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悪意の言葉
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「信じらんなーい、もしかして留学なんて嘘でパーティーで遊んでるだけだったりして!やだー。」
「ねえ、声もっと下げなよエギー。」
「だって信じられないじゃん、こんなところにいるなんて、なんで?て感じ。」
隣りでおどおどした友人、子爵家のリュシー・イーナが袖を引っ張っても同じく子爵家のエギー・アングはジロジロとアレンシカを見るのをやめない。少しでも隙があればすぐにでも責め立てようという意思を感じる。
「まさかここでお会いできるとは光栄です。アング様。イーナ様。」
「そう思ってないことはよーく分かってるけど、ぼくは優しいから寛大な心で許してあげますよ。」
「す、すみませんリリーベル様……。こいつちょっとなんでも言っちゃうことがありまして……。」
「ぼくはあなたと違ってちゃんとお仕事で来てるんですけど、リリーベル様はなんでここにいるんですかぁ?まさか本当に遊びに?」
まだ学園があるというのにわざわざ何日もかかる距離にあるこの隣国の王都のパーティーに来たということは、この二人の家にとってこのパーティーは重要ということだ。主催であるロスター伯爵との縁か出席者との縁かは分からないが、学生である二人を出席させることに何か意味のある参加のはずなのに大声で話し明らかにアレンシカを貶めようとしたいる。他所の国に行ったならば品よくいなければならないのに。
「勉強の為に来たんですよ。ここは素晴らしい植物が見られますから。」
「えー、地味じゃないですか?リリーベル様って前から地味な趣味してるなって思ってましたけどー、本当に地味なんですね。」
「……植物と接していると心が安らぎますから。」
「えー、意外!心を乱してる側が何を言ってるんですかー?」
「すみませんすみません!」
リュシーは頭をペコペコと下げながらエギーを引かせようとしているが止まらない。
「だって知ってますよぉ?期待にも応えないでダメダメな婚約者でウィンノル様を傷つけてばっかりなのに、ウィンノル様の心に安らぎを与えられないのはリリーベル様でしょぉ?」
「ちょっとエギーいい加減に……、」
「だからぼくがウィンノル様を優しく慰めて差し上げてるんだから。ウィンノル様ってば毎日疲れてて本当に可哀想。今王家が大変っぽいのもリリーベル様のせいだったり?だって怒られてばっかりでしたよねぇ?」
「え?」
「本当に可哀想ウィンノル様。こんなに暗くて何も出来ない人が婚約者なんて今からでも選び直せばいいのにぃ。」
ケラケラと笑いながらアレンシカを貶める。だけどそれよりもアレンシカには気になることがあった。
「王家が大変って……、」
「やだぁ!こんなところで王家捨てて来てる人が今更が気にするんですかぁ?自分のせいなのにぃ?」
聞きたいことがあるのにエギーは教えてくれない。アレンシカを貶めることに心血を注いでいるようだ。
「もういい加減にしなよエギー!」
「……僕は勉強をしに来たんです。公爵家として勉強も必要ですから。」
「だからぁそれがウィンノル様を放ってここに来てるんでしょぉ?」
「さあ、何を言っているのか分かりません。公爵家として隣国へ勉強をしに来てもそれは当然なのでは?アング様もこちらへ来たのはお仕事と推察しますが。」
「……ぼくは愛も仕事もどちらもこなしているんですけど、どこかの誰かさんと違って。」
「ああそれは素晴らしいです。アング様はとても元気で自由な方ですからきっと愛情深く支えられますね。」
アレンシカは少し面倒に思ってきたのを感じていた。フィルニースにいた時はウィンノルの寵愛を受けている者たちからの貶める発言や悪意ある噂にただ受け入れ落ち込むばかりだった。なのに今は何故こんなに言われなければならないのかと疑問が頭の中に浮かぶ。
何より素敵な花々があるこのパーティー会場で悪意を持ち込みたくはない。
いつもの自分なら出来なかった返答をする。それよりも王家が大変だと言った意味を聞きたかったのに、これ以上聞いたところで答えてはくれないと思うと話す意味もないのかもしれない。
「僕はもう行かなければならないので、そろそろこれで失礼しますね。」
「あっリリーベル様。それでは、」
「逃げるんですかぁ?図星だから?不出来な婚約者は違うなぁ!」
おいとましようとしたアレンシカにリュシーはホッとしたがこれで引き下がるエギーではなかった。何がそんなに気になるのかアレンシカに突っかかることを止めようとはしない。
「もうやめてよエギー!あっちに行こう!」
「何だよリュシー、リュシーのくせに生意気すぎ!ぼくに指図しないでよね!」
「あっ!」
腕を引っ張り止めようとしたリュシーをエギーが突き飛ばした。ここまでくれば騒ぎになってしまう。現に周りの人たちはチラチラと見ていた。
アレンシカは咄嗟にリュシーに駆け寄った。
「大丈夫?」
「すみません。わたしのせいで、このパーティーにもリリーベル様にも……。」
「イーナ様は悪くない、気にしないで。」
「でも……。」
「ちょっと、ぼくを無視すんな!」
友人が倒れているというのにエギーは止まらずまだ何かを言おうとする。友人が取られたとも思っているのか先程よりも怒りを露わにしていた。アレンシカがこれ以上何かを言っても火に油だろう。
