目を奪う光”。同じ瞬間、路地の奥、台所の窓、礼拝堂の隅、井戸端の石の影、店の裏口……街じゅうの指一本の窓から、小さな火がぽつり、ぽつりと点いた。『ひ』。息に乗った、小さく消せる光。

「『ひ』」  私は広場の端で、口を丸くせずに息を細く落とす。子どもが真似をする。『ひ』。母が笑う。笑いは命令の敵で、聞く耳の味方。小さな火は揺れて、すぐ落ち着く。落ち着いた火は、怖さの位置を移動させる。喉の奥から掌へ。掌に乗れば、扱える。

 屋根の上の光は強い。だが風に弱い。風は湖から王都へ。弱いけど、広い。香の層を薄く剥がしながら街を通る風は、屋根の光にだけ冷たく、台所の火にはやさしい。御堂の目地は呼吸を保ち、礼拝堂の木は音を吸う。リリアが扉の内で短く言う。「ひ」。その一音が通りを渡り、角を曲がって、窓から窓へ。

「姐さん、いい匂いだ」  ジルが肩で笑い、ハンスが「怒鳴らない」。シモンは子どもの目線に『ひ』の紙を貼り、レーネが火に近づきすぎた小さな手をやさしく包む。マリアベルは蜂蜜をひと滴、陶皿の縁に触れさせ、ギルバートは蓋を少しだけずらし、スープの湯気で光をやわらげる。家の仕事が、街の仕事になっていく。

「北の倉、二本目」  セドリックの声。遠くで符丁がひとつ。エナスだ。退路の刻みがまた一本、剥がされて通った。順番どおりに、民→水→影。怒鳴らない。刃は出さない。礼儀の角度で。

 私は胸の針を指で撫でた。角度は、真っ直ぐ。けれど、その線が街じゅうに増えていくのを感じる。指一本の窓から漏れる橙が道を描き、道が退路に繋がり、退路が順番を呼び、順番が呼吸を整える。――これが、祈りの光。舞台の光は上へ逃げる。祈りの光は下へ座る。



 王宮の屋根。ミゼルは光の強さをさらに上げようと節を組み替え、香を重ねる。だが風は香を嫌う。御堂の目地を剥がしておいたせいで、香は街に留まらない。浮いた香は、強い光を支えきれない。縁から一筋、光がほどける。人々が見上げず、見下ろして火を整える姿に、彼の計算が少し軋む。

「殿下」  彼はなお声を落とす。「高みを」 「……街が、明るい」  アレクシスが初めて下を見た。指一本の窓に座る小さな火。台所の陶皿。母の掌。子の眼。老いた指。兵の肩。紙の白。『ひ』。彼はわずかに息を吐き、つぶやく。「退路は……光でもあるのか」 「退路は道。道は、灯せる」

 そこへ、老司祭の走りが青い蝋の小封を差し出した。殿下は開け、沈黙の中で読む。『祈りは“上げる”でなく“置く”。民は今、置いている。奇跡は舞台に要らず。道に要る。——香を薄く。王の息で。』

 アレクシスは目を閉じ、開けた。「ミゼル。香を薄く」 「殿下——」 「王命だ」  短い二語。短いほど、退路は残る。ミゼルは笑わず、節をほどいた。屋根の光がひとつ、二つ、静かに落ちる。落ちた分だけ、街の火が明るく見える。明るく見えるのではなく、見える場所まで降りてきた。



 その頃、北の倉の陰。エナスは印板の裏に薄く刻まれた『退路』の線を指で撫で、剥がすタイミングを測っていた。新影の二人が前を行き、旧影の男が後ろから顎を少し引く。〈見ていろ〉。彼は震えない。震えは喉の奥だけ。蜂蜜が届く距離だ。彼は刻みをひとつ剥がし、小声で言った。「——『ひ』」。火ではない。光だ。自分の胸の中で灯しておくための音。

「通った」  セドリックが広場で受け取り、私に目で渡す。私は頷く。退路は増えた。道は細いが、折れない。

「リリア」  礼拝堂の扉の内で、彼女は短く繰り返す。「『ひ』」。窓の外で子どもが真似をする。『ひ』。恐れの位置が喉の奥から掌へ移動するたび、街の奥行きが一段深くなる。深くなった街には、香が居座れない。香は軽いからだ。



 夜が真ん中を過ぎるころ、王都はめいめいの掌に小さな灯りを持っていた。台所の陶皿、礼拝堂の隅、屋台の裏、倉の影。どの火も「消せる」。その安心が、光をやさしくする。やさしい光は、人を舞台から降ろす。

