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しおりを挟むやっぱり俺が思っているよりも、王子はまともな人なのかもしれない……。こんな自分の立ち位置がイマイチつかめない俺や、暗殺の指示を出したあの二人なんかよりもずっと。
「王子!」
「うおっ、何だよ……いきなり」
俺は王子の両手をガシッと握りこんだ。
「俺、貴方なら信用しても大丈夫って気がしてきました!」
「……いやだからお前何言ってんだよ。訳分からないって」
王子は押さえられるがまま後ろによろめいた。
しかし勿論離さない。だってこれから大事な話をするんだから。まさか自分自身、こんな行動を取るだなんて微塵も思っていなかった。もう今までの自分の認識を改めざるを得ないだろう。
俺は、この男に全額ベットする!
「あの、王子……」
「な、何だよ」
うんざりした様子の王子に、俺は言った。
「俺がこれから言う話、信じてもらっていいですか?」
「……?」
それは一世一代の大博打。
===
次の日。
「ラフェリト、お前の意見を聞かせてもらう」
それは俺がこの世界にやってきて遭遇した最初の場面。王子から領地拡大の為、新たに遠征を行うべきかどうかを問われるところだった。
どうやらこのラフェリトという男、俺が転生する前は一側近というだけではなく、ここぞという場面で最良の選択をすることにも富んだ男だったようだ。だから信頼も厚く、それゆえに悪い王妃達の政権争いにも巻き込まれたのだが。
「それは」
この場合、ラフェリトこと俺が提示する答えはノーである。領地拡大とはいえ、今回遠征しようとしているのはここよりも更に北国。この国自体も北にあることから、寒さには慣れてるし遠征も問題ないだろうという考えを持った上での問いだが、北国を舐めてもらっちゃ困る。少し緯度が変わっただけでも気候が段違いに変わるのは、俺の元いた世界の知識でも容易に想像がつく。が、しかし。
「どうなのかしら、ラフェリト」
ネミア王妃が圧を持った声で問いかける。
彼女としては俺にイエスと言って欲しいのだ。その狙いは遠征中の事故に見せかけた王子暗殺。万が一暗殺出来なくても、王子が出払っている間に、あの手この手で実子レイチェルを次期後継者として王位を確固たるものにするつもりらしい。
で、俺はというと。
「この遠征には……反対ですね」
「なっ!?」
「は、反対?」
狼狽えるのは当然ネミア様と俺の上司。だって俺の家族まで人質に取った上で成功すると思っていた作戦がこうもあっさり打ち破られちゃあな。
「ラフェリト、ほ、本当に君はそう考えているんだな?」
自称上司の男が目を見開いて俺の肩をゆさぶる。
「ええ、今の発言に誤りはありませんよ」
「……っ」
男は苦虫を噛み潰したように表情を歪ませる。
微妙な空気に包まれる執務室内。この様子だと彼ら二人以外にも、王子失墜派がいたらしい。
「ああ、そうか。分かった」
そんな中、王子だけが密やかにニヤリと笑っていた。
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