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しおりを挟む「あら?」
数日後、私は通学路の片隅で意外な組み合わせで歩いているその姿を目にした。
一人はカイン。そしてもう一人は……アメリである。二人は腕を組みながら仲良さげに歩いて行く。思わず声をかけてしまいそうになったが、二人があまりにも楽しそうに話し込んでいるので、躊躇ってその手を引っ込めた。
「……なんだろう、とてもモヤモヤする」
見ている私には気付いていない。
やがて二人は中庭まで来ると足を止めた。会話が聞こえてくるわけではないが、談笑しているであろうことは遠目からでも分かるくらいに二人の表情は明るい。もしも、なんの前情報もなしに、「この二人は付き合っている」と言われたら見る人はきっと信じてしまうだろう。そんな距離感だ。
そう、お分かりの通り事態は確実にエスカレートしていたのだ。
カインはアメリに一目を置き始め、二人はどんどん親密な仲になっていって……ああ、これじゃ私はただの当て馬になってしまう。
「なるほど、君にしてはアメリに上手い事やられたわけだ」
「ウィル!」
なんということだろう。またしてもいつの間にかウィルが背後に立っていた。
「驚かないでよ。別にルーミアの後をつけていた訳じゃない。ここは誰でも通る通学路だろ?」
「そうだったわね」
そう言って私は静かに項垂れた。ついこの間もカインの事を考えすぎると周りが見えなくなると指摘されたばかりだったのに。
「しかし彼らもまあ、こんな人目につくところで露骨だなあ。あちらさんも周りが見えてないのかな」
「そうかもね」
周りが見えていないだけじゃない。私という婚約者がいるのに、そういった振る舞いをするのは悪意すら感じられる。
「ここまでくると、そのうちカインが君に婚約破棄してくれって言い出すかもね。例えばほら、今度のパーティ辺りで」
「ちょ、ちょっと、悪い冗談はよしてよ」
「冗談で済むかなあ」
ふふっとウィルが笑う。その予言、どうにも当たってしまいそうで怖い。
私は慌てて抗議したものの、案の定、面白そうなネタを得たウィルの瞳は、水を得た魚のようにイキイキと輝いていた。
ああ、この人はそういう人だった。そのことに気付いたものの、私は呆れてこの場を離れることが出来なかった。だって彼以外に私の置かれた現状を理解してくれる者がいないのだから。
「はあ……」
私は不本意ながらも彼と会話を続ける。
「面倒なことになったわ」
「それで? ルーミアはこれからどうするんだい?」
「どうするって……どうしようもないじゃない」
私は力なく首を振った。
「本当かなぁ? 正直に言っちゃえばいいと思うんだけど。アメリがコップを壊した真犯人ですってさ」
「馬鹿言わないでよ。それじゃ私がアメリを裏切ることになるでしょ」
「裏切るだなんて。最初に裏切ったのはどっちだよ?」
「それは……」
そう言われると私は何も言い返せない。私が罪を被ったのを良い事に、カインに上手く取り入ったのは、他でもないアメリなのだから。
「まあそれは置いておいてもさ、ルーミア」
ウィルが私の肩に手を置いた。そして諭すように私に語り掛ける。
「このままアメリの思い通りに物語が展開するなんて、ちっとも面白くないよね?」
「……あなたって人は」
結局、彼は第三者で無責任にも面白さを求めている。なんて自由人。なんて自分勝手。でも、それでも……。
「……面白くないのは事実よね」
私は観念して言葉を漏らした。ウィルの端正な顔が嬉しそうにこちらを見つめる。
「でしょ?」
「そうね。私だってこのまま負けっ放しは御免よ。二人の前で真実を暴露してみせるわ」
「さっすがルーミア! そうこなくっちゃ!」
ウィルはパチンと手を叩いた。
こうして、ここに打倒アメリの共同戦線は結成されたのである。
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