 私は広場の端で、ポットから薄いお茶を注いだ。『祈りの光』は喉を乾かす。蜂蜜を半匙弱、各自に。マリアベルが匙を配り、ギルバートがスープの蓋を指一本だけ開け、レーネがローズマリーを軽く弾く。ジルは「怒鳴らない」をもう一度言い、ハンスは落ちそうな石を先に落とし、シモンは紙を貼り直す。若い神官は息の高さをそろえ、ハロルドは“扉”の角度を保ち、セドリックは影を太くして、刃が出る前に静けさで刃先を鈍らせる。

「お嬢様」  セドリックが低く囁く。「殿下が、壇の下にいる」  見ると、仮設の壇の影。アレクシスが立っていた。鏡のない顔。彼は拍手を求めない。求めない顔は、退路を探している顔だ。彼は私を見た。私は頷き、長く話さない。

「殿下。——香を薄くしてくれて、ありがとう」 「私は命じただけだ」 「命じるのも息。息は道を作る」 「……民は、上を見ないのだな」 「今日は下に置いたから。明日は横に繋ぐ」

 彼は短く笑い、すぐに真顔に戻った。「王が“退いた”ことを、あなたは責めない」 「退くには勇気が要る。退いた王は、間に合う王」  ハロルドが横で頷く。「紙に書く。兵に言う。街に残す」



 夜明け前。『祈りの光』は、ひとつ、またひとつと息で消えた。『ひ』。消せる明るさは、眠りに変わる。眠りは、街の骨を新しくする。屋根の上の舞台の光は、もうない。香は薄い膜のまま、風にほどけた。御堂の目地は静かに座り、礼拝堂の木は息を覚えている。北の倉の退路は二本、通った。順番は守られた。

 静寂の館に戻ると、扉が「おかえり」と小さく鳴いた。マリアベルが蜂蜜を差し出し、ギルバートが塩のスープをよそい、レーネが吊るしたローズマリーの先を指で弾く。シモンが『ひ』の紙を机に重ね、ジルとハンスは肩で「怒鳴らない」を確かめ、若い神官は窓を三分の一だけ開け、ハロルドは外套を椅子に掛け、セドリックは影を細くした。

「今日のまとめ」  セドリック。 「王宮の“舞台の光”、香を薄くして落とした。街は“祈りの光”を点け、息で消した。御堂の目地は呼吸を保ち、礼拝堂は『ひ』を覚えた。——北の倉、退路二本目。順番は民→水→影。殿下は壇の下に立ち、鏡を半歩離れた」

「祈祷師は」  ハロルドが目を細める。 「計算をやり直す。彼は職人だ。良い職人は、間違いをすぐに直す。でも“退路”を計算に入れない限り、街の光には勝てない」

 私はカップに最後の一杯を注ぎ、喉へ落とす。今日の渋みは印。甘さは赦し。塩は現実。全部ここにある。胸の針を撫でる。角度は真っ直ぐ。細く、強く。

「エナス」 「はい」 「震えなかったね」 「喉だけ震えました。……蜂蜜、効きます」 「喉に届く甘さは、恐れの居場所を動かせる」 「はい」

 窓を少しだけ開ける。湖の匂いが夜の鉄から草へ移り、遠くで鳥が短く鳴いた。街は、光を置いて、眠って、朝を迎える。祈りは上げず、置いた。その置き方を、みんなが身につけ始めた。

「セドリック」 「はい」 「祈りの光は、舞台を飢えさせるね」 「はい。舞台は“目”を欲しがる。祈りの光は“手”に座る」 「手に座る光は、退路になる」

 門柱の看板を撫でる。木は薄く温い。胸元のペンダントは静か。賢い子。

「——王子が滅びるまで、私は紅茶を楽しむ」

 唇だけで言う。呪いでも祈りでもない、境界線。白く、細く、まっすぐ。線のこちら側に、息で点けて息で消した小さな灯り、座り直した目地、指一本の窓、蜂蜜の半匙、刻まれた退路、壇の下に立つ王、そして“怒鳴らない扉”がある。線の向こうに、香の層、買われた倉、鏡の前の笑い、上へ逃げる光、結果だけを欲しがる節がある。紅茶は流れ、時間は一分だけ止まる。止めた一分が、明日を整える。祈りは、置いた。光は、手に座った。次は、その手を繋いで道にする番だ。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜

日々埋没。
ファンタジー
​「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」  ​かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。  その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。  ​レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。 ​ 地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。 ​「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」  ​新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。  一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。  ​やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。  レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。

悪役令嬢発溺愛幼女着

みおな
ファンタジー
「違います!わたくしは、フローラさんをいじめてなどいません!」  わたくしの声がホールに響いたけれど、誰もわたくしに手を差し伸べて下さることはなかった。  響いたのは、婚約者である王太子殿下の冷たい声。  わたくしに差し伸べられたのは、騎士団長のご子息がわたくしを強く床に押し付ける腕。  冷ややかな周囲のご令嬢ご令息の冷笑。  どうして。  誰もわたくしを信じてくれないまま、わたくしは冷たい牢の中で命を落とした。

