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第51話 【閑話】緑川先生の仲間と旅立ち
しおりを挟む神代くん達の言っていた通りだった。
冒険者ギルドで登録をした瞬間から『自分が特別な存在なのだ』と知った。
城の中に居た時は大樹や大河が五職で、優遇され自分が低い立場だと思っていたら…そんな事は無かった。
「緑川様は『異世界人』そして上級騎士のジョブ持ちなのでA級スタートです。ただこれは形上であって3回も討伐依頼を受ければS級になります」
充分すぎる待遇だ。
「S級というのは最高レベルなのではないですか?」
「上にSS級やSSS級も居ますがこの世界でS級以上は数える程しか居ません。その殆どが異世界人です。緑川様は上級騎士のジョブなので直ぐに、そこに肩を並べると思います。」
恐ろしいまでの優遇だ。
これならきっと仲間の方も大丈夫だろう。
「仲間を集めたいのですが…」
「それなら、すぐに掲示板に貼りだします。 そこの酒場で待っていればすぐに集まってきますよ『異世界人』ですから」
掲示板に貼りだすだけなのか?
掲示板じゃ流石に今日の今日で応募など考えられないだろう。
◆◆◆
言われるままに ギルドに併設された酒場で座っていると直ぐに声が掛かってきた。
「緑川様ですか?」
「私が緑川ですが」
「良かった、私、アマゾネスのアルカと申します、メンバー募集をしていると聞いたのですが、本当ですか?」
貼りだしてからまだ5分と経ってないぞ。
これなら今日中に相手を見つける事も難しくなさそうだ。
「はい、しております。しかも時間が無いく出来る事なら今日中にパーティメンバーを集めなくてはならないのです」
「急ぎなんですね! ならば私と一緒に直ぐ出ましょう! 10人位で良ければ直ぐに」
「ちょっと!アルカ、貴方、緑川様の周りを知り合いで固める気なの! ギルドに貼り紙には『此処で』と書いてあるのよ! 連れ出すのは違反だわ!」
「ちっ!それじゃ改めまして 私はアマゾネスのアルカ、近接戦闘が得意な女戦士です! ランクはC級です。異世界人の緑川様からしたら大した事はないかも知れませんが、このギルドにいる戦士では指折りの強さになります。 アマゾネスはあちらも強いので、もし、パーティーに入れて貰るなら『夜の生活もきっと満足させます』」
夜? 夜ってことは、性的な事って事か。
こんな美人が…信じられないな。
「えーと、はい」
突然の展開に気が抜けた返事になってしまった。
しかし『異世界人』ってだけで此処迄違う物なのか。
「ちょっと! 脳筋女は汗くさくて困りますね。私の名前はシルカと申します。緑川様には及びませんが貴重なジョブ、魔法使いです。アカデミー出身なので知識の豊富さが売りです。」
アカデミー、日本で言う学校の様な所か。
「奇遇ですね、私は前の世界で教師をしていました」
「先生でしたか? 異世界の学問についてご教授頂けませんか?」
「ちょっと、パーティの面接は手短にして欲しいな…後ろがつかえているのよ?」
シルカさんと話している間にも、人が増えていき後ろに行列が出来てしまっていた。
男女含んで見た感じでは50人近く居る様な気がする。
これじゃなかなか決められないな。
仕方ない…私はギルドの受付に話をしに行く事にした。
「早目に仲間を決めないといけないんですが人数が多すぎて、何か良い方法はありますかね」
「緑川様はパーティメンバーに何か拘りはありますか?」
「それが、お恥ずかしい話、こういう事じたいが初めてですのでどうしたら良いか悩んでいるのです。」
「それなら、ギルドの方で決めさせて頂きましょうか? 冒険者ギルドではパーティの斡旋や、それぞれの相手に相性の良いパートナーを選んでいます」
私はこういう事は素人だ。
プロに任せた方が良いのかも知れない。
「それじゃ、お任せします」
「はい、ただ人数が多いので1時間位はお待ちください。集まった仲から緑川様と相性の良い仲間を選定させて頂きます。高位冒険者が寛げるように作ったサロンがございますので、そちらで休んでお待ち下さい。それで何人位のパーティのご予定でしょうか?」
