Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第180話

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 ツガルの声はやや疲れている様で、上での激闘が窺える。

 「いや、あいつらマジできつい。 ボスとセンドウさんは無事だが、イワモトさんがやられちまった。 他にも結構な数のメンバーが脱落しちまってな。 正直、そろそろ補給と整備が要る」
 「だったらこっちまで来てください。 俺達は施設の地下を制圧したんですが、トルーパー用のハンガーと装備の生産工場があったので補給と整備が出来ます」
 「マジかよ、そりゃ助かる。 場所は地下でいいのか?」
 「はい、地下二階フロアですね。 敵の出現は止まってますが、敵自体が消えた訳じゃないので気を付けてください」
 「了解だ。 折角、制圧したのに生き残りに差されて脱落なんて笑えないからな。 ――ってそういえばそっちの調査の話を聞いてなかったな。 フカヤは――やられたか。 何があったんだ?」 
 
 ヨシナリは大暗斑で見たものについての話をするとツガルは小さく唸る。

 「あぁ、あれってやっぱりただの嵐じゃないんだな」
 「はい、敵が起こしている現象で内部にデカいエネミーがいます。 過去のイベントでもそうでしたが、基本的にあのレベルのボスは無策で挑むと碌な事になりません」
 「――だな。 まぁ、居場所が分かり易くなった事は素直に朗報か」
 
 ツガルの言う通りだった。 通信制限は施設が何らかの手段で妨害している様で制圧が済めば範囲が大きく拡大しており、センサーやレーダー表示の範囲もまた同様だった。
 ツガル曰くこの基地周辺はある程度見えるようになったとの事。 だからと言って視界までクリアになる訳ではないので過信は禁物だ。

 ――それにしても。

 このイベント、思った以上に消耗する。
 前回は十二時間という長時間ではあったが、明確なタイムリミットが存在したのでそこまで気にはならなかった。 しかし攻守が逆転するとこうまで消耗するのかとヨシナリは内心で溜息を吐く。
 
 このイベントのクリア条件はこの惑星内に存在する全ての施設を攻略する事だ。
 明らかに百や二百では利かない数を陥落させる必要がある。 たった一つでこの有様だ。
 果たしてこの惑星自体を陥落させる事など可能なのだろうか? ここにきてヨシナリは惑星という途方もなく広大なフィールドに挑む事の意味を理解した。

 それでも他のプレイヤーが何とかしてくれる。 自分はほどほどに頑張ればいい。
 そんな甘えが心のどこかに多少なりとも存在するが、通信が断絶されたこの環境ではそれも許されない。 もしかしたら自分たち以外は全滅しているのかもしれないといった想像をしてしまうと早く動かなければといった焦燥感まで感じてしまうのだ。

 ヨシナリは内心で首を振って良くない考えを追い出した。
 今考える事はそれではない。 とりあえずはここを完全制圧する事に意識を集中して後の事はその時にでも考えればいい。 先の事を考えすぎると碌な事にならないなと思いながら、ツガルとの情報交換を続けた。


 『栄光』のメンバーを中心にこの施設の探索を行い、残った敵機の処理も済ませて完全に制圧した事を確認したので生き乗った味方機の整備と補給、後はスパルトイなどでの強化を行う。
 一部のプレイヤーは疲労を抜く為に機体をハンガーに預けてログアウトを行う者もいた。

 今回『栄光』中心に集まったユニオン連合は総数で二千五百機前後。
 生き残ったのは五百三十機。 五分の一しか残らなかった事がここでの激戦を物語っていた。
 補給と整備が一通り済んだ所で今後の方針を決める為の場が設けられる。

 中心は当然カナタだ。 

 「皆! お疲れ様! これからの方針が決まったから聞いて欲しい!」
 
 事前に各ユニオンの代表との話し合いは済ませているので発表というよりは確認作業に近い。
 カナタは良く通る声で注目を集める。 通信も開いているので外で警戒に当たっている者達も彼女の言葉と姿に注目しているだろう。

 「この施設の調査も一通り済んだのでその結果を踏まえて部隊を三つに分けます。 一つは外に出て味方の捜索とこの周辺の調査。 大暗斑がボスエネミーと言う事だったので他にも何らかの手段で身を隠している大型エネミーが居るかもしれないので基地の安全を確保する意味でも必要な作業です」

 大暗斑のような分かり易い自然現象を隠れ蓑にしているのならまだマシではあるが、地中に隠れているなんて事も充分にあり得るので確認は必要だ。 同時に孤立している味方が居ればどうにか合流して戦力の増強を狙いたいといった思惑もあった。 ここを制圧する際に全体の八割が持って行かれたのだ。

 今は一機でも数が欲しい。
 
 「次にこの基地の防備の強化。 幸いにも奥の工場ではプレイヤー所有の装備――購入して所持済みになっている装備は自由に生産できるので防衛用の兵器を生産して設置作業を行います」

 奥の工場で生産できる代物はデフォルトでは敵の使っていた装備だが、プレイヤーの所持装備――正確には購入して持ち込みが可能になっている武装は製作が可能となっている。
 つまりセントリーガンを保有している者が生産のオーダーを出すと自由に作り出す事が可能だ。

 その機能を利用して地雷やセントリーガンを基地周辺に配置して防備を固める。
 どちらにせよここで腰を落ち着けて攻略する事は決定している上、長丁場になるのは目に見えているので拠点の強化は必要だ。 

 「最後にこの地下に広がっている巨大通路の調査」

 これはついさっき発見された物だ。 地下一階にトルーパーが通れるような巨大な縦穴があったので発見者が降りて調べたらかなり巨大な通路があった。 位置的にはヨシナリ達が居る地下二階フロアよりも更に下だ。
 大きさ、長さ、そして方向を考えると他の拠点に繋がっている可能性が高い。

 本当に拠点があった場合は引き上げて攻略の為に策を練る形になるので目的はあくまで偵察だ。
 拠点を手に入れはしたが戦力的に不安がある事には変わりがない。 

 「――参加はユニオン単位で考えていまずが、他に混ざりたい人は申告するようにしてください! クリアまで頑張りましょう!」

 カナタの締めの言葉に各々頷きや返事で返すのを危機ながらヨシナリは自分はどう動くべきかと考えていた。
 


 「ヨシナリ! 見てくれよ! これすげえな!」

 スパルトイと重機関銃を装備したマルメルが自機を見せびらかすようにその場で回って見せる。

 「実際、凄いぞ。 使った俺が言うから間違いない」
 「ウチは重たいのは嫌ややからこっちかなぁ」

 ふわわの機体には腰にエネルギーウイングが二基取り付けられていた。 
 
 「本来ならエンジェルタイプ専用やのにソルジャータイプに互換性のある上位パーツとかほんまに反則やわ」
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