欲しがり病の妹を「わたくしが一度持った物じゃないと欲しくない“かわいそう”な妹」と言って憐れむ(おちょくる)姉の話 [完]

ラララキヲ

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35>>これからも……

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「私にとって、好きの反対は“無関心”だからね」

 ティオレイドが今は自分の隣に居ないマリリンを見つめながら呟いた。

「わたくしも同じですわ。
 “嫌い”という感情すら使いたくないですもの」

 ティオレイドの隣には居ないがすぐ近くに居るカリンナもマリリンを見つめながら答えた。

 今はアーゼン侯爵邸にて開かれている親族だけのパーティー。
 ティオレイドの母親に呼ばれたマリリンは2人の視線の先で姑となる女性と話をしている。
 そのすきにカリンナはスススッとティオレイドの近くに来ていた。

 ティオレイドはマリリンから目を離さずにカリンナと会話する。

「マリリンの好きの反対は“嫌い”だから、時々堪らなく嫌われてみたくなるよ」

 柔らかく微笑みながらそんな事を言うティオレイドにカリンナは笑う。

「二度と好意が戻らなくても良いのなら実行されてみては?」

「しないよ。
 君を喜ばせるだけになりそうだしね」

「フフフ」

「お姉様ったら! またわたくしが居ない間にティオレイド様に近付いて!」

 未来の姑から解放されたマリリンがティオレイドの元に戻って来て直ぐ様カリンナとティオレイドの間に入った。 
 サッとティオレイドの腕に手を絡めて寄り添い、カリンナを一睨ひとにらみする。
 その様子にティオレイドは微笑み、カリンナは困った様な顔を作った。

「嫌だわ、マリリン。そんな言い方。
 誤解をされてしまうわ」

「お姉様がいけないのよ。わたくしの居ない時に限ってティオレイド様に近づくんだから!
 さ、ティオレイド様、行きましょ。お義母様がお呼びですわ」

「あぁ、分かったよ」

「フフフ♪」

 ティオレイドの腕に寄り添いながら歩き出したマリリンがティオレイドに見えない様にカリンナを振り返ると勝ち誇った様な笑みを浮かべた。そんなマリリンに、少し寂しそうな……少し困った様な笑みを浮べてカリンナは二人を見送る。

 そんなカリンナに婚約者のロッシュが近付いて飲み物を差し出しながらその横に立った。

「今の表情良いね」

 ロッシュの言葉にカリンナは口元を手で隠しながら可笑しそうに笑った。

「フフ、“秘めた想いに心を痛めながら笑う”感じをイメージしましたのよ?」

「他の人に見られたらほんとに勘違いされちゃうよ? 大丈夫?」

 苦笑してそんな事を言うロッシュにカリンナは微笑む。

「わたくしがティオレイド様に想いを寄せているなんてマリリンくらいしか信じませんわ。当のティオレイド様自身がわたくしに興味がありませんもの。ティオレイド様の事を少なからず知っている方なら分かりますわ」

 そう言って笑ったカリンナはロッシュから貰った果実水に口付けた。喉に流れる冷たさが気持ちが良い。

「マリリンが少しの優越感を感じていればいいのですわ。今あの子は色々忙しいですから、それくらいのは与えて上げないと。わたくしがあの子に飴を上げられるのは今の内ですから……」

 少しだけカリンナの瞳が寂しそうに揺れる。そんな変化をカリンナ自身は気づいてはいないのだろうなとロッシュは微笑ましく思った。

「他家に嫁いで行っても、姉妹の絆は変わらないさ」

 ロッシュの言葉にカリンナはティオレイドに目を向けて肩を竦める。

「絆は変わらなくても“時間”は変わってしまいますわ。
 わたくし、あの子に会わせてもらえるかしら?」

 はぁっと溜め息を吐きながら頬に手を添えて首を傾げたカリンナにロッシュは笑った。

「ハハハ、なら親族会とか多めに開いて無理やり顔合わせの機会を作らないといけないね」

 独占欲強そうな妹君の旦那様を思い浮かべてロッシュは言った。冗談だが、冗談ではないかもしれないから笑ってしまう。

 マリリン嬢も大変だな

 そんな事を思われている事に当のマリリンだけが未だに気付いていなかった。

「あの子……いつ気づくのかしら?」

 カリンナは妹の幸せそうな横顔を見つめながら楽しそうに呟いた。








[完]



※オマケの“更に後日談”、あります。
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