水しか操れない無能と言われて虐げられてきた令嬢に転生していたようです。ところで皆さん。人体の殆どが水分から出来ているって知ってました?

ラララキヲ

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6>> 事故って(使用人へ仕返し)

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 広く広く伸ばした魔力は思っていたよりも遠くまで届きました。約100ロー。前世の単位だとどれくらいになるかしら? わたくしの魔力は侯爵家の邸をスッポリと覆えるほどには広がりましたわ。
 この世界の魔法がもっとレアなものであれば、こんなに大きく広げた魔力に誰かが気付いて騒ぎ出したかもしれませんが、この世界ではそこかしこで皆が小さい事から大きな事まで魔法を使って生きています。だからわたくしが今広げた魔力も皆の魔力の中に紛れて誰かに気付かれる事もないでしょう。それに、そんな事ができる人はきっと王宮魔法士団に所属するような人でしょうし……
 と、いう訳で、わたくしは気にせずに魔法の力を試します。

 わたくしには水の魔力しかありませんから、広がっている魔力は当然『水分』を使っています。この国が乾燥地帯でなくて良かったと心底思いましたわ。
 空気の中に含まれる水分、湿気を伝って広がった魔力を、脳の中で前世の知識を使って可視化してみました。思い出すのは魚群探知機やゲームの索敵センサーなどです。それと同時に楽しそうにゲームを楽しむ男性たちの色んな声が思い起こされます……
 あら? 前世のわたくしは誰ともお付き合いをした事がないと思いましたが、意外と男性たちと楽しく遊んでいたのですね……それにしては男性たちの声が前から……というか画面の中から響いて来るような気がしますが…………
 まぁそんな事はいいでしょう。要は『人の位置』が分かれば良いのです。
 頭の中に広がった、何重にも重なった円の中にたくさんの点が浮かび上がります。これが全て『人』なのでしょう。わたくしの魔力がこの邸全体を囲っているので今見えている点は邸の中に居る人と言う事になりますね……
 ではこの中から使用人だけを見分けることはできるでしょうか?

 ………あ、できました。

 頭の中の円の中で点が二種類の色に分かれましたわ。数が少ないのがきっとお父様たちや邸に来ている業者などの人たちでしょう。そして数が多い方がこの家の使用人たちということになりますね。
 水魔法でこんな事ができると知っているのはきっとこの世界でわたくしだけでしょうね。
 今まで散々無能だ欠陥品だと言われて育ってきたので『自分だけができる』という事になんだか凄く嬉しさを感じます。きっとこれを人々に教えれば大絶賛されることでしょう。その機会があれば誰かに教えてあげたいと思います。

 さて、せっかく使用人たちを全員把握しているのです。何かもっと試してみたいですね。


 ……………………。

 悩んだわたくしはある事に気付きました。
 尿意です。
 そういえばわたくしまだおトイレに行っていませんわ。
 折角魔法があるのですから、こう、ザァッと、魔法で尿だけをどうにかおトイレに流せないものでしょうか?



 なんて事を一瞬『魔法を使用しながら』考えてしまったからでしょうか。
 わたくしの意識を引き戻すかのように部屋の外というか邸全体から悲鳴や叫び声が聞こえてきました。

 わたくしは慌てて部屋の扉を開けて外を見ました。
 目に入ったのは……

 一番近くに居たメイドがをしている姿でした。

 メイドは「なんで?!」「どうして?!?」とパニックになって叫んでいます。よくよく耳を澄ましてみると騒ぎ声の殆どが同じような言葉でした。

 ………まさかわたくしが使用人たちを魔法で認識したまま『尿を排出するイメージ』をしてしまったのがそのまま使用人たちに伝わってしまったのでしょうか。尿も言わば『水分』、ですものね……

 まさか……

 まさかねぇ…………


 無能なわたくしがそんな事できる訳がありませんもの。
 わたくしは関係ありませんわね。

 そう思ってわたくしは自室の扉を閉めました。



 その日。
 我がパーシバル侯爵家に仕える多くの使用人が失禁して服や床や絨毯を尿で汚した大事件が起こり、その話は瞬く間に国中へと広がってしまいました。
 使用人の中には嫁入り前の娘さんたちも居ますのに……そんな話が人様に知られてしまっては今後どうなるのでしょうか……

 無能で欠陥品のわたくしにはとんと見当もつきませんわ…………




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