Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

文字の大きさ
774 / 787

第774話

しおりを挟む
 こちらを当てる為に最適の位置に居るのだ。 利用しない手はないだろう。 
 グロウモスの位置が割れている以上はドローンが制止したタイミングを狙えばそこまで難しくない。
 一先ずは片付いた。 敵はまだ残っているのだ。
 
 戦況を確認。 タカミムスビはヨシナリ、ベリアルの合体機体と交戦中。
 ホワイト・ノイズの影響範囲外に出ているのはわざとだろう。 
 タカミムスビの好奇心にも困ったものだが、負けはしないといった確信もあったので無視。

 ヨシナリ達がまだ撃墜されていない事は驚きだが、あの様子では時間の問題だろう。

 マルメル、ケイロンは篠突と派手に撃ち合いながら移動中。
 キュムラスはシグナルがロスト。 やられてしまったようだ。
 フェーンはいつの間にかユウヤに撃墜されてしまっており、雪華せっかは谷底で何かを追跡中。

 恐らく最後の一人を見つけたのだろう。 ニニギはユウヤと交戦中。
 対する敵の残りだが、グロウモスとシニフィエは撃破済み。 他は健在。
 二機撃破に対してこちらはもう四機もやられているのは情けない限りだが、ここから巻き返せばいい。 

 戦況の整理は思考を明瞭にしてくれる。 ここから自分がどう動くかを判断。
 やるべき事は決まっていた。 雪華を援護して不明機の処理だ。  
 いつまでもアンノウンのままは怖い。 最低限、正体だけでも割っておきたい。

 「――ふぅ」

 小さく息を吐く。 目の前の敵を撃破し、次の行動も決まった。
 それによって少しだけ気が緩んだのだ。 さぁ、動こうとした瞬間だった。
 ズンと重たい衝撃が機体を揺るがす。 

 「え?」

 思わずそんな間抜けな声が漏れた。 
 背後から至近距離で何かを喰らった事は分かったが、誰がそれをやったかが問題だ。
 敵味方の位置は不明機を含めて把握している。 後ろから襲えるはずがないのだ。

 ――まずは反撃を――

 動揺はあるがまずはこの危機を脱しなければならない。 
 霧ヶ峰はそう考えたのだが、無数のエラーメッセージがポップアップ。
 内容は内部機構の損傷。 喰らった銃弾は恐らく腐食弾だ。 

 腐食液が凄まじい勢いで内部を侵食していく。 
 喰らった場所が悪く、既にもうどうしようもない状態にされていた。
 背後でガシャリといった金属音。 恐らくは手動で排莢している音だ。

 せめて正体だけでもと振り返ろうとしたが、メインカメラが敵の正体を捉える前に頭部に二発目の腐食弾が命中。 霧ヶ峰は訳も分からずに脱落となった。


 ユウヤは走りながら散弾砲を二連射。 敵機は慣れた挙動で躱し、掌を向ける。
 次の瞬間、真っ赤な光が真っすぐに飛び、射線上の全てを焼き払う。
 電磁鞭で牽制しながらユウヤは敵機を観察する。 

 ニニギ。 機体名は「テンジンコウ」
 両肩にシールド、背面に特殊な推進装置を兼ねたバックパック。
 形状は和風な鎧といったイメージだが、意匠は洋風というやや風変わりなデザインだ。
 
 「思金神」の中ではトップクラスに強いプレイヤーで、タカミムスビと同様にSに近いと言われている。 ランク戦でそれなりの回数戦ったが、勝率は高いとはいえなかった。
 ニニギの背面の推進装置が駆動。 一瞬、光の輪が出現し、爆発音のような物が発生して加速。

 距離を取っていたにも関わらず即座に間合いを詰められる。 
 彼の機体、テンジンコウの厄介な機能の一つだ。 爆発的な加速は一瞬消えたと錯覚するほどに速い。
 拳を固めて殴りに来る。 

 単純な打撃であったなら怖くはないのだが、ニニギの肘から下が赤熱により真っ赤に染まり、高熱を撒き散らす。 咄嗟に大剣オディウム=イラで受け止める。
 しっかりと踏ん張っているが衝撃を殺しきれずに足が地面に沈む。

 オディウム=イラは破壊されないが、ニニギが撒き散らす熱が厄介だ。
 機体の表面温度が急上昇。 センサー系にダメージとエラーメッセージがポップアップ。
 押し返そうとは考えない。 過去にそれをやって何度も負けたからだ。

 ニニギに対して正面からの殴り合いは分が悪い。 
 特に突破力に関してはラーガストを除けば他の追随を許さないほどだ。
 最適解はいなす事。 受けた大剣を使って相手の力の切っ先を強引に捻じ曲げる。

 ニニギはそのまま地面に突っ込まずに体勢を変えて蹴りを放つ。 
 こちらも真っ赤に赤熱している。 蹴りの軌跡が炎の帯となっているように見える独特のそれはまとも喰らえば瞬く間に焼き尽くされ、下手に受けても熱でダメージを負うという厄介な攻撃だ。

 ユウヤは跳躍して空中で受ける。 大剣越しに衝撃を感じつつも吹き飛ばされて強引に距離を取った。
 密着され続けるのは不味い。 ユウヤとしても殴り合いは望む所ではあるが、正面からでは当たり負けしてしまう。 屈辱的ではあるがそこから目を逸らしては勝ちはない。

 元々、決して相性のいい相手ではなく、ぶつけるのであればベリアルの方がまだ勝率が高かったのだが、ヨシナリとタカミムスビの抑えに回っている以上、ニニギの相手をできるのがユウヤしかいないのだ。
 
