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第97話 マリン王女辞めるってよ
しおりを挟む私が手紙あけると共に王国の空に神代理人の顔が映し出された。
それは王宮の窓からも見える。
私はテラスに走り、直接理人を見た。
その顔は物凄く大きく、この国の何処からでも絶対に見えるでしょう。
「なっなにこれ、理人は殺した筈よ…」
「自分から暴露してどうすんだ? 今のお前の声は全国民に聞こえてしまったぞ…」
「えっ」
「今更遅いな…マリン王女、この会話はこの国中に聞こえている。お前が俺を殺そうとした事は全国民に知られてしまったな。ついでに言うと、俺を殺そうとした人間は吉川を含む異世界人だ。賢明なアレフロードの国民の諸君、もはや女神イシュタスはこの世に居ない。この世界に居る神は三人、私と魔族側の神である邪神、そして私より上位の神テラス様だ。この事は既に聖教国も認めた」
よりにもよって神を名乗るなんて、不届きすぎます。
「偽りの神を名乗る不届き者、この国はイシュタス様により勇者を召喚する事を」
「忌まわしき悪しき風習を行う等、言語道断である。 雷よあれ!」
「そんな馬鹿な…ああっ…ああああっ」
空に映し出された理人が手をおろした瞬間に雷が落ちた。
しかも、落ちた先には『異世界人召喚の魔法陣』があった。
この魔法陣は古の時代に我が国が女神イシュタス様から貰ったもの人の手で作る事は出来ない。
さらに言うなら魔王ですら破壊する事は叶わない。絶対不破の物の筈。
それを簡単に破壊するなんて。
それなら、あの理人は…本物の神という事になる。
「これでも解らないのか、それならこれなら解かるか?」
そう言うと理人は剣を抜くと振り下ろした。
目でその先を追うと…嘘でしょう。
あのエルド山の上の部分が吹き飛んでいる。
「あああっ、待って、待って下さい」
嘘、私の声が届いていない。
「アレフロードの国の者よ。最早此処は安住の地では無い。さっさと立ち去るが良い。帝国でも聖教国でも好きな国へ行くのだ。どちらの国へ行ってもイシュタスを捨てテラス様を信仰するならば、救いの手が差し伸べられる。さぁ、今直ぐ逃げるのだ、私が罰をこの国に与える前に…」
そんな、そんな貴族迄もがこの国を捨てて逃げ出すと言うの…
とはいえ、当たり前よね…ただ手を振るだけで雷を落とし…剣の一振りで山を砕く存在。
魔王でも無理だわ。
そんな存在、神しか居ない。
一斉に門から飛び出すように国民が…飛び出していく。
終わりだ…もうこの国は終わるわ。
空にあった顔が消え、人の大きさの理人が私の元に現れた。
「お久しぶりです、マリン姫」
「理人ど…いえ理人様…この度は私が…いえ、全て私が悪いのです、どうかこの身一つでお許し下さい」
死ぬしかないわ。
こうなったら私が死んで、その命で償うしかない。
自決用のナイフで首を描き切った。
これで死ねる。
責任者の私が死ねば、温情もあるかもしれない。
指がなる音がした。
やはり、神代理人は神だったんだわ。
だって死んだ筈の私が生きているんだから…
「そんな自決も許されないなんて…私はどうやって償えば良いのでしょうか?」
なんで困った顔をするの…解らない。
「あの、マリン王女は何か悪い事をしたのですか?」
何を言いたいの…
「私は貴方を殺そうとしました…謝っても許される事ではありません」
「それは別に大した事じゃ無いから良いよ。許してあげる。逆に此処まで追い詰めてすまなかったな」
「あの…どう言う意味でしょうか?」
「いや、俺はアンタに余り酷い目にあわされて無いんだよ。勇者や剣聖の話は女神の使い扱いだから、マリンにはどうする事も出来ない。今回の件だってここ迄国が酷くなればその現況を恨みたくなるのは当たり前だ」
何を言い出すの…
まさか、温情をくれるっていうのでしょうか?
「それでは理人様は私をどうしたいのでしょうか?」
「もうマリン王女じゃこの国を回せないだろう? だから、上級国民として我が国に迎え入れようと思う」
「えーとそれはどう言う事でしょうか?」
「もう頑張らなくて良いよ。簡単に言うとかなり上の身分、まぁ元帝王と同じ地位と一生遊んで暮らせるお金をマリン王女と王様に上げるから、王女なんて辞めて、楽しく暮らせばという提案だよ」
やはり神なのね、全て見透かされているわけね。
「神様相手に嘘ついても駄目ですね。私はもう疲れました。神、理人様のご自由にどうぞ、父も文句は言わない筈です。その有難うございます」
「もう、王女なんて苦労は終わりです。これからは1人の女としての幸せを考えても良いでしょう」
「そうさせて頂きます。この城は出て行かないといけませんか?」
「そうですね。帝国にもっと住み心地の良い部屋を用意します。あと宝物庫の宝や財宝は持っていけるなら持っていって自分の財産にしても良いですよ。あとは、そうですね自由は約束しますが、フルールが是非片腕に欲しいそうです」
え~と…フルール。
「フルールが(汗)」
「ええっ、何でも王女の体から『漆黒に輝く薔薇を一輪作って差し上げますわ』だそうです」
「冗談ですよね…神、理人様は自由を下さると言いましたよね」
まさか…
「そんなに慌てることですか」
「あの…フルールが黒薔薇に私をすると言ったのですよ…」
「はい?」
「自由なんてありませんよ。薔薇じゃ無くて黒薔薇にしたいなんて地獄です」
「マリン王女、私は神ですから、死んでも生き返らせますから安心して下さい」
「ああっ、神様でも黒薔薇からは守って下さらないのですね」
「すみません…多分無理です」
「受け入れます….よ」
私は王女なんて重圧に耐えられなかった…神は何もかもお解りなのですね。
これからは…まぁ今は考えるのはやめましょう。
◆◆◆
マリン王女は本当に行動が素早いな。
さっさと王と一緒に帝国に来て、王族の権利を手放した。
それと同時に、今回の実行犯の吉川をはじめとする緑川さんを含めて18名が集められた。
しかも、しっかりと手錠をされている。
「よう、緑川さんに吉川達久しぶり」
「神代君…生きていたのか?」
「そんな神代が生きていたんて…俺は」
顔が皆、青くなっている。
まぁ殺そうとした相手が生きていた。
当然だな。
「そんなに慌てないで良いよ、それでね君達には二つの道がある。君達が選んだ方に、塔子や綾子、木崎君に三端さん以外は従って貰うからね、ちゃんと決めてくれよ。一つはこのまま異世界で暮らす。最もこの場合は俺を襲った事がバレているから、世界中から非難されるし、命の危険もある。もう一つは日本に帰る事、此方を選んだ場合は日本に帰れる事を保証する。どうだ?」
「ちょっと待ってくれ、日本に帰れるのか?」
「ああっ帰れるよ、但し全員残るか、全員帰るかだ。僕だけ、私だけは駄目だから話し合いで決めて欲しい」
「「「「「「「「「「「「「「「「「「解かった(わ)」」」」」」」」」」」」」」」」」」
結局、話し合いの末…皆は日本に帰る事を選択した。
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