「そうですね、それなら私を含まず3人位でお願い致します」
私を含んで4名、こんな感じで良いだろう。
◆◆◆
「選定が終わりました! 相性を考えてこちらで選んだのがこの3名です。如何ですか?」
「ありがとうございます」
ギルドの職員が選んでくれたのが…
アルカ アマゾネスと女性ばかりの村の出身でジョブはナイフ使い C級 燃える様な赤毛に小麦色の肌の南国風美人。
シルカ 没落貴族だが頭が良くアカデミーに推薦で入った。ジョブは魔法使い C級背が低く紺色の髪に病的な白い肌、見た目は薄幸の美人。
イルカ 元スラム出身だが、教会で回復魔法を学んだ。ジョブは初級ヒーラー D級背が高く色白。髪の毛は茶髪。近所の綺麗なお姉さんという感じの美人。
この3名だった。
信じられない程の美人揃いで、冒険者としての実績もランクから考えて申し分ない気がします。
「これが私のパーティですか? 本当に私で良いんでしょうか?」
「「「勿論です(よ)(わ)」」」
「緑川様は剣士ですから、近接戦闘が得意なアルカ、遠距離魔法が得意なシルカ、そして回復魔法が得意なイルカ、この3名が加われば理想的だと考えました。ギルドで考えた理想的なパーティです」
「素晴らしい、本当にありがとう」
ギルドの職員に感謝し、私は早速パーティメンバー登録をした。
「それで、申し訳ないのですが、明日から演習があるんです。早速だが一緒に参加して貰えますか?」
「勿論だ、一緒に頑張ろう!」
「多分、演習ならゴブリンですね、私の魔法で焼き尽くしてやりますよ!」
「緑川様の実力ならゴブリン如き、私は多分必要ないでしょうが、お供します」
こうして私は素晴らしい仲間を手に入れる事に成功した。
◆◆◆
城に来た私のパーティメンバーを見て皆は驚いていた。
そりゃそうだ。
冴えない中年教師がこんな美人を仲間にしているんだ。
生徒は驚くだろうな。
「嘘だろう、あの緑川のパーティ美人ばっかりじゃないか?」
「何で奴隷に拘っていたんだろう? 此処は異世界なんだ、冒険者にもエルフが居るかも知れないじゃないか…見落としたわ」
「理人と緑川がリア充に見える…それに引きかえ」
「私を見るな…と言いたいけど同感」
これは確かに目を引く。
「緑川先生」
「どうしたんだい?」
「それ緑川先生のパーティですか?」
「そうだよ…異世界人はギルドでも人気者らしいぞ、沢山の方が私とパーティ組みたがっていたよ」
「それなら、僕でもいけますかね」
「はははっ!こんな中年おじさんの私でもこんな素晴らしい仲間が出来たんだ、君なら余裕だと思うよ」
「ありがとう」
生徒にちょっとしたアドバイスをあげる位良いだろう。
◆◆◆
演習は簡単に終わった。
流石は全員が冒険者、私より素早く動き簡単にゴブリンを狩っていく。
苗床になった女性も居たが、彼女達が簡単に処分した。
『狂っているから同じ女としてこんなことしか出来ないのよ』
そうシルカが言っていた。
残酷な様だが仕方が無い事だ。
私は理解できる。
だが、生徒がこれに耐えられるかが凄く心配だ。
◆◆◆
私の影響と神代君の影響だろうか?
演習が終わった後の、自由時間に私の元生徒たちは『奴隷商』と『冒険者ギルド』に入り浸っていた。
そして『旅立ちの日』にはもう生徒同士で組んでいるパーティは無くなっていた。
本当に良かったのだろうか?
私は『仲間が居ないし出来ないから』この方法を選んだ。
気心が知れた親友や恋人の方が本当は安心なんだぞ。
そう言いたかったが『私は教師』ではもう無いのだ。
お節介だと思い止めた。
神代君のパーティが多分一番正しい判断だと思うが、他の人間に言っても無駄なのだろう。
理由は兎も角、生徒から見た私のパーティは『ハーレムパーティ』にしか見えないから、無理だ。
◆◆◆
旅立ちの日。
出来る事なら、今いる生徒たちが欠ける事無く無事また此処に戻れます様に…
そう思いを込めて「いってきます、またな」私は大きな声で叫んだ。
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