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26>>自分が言った言葉
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──止めて!!
わたくしのティオレイド様に触れないで!!──
そんな悲鳴がマリリンの頭の中に響く。
だが声に出す事が出来なかった。
姉が、あの姉が自分に頭を下げた! 自分が間違っていたと謝罪した!! わたくしの方が正しかったと認めた!!!
そんな喜びと同時に『違う!! 間違ってる!!』と心が叫ぶ。
あの時のマリリンは姉に嫌がらせがしたくて姉の婚約者に近付いた。自分の言い分がおかしい事など百も承知だったがカリンナの婚約者を奪えればカリンナより自分が上である事を証明出来ると思って行動した。
それをあの時、間違っていると言っておきながら今更『間違っていると言った事が間違っていた』なんて言い出すなんて……!
マリリンは混乱した。
これが他の事であれば『ほら見なさい! わたくしの方が正しかったのよ!』と愉悦に浸れたが、この話はそうはいかない。
だってこのままではティオレイド様をカリンナに取られる!?!
「お、お姉様?! 何を言い出すの?!」
それは違う!! とはっきり言えたらいいのにマリリンのプライドがそれを邪魔して言葉が出て来なかった。今のカリンナを否定すれば過去の自分の発言を自ら否定する事になる。カリンナの発言がやっぱり正しかったのだと認める事になる。
負けを認める事になるそんな事を、マリリンは口に出す事が出来なかった。
そんなマリリンを余所にティオレイドは不思議そうな表情をして自分の斜め後ろに立ったカリンナを振り返りながら、自分の肩に置かれたカリンナの手に自分の手を添えた。
「っ!?」
そのティオレイドの行動にカッとマリリンの頭に血が昇る。しかしティオレイドもカリンナもそんなマリリンに気づく事なく見つめ合うかの様に視線を合わせた。
「マリリンがそんな事を言ったのかい?」
ティオレイドの質問にカリンナが頷く。
「えぇ、わたくしの婚約者となったばかりのロッシュ様に『わたくしは貴方の妹になるのですよ? 優しくして欲しいですわ』と。
ですから、ティオレイド様。
“わたくしは貴方の義姉になるのですから、優しくして下さいませね”?」
カリンナはティオレイドに向けて妖艶に微笑んだ。
その微笑みを受けてティオレイドもカリンナを見つめながら目を細める。
「マリリンが言ったのなら……仕方ないのかな。
だって、婚約者の私がマリリンの発言を否定してしまっては……物分りの悪い婚約者と思われてしまうかもしれないからね。
……ね? マリリン?」
自分の肩に置かれたカリンナの手を優しく握りながら、カリンナの言葉に同意を示したティオレイドが優しい眼差しのままでマリリンを見た。
どこまでも優しいその眼差しにマリリンは動揺した。
カリンナが馬鹿な事を言ってもティオレイドが否定すると思った。『何を言っているんだ』と言ってくれると思ったのにティオレイドはマリリンを尊重すると言ってカリンナを拒否しなかった。
──マリリンがそう言ったから──
過去の自分の発言が今マリリンを苦しめる。
頭の中で『違う』『嫌よ』ともう何に対して否定しているのか分からない程に考えがごちゃごちゃになったマリリンは、ただ怒りで顔を真っ赤に歪めてカリンナを睨みつけた。
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──止めて!!
わたくしのティオレイド様に触れないで!!──
そんな悲鳴がマリリンの頭の中に響く。
だが声に出す事が出来なかった。
姉が、あの姉が自分に頭を下げた! 自分が間違っていたと謝罪した!! わたくしの方が正しかったと認めた!!!
そんな喜びと同時に『違う!! 間違ってる!!』と心が叫ぶ。
あの時のマリリンは姉に嫌がらせがしたくて姉の婚約者に近付いた。自分の言い分がおかしい事など百も承知だったがカリンナの婚約者を奪えればカリンナより自分が上である事を証明出来ると思って行動した。
それをあの時、間違っていると言っておきながら今更『間違っていると言った事が間違っていた』なんて言い出すなんて……!
マリリンは混乱した。
これが他の事であれば『ほら見なさい! わたくしの方が正しかったのよ!』と愉悦に浸れたが、この話はそうはいかない。
だってこのままではティオレイド様をカリンナに取られる!?!
「お、お姉様?! 何を言い出すの?!」
それは違う!! とはっきり言えたらいいのにマリリンのプライドがそれを邪魔して言葉が出て来なかった。今のカリンナを否定すれば過去の自分の発言を自ら否定する事になる。カリンナの発言がやっぱり正しかったのだと認める事になる。
負けを認める事になるそんな事を、マリリンは口に出す事が出来なかった。
そんなマリリンを余所にティオレイドは不思議そうな表情をして自分の斜め後ろに立ったカリンナを振り返りながら、自分の肩に置かれたカリンナの手に自分の手を添えた。
「っ!?」
そのティオレイドの行動にカッとマリリンの頭に血が昇る。しかしティオレイドもカリンナもそんなマリリンに気づく事なく見つめ合うかの様に視線を合わせた。
「マリリンがそんな事を言ったのかい?」
ティオレイドの質問にカリンナが頷く。
「えぇ、わたくしの婚約者となったばかりのロッシュ様に『わたくしは貴方の妹になるのですよ? 優しくして欲しいですわ』と。
ですから、ティオレイド様。
“わたくしは貴方の義姉になるのですから、優しくして下さいませね”?」
カリンナはティオレイドに向けて妖艶に微笑んだ。
その微笑みを受けてティオレイドもカリンナを見つめながら目を細める。
「マリリンが言ったのなら……仕方ないのかな。
だって、婚約者の私がマリリンの発言を否定してしまっては……物分りの悪い婚約者と思われてしまうかもしれないからね。
……ね? マリリン?」
自分の肩に置かれたカリンナの手を優しく握りながら、カリンナの言葉に同意を示したティオレイドが優しい眼差しのままでマリリンを見た。
どこまでも優しいその眼差しにマリリンは動揺した。
カリンナが馬鹿な事を言ってもティオレイドが否定すると思った。『何を言っているんだ』と言ってくれると思ったのにティオレイドはマリリンを尊重すると言ってカリンナを拒否しなかった。
──マリリンがそう言ったから──
過去の自分の発言が今マリリンを苦しめる。
頭の中で『違う』『嫌よ』ともう何に対して否定しているのか分からない程に考えがごちゃごちゃになったマリリンは、ただ怒りで顔を真っ赤に歪めてカリンナを睨みつけた。
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