最後に一つだけ。あなたの未来を壊す方法を教えてあげる

椿谷あずる

文字の大きさ
4 / 5

4

しおりを挟む

「あら?」

 数日後、私は通学路の片隅で意外な組み合わせで歩いているその姿を目にした。
 一人はカイン。そしてもう一人は……アメリである。二人は腕を組みながら仲良さげに歩いて行く。思わず声をかけてしまいそうになったが、二人があまりにも楽しそうに話し込んでいるので、躊躇ってその手を引っ込めた。

「……なんだろう、とてもモヤモヤする」

 見ている私には気付いていない。
 やがて二人は中庭まで来ると足を止めた。会話が聞こえてくるわけではないが、談笑しているであろうことは遠目からでも分かるくらいに二人の表情は明るい。もしも、なんの前情報もなしに、「この二人は付き合っている」と言われたら見る人はきっと信じてしまうだろう。そんな距離感だ。

 そう、お分かりの通り事態は確実にエスカレートしていたのだ。
 カインはアメリに一目を置き始め、二人はどんどん親密な仲になっていって……ああ、これじゃ私はただの当て馬になってしまう。

「なるほど、君にしてはアメリに上手い事やられたわけだ」
「ウィル!」

 なんということだろう。またしてもいつの間にかウィルが背後に立っていた。

「驚かないでよ。別にルーミアの後をつけていた訳じゃない。ここは誰でも通る通学路だろ?」
「そうだったわね」

 そう言って私は静かに項垂れた。ついこの間もカインの事を考えすぎると周りが見えなくなると指摘されたばかりだったのに。

「しかし彼らもまあ、こんな人目につくところで露骨だなあ。あちらさんも周りが見えてないのかな」
「そうかもね」

 周りが見えていないだけじゃない。私という婚約者がいるのに、そういった振る舞いをするのは悪意すら感じられる。

「ここまでくると、そのうちカインが君に婚約破棄してくれって言い出すかもね。例えばほら、今度のパーティ辺りで」
「ちょ、ちょっと、悪い冗談はよしてよ」
「冗談で済むかなあ」

 ふふっとウィルが笑う。その予言、どうにも当たってしまいそうで怖い。
 私は慌てて抗議したものの、案の定、面白そうなネタを得たウィルの瞳は、水を得た魚のようにイキイキと輝いていた。
 ああ、この人はそういう人だった。そのことに気付いたものの、私は呆れてこの場を離れることが出来なかった。だって彼以外に私の置かれた現状を理解してくれる者がいないのだから。

「はあ……」

 私は不本意ながらも彼と会話を続ける。

「面倒なことになったわ」
「それで? ルーミアはこれからどうするんだい?」
「どうするって……どうしようもないじゃない」

 私は力なく首を振った。

「本当かなぁ? 正直に言っちゃえばいいと思うんだけど。アメリがコップを壊した真犯人ですってさ」
「馬鹿言わないでよ。それじゃ私がアメリを裏切ることになるでしょ」
「裏切るだなんて。最初に裏切ったのはどっちだよ?」
「それは……」

 そう言われると私は何も言い返せない。私が罪を被ったのを良い事に、カインに上手く取り入ったのは、他でもないアメリなのだから。

「まあそれは置いておいてもさ、ルーミア」

 ウィルが私の肩に手を置いた。そして諭すように私に語り掛ける。

「このままアメリの思い通りに物語が展開するなんて、ちっとも面白くないよね?」
「……あなたって人は」

 結局、彼は第三者で無責任にも面白さを求めている。なんて自由人。なんて自分勝手。でも、それでも……。

「……面白くないのは事実よね」

 私は観念して言葉を漏らした。ウィルの端正な顔が嬉しそうにこちらを見つめる。

「でしょ?」
「そうね。私だってこのまま負けっ放しは御免よ。二人の前で真実を暴露してみせるわ」
「さっすがルーミア! そうこなくっちゃ!」

 ウィルはパチンと手を叩いた。
 こうして、ここに打倒アメリの共同戦線は結成されたのである。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

