Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

文字の大きさ
44 / 786

第44話

しおりを挟む
 「え~、そうなん? ウチとしては面倒事をヨシナリ君達に投げてるから逆に寄生してるつもりやったわ~」

 ふわわはからからと笑う。 
 明らかに受ける気がない様子だったのでヨシナリは平静を装いながらも内心でほっと胸を撫で下ろす。
 勧誘してる連中の指摘は正しいとも思っていたからだ。 彼女の近接戦闘における技能は群を抜いている。
 
 それを最大限に活かすフォーメーションが今の形だ。 
 そう言った意味では戦闘面で彼女に依存しているとも言い換えられる。 
 実際、ヨシナリは時間稼ぎを念頭に置いた戦い方を意識していた。 何故なら待っていれば彼女が勝手に片付けてくれるからだ。 

 「それにしても上位のユニオンからのお誘いも多いし、もしかしてちょっと揺れてるんじゃないですか?」

 マルメルがからかうようにそう言うとふわわはないないと手を振る。
 
 「こういうのってガッチガチに縛ってくるんでしょ? ウチはゆる~く楽しくやれればいいから、人数多くて一部の人の言う事聞いて前に倣えってやるのはちょっと好きじゃないかなぁ」
 「全部がそうとは限りませんけど、デカい所は割とそういう傾向にあると思います。 ほら、多分ですけどもうちょっとしたらイベント戦が復刻されるだろうし、集団での動きが重要になるって考えてる奴は少なからずいるかと」

 個別に戦っても圧倒的な物量で圧し潰されるのは前回、前々回のイベントで全てのプレイヤーが身を以て思い知ったはずだ。 ならば対抗する為に団結するのは自然な流れといえる。
 特にユニオンには専用の通信回線が用意されるので指示出しが非常にスムーズに行えるので、集団として規律のある行動がとれるだろう。 それにより戦力の損耗を抑えられるのは大きい。

 低ランクだと序盤に無策に突っ込んで返り討ちとなるケースが多かった事もあったので、それを減らせるだけでも中盤から終盤の展開に少なくない影響が出る。
 特に前回はSランクの登場まで粘れた以上、十時間以上は耐える事が出来たのだ。
 
 残り二時間足らずの時間。 それを埋める為に彼らは最大限の努力を行うだろう。
 
 「まぁ、俺も他に移るとか考えられねーよ。 ヨシナリがⅡ型装備買ってくれるし?」
 「はは、どっちにしろ何かする際は事前に一言くれ。 俺は二人がどんな選択をしようともそれを尊重するつもりでいるから」

 ヨシナリはそう言って取り合えず話題を切り上げた。
 仮に抜けるというなら残念ではあるが、それはそれで仕方がない。 
 あくまでゲームなので楽しいと思う方へと行けばいいとヨシナリは考えていたからだ。

 「取り合えずウチは全部に断りの返事を入れてるから心配はしなくていいよ~。 ぶっちゃけるとこの話したのも抜ける気はないけど隠すのも違うと思ったからやし」
 「あ、もう断った後だったのか。 どうでもいいけどふわわさんには個別の勧誘来るのに俺には来ないのな。 俺って結構、頑張ってると思うんだけどなぁ……」
 「なぁにぃ? マルメル君、モテモテのウチがうらやましいん~? ん~?」
 「ちょっとだけっすけどね。 ほら、俺も『君の力が必要なんだ!』とか言われてみてぇな~って思って」
 
 ヨシナリがマルメルの肩をポンと叩く。

 「マルメル、君の力が必要なんだ! マジで」
 「ヨシナリ!」
 
 男二人が抱きしめ合う。 その様子をふわわがあっはっはと笑って眺める。
 取り合えず勧誘の類は受けない。 そんな方向で話が纏まりつつあったのだが――
 
 『こんにちはー! ごめん下さい! 誰かいませんかー!!』

 不意に割り込んできた第三者の声に断ち切られた。 
 声の出どころは壁に付いているスピーカーだ。 
 ここはユニオンホームなのでメンバー以外は内部に入る事は出来ないが、声をかける事は可能だった。

