神に逆らった人間が生きていける訳ないだろう?大地も空気も神の意のままだぞ?<聖女は神の愛し子>

ラララキヲ

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 王族派が大変な目に合っている時、セラスティーアはゆっくりと荷馬車の荷台で揺られながら新天地を目指していた。

 セラスティーアを慕い、側でつかえている侍女のレネが期待に頬を赤くしながらセラスティーアに訪ねる。

「セラ様! 新しい土地はどんな所なのですかね?!」

「まぁレネ。楽しそうにしてるけど、向かってる場所は何もないただの大地よ? 家も何も無いところに行くのだから大変よ?」

「何も無いところには“何も無い”があるではないですか!? 王族派が居ないだけで私は嬉しいですよ~!」

 キャッキャとそんな事を言うレネにセラスティーアは困った様に笑った。

 今から行く場所は、元居た大地の直ぐ近くに新しく作られた『今まで住んでいた土地と変わらない大地』だ。
 緑に溢れ、水は清らかで美しく、天候も安定していて生き物には楽園の様に住み心地が良い場所。
 『聖女の為に作られた大地』

 そこにいちから街を作る事になるのだ。セラスティーアは仕方が無いことだとはいえ、待ち受ける苦労を想像して小さく溜め息を吐いた。
 そんなセラスティーアに気付いて、馬車の馭者ぎょしゃをしていた男がセラスティーアを振り返った。

「大丈夫かい?」

 セラスティーアに声を掛けた男、アラン・エルチャルコ(元)侯爵令息にセラスティーアは笑みを返して返事とした。
 アランは前に向き治りながらセラスティーアに声をかける。

「これから大変にはなるが、僕たちにとっては最高の幸せが待っているんだ。苦労のしがいがあるってもんさ」

「……家と畑も持っていけたらいいんだけど」

 そんな事を言うセラスティーアにアランは笑う。

「滅多な事は言うなよ、聖女様。
 君のが張り切っちゃったら皆で考えてる国造りの設計図が意味なくなっちゃうだろ?」

 ケラケラと笑うアランにセラスティーアも苦笑を浮かべた。

「そうね。大地は神が作るけど、街を作るのは“人”だものね。私も花壇づくり頑張らなくちゃ」

「着いたらテント立てて、トイレ用の穴掘って、水確保して、資材も集めて…………」

 そこで一旦口を止めたアランにセラスティーアは小首を傾げてアランを見た。

「? どうしたの?」

 そんなセラスティーアを振り返ることなくアランは言う。

「……あっちに着いたら結婚しないか?」

「……!」

 背を向けたままのアランの耳が真っ赤になっているのがセラスティーアには見える。
 セラスティーアの側に居たレネが「まぁ!」と小さく声を上げた。そしてニマニマしながら「後ろ向いてますね」とセラスティーアに背を向けて両手で耳を塞いで見せた。
 そんなレネの背中を真っ赤な顔をしたセラスティーアが見つめる。
 思いがけないプロポーズにセラスティーアはなんと答えていいのか困ってしまった。
 カポカポ、ギシギシと馬車の動く音だけが響く。
 そんな緊張感に耐えられなくなったのか、アランが前を見たまま空を見上げた。

「あ、あー……! 返事は、今じゃなくても」

 そう言ったアランの言葉を遮ってセラスティーアが口を開いた。

「宜しく、お願いします」

 小さな声だったが、ハッキリと聞えたセラスティーアの返事に、アランは持っていた手綱を手放してセラスティーアの側に行き、真っ赤になってうつむいていた彼女を抱きしめた。

「っ!! 必ず、幸せにするっ!!!」

「……っ! はい……」

 荷馬車の中で抱きしめ合うアランとセラスティーアに、息を潜めて荷馬車の周りで一緒に歩いていた人々の口から歓声が上がる。
 その声か段々と周りに感染していき、大移動中の聖女派の人々の不安げで疲れていた表情を一気に明るくした。

「聖女様が結婚する!!!」

 子供の喜ぶ声に大人たちも喜び、突然大空からリ~ンゴ~ン♪とどこからともなく鐘の音が響いた。

「っ!? お、っ!!」

「ははっ! やった! 僕は君の夫として認められたんだな!!」

 アランの腕の中で更に赤くなって羞恥で震えるセラスティーアをアランは更に抱きしめて喜びを表した。
 二人は幸せに包まれる。
 まだ耳を塞いだままだったレネの耳にも鐘の音は聞こえていて、レネは喜びに涙した。

 新天地へ向けて歩いている聖女派はたくさんの喜びを浴びて楽しげに笑う。
 悲観することなど何も無い。

 我らには神と聖女がついているのだから……──




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