授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草

ラララキヲ

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>>【草】のスキルとは

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 ファーズとの話を終えた上司は書類を抱えて会議をしている部屋へと入った。
 大きなテーブルを挟んで男たちが話をしている。
 後から部屋へと入ってきた上司、カッサムは横の席にいた同僚ロンダに小声で話掛けた。

「どうなった?」
「どうやら相当凄えスキルっぽいぜ」

 コソコソと言葉を交わす2人の前で数人の男が熱く話し合っていた。

「メイドの話では大量の草の山が出来ていたとか」
「庭師が言っていた“雑草まみれになった”というのは本当か?」
「本当に雑草だけなのか?」
「草一本じゃあ何が生えたのか分からないだろう」
「石に穴が開いて、根の周りには何が在ったんだ?」
「穴が小さ過ぎて分からないそうだ」
「根の周りにいたのならばこれはとんでもない事だぞ?」
「草一本でも山になる程生やせるのならば肥料に出来る」
「そのスキルで生やした“草”を調べられないだろうか……」
「雑草といっても種類があるだろう」
「それよりも『床石に穴を開けた』方が重大だ! どんな硬さの石まで穴が開けられるのか調べなければ!」
「少年はまだ見つけられないのか?」
「移動商人がどこの者かまだ分からないのか」
「うちの領地に欲しいなぁ……荒れ地に草が生えるだけで全然違うのに……」
「硬い岩盤にも草を生やせるのだろうか? そうであれば凄いぞ!」
「草の種類によっては“根”も使える」
「だからその“根”の周りに“土”がいるならそっちの方が大問題なんだぞ!」
「食べられる草だった場合も考えねば……」
「……絶対に欲しいっっ!!!」

 盛り上がる男たちを前にカッサムは自分の管轄の者が引き起こした問題に頭を抱えた。カッサムはファーズの直属の上司ではないが無関係でしたとは終われない気配を感じる……。
 ──少年よ! 見つかってくれ! 見つかってくれ!!──
 顔の前で祈りの形で手を組んで目を瞑るカッサムに横に居たロンダが落ち着かせる様にその背中を優しく叩いた。

『あーはっはっはっはっは!!!』

「あ、笑ってる」

 聞こえてきた笑い声にロンダは遠い目をして窓の外に目を向けた。
 草を生やす少年の問題もあるが、この謎の笑い声の謎も何も分かっていない。

『ハーッハッハッハッハ!!』

 俺もあんな風に笑ってたいなぁと白熱する議論に口出すほどの立場でもないロンダはその場から逃げ出す事も出来ずにそんな現実逃避をするしかなかった……。

 そんな彼らの思いも虚しく、王都からの捜索隊が追いつく前にグランは国外へと出て行ってしまうのだったが……。


 スキル:【 草 】


 スキル【完全鑑定】を持つ者が見ていれば効果も分かったのだが、そのスキルを持つ者は世界で数名しかいない。
 その為にスキルの効果に気付く者は居ない。

 スキル:【 草 】

 効果:【草(w)を生やす】

 このスキルがを受けて出現した事はグランでさえも生涯知る事はない。
 グランが自分のスキルにより謎の笑い声が起こる事を知るのは彼が20歳を過ぎてからとなる。その時はグランでさえも怯えて恐怖に震える。そして自分のスキルの所為だと気付いた時には更に疑問が増えて頭を抱える事となる。
 この世界で『笑い→笑→wara→w→www→「wwwって草生えてるみたいに見える」→草』の流れを理解する事は不可能だからだ。グランが孫に囲まれる頃になると彼のスキルは「レアスキル」ではなく正式に世界に一つの「謎スキル」として世界に登録される事となる。
 世界中の有識者たちが調べてもこのスキルがを受けている事を知る事は出来無い為にグランは生涯悩まされる事になるのだった……。


 そんな謎のスキルでもグランやグランと知り合ったたくさんの人を救う事となる。

 グランはスキルの所為で家族から捨てられたとしても腐らずに自分のスキルを練り続けた。最初は草1本だったものもいつしか草が2本になり3本4本と増えわっさりとした草が生やせる様になると同時にそのわっさりとした草を5・6体一気に生やせる様になった。
 グランの保護者となったウィルがグランのスキルに気付き、そのスキルを求めている人たちが居るとグランを連れて行ったのはグランの母国から3つ離れた荒れ果てた国だった。グランはそこでスキルを使い荒野を一面の草原へと変えた。その事がきっかけでそこの原住民族の部族の娘と知り合い恋に落ちたグランはウィルとは離れそこに永住する事に決めた。
 そこにやっと追いついた母国の捜索隊が来たりもしたが、グランは自分のスキルで金を稼ぐ事を覚えていたので交渉して母国に時々帰ってスキルを使っては大金を稼いで安住の地へと戻って行った。グランが稼いだ金は妻となった女性の部族の街を発展させる為に使い、皆から尊敬される人となった。
 グランは生涯色んな国へ行っては荒れ地に草を生やした。謎の笑い声の謎は世界の有識者に丸投げしたがその謎を解明した者は居ない。

 草を生やす男が不満を募らせると謎の笑い声が響き渡ると知られる様になる頃には謎の笑い声は殆ど聴こえてくる事はなくなった。
 グランは人生が幸せで不満を募らせている暇はなくなったのだ。

 自分を捨てた家族を生涯許す事はないが、捨てられたから妻に会えたのだと考えを変え、グランは草を生やすスキルと共に笑いの絶えない家族を作った。





[完]
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