 要は来客という事だ。 要件に関してはその場の全員が即座に察しており、表情の見えないアバターにもかかわらずマルメルは『どうするよ?』とちょっと嫌そうな様子だった。
 流石に無視するわけにもいかなかったのでヨシナリはやや不本意ではあるが応答する為に立ち上がった。

 
 ――面倒な事になった。

 それがヨシナリの抱いた偽らざる感想だった。
 来客は六人。 三人のグループが二つ来ていた。 流石にこのホームだと狭いので外に移動し、広いカフェテリアで全員が席について向かい合う形となっている。

 片方はユニオン『五宝剣ノルマン・コンクエスト
 リーダーのグリュックとそのお供が二人、もう片方が『大渦ヴァッサーファル』。
 こちらもリーダーが直々にお出ましだった。 プレイヤー名は『レラナイト』とお供が二人。

 「まずは急に押しかけるような真似をして申し訳ない。 俺はグリュック。 五宝剣のリーダーをしている」
 「レラナイトです。 大渦のリーダーをやっています。 よろしくお願いします!」
 「どうも、ヨシナリです。 星座盤の代表をさせてもらってます」
 
 正直、もう方針は決まっているので、断りのメッセージを送ろうとした矢先に直接来たのでヨシナリの中ではこの二人に対する印象はあまり良くない。 返事を待たずに現れている時点で急かしに来ているのだ。 好印象を受けろというのが無理な話だろう。 
 
 「えーっと、お二人が来られたって事は返事が欲しいって事ですよね? だったら先に言っておきたいんですけど、俺達は解散する気はないんで誘って貰えた事は嬉しいですが諦めてください」

 面倒だったので先に結論を出しておく。 
 内心で諦めて帰ってくれないかなと思っていたが、直接来るようなタイプにはあまり効果がない事も薄っすらと理解はしていた。 

 「なるほど、話は分かった。 けど、こちらとしても簡単に引き下がれない。 取り合えずこちらの出す条件を見てくれないかな?」

 そう言ってグリュックはデータを転送して来た。
 文章ファイルで開くとユニオン『五宝剣ノルマン・コンクエスト』に入る事の利点などが列挙されていた。 装備品の貸与、上位プレイヤーとの共同ミッション参加、イベント戦での支援などなど。

 それっぽい事が書いてあったが、具体的に何をやらされるかが書いていない点が死ぬほど怪しかった。
 ついでに言うなら装備品は貸与なのも微妙にセコいなとも思ってしまう。
 ただ、こういった手法を取ってくる相手に関しては比較的ではあるが対処は楽だ。

 「分かりました。 熟読した上で後日、メッセージでお返事させていただきますね」

 こう言っておけばこの場は治められるだろう。 
 後は二、三日寝かせてお祈りメールを送っておけば終了だ。
 グリュックというプレイヤーがまともならそのまま引き下がるだろう。 

 問題はもう一人の方になるのだが――
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【なろう490万pv!】船が沈没して大海原に取り残されたオッサンと女子高生の漂流サバイバル&スローライフ

海凪ととかる
SF
離島に向かうフェリーでたまたま一緒になった一人旅のオッサン、岳人《がくと》と帰省途中の女子高生、美岬《みさき》。 二人は船を降りればそれっきりになるはずだった。しかし、運命はそれを許さなかった。  衝突事故により沈没するフェリー。乗員乗客が救命ボートで船から逃げ出す中、衝突の衝撃で海に転落した美岬と、そんな美岬を助けようと海に飛び込んでいた岳人は救命ボートに気づいてもらえず、サメの徘徊する大海原に取り残されてしまう。  絶体絶命のピンチ! しかし岳人はアウトドア業界ではサバイバルマスターの通り名で有名なサバイバルの専門家だった。  ありあわせの材料で筏を作り、漂流物で筏を補強し、雨水を集め、太陽熱で真水を蒸留し、プランクトンでビタミンを補給し、捕まえた魚を保存食に加工し……なんとか生き延びようと創意工夫する岳人と美岬。  大海原の筏というある意味密室空間で共に過ごし、語り合い、力を合わせて極限状態に立ち向かううちに二人の間に特別な感情が芽生え始め……。 はたして二人は絶体絶命のピンチを生き延びて社会復帰することができるのか?  小説家になろうSF(パニック)部門にて490万pv達成、日間/週間/月間1位、四半期2位、年間/累計3位の実績あり。 カクヨムのSF部門においても高評価いただき90万pv達成、最高週間2位、月間3位の実績あり。  