 ケイロンでもいい所までは行けるだろうが、今回はスピード勝負という事もあって遊撃に回した。
 この戦いの肝はどれだけ早くタカミムスビ以外を全滅させるかにかかっている。
 「思金神」の一軍相手に無茶な前提条件だとは思うが、勝つ為の最低条件なのだ。

 やるしかない。 
 サニーもカタトゥンボも結果的に瞬殺だったが、本来ならあんなに簡単に落ちる相手ではない。
 速攻の奇襲が上手く嵌まっただけだ。 その効果もなくなった以上、メンバーの地力が試される。
 
 今回に関してはメンバー全員が試される場となる。 
 グロウモス、シニフィエが落とされた事は知っていた。 
 前者は霧ヶ峰とほぼ相打ち、後者は健闘はしたのだろう。 

 あのチーターがキュムラスを仕留めたようだが、今はどうでもいい。
 ユウヤのやるべきは一刻も早くニニギを仕留めてヨシナリ達の援護に行く事だけだ。
 大きく息を一つ吸って、吐く。 そして真っすぐに目の前の敵を見据える。

 ――気負いは、ない。

 「勝負だ」

 そつ告げて真っすぐに最も頼みとする武器――オディウム=イラを変形させ、ハンマー形態オディウム=スペルビアへと変えて大きく振りかぶる。
 ニニギは無言。 だが、通信の向こうで小さく笑ったような息が漏れた。

 テンジンコウの内部エネルギーが急上昇。 機体の全身が真っ赤に染まる。
 背にリングが三つ出現し、内側に収縮。 
 弾けたと同時に圧倒的な瞬間加速が発生し、真っすぐに突っ込んで来た。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

蜥蜴と狒々は宇宙を舞う

中富虹輔
SF
20年に一度訪れる、惑星ザンダールドスの接近期。それは、人類に害なす宇宙生物、宇宙狒々の襲来時期でもあった。 ノーマコロニーを仕事で訪れていたラウルは、宇宙狒々の襲来に遭遇する……。

Millennium226 【軍神マルスの娘と呼ばれた女 6】 ― 皇帝のいない如月 ―

kei
歴史・時代
周囲の外敵をことごとく鎮定し、向かうところ敵なし! 盤石に見えた帝国の政(まつりごと)。 しかし、その政体を覆す計画が密かに進行していた。 帝国の生きた守り神「軍神マルスの娘」に厳命が下る。 帝都を襲うクーデター計画を粉砕せよ!

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

命導の鴉

isaka+
ファンタジー
 ここはレヴァリアスという名の星。  この星に住む人類は、死しても朽ちることなく、その魂は輪廻から外れて悠久の時を刻む。  その悠久の時から死者の魂を解き放ち、再び輪廻の輪に導くことができる者を輝葬師と呼んだ。  輝葬師の才を持つ者はすべからく青い瞳を持つ。  これは、この星の運命に大きく関わることになる青い瞳の少年アスの物語。

初恋♡リベンジャーズ

遊馬友仁
青春
【第五部開始】  高校一年生の春休み直前、クラスメートの紅野アザミに告白し、華々しい玉砕を遂げた黒田竜司は、憂鬱な気持ちのまま、新学期を迎えていた。そんな竜司のクラスに、SNSなどでカリスマ的人気を誇る白草四葉が転入してきた。  眉目秀麗、容姿端麗、美の化身を具現化したような四葉は、性格も明るく、休み時間のたびに、竜司と親友の壮馬に気さくに話しかけてくるのだが――――――。  転入早々、竜司に絡みだす、彼女の真の目的とは!?  ◯ンスタグラム、ユ◯チューブ、◯イッターなどを駆使して繰り広げられる、SNS世代の新感覚復讐系ラブコメディ、ここに開幕!  第二部からは、さらに登場人物たちも増え、コメディ要素が多めとなります(予定)

扱いの悪い勇者パーティを啖呵切って離脱した俺、辺境で美女たちと国を作ったらいつの間にか国もハーレムも大陸最強になっていた。

みにぶた🐽
ファンタジー
いいねありがとうございます!反応あるも励みになります。 勇者パーティから“手柄横取り”でパーティ離脱した俺に残ったのは、地球の本を召喚し、読み終えた物語を魔法として再現できるチートスキル《幻想書庫》だけ。  辺境の獣人少女を助けた俺は、物語魔法で水を引き、結界を張り、知恵と技術で開拓村を発展させていく。やがてエルフや元貴族も加わり、村は多種族共和国へ――そして、旧王国と勇者が再び迫る。  だが俺には『三国志』も『孫子』も『トロイの木馬』もある。折伏し、仲間に変える――物語で世界をひっくり返す成り上がり建国譚、開幕!

Radiantmagic-煌炎の勇者-

橘/たちばな
ファンタジー
全てを創世せし神によって造られた、様々な種族が生息する世界──その名はレディアダント。 世界は神の子孫代々によって守られ、幾多の脅威に挑みし者達は人々の間では英雄として語り継がれ、勇者とも呼ばれていた。 そして勇者の一人であり、大魔導師となる者によって建国されたレイニーラ王国。民は魔法を英雄の力として崇め、王国に住む少年グライン・エアフレイドは大魔導師に憧れていた。魔法学校を卒業したグラインは王国を守る魔法戦士兵団の入団を志願し、入団テストを受ける事になる。 一つの試練から始まる物語は、やがて大きな戦いへと発展するようになる──。 ※RPG感のある王道路線型の光と闇のファンタジーです。ストーリー内容、戦闘描写において流血表現、残酷表現が含まれる場合もあり。

処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う

yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。 これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。

処理中です...