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第57話 勇者の死
しおりを挟む結局1人になったカイトから『ここまでで大丈夫だ! 今迄ありがとう!』そう笑顔で言われ……俺の仕事は終わった。
その笑顔には『有無を言わせない』そういう凄みがあった。
これ以上俺に出来ることは無い。
あと2つ先の街までならついていけるが俺は所詮一般人。
勇者の横で肩を並べて戦える力なんて無いからな。
「頑張れよ!」
「ああっ」
この不愛想な返しがカイトの俺への最後の言葉だった。
◆◆◆
「へぇ~勇者らしくなっていたんだ」
「まぁね……だから……」
「気持ちは解るけど、もう私達に出来ることは無いよ! 元英雄パーティに居たって言っても私もロートルも良い所だし、リヒトは完全に経験不足だから役に立たない……まぁ此処に居るのが10年後のリヒトでも勇者の戦いに介入なんて出来ないからね」
確かにその通りだ。
俺が加勢したってオーガが一体狩れるだけ、なんの意味もない。
「そうだね……」
「ああっ、それに英雄とか勇者とかってそんな物なんだよ! 私と一緒に戦った英雄グリードだって、元は酒浸りのアホみたいな奴だったけど、急に男らしくなって見惚れる位になったよ。 紛いなりにも女神が選んだ存在だから! 多分根っこでは良い奴なんだと思う」
確かにカイトは女にだらしなかったし、怠け者だったが……それだけだ。
そう考えれば『根っこ』という事であれば元から悪くはないのかも知れない。
「今なら言えるよ! カイトは良い奴だったと」
「そうだろう? 英雄とか勇者ってそんな物だよ」
もう少し深く付き合っても良かったのかもな……
◆◆◆
それから暫くして冒険者ギルドに大きな書面が貼られた。
それには『勇者カイト魔王城にたどり着く前に死す』そう書かれていた。
読んでみると……
魔王に仕える6大将軍の一人暗黒騎士のダクラム相手に成すすべもなく敗れ死んだそうだ。
カイトはやっぱり悟っていたんだな。
あの日の会話が思い出される。
『なぁ、リヒト……お前は俺が魔王に勝てると思うか? 本音で言ってくれ!』
『……多分勝てない』
『だろう? それなら4人で死ぬことは無いって! 俺一人が死ねば良い事だ』
4人掛かりでも勝てないのを悟ったからの行動だったんだ。
カイトは勝てない事を知り、仲間を失う事より、自分一人で死ぬ事を選んだ。
勇者……それだけじゃない。
自分の恋人であり幼馴染を守るために1人で死んだ。
そいう男だったと言う事だ。
確かに『魔王討伐から逃げる』そういう選択もある事はある。
だが、村人全員で盛大に見送られ、国王から言葉まで頂いた者が、それをなさなかったら、その後の人生はきっと辛い物になる。
だから、カイトはそれを全部引き受けて……戦いの中死んだ。
戦いの中で死んだ勇者を誰も責める事なんて出来ない。
しかもパーティ解散をした後なら、その責任はマリア達に行くことは無い。
カイト……お前は間違いなく……立派だった。
一般人の俺には何も出来ないけど、それだけは心に刻んでおくよ。
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