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ただ闇雲に走っているといつの間にか領主の屋敷にまでたどり着いていた。普通の領民だったら余程の用でもない限りわざわざ領主の屋敷を訪れることはない。なにせ自分たちは平民で相手は貴族、この領を束ねるトップなのだから。
だけどエイリークは来てしまった。それはずっとここにアレンシカがいたから。どこまで自分は烏滸がましくなってしまったのかと皮肉めいた笑いが溢れた。
「あれっエイリーク君。」
ここに来てもアレンシカはもういないので帰ろうとすると後ろから声をかけられた。
「ちょうど良かった、エイリーク君にお話しなければと思ってまた伺おうと思っていたんですよ。」
「……アレンシカ様がいなくなってしまったことはもう聞きましたが。」
「いえ、そうではなく……これからのことの相談を。」
そう言ってライトン領主は屋敷の中へ促され応接室に入った。
「先程は申し訳なかったね。エイリーク君も渦中に巻き込まれているというのに突然の連絡だけになってしまって。」
「……いいえ。」
「アレンシカ様が出ていかれてしまわれた時点で、すぐに動かなければならなくて。」
「……そうですか。」
エイリークは目の前に置かれた温かいお茶を飲んだ。
そうでなければ怒鳴るか泣くかしていたかもしれなかった。アレンシカが突然いなくならなければならなかった。それを領主に言ったって何も解決しないのに。
むしろこうなっているのは王家のせいだというのに、王家へ言えない怒りをぶつけてしまいかねなかった。
「……そういえば相談があると言っていましたよね。」
「ああ、そうなんだ。」
領主も飲んでいたお茶を置いた。
「エイリーク君、王都へ戻らないかい?」
「え?」
それは思いもよらない提案だった。
「まだ学園が始まるには移動距離を考えてもまだありますけど……。」
「そうだね。でもエイリーク君は王都へ戻ったほうがいいと思うんだ。」
領主はとても真剣でただの思いつきで言っているのてはないことがわかる。
「ここへ追手が迫っている。アレンシカ様がここにいる情報を得るかもしれないと確かな情報筋からね。」
「……それがどういう……。」
「ここがエイリーク君の故郷で、そこにアレンシカ様がいるとなるとまず君が手引きをしていると疑われてしまう。もうここにアレンシカ様はいないけど、もしそうなった場合逆上でもされたら一番身の危険があるのが君だ。」
「……でもそれがどうして王都へ?」
「ここにいるより王立学園にいたほうが君の安全が保証される。あの学園は王の名の元に建てられ、在籍する生徒は皆王の保護下にあると言っていい。」
「確かに……。」
エイリークは平民枠でありながら優秀な成績で在籍しているので一目置かれている。学園にいればたとえ平民であろうとおいそれと手出しできない。それに寮通いでもあるのでさらに安全だ。
「家族はどうなりますか。」
「領主である私が守るとしっかり約束をしよう。でも君はアレンシカ様の友人であるし、関わりも深い。正直にいえば、君が領民であることとアレンシカ様の旅先がレイシーラであることの因果関係が証明できなくとも、いくらでもでっち上げて処罰されることだって考えてられる。」
「そんな……。」
「それに一番懸念しているのは……。」
領主は言おうか言うまいか悩んでいるようだ。慎重に言葉を選びながらも、それでもハッキリと言うことを決めたようだった。
「君をアレンシカ様を呼び戻す為に、捉えられるのではないかと私は思っている。」
「……そんな!」
そこまではエイリークも考えていなかったのでひどく驚いた。王家が、王子が憎いがさすがに腐っても王家なので非道となことはしないと思っていた。
そうなってしまえば家族を悲しませてしまうだけでなく、今までアレンシカが逃げていたことも、リリーベル公爵家の行動も、きっとプリムが暗躍していたことも全部無駄になる。
どのみち王都へは戻るのだ。それが少し早くなっただけだと思えば大したことではなかった。
「わかりました。王都へ戻ります。」
だけどエイリークは来てしまった。それはずっとここにアレンシカがいたから。どこまで自分は烏滸がましくなってしまったのかと皮肉めいた笑いが溢れた。
「あれっエイリーク君。」
ここに来てもアレンシカはもういないので帰ろうとすると後ろから声をかけられた。
「ちょうど良かった、エイリーク君にお話しなければと思ってまた伺おうと思っていたんですよ。」
「……アレンシカ様がいなくなってしまったことはもう聞きましたが。」
「いえ、そうではなく……これからのことの相談を。」
そう言ってライトン領主は屋敷の中へ促され応接室に入った。
「先程は申し訳なかったね。エイリーク君も渦中に巻き込まれているというのに突然の連絡だけになってしまって。」
「……いいえ。」
「アレンシカ様が出ていかれてしまわれた時点で、すぐに動かなければならなくて。」
「……そうですか。」
エイリークは目の前に置かれた温かいお茶を飲んだ。
そうでなければ怒鳴るか泣くかしていたかもしれなかった。アレンシカが突然いなくならなければならなかった。それを領主に言ったって何も解決しないのに。
むしろこうなっているのは王家のせいだというのに、王家へ言えない怒りをぶつけてしまいかねなかった。
「……そういえば相談があると言っていましたよね。」
「ああ、そうなんだ。」
領主も飲んでいたお茶を置いた。
「エイリーク君、王都へ戻らないかい?」
「え?」
それは思いもよらない提案だった。
「まだ学園が始まるには移動距離を考えてもまだありますけど……。」
「そうだね。でもエイリーク君は王都へ戻ったほうがいいと思うんだ。」
領主はとても真剣でただの思いつきで言っているのてはないことがわかる。
「ここへ追手が迫っている。アレンシカ様がここにいる情報を得るかもしれないと確かな情報筋からね。」
「……それがどういう……。」
「ここがエイリーク君の故郷で、そこにアレンシカ様がいるとなるとまず君が手引きをしていると疑われてしまう。もうここにアレンシカ様はいないけど、もしそうなった場合逆上でもされたら一番身の危険があるのが君だ。」
「……でもそれがどうして王都へ?」
「ここにいるより王立学園にいたほうが君の安全が保証される。あの学園は王の名の元に建てられ、在籍する生徒は皆王の保護下にあると言っていい。」
「確かに……。」
エイリークは平民枠でありながら優秀な成績で在籍しているので一目置かれている。学園にいればたとえ平民であろうとおいそれと手出しできない。それに寮通いでもあるのでさらに安全だ。
「家族はどうなりますか。」
「領主である私が守るとしっかり約束をしよう。でも君はアレンシカ様の友人であるし、関わりも深い。正直にいえば、君が領民であることとアレンシカ様の旅先がレイシーラであることの因果関係が証明できなくとも、いくらでもでっち上げて処罰されることだって考えてられる。」
「そんな……。」
「それに一番懸念しているのは……。」
領主は言おうか言うまいか悩んでいるようだ。慎重に言葉を選びながらも、それでもハッキリと言うことを決めたようだった。
「君をアレンシカ様を呼び戻す為に、捉えられるのではないかと私は思っている。」
「……そんな!」
そこまではエイリークも考えていなかったのでひどく驚いた。王家が、王子が憎いがさすがに腐っても王家なので非道となことはしないと思っていた。
そうなってしまえば家族を悲しませてしまうだけでなく、今までアレンシカが逃げていたことも、リリーベル公爵家の行動も、きっとプリムが暗躍していたことも全部無駄になる。
どのみち王都へは戻るのだ。それが少し早くなっただけだと思えば大したことではなかった。
「わかりました。王都へ戻ります。」
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