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第91話 理人之命
しおりを挟む「助けて下さい…」
「何で私が助けると思うのですか? 貴方は恋人を殺されたとして許せます? 許せませんわよね?」
「助けて…助けて…北条さん」
「北条さん? 豚が私に『さん?』様の間違えですよね…己の立場を知らない豚はこれだから…ほうら…」
「ぎやぁぁぁぁぁぁーーーっ、助けて、助けてよ平城さん」
「由香里ちゃん…酷いよ、私がさぁ理人くんを好きなの知っていて殺すんだから…あははははっ、大丈夫、まだ殺さないよ? 命は私は助けてあげる…だけど、死にたいって言う位酷い事するから」
「そんな…助けて下さい!何でもします」
「そう?よりによって私に頼むんですの? そうですわね? 命を助ける代わりに死ぬまで娼婦として生きるのと、拷問されながら「殺して下さい」って言う位残酷な事されるのはどちらが良いんですの?」
「そんな…」
「5.4.3.2.1…はい時間切れですわ、拷問コースに決定ですわ」
「そんな…」
助けてが殺してに変わる迄そんなに時間は掛からなかった。
◆◆◆
俺は今死んだ。
普通に考えたら回避できた筈だ。
持っていた能力の一つを使っただけで回避できた。
だが、それは敢えてしなかった。
その理由は3つある。
一つ目は異世界人(日本人)の敵を明確にあぶりだす為。
魔族と和解している帝国にとっての最大の脅威は異世界人だ。
その反面、味方になってくれるなら強い味方だ。
木崎君のように仲間になってくれるなら大歓迎だが、敵になるなら殺す事も視野に入れなくてはならない、恐ろしい敵だ。
今回の事で、王国に居る18人と緑川の合計19人は敵と解った。
他の人間も王国の庇護下にいるのだから、敵対して問題無い。
今迄の様な友好的な態度をとる必要は無い、ジョブだけ取り上げてポイか、あるいは殺しも視野に入れて良いだろう。
俺を殺そうとしたんだから…容赦しない
二つ目はこれでアレフロード王国に何時でも戦争を仕掛けられる。
俺は、まだ祭典こそ行われていないが、帝国にとって実質的な王だ。
それを殺そうとしたんだ『戦争』した所で誰も咎めない。
国と国の争いには正当性が必要だ。
これで俺個人ではなく帝国として正当な理由で戦争が仕掛けられる。
そして最後の三つ目の理由は『神』になる為に必要だった。
◆◆◆
「初めて話しますね、理人」
目の前にこの世の者とは思えない位、気高い美女が立っている。
何処と無くテラス様に似た存在…
「私の様な者が、まさか貴方様に出会えるなんて思いもしませんでした…天照さま」
「そう畏まる事はありませんよ、眷属のテラスを通して貴方を見ていましたからね…すみません一度死んで貰って」
「いえ、構いません、俺が死ぬ必要がある事はテラス様からも聞いておりましたから」
テラス様はあの世界をもうイシュタスに返すつもりはない。
あの世界の…テラス教の本当の意味での『象徴』が必要になる。
その為『神』になる為に一度死ぬ必要があった。
俺が、あの世界で生まれたテラス教の神になる事で、他の神から今後の介入がしにくい状況に出来る。
「さぁ、これからあの世界での貴方の真の戦いが始まるのです。千引岩(あの世とこの世の境界の岩)はどけさせてあります。決して何があろうと振り返らずに一気に走り抜けるのです」
確かに此処で振り返ると大変な事になるのは解っている。
「はい」
俺は、そう答えるとひたすら走った。
やがて地上に出た俺は千引岩を閉じた。
こんな大岩を簡単に動かせる。
俺が完璧に神になった証拠だ。
凄いな、この感覚は全能感と言うのか…今なら何でも出来そうな気がする。
外は夜で月が綺麗だった。
さぁ、あちらの世界に帰ろう…ただ願うだけでそのまま、次元を超えて戻る事が出来る。
『理人之命(りひとのみこと)帰って来たね』
『テラス様、ただ今戻りました』
『皆、心配しているから直ぐに顔を出してあげなよ』
『解りました』
理人之命
職業:神(全ての能力が統合され神に到った。)
HP:無限
MP:無限
装備:草薙の剣、八咫の盾、八尺の鎧
◆◆◆
「ただいま~」
「理人様ですわ、死んだのでは無かったのですね」
「理人、嘘、死んでいなかったんだ…良かった」
「理人くん、良かった~良かったよーーーーっ」
異世界に新たな神が誕生した瞬間だった。
※神道では死んだ人間が神になる、そこからの話です。
ですが、ご都合主義なのでこの物語は理人のみ適応にさせて頂きます。
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