Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第702話

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 実の所、最初から当たりは付けていた。
 この島は大半が森で覆われてはいるが、建物の配置から大型車両が移動しやすいように整備されているのは明らかだった。 物資の輸送の為?
 
 それもあるだろうが、ここは島である以上、警戒するべきは海岸と空だ。
 スムーズに迎撃するに適した武装は何か? 戦車もそうだろう。
 だが、もっと便利な物をヨシナリは既に知っていた。 トルーパーだ。

 前回の限定ミッションで見たのは鹵獲されたⅠ型とその残骸を改造した粗製トルーパー「ボーンヘッド」だけだ。 特に後者は地上での走破能力が高い。
 防衛戦力として配置するにはこれほど適した代物はないと言える。 

 ――つまり絶対にある。

 ヨシナリは瓦礫の山を掘り返しながらほぼ確信していた。
 何故、瓦礫を掘り返しているのかというと、地下があると思っていたからだ。
 根拠は二つ。 一つ目はメインの襲撃目標の城。 
 
 地下に研究施設があるとの事でメインの目標はそこだ。
 つまりこの島は地下をかなり弄っている。 
 さて、研究施設があるという事は資材やらを搬入出しなければならない。

 海から直接入れる場所があるという事だが、果たしてそれだけだろうか?
 侵入され易い場所がある以上、戦力の出し入れは必須。 
 要はヨシナリは地下に入口か機体の格納庫があると考えたのだ。

 二つ目の根拠。 正確には別の話になるのだが、この島は砲火に晒されている。
 だが、城はほぼ無傷。 つまり正面から仕掛けて失敗しているのだ。
 プレイヤー側の指揮官はミサイルや砲撃では埒が明かないと早々に判断して空挺、揚陸と直接叩きに行った。 この拠点の状況や死体の有様を見ればそう時間は経っていない。

 この根拠により地下にダメージは少ないと判断した。 
 上手くすれば機体と地下への裏口が両方手に入る可能性があるのだ。
 失敗すれば出遅れもいい所だが、どちらかはあると思っていたので試す価値はあった。

 ――それに――

 見つけたら今回のイベント参加者全員を出し抜けるのだ。 
 想像するだけで気分が上がって行く。 
 状況が違えば似た事を考える者はもっといただろうが、限定ミッションという初見であるという事と報酬が敵の撃破に応じた歩合制である事がプレイヤー達の視野を狭めている。

 前回もそうだったが一機でも多くの敵を叩き潰したいと前のめりになっている奴ばかりだった。
 そんな事を考えて瓦礫を掘り返していると――あった。
 鉄製のハッチだ。 爆撃の衝撃で少し変形しているが、このアバターは人間以上のパワーが出せる。

 ちょっと力を入れれば――

 「ほい、開いた」

 梯子が顔を覗かせる。 そのまま地下へと降りていく。
 下が見えた所で手を放して飛び降りると広い空間に出る。
 ぐるりと見回して思わず笑顔になった。 思った通り格納庫だったからだ。

 ボーンヘッドが三機。 損傷も少なく、充分に動きそうだった。
 電力が来ているようで薄暗いが視界もある。 
 
 「いいね」

 順調すぎて怖いぐらいだと呟きながら空間の中央へ。 
 吹き抜けになっているのか上を見ると大きな縦穴のようになっているのは昇降機があるからだろう。
 次は本当に動くかの確認だ。 
 
 三機あるならグロウモスにも一機渡せるなと思いながら近づくと小さな物音。
 突撃銃は肩に吊っているので遅い。 即座にホルスターから拳銃を抜いて音がした方へと構える。
 
 ――まぁ、避難してる奴はいるだろうな。

 音がしたのは奥のドア。 見た感じ物置か何かだろうか?
 僅かに開いているのはこちらを除いていた?
 ヨシナリ慎重に歩を進めながらドアの隙間に爪先を引っかけてそっと開きながら中へ。

 そこには――

 「これは想定してなかったなぁ……」

 テロリストらしき者がいた。 
 のっぺらぼうの顔に身に着けているのはボロボロのシャツと半ズボンだけ。
 体格から子供である事が分かる。 年齢は小学生ぐらいだろうか? 武器は持っていない。 

 拳銃でも持っていてくれた方がやり易かったのだが、身を縮めて体を震わせている。
 明らかに怯えていた。 

 何でこんな所にと視線を奥にやると無意識に表情を歪める。 
 母親らしき女性の死体があったからだ。 子供は助けを求めるように母親の死体に縋りつく。
 泣いているようだが声が聞こえない。 プツプツと音が途切れている。

 恐らくフィルタリングされているのだろう。

 「……あぁ、クソ。 胸糞系のゲームは心の準備がないときついだけだぞ」

 不愉快な物を見せやがってと思いながら拾った携帯端末を操作。
 メモ帳のアプリを呼び出す。 
 思考入力ではない古臭い端末の操作にやや手間取りながらも文章を入力。

 「確かこうすれば好きな言語に翻訳できたはずだ」

 ちらりと何で分かるんだろうと内心で首を捻りながら端末を子供に差し出す。
 画面には英語で『文字は読めるか?』と書かれている。
 子供は端末を見ると震えながら小さく頷いた。 
 
 ――よし、通じた。 英語で行けるみたいだな。

 次に『自分は喋れないからこれに文字を入力しろ』とコミュニケーションを取ろうとしたのだが、子供は小さく首を振って受け取ろうとしない。 嫌がっているのとは違うように見えた。 
 
 『操作方法が分からない?』 

 そう尋ねると小さく頷いた。 
 文字が読める以上、入力の方法を教えれば会話は可能だが時間がかかり過ぎる。
 グロウモスを待たせている以上は余り時間をかけていられない。 

 彼女をここに呼べばいいだけの話なのだが、どんな反応をするかが読めなかった。
 内心で小さく溜息を吐く。 

 『ここは危ないから逃げろ。 外に出る方法は分かるか?』

 子供は小さく頷いたが動かない。 手が母親の服を握りしめている。
 見ているだけで嫌な気持ちになった。 こんなリアリティ求めてねぇよ。
 努めて優しく子供の手を優しく引き剥がし、小さく首を振る。

 子供は引き剥がすように母親から視線を切った。
 ヨシナリは小さく頷くとテロリストから奪った拳銃とマガジンを一つ渡す。
 最後に端末に注意事項を入力。

 弾は大事に使う事、島の西側――地図の左側には行かない事、自分のような会話ができない奴には近づかない事、可能であればだれにも見つからないように隠れている事。
 その他、思いつく限りの注意点を入力した端末を子供に握らせる。

 最後に行けと外を指差す。 子供はヨシナリを一瞥した後、銃と端末を握りしめて駆け出した。
 
 ――はぁ、我ながら自己満がえぐいなぁ。

 そんな事を考えていると子供が足を止め、真ん中のボーンヘッドを指差す。
 ヨシナリが首を傾げると子供はそのまま奥へと走り去っていった。
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