Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第201話

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 「ザーコ♪ ザーコ♪」

 負けられない。 
 ポンポンは軽い口調で煽ってこそいたが内心では非常に焦っていた。
 早々にニャーコがやられ、まんまるは釘付け。 自分一人で二人を相手にしなければならない。

 普段であるなら格下と侮って纏めて倒してやると強気に行くところだが、今回ばかりはそうも行かなかった。 この追い込まれた状況で相手を侮るような真似をする者は本物の馬鹿だ。
 だから、相手を同格かそれ以上と認識して全力で叩き潰す。

 幸いにも敵の手札は全て視えている。 見事な連携だ。
 気の逸らし方、仕留めに行くタイミングとどれをとっても完璧と言えた。
 こちらの動きを丁寧に観察して動きを読まなければここまで上手くは行かない。

 逆に自分はやや軽く見ていた。 その差が今の現状に繋がっている。
 だが、まだ取り返しは付く。 ここで逆転すれば失態を含めてなかった事になる。
 その為に必要な分析を行うのだ。 ポンポンはここまでの戦いで星座盤のメンバー三人の大雑把な採点は完了していた。

 まずはふわわ。
 近接戦のスペシャリスト。 得意レンジに限ってはAランク相当の実力者だ。
 反面、遠距離武器を一切使ってこない事から飛び道具は苦手と判断。 
 
 強みと弱みが非常に分かり易いプレイヤーと言える。 
 間合いに入りさえしなければ仕留める方法はいくつか思いつく。 暫定120点。
 
 マルメル。 中衛、装備構成から乱戦や足を止めての撃ち合いを好む傾向にある。
 動きはランクを考えればいい方。  目立った弱点はないが、これといった強みもない印象。
 今回の連携の中核を担ったと言っても過言ではないが、指示を受けただけのようなので実力に含めるのは少し難しい。 個別ならそう怖い相手ではなさそうだ。 暫定45点。

 最後にヨシナリ。 恐らく自分と同じタイプのプレイヤー。
 敵を観察して動きを先読みする事に長けている。 加えて人を動かすのも上手い。
 プレイヤースキルに関しても遠隔操作であの精度の狙撃を決められるのは稀有な才と言える。

 読みの深さと人の動かし方に関しては悔しいが自分よりも上だった。 
 直接戦闘では分があるとは思うが、指揮官としては素直に負けを認めるしかない。 暫定130点。
 ポンポンは認めたくない事でも認めないと前に進めないと理解していたので、格下のプレイヤーだったとしても採点には忖度しない。 自分より上ならそう認める。

 その上で相手を分析して叩き潰す。 面子もあるが何よりもやられっぱなしで終われない。
 
 ――必ず引っ繰り返してやるからナ!

 戦い方に関してはもう組み立ては終わった。 
 ヨシナリはまんまるを抑える為に動けない。 位置も把握している。
 加えて――

 「まんまる! 相手の姿を絶対に見失うナ! 隠れると何をしでかすか分からん。 最悪、見失わなければ撃破できなくてもいい!」
 「わ、分かったよぅ……」

 ――常に居場所を把握しておけば余計な事は出来ない。

 後は自分がこの二人をどうにかするだけでいい。 
 対処も採点が済んでいる以上、充分にできる。 
 ふわわの機体が尋常ではない踏み込みで間合いに入って刀による斬撃を繰り出してくるのを余裕をもって躱す。 タイミングは掴めてきたが、ふわわの場合はタイミングを掴ませた上で変調させてくるなんて真似を平気で行うので最低でも二歩分は余裕をもって躱さないと怖い。 
 
 それにあまり離れすぎるとマルメルの銃撃が飛んでくる。
 マルメルの役目は弾幕を張って相手の足を止める事だろう。
 恐らく星座盤の作戦はマルメルが相手の動きを止める楔のような役割を担い、足止めに成功すれば残りの二人が一刺し。
 
 三対三という少人数戦では非常に分かり易く効果的な戦い方だ。 加えて、指示を受ける方も理解がし易いので連携の難易度も落ちる。
 いや、この場合は指示を出し方が秀逸なのかもしれない。 マルメルは相手がふわわから離れたら撃ちまくって防御させろとしか指示を受けていない可能性が高かった。

 それだけやってればいいというのは難しい事を考えなくていい分、気楽な上に集中できる。
 
 ――指示を単純に分かり易く。 相手に理解させる事を念頭に置く。

 今後の参考にしようと思いつつ。 この連携の穴を突くべくポンポンは逃げ回っていた。
 高度を上げてもいいが、安全になるだけで勝機を見いだせない。 引っ繰り返す為には相応のリスクが必要だ。 その為、ビルの隙間を縫うように飛ぶ。

 ふわわはビルの上、マルメルは飛行せずに地上を走行する事で追跡してくる。
 これは常に上下で挟み撃ちにできるようにと意識されたポジショニングだ。
 当然ながらビルの隙間と上とでは機体に出力差はあっても直行できる分、スピードに差が出る。

 「見ーつけた!」

 上、ちらりと視線を上げるとふわわの機体が居合のような構えで襲ってくる。
 ポンポンは慎重に距離を見極め――エネルギーウイングの出力を全開。 急加速。
 エンジェルタイプの推進装置はこういった急加速を行えるのが最大の強みだ。

 ふわわの斬撃が空を切り、お返しとばかりにエネルギーガンを向けるが、狙いはそこじゃない。
 カバーに入ろうとマルメルが背後から飛び出す。 ビルの陰から飛び出す事でポンポンの死角となっている。 

 ――だが――

 「来るのが分かってりゃ怖くないんだよナ!」

 素早く振り返る。 使える時間は一秒から一.五秒。
 それ以上はふわわが斬りかかって来る。 つまり一撃で仕留めなければならない。

 「げ」
 
 即座に反応されるとは思っていなかったのかマルメルの機体が動揺で僅かに揺れる。
 発射。 マルメル咄嗟に防御しようとしたが、この距離では間に合わない。
 ポンポンの放ったエネルギー弾はマルメルの機体を綺麗に射抜き撃破。

 「指示通りに動くだけで応用力がなさすぎ。 減点」

 同時に急上昇したが、ポップアップしたウインドウに眉をしかめる。
 内容は機体の損傷報告だ。 躱しきれずに片足を切断された。
 
 ――少し遅かったかぁ。

 一.五秒では長かったようだ。 

 「やるやん! でもそろそろ鬼ごっこも終わりにせぇへん?」
 「えー、この距離でやったら瞬殺されるんで止めときます―」

 邪魔なマルメルが居なくなったので急上昇。 充分な距離を取ってエネルギーガンを連射する。
 やっと好き放題攻撃できるのだ。 安全な場所から回避の傾向を掴むまでは様子を見させてもらう。 
 ポンポンはビル群の中に消えていくふわわを空中から銃撃しつつ彼女の動きをじっと見つめていた。
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