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

改大和型戦艦一番艦「若狭」抜錨す

みにみ
歴史・時代
史実の第二次世界大戦が起きず、各国は技術力を誇示するための 「第二次海軍休日」崩壊後の無制限建艦競争に突入した 航空機技術も発達したが、それ以上に電子射撃装置が劇的に進化。 航空攻撃を無力化する防御陣形が確立されたことで、海戦の決定打は再び「巨大な砲」へと回帰した。 そんな中⑤計画で建造された改大和型戦艦「若狭」 彼女が歩む太平洋の航跡は

異世界転移魔方陣をネットオークションで買って行ってみたら、日本に帰れなくなった件。

蛇崩 通
ファンタジー
 ネットオークションに、異世界転移魔方陣が出品されていた。  三千円で。  二枚入り。  手製のガイドブック『異世界の歩き方』付き。  ガイドブックには、異世界会話集も収録。  出品商品の説明文には、「魔力が充分にあれば、異世界に行けます」とあった。  おもしろそうなので、買ってみた。  使ってみた。  帰れなくなった。日本に。  魔力切れのようだ。  しかたがないので、異世界で魔法の勉強をすることにした。  それなのに……  気がついたら、魔王軍と戦うことに。  はたして、日本に無事戻れるのか?  <第1章の主な内容>  王立魔法学園南校で授業を受けていたら、クラスまるごと徴兵されてしまった。  魔王軍が、王都まで迫ったからだ。  同じクラスは、女生徒ばかり。  毒薔薇姫、毒蛇姫、サソリ姫など、毒はあるけど魔法はからっきしの美少女ばかり。  ベテラン騎士も兵士たちも、あっという間にアース・ドラゴンに喰われてしまった。  しかたがない。ぼくが戦うか。  <第2章の主な内容>  救援要請が来た。南城壁を守る氷姫から。彼女は、王立魔法学園北校が誇る三大魔法剣姫の一人。氷結魔法剣を持つ魔法姫騎士だ。  さっそく救援に行くと、氷姫たち守備隊は、アース・ドラゴンの大軍に包囲され、絶体絶命の窮地だった。  どう救出する?  <第3章の主な内容>  南城壁第十六砦の屋上では、三大魔法剣姫が、そろい踏みをしていた。氷結魔法剣の使い手、氷姫。火炎魔法剣の炎姫。それに、雷鳴魔法剣の雷姫だ。  そこへ、魔王の娘にして、王都侵攻魔王軍の総司令官、炎龍王女がやって来た。三名の女魔族を率いて。交渉のためだ。だが、炎龍王女の要求内容は、常軌を逸していた。  交渉は、すぐに決裂。三大魔法剣姫と魔王の娘との激しいバトルが勃発する。  驚異的な再生能力を誇る女魔族たちに、三大魔法剣姫は苦戦するが……  <第4章の主な内容>  リリーシア王女が、魔王軍に拉致された。  明日の夜明けまでに王女を奪還しなければ、王都平民区の十万人の命が失われる。  なぜなら、兵力の減少に苦しむ王国騎士団は、王都外壁の放棄と、内壁への撤退を主張していた。それを拒否し、外壁での徹底抗戦を主張していたのが、臨時副司令官のリリーシア王女だったからだ。  三大魔法剣姫とトッキロたちは、王女を救出するため、深夜、魔王軍の野営陣地に侵入するが……

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

勇者辞めます

緑川
ファンタジー
俺勇者だけど、今日で辞めるわ。幼馴染から手紙も来たし、せっかくなんで懐かしの故郷に必ず帰省します。探さないでください。 追伸、路銀の仕送りは忘れずに。

If太平洋戦争        日本が懸命な判断をしていたら

みにみ
歴史・時代
もし、あの戦争で日本が異なる選択をしていたら? 国力の差を直視し、無謀な拡大を避け、戦略と外交で活路を開く。 真珠湾、ミッドウェー、ガダルカナル…分水嶺で下された「if」の決断。 破滅回避し、国家存続をかけたもう一つの終戦を描く架空戦記。 現在1945年夏まで執筆

処理中です...