Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第208話

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 機体が袈裟に両断される。
 ウインドウに自身が敗北した事が表示され、マルメルは小さく息を吐いた。

 「集中力切れてきた? 動きが雑になってるんやない?」

 そう言ったのはふわわだ。 彼女に特訓を頼んだのはマルメルで、ふわわはそれを了承した事でこうして二人で模擬戦を行っていたのだが――

 「ウチはヨシナリ君みたいに理論立てて説明するの下手やからあんまり上手い事は言えへんけど、ちょーっと無駄な動き多いんと違う?」
 「はは、マジっすか。 これでも気を使ったんですけどね……」 

 軽く二十戦ほど行って、二十回ほど両断されたマルメルは曖昧に笑う。
 ヨシナリは気にするなと言っていたが、マルメルは先日の模擬戦での結果を気にしていた。
 結果は勝利。 それ自体は喜ばしい事ではあるが、自分だけ撃破されている状態なので素直に喜べない。
 
 特にふわわは終始、格上を圧倒し、ヨシナリは連携の結果ではあるが全機の撃破に絡んでいる。
 対して自分はどうだ? 敵の牽制といった役目すら満足にこなせずに早々に撃破されただけ。
 情けない。 以前であったなら仕方がないなと笑って済ませていたのだが、今は何故か悔しくて仕方がなかった。 最初は同じぐらいの実力で気が合う友達ぐらいに思っていたヨシナリがどんどん上手くなっていき、気が付けば大きく差が付いている。

 自分が成績を落としてログイン禁止を言い渡された一か月。 
 その期間が要因として最も大きいとマルメルは考えていた。 
 広がった実力差を埋めるべく努力をしてきたつもりだったが、一度開いた差は中々埋められない。

 ヨシナリの活躍を思い出す度に自分と比較し、あの一か月の空白がなければこんな気持ちを味わう事はなかったのだろうかと思ってしまうのだ。 だが、嘆いていても現実は変わらない。
 その為に様々な事を模索した。 様々な人に意見を聞き、自分なりの戦い方を組み立てていきたいと思ってはいたのだが中々に上手く行かない。

 考えても仕方がないので体を動かしていれば何か見えてくるのではないかとふわわに模擬戦を頼んだのだが――結果は芳しくない。 

 「なーんか焦ってる? 今のマルメル君からは『はよ、何とかしなあかん』みたいなあんまりよくない前のめりな感じがするから一回落ち着いた方がいいんと違う?」
 「そりゃ焦りますよ。 ヨシナリもふわわさんもどんどん強くなってるんですから俺だけ置いて行かれる訳には行かんので」
 「それやったら猶更やね。 さっきの戦いに関しては新武器を気持ちよく当てたい気持ちは分かるけど意識してるのバレバレやからもうちょっと上手に隠さなあかんよ」
 「あー……やっぱわかりますかね。 自分では隠してるつもりだったんですけど……」
 「バレバレ。 射線に誘導しようとしてるし、撃ちたくてうずうずしてるの丸分かり」

 ヨシナリから提案されたハンドレールキャノン。 
 威力は凄まじい代物で当てれば大抵の相手は一撃で沈められる。
 だが、エネルギー消費が激しく、撃った後は機体の出力が短時間ではあるが落ちるので使いどころは考えろとヨシナリに釘を刺されてはいたのだが、気が付けば当てたいと意識するようになってしまっていた。

 ――こういう所が焦ってるって言われてるところなんだろうなぁ……。

 恐らく、ヨシナリは威力を見せつける事で無理に当てずに相手に大砲があるぞと警戒させる目的で装備を勧めたのだろうが、マルメルとしては折角とんでもない威力の武器があるのだからどうにか使いこなしたい。
 そんな気持ちで採用したので、実際はヨシナリのアドバイスからはかなりズレた事をしていた。

 ――その辺を理解できているからまだ比較的ではあるが俺って冷静に物を考えられてるなぁ。

 他人事のようにそう考えていたが、むきになっている理由は別にあった。
 ヨシナリのアドバイスに従ってばかりでは彼の想像の範疇から出られないプレイヤーになってしまう。 それは仲間として相棒としてどうなんだとマルメルは思っていた。

 ヨシナリはどう思っているのかは分からないが、マルメルは彼の事を相棒だと思っているのでここまで差が付くようなら相棒を名乗る事が難しくなってしまう。
 恐らくヨシナリは気にすんなと笑って済ませてくれるだろうが、精々牽制程度にしか使えないと思われてしまうのは嫌だった。

 「何に対しても言える事やけど努力したら何かしらついてくるとは思う。 でも、すぐじゃないと思うよ?」
 「……分かってはいるんですけどね……」

 マルメルは小さく溜息を吐き――ふと気になった事を口にした。

 「そういえばふわわさんも装備弄ってるんですね」

 彼女の機体は装備構成自体は変わっていないが、細かい所で変化があった。
 まず、最近使いだした野太刀。 背中に斜めに差す形になっていたが、今は肩にマウントされている。

 「あ、これ気になる? 斜めやと抜き難いから何かないかなーって思ってたらこれを見つけてなー」

 ふわわが機体を操作すると野太刀が肩を起点に半回転して柄が突き出るような形になる。
 
 「こうすると肩から一息に抜けるし、鞘にも面白い仕掛けがあってな!」
 「へぇ、なんか凄いギミックを仕込んでるんですか?」
 「そうそう。 でも、