Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第700話

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 グロウモスも似たようなデザインの装備を身に着けているが、武器がボルトアクションのライフルになっている。 後は予備の拳銃が一挺。
 使える事を確認。 ウインドウがポップアップし、移動ルートが表示される。

 他のプレイヤー達がゾロゾロと先へと進んでいく中、ヨシナリとグロウモスはその場から動かない。
 しばらくの間、そうしていると他のプレイヤー達全てが先へと向かってしまった。
 
 「そろそろ俺達も行きますか」
 「う、うん」

 他が完全に居なくなった所でヨシナリが前に出てグロウモスが少し離れる形で歩き出した。


 ――ふ、フヒッ! 

 グロウモスは粘ついた視線をヨシナリの背中に向ける。
 こんな抽選で参加できるようなミッションは公式でも告知がなかった事もあって詳しくは知らなかったが、参加できる機会に恵まれたのは幸運だった。 

 それにヨシナリがデートに誘ってきたのだ。 グロウモスにはお見通しだった。
 ヨシナリは必ず自分を誘うと。 何故ならヨシナリは自分に気があるからだ。
 可能性で言うなら3000%ぐらいだろう。 全てわかっている。

 ヨシナリは確実に自分の気を引く為に確実な成果の出る戦い方をすると。
 だから、今回の作戦に関しても全面的に彼に従おうと決めていた。
 恋愛は駆け引きだ。 当然ながら後ろで姫プレイしているだけの女だと好感度が下がってしまう。

 グロウモス自身も後ろで金魚のフンをせずにヨシナリを喰うぐらいの活躍をしなければならない。
 つまりこれはヨシナリとグロウモスの超が付く高度な駆け引きなのだ。
 それにヨシナリの方針自体にも納得している事もあって文句もなかった。

 こちらは二人しかいない事もあって役割分担はしっかりと行っている。
 ヨシナリが先行し、グロウモスが後方で支援。 襲撃を受けた場合、ヨシナリが弾をばら撒いて敵を炙り出し、グロウモスが撃ち抜くといった形になる。

 戦闘自体は既に開始されており、島のあちこち――正確には中央から響いていた。
 ミサイル、榴弾砲、銃声、砲声。 様々な轟音が鳴り響く。
 不意にヨシナリが足を止める。 視線が僅かに泳いでいる所からウインドウを開いて地図を確認しているのだろう。 

 ナビゲーションによればこのまま道なりに進めと出ているが、ヨシナリはそれを無視して草むらに入る。 グロウモスはそれを追って進む。 
 こうして見るとFPSの経験者である事がよく分かる動きだ。 

 下手に突っ込まず、慎重に地形を確認しつつ罠を警戒している。
 フルダイブ型のFPSはリアルに近い挙動を求められる事もあって、武器に関しても実銃と同等の扱いを求められる。 ある程度の知識がないと故障等の不具合に対する対処もできないからだ。

 滅多に起こらないが、暴発や弾丸の欠陥などの不発は偶に起こる事もあってそういったトラブルに対する心構えも必要だった。 
 不意にヨシナリが足を止め、小さく手を上げる。 それを見てグロウモスも足を止めた。
 
 ヨシナリは指を二本立てた後に立てた親指を下に向ける。 
 恐らく敵を見つけたのだろう。 それも二人。
 グロウモスは姿勢を低くしてライフルを構えながらヨシナリをカバーできる位置に移動。

 スコープがなくてもアバターにはフォーカス機能が付いているので便利だ。
 ヨシナリの視線の先を確認すると人影らしき物が二つあるが、樹にもたれかかって動かない。
 死んでいるようにも見えるが、罠の可能性も高い。 ヨシナリは警戒しながら慎重に接近。

 一定距離に近づいた所で罠はないと判断したのかやや早足で近寄る。 
 ヨシナリが小さく振り返ると頷いて見せたのを見て、グロウモスもそのまま立ち上がって向かう。

 「テロリストの死体っぽいですね」

 ヨシナリの言う通り、テロリストの死体のようだった。 
 装備はグロウモス達と変わらないが、決定的に違うものがある。 
 顔だ。 肌色だけののっぺらぼうになっている。 

 ただ、不思議な事にそれ以外はしっかりと生身に見える事だ。

 「死体の感じから死んでからあんまり経ってませんね。 死因は――爆発物かな? 片方は肩から背中にかけて、もう片方は腹ですね。 デカい破片がざっくり刺さってて滅茶苦茶痛そうだ。 どっかで負傷した片方がもう片方に肩を貸しながら逃げて来て仲良く力尽きたって所でしょう」

 グロウモスは死体が持っているヨシナリと同じ型の突撃銃を拾う。
 軽い。 恐らくは撃ち尽くしているようだ。 
 予備のマガジンも持っている様子が無い所を見ると何処かで落としたか激戦だったかのどちらかだろう。 ヨシナリも死体が持っていた拳銃を確認していた。

 「こっちは残ってるな。 あんまり弾ないけど貰っとくか。 後は――これだな」

 死体のポーチに入っていた携帯端末を取り出す。 
 
 「まーた、外部端末かよ。 このご時世に――」
 
 言いかけて首を傾げる。 何か引っかかっているようだが、まあいいかと起動。
 液晶画面が点灯してこの島のマップらしき物が表示されていた。 
 ただ、アバターで見られる物と違いテロリスト側の情報なので、内容が違う。

 「こりゃありがたい。 これによるとこの先に連中の駐屯地があるみたいですね。 ただ、こいつらの有様を見ると望みは薄そうですが確認しておきましょう。 運がよければ何か残ってるかもしれません」
 「分かった」 

 二人は再度進む。 
 一度、この島を俯瞰した映像を見ている事もあって施設の場所はある程度ではあるが頭に入っていた。
 二人の目的地はその内の一つだ。 外縁から近い場所という事もあって早い段階で攻撃された可能性は高い事もあって余り期待は出来ないとの事だったが――

 「段々と戦場っぽくなってきたなぁ……」

 通信でヨシナリが小さく呟くのが聞こえた。 
 木々には弾痕が刻まれ、衝撃で圧し折れている物も多い。 先には開けた場所が見える。 

 「先行します。 何かあれば援護を」
 「分かった」

 ヨシナリが木々を抜けてその場所へと向かう。 少し開けてグロウモスも視界にもそれが入った。
 巨大な倉庫に大破した戦車らしき物、無数の原型を留めない死体に血溜まり。
 リアルで見たら卒倒しそうな光景だが、FPS――特にホラー系のタイトルなら割とこれぐらいの物はいくらでも目にする事もあって特に気にせずに警戒に意識を傾ける。

 ゾンビものだと死体が起き上がって襲い掛かって来る事もザラだった事もあって死体にも意識を割く。
 
 「大丈夫そうですね。 ただ、かなり派手にやってるなぁ。 これ、明らかに作戦が始まる前にやっただろ」
 「うん、さっきの死体もだけどちょっと時間が経ってる」

 ヨシナリはこりゃ望み薄かなと呟きながらミサイルでも撃ち込まれたのか原型を留めていない倉庫のような建物へと足を向けた。
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