【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん

文字の大きさ
85 / 104

第85話  緑川さん 説得

しおりを挟む


やはり緑川さんは上手くなじめていない気がする。

テラス教ではこれでも良い。

最低線教会に来て話を聞けば、お金が貰える。

だが、木崎君達のようにそれ以外にも仕事や生きがいを見出している人も居る。

緑川さんの奥さんたちは皆、しっかりと仕事をしだした。

アルカさんは、猟師に混じって狩をしているし、シルカさんは子供相手に学問を教えるのを手伝っている。

そしてイルカさんは教会の治療院を手伝っていた。

そんななか、緑川さんだけが何もしていない。

同郷のよしみだ…俺が少し気に掛けるしかないのかな。

「緑川さん、少し良いかな?」

「神代くん、何かようかい?」

この人は俺のクラスの担任だった。

割と熱血漢で、正義感が強かった筈なんだけどな…今はそれも見る影も無い。

何だか、まるで炊き出しに並ぶ浮浪者ように教会に来てお金を貰っていく。

これは、信者として最低限の義務は果たしている。

だが、此の場所に緑川さんには居て欲しくない。

「緑川さんはこの国やテラス教を見てどう思いますか?」

「私には解らないんだ…」

「それじゃ、少しお話ししましょう。あそこの子供やお母さん達を見てどう思いますか?」

「どうって…なんとも」

「あのお母さんね、元娼婦でした。あそこの子供はそれでもお金が無くてパンも真面に食べる事も出来なくて死に掛けた事もありました」

「何だって!」

「知っていますか?スラムの貧しい場所で立っている娼婦の値段、銅貨3枚、日本円にしたら3000円にもならないんですよ。それじゃ真面に生活なんて出来ませんよね」

「そこ迄酷いのかい」

「スラムでは普通に餓死する人間、体を売り続けた結果性病で死んでいく人間、子供を奴隷に売る人間、そんなのは日常茶飯事です」

「…」

「信じられませんか? 木崎君の連れている少女も元は盗賊です。 貧しかったからそれしか生きる方法が無かったんです。全部を女神や国のせいとは言いませんが、神なら権力者なら救えた筈です」

「本当にそう思うのかい?」

「はい、例えば王女や王の王冠です。あれを売れば100人単位の人間が5年間は生活が出来るでしょう…だけどしないじゃないですか? 緑川さんは教師だったんでしょう? 独裁者の居る国は住みやすい国かどうか解らない訳無いでしょう」

「独裁者?」

「王や、王女は異世界だから紛らわしいですが間違いなく独裁者でその周りの貴族はその利権を貪っている人達じゃないですか?」

「それは、此処の世界では仕方が無いのじゃないか?」

「では私達の国は、仕方ないで済まさないで頑張った結果、変わったのではないですか? 緑川さんが授業で選挙の大切さを俺に教えた筈ですよ」

「確かにな」

「俺は思うのです。結局は女神も国も救わない人が山ほど居る、ですがテラス教なら確実に救えている。敢えて、此処は先生と呼びますが、先生は、あのお母さんにテラス教は間違っているから、今から娼婦に戻れ。あの子達にもう一回食べ物に困る生活に戻れと言えますか?」

「そんな事言える訳ないだろう」

「それならば、どちらが正しいか緑川さんにも解る筈です。 それに考えて下さい。王女はペテン師です。」

「それは言い過ぎじゃないかね」

「あの王女は大きな嘘をついた。『元の世界に帰れる保証は今は出来ません。ですが宮廷魔術師に頼んで送還呪文も研究させる事も約束します』とね」

「それの何処が嘘なんだね」

「緑川さん、此の世界に来た地球人は我々が初めてではありません。過去に沢山居ます。彼だって同じ事を頼んでいたそうです。ですが未だにそれは見つかっていません」

「それはどう言う事だ」

「いまだに無理と言う事は、良い方で研究はしているが実現できない。悪い方だと研究すらしていない。そういう事だと思いますよ」

「あははははっ確かにそうだ、私はそんな事も見破れなかったのか?」

「それで緑川さん、今後どうしますか?」

「どうするかとは?」

「今必要なのは、教育や学問です。元教師なのですから、力を貸して貰えませんか?」

「私にも何か手伝えることがあるのかい」

「勿論です」

「そう言われては頑張るしかないね、うん力を貸すよ」

「それじゃお願いします」

これで大丈夫かな…

しおりを挟む
感想 48

あなたにおすすめの小説

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

ReBirth 上位世界から下位世界へ

小林誉
ファンタジー
ある日帰宅途中にマンホールに落ちた男。気がつくと見知らぬ部屋に居て、世界間のシステムを名乗る声に死を告げられる。そして『あなたが落ちたのは下位世界に繋がる穴です』と説明された。この世に現れる天才奇才の一部は、今のあなたと同様に上位世界から落ちてきた者達だと。下位世界に転生できる機会を得た男に、どのような世界や環境を希望するのか質問される。男が出した答えとは―― ※この小説の主人公は聖人君子ではありません。正義の味方のつもりもありません。勝つためならどんな手でも使い、売られた喧嘩は買う人物です。他人より仲間を最優先し、面倒な事が嫌いです。これはそんな、少しずるい男の物語。 1~4巻発売中です。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!

くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作) 異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」

処理中です...