復讐は静かにしましょう

luna - ルーナ -
恋愛
王太子ロベルトは私に仰った。 王妃に必要なのは、健康な肉体と家柄だけだと。 王妃教育は必要以上に要らないと。では、実体験をして差し上げましょうか。

地味令嬢を馬鹿にした婚約者が、私の正体を知って土下座してきました

ほーみ
恋愛
 王都の社交界で、ひとつの事件が起こった。  貴族令嬢たちが集う華やかな夜会の最中、私――セシリア・エヴァンストンは、婚約者であるエドワード・グラハム侯爵に、皆の前で婚約破棄を告げられたのだ。 「セシリア、お前との婚約は破棄する。お前のような地味でつまらない女と結婚するのはごめんだ」  会場がざわめく。貴族たちは興味深そうにこちらを見ていた。私が普段から控えめな性格だったせいか、同情する者は少ない。むしろ、面白がっている者ばかりだった。

【完結】婚約破棄されたら、呪いが解けました

あきゅう
恋愛
人質として他国へ送られた王女ルルベルは、その国の人たちに虐げられ、婚約者の王子からも酷い扱いを受けていた。 この物語は、そんな王女が幸せを掴むまでのお話。

【完結】恋人との子を我が家の跡取りにする? 冗談も大概にして下さいませ

水月 潮
恋愛
侯爵家令嬢アイリーン・エヴァンスは遠縁の伯爵家令息のシリル・マイソンと婚約している。 ある日、シリルの恋人と名乗る女性・エイダ・バーク男爵家令嬢がエヴァンス侯爵邸を訪れた。 なんでも彼の子供が出来たから、シリルと別れてくれとのこと。 アイリーンはそれを承諾し、二人を追い返そうとするが、シリルとエイダはこの子を侯爵家の跡取りにして、アイリーンは侯爵家から出て行けというとんでもないことを主張する。 ※設定は緩いので物語としてお楽しみ頂けたらと思います ☆HOTランキング20位(2021.6.21) 感謝です*.* HOTランキング5位(2021.6.22)

【完結】私ではなく義妹を選んだ婚約者様

水月 潮
恋愛
セリーヌ・ヴォクレール伯爵令嬢はイアン・クレマン子爵令息と婚約している。 セリーヌは留学から帰国した翌日、イアンからセリーヌと婚約解消して、セリーヌの義妹のミリィと新たに婚約すると告げられる。 セリーヌが外国に短期留学で留守にしている間、彼らは接触し、二人の間には子までいるそうだ。 セリーヌの父もミリィの母もミリィとイアンが婚約することに大賛成で、二人でヴォクレール伯爵家を盛り立てて欲しいとのこと。 お父様、あなたお忘れなの? ヴォクレール伯爵家は亡くなった私のお母様の実家であり、お父様、ひいてはミリィには伯爵家に関する権利なんて何一つないことを。 ※設定は緩いので、物語としてお楽しみ頂けたらと思います ※最終話まで執筆済み 完結保証です *HOTランキング10位↑到達(2021.6.30) 感謝です*.* HOTランキング2位(2021.7.1)

僕の我儘で傲慢な婚約者

雨野千潤
恋愛
僕の婚約者は我儘で傲慢だ。 一日に一度は「わたくしに五分…いいえ三分でいいから時間を頂戴」と僕の執務室に乗り込んでくる。 大事な話かと思えばどうでも良さそうなくだらない話。 ※設定はゆるめです。細かいことは気にしないでください。

【完結】悪役令嬢の反撃の日々

ほーみ
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。 「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。 お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。 「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。

だって悪女ですもの。

とうこ
恋愛
初恋を諦め、十六歳の若さで侯爵の後妻となったルイーズ。 幼馴染にはきつい言葉を投げつけられ、かれを好きな少女たちからは悪女と噂される。 だが四年後、ルイーズの里帰りと共に訪れる大きな転機。 彼女の選択は。 小説家になろう様にも掲載予定です。

処理中です...