老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜

二階堂吉乃
ファンタジー
 瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。  白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。  後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。  人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話8話。

騎士団長を追放した平和ボケ王国は、七日で滅びました

藤原遊
ファンタジー
長らく戦のなかった王国で、 騎士団長の父を病で失った令嬢は、その座を引き継いだ。 だが王城に呼び出された彼女に告げられたのは、 騎士団の解体と婚約破棄。 理由はただ一つ―― 「武力を持つ者は危険だから」。 平和ボケした王子は、 非力で可愛い令嬢を侍らせ、 彼女を“国の火種”として国外追放する。 しかし王国が攻められなかった本当の理由は、 騎士団長家が持つ“戦況を覆す力”への恐れだった。 追放された令嬢は、即座に隣国帝国へ迎えられ、 軍人として正当に評価され、安泰な地位を得る。 ――そして一週間後。 守りを捨てた王国は、あっけなく陥落した。 これは、 「守る力」を理解しなかった国の末路と、 追放された騎士団長令嬢のその後の物語。

役立たず聖女見習い、追放されたので森でマイホームとスローライフします ~召喚できるのは非生物だけ?いいえ、全部最強でした~

しおしお
ファンタジー
聖女見習いとして教会に仕えていた少女は、 「役立たず」と嘲笑され、ある日突然、追放された。 理由は単純。 彼女が召喚できるのは――タンスやぬいぐるみなどの非生物だけだったから。 森へ放り出され、夜を前に途方に暮れる中、 彼女は必死に召喚を行う。 呼び出されたのは、一体の熊のぬいぐるみ。 だがその瞬間、彼女のスキルは覚醒する。 【付喪神】――非生物に魂を宿らせる能力。 喋らないが最強の熊、 空を飛び無限引き出し爆撃を行うタンス、 敬語で語る伝説級聖剣、 そして四本足で歩き、すべてを自動化する“マイホーム”。 彼女自身は戦わない。 努力もしない。 頑張らない。 ただ「止まる場所が欲しかった」だけなのに、 気づけば魔物の軍勢は消え、 王城と大聖堂は跡形もなく吹き飛び、 ――しかし人々は、なぜか生きていた。 英雄になることを拒み、 責任を背負うこともせず、 彼女は再び森へ帰る。 自動調理、自動防衛、完璧な保存環境。 便利すぎる家と、喋らない仲間たちに囲まれた、 頑張らないスローライフが、今日も続いていく。 これは、 「世界を救ってしまったのに、何もしない」 追放聖女の物語。 -

水精姫の選択

六道イオリ/剣崎月
ファンタジー
見た目が美しくも奇異な小国の王女パルヴィは、財政難から大国に身売りすることになったのだが、道中で買うと言った王が死亡したと聞かされる。 買われ故国を救いたいと願う王女は引き返さずに大国へと赴き 

新緑の光と約束~精霊の愛し子と守護者~

依羽
ファンタジー
「……うちに来るかい?」 森で拾われた赤ん坊は、ルカと名付けられ、家族に愛されて育った。 だが8歳のある日、重傷の兄を救うため、ルカから緑の光が―― 「ルカは精霊の愛し子。お前は守護者だ」 それは、偶然の出会い、のはずだった。 だけど、結ばれていた"運命"。 精霊の愛し子である愛くるしい弟と、守護者であり弟を溺愛する兄の、温かな家族の物語。 他の投稿サイト様でも公開しています。

お言葉ですが今さらです

MIRICO
ファンタジー
アンリエットは祖父であるスファルツ国王に呼び出されると、いきなり用無しになったから出て行けと言われた。 次の王となるはずだった伯父が行方不明となり後継者がいなくなってしまったため、隣国に嫁いだ母親の反対を押し切りアンリエットに後継者となるべく多くを押し付けてきたのに、今更用無しだとは。 しかも、幼い頃に婚約者となったエダンとの婚約破棄も決まっていた。呆然としたアンリエットの後ろで、エダンが女性をエスコートしてやってきた。 アンリエットに継承権がなくなり用無しになれば、エダンに利などない。あれだけ早く結婚したいと言っていたのに、本物の王女が見つかれば、アンリエットとの婚約など簡単に解消してしまうのだ。 失意の中、アンリエットは一人両親のいる国に戻り、アンリエットは新しい生活を過ごすことになる。 そんな中、悪漢に襲われそうになったアンリエットを助ける男がいた。その男がこの国の王子だとは。その上、王子のもとで働くことになり。 お気に入り、ご感想等ありがとうございます。ネタバレ等ありますので、返信控えさせていただく場合があります。 内容が恋愛よりファンタジー多めになったので、ファンタジーに変更しました。 他社サイト様投稿済み。

処理中です...