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7.村デビューはじめました。
しおりを挟むゼルファスとリアンは、村に向かって森の中を歩いていた。
……と言っても、並んで仲良く歩いているわけではない。
「こっちー?」
「ああ、うんそう、そこを右……」
リアンとの距離30m。
本来なら道案内をするはずのゼルファスが、なぜか大きく引き離されている。
「さすが勇者……歩くの早すぎ……っ」
意地で歩幅を広げるゼルファス。運悪く、途中で木の根につまずきそうになった。
「ぐっ……」
「え、何か言ったー?」
「言ってねぇ! いいから前見て進め!」
家を出る時はあんなに格好つけて出発したのに、ここで情けない姿を見せるわけにはいかない。
ゼルファスは無理やり歩調を速め、追いつこうと必死になった。
===
「おやおや、ゼルファスじゃないか」
村の入り口で、農具を担いだ老人が手を振っている。
「ゼルファス、呼ばれてるよ」
「……パス。無理、変わって」
HPゲージが真っ赤になっているゼルファスに変わり、リアンが無表情で手を振った。
その様子を見て、老人がにこにこと歩み寄って来る。
「珍しいねぇ、朝から人を連れてくるなんて」
「ちょっと……買い出しにな。こいつはその手伝い」
「リアンです。おはようございます」
ぺこりと頭を下げるリアンに、老人は目を細めて頷いた。
「おや、礼儀正しい子だねぇ。ゼルファスとは大違いだ」
「失礼だな。俺が爺さんの腰痛の薬出してやってるの忘れたのかよ」
「あれぇそうだったかな? 近頃物忘れが酷くてねぇ」
「はは、このじじい……」
軽口を叩く二人を、リアンは少し不思議そうに見ていた。
この村では、薬師も老人も、まるで家族のように話すのだ。
「ところで、この子はお前の弟子かい?」
「いや違う」
「おや違う? あんた、旅の者かい?」
「いえ、俺は……勇者です」
老人は一瞬、ぽかんと口を開けた。
そして次の瞬間、腹の底から笑い声を上げる。
「はっはっは、勇者かい! こりゃすごい……と言いたいところだけど、まあ、修行中の身ってとこだろう?」
「いや、修行じゃなくて本物の……」
「はいはい、若いのに立派立派。夢があるっていいねぇ。それじゃ修行、頑張んな!」
肩をバシバシと叩くと老人はご機嫌に立ち去っていった。
「えー……ちょっと」
リアンのぼそりとした抗議が、あっさりと喧騒に飲み込まれる。
その隣ではニヤニヤと、ゼルファスが様子をうかがっていた。
「ねえ、今の絶対信じてないよね?」
「な? 言ったろ。ここの村の人は勇者とかそんなのどうでもいいんだよ」
「……どうでもいいのか……」
「そ。だから無理して頑張らずに、出来ることやっときゃいい」
ゼルファスの言葉に、リアンは少しだけ首を傾げた。
けれど彼の笑みにつられて、なぜか自分の口元も少し緩んでいることに気づいた。
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