「そこ、何をしているのです?」
どうしようかと思った時、リディス夫人が近寄って来た。
「ねえ、声もっと下げなよエギー。」
「だって信じられないじゃん、こんなところにいるなんて、なんで?て感じ。」
隣りでおどおどした友人、子爵家のリュシー・イーナが袖を引っ張っても同じく子爵家のエギー・アングはジロジロとアレンシカを見るのをやめない。少しでも隙があればすぐにでも責め立てようという意思を感じる。
「まさかここでお会いできるとは光栄です。アング様。イーナ様。」
「そう思ってないことはよーく分かってるけど、ぼくは優しいから寛大な心で許してあげますよ。」
「す、すみませんリリーベル様……。こいつちょっとなんでも言っちゃうことがありまして……。」
「ぼくはあなたと違ってちゃんとお仕事で来てるんですけど、リリーベル様はなんでここにいるんですかぁ?まさか本当に遊びに?」
まだ学園があるというのにわざわざ何日もかかる距離にあるこの隣国の王都のパーティーに来たということは、この二人の家にとってこのパーティーは重要ということだ。主催であるロスター伯爵との縁か出席者との縁かは分からないが、学生である二人を出席させることに何か意味のある参加のはずなのに大声で話し明らかにアレンシカを貶めようとしたいる。他所の国に行ったならば品よくいなければならないのに。
「勉強の為に来たんですよ。ここは素晴らしい植物が見られますから。」
「えー、地味じゃないですか?リリーベル様って前から地味な趣味してるなって思ってましたけどー、本当に地味なんですね。」
「……植物と接していると心が安らぎますから。」
「えー、意外!心を乱してる側が何を言ってるんですかー?」
「すみませんすみません!」
リュシーは頭をペコペコと下げながらエギーを引かせようとしているが止まらない。
「だって知ってますよぉ?期待にも応えないでダメダメな婚約者でウィンノル様を傷つけてばっかりなのに、ウィンノル様の心に安らぎを与えられないのはリリーベル様でしょぉ?」
「ちょっとエギーいい加減に……、」
「だからぼくがウィンノル様を優しく慰めて差し上げてるんだから。ウィンノル様ってば毎日疲れてて本当に可哀想。今王家が大変っぽいのもリリーベル様のせいだったり?だって怒られてばっかりでしたよねぇ?」
「え?」
「本当に可哀想ウィンノル様。こんなに暗くて何も出来ない人が婚約者なんて今からでも選び直せばいいのにぃ。」
ケラケラと笑いながらアレンシカを貶める。だけどそれよりもアレンシカには気になることがあった。
「王家が大変って……、」
「やだぁ!こんなところで王家捨てて来てる人が今更が気にするんですかぁ?自分のせいなのにぃ?」
聞きたいことがあるのにエギーは教えてくれない。アレンシカを貶めることに心血を注いでいるようだ。
「もういい加減にしなよエギー!」
「……僕は勉強をしに来たんです。公爵家として勉強も必要ですから。」
「だからぁそれがウィンノル様を放ってここに来てるんでしょぉ?」
「さあ、何を言っているのか分かりません。公爵家として隣国へ勉強をしに来てもそれは当然なのでは?アング様もこちらへ来たのはお仕事と推察しますが。」
「……ぼくは愛も仕事もどちらもこなしているんですけど、どこかの誰かさんと違って。」
「ああそれは素晴らしいです。アング様はとても元気で自由な方ですからきっと愛情深く支えられますね。」
アレンシカは少し面倒に思ってきたのを感じていた。フィルニースにいた時はウィンノルの寵愛を受けている者たちからの貶める発言や悪意ある噂にただ受け入れ落ち込むばかりだった。なのに今は何故こんなに言われなければならないのかと疑問が頭の中に浮かぶ。
何より素敵な花々があるこのパーティー会場で悪意を持ち込みたくはない。
いつもの自分なら出来なかった返答をする。それよりも王家が大変だと言った意味を聞きたかったのに、これ以上聞いたところで答えてはくれないと思うと話す意味もないのかもしれない。
「僕はもう行かなければならないので、そろそろこれで失礼しますね。」
「あっリリーベル様。それでは、」
「逃げるんですかぁ?図星だから?不出来な婚約者は違うなぁ!」
おいとましようとしたアレンシカにリュシーはホッとしたがこれで引き下がるエギーではなかった。何がそんなに気になるのかアレンシカに突っかかることを止めようとはしない。
「もうやめてよエギー!あっちに行こう!」
「何だよリュシー、リュシーのくせに生意気すぎ!ぼくに指図しないでよね!」
「あっ!」
腕を引っ張り止めようとしたリュシーをエギーが突き飛ばした。ここまでくれば騒ぎになってしまう。現に周りの人たちはチラチラと見ていた。
アレンシカは咄嗟にリュシーに駆け寄った。
「大丈夫?」
「すみません。わたしのせいで、このパーティーにもリリーベル様にも……。」
「イーナ様は悪くない、気にしないで。」
「でも……。」
「ちょっと、ぼくを無視すんな!」
友人が倒れているというのにエギーは止まらずまだ何かを言おうとする。友人が取られたとも思っているのか先程よりも怒りを露わにしていた。アレンシカがこれ以上何かを言っても火に油だろう。
「そこ、何をしているのです?」
どうしようかと思った時、リディス夫人が近寄って来た。
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