妹はわたくしの物を何でも欲しがる。何でも、わたくしの全てを……そうして妹の元に残るモノはさて、なんでしょう?

ラララキヲ

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「おいで。エカテリーナ」

 悪魔が名前を呼びました。

 わたくしの溜め息に唯一気付いた彼が少しだけ可笑しそうに眉を下げてわたくしに笑いかけます。
 そんな彼に近寄ったわたくしを、彼は悪魔とは思えない程の優しい瞳で見つめてきます。

「エカテリーナ。
 君は抵抗もしないのかい?」

 不思議そうに聞いてくる悪魔にわたくしは少し笑い返しました。

「もう全て諦めましたわ。いっそ考えることを止めたいと思う程に」

「そう。君も大変だね」

 悪魔も苦笑するんだなと思いました。
 そんなわたくしたちのやり取りを見ていた妹が不機嫌な顔になります。

「ひどいわ! この悪魔はわたくしの悪魔よ! お姉さま、取らないで!」

 そんな妹に両親が続きます。

「エカテリーナ! 何をしているの!」
「エカテリーナ! わきまえなさい!」

 久しぶりに両親に名前を呼ばれてなんだか不思議な気持ちになりました。
 わたくしを“エカテリーナ”と名付けたのは両親のはずなのに、その名前を優しく呼ばれた記憶はありません。きっと妹が生まれる前までには確かにあったことだとは思うのですが……そう考えると少しだけ寂しさが込み上げます。

「ベアトリーチェ。こちらに」

 悪魔が呼びます。
 名前を呼ばれた妹は、直ぐに表情を変えて悪魔に笑顔を向けました。そして甘えるように悪魔の腕に抱き着いて背の高い悪魔の腕に頭を寄り添えました。

「もっと名前を呼んで下さいな」

 妹はきっと自分のことを世界一可愛いお姫様だと思っているのでしょう。
 しかし、栄養が足らずにカサついた髪と肌に、女性らしい肉も付いていない胸と笑った唇の奥に見えるガタガタの歯並びが、妹をとても残念な生き物のように見せています。とても侯爵家の娘には見えません……

 それなのに、自分が可愛く見えているのです。

 そんな妹を、わたくしは心から『かわいそう』だと思いました。
 
 
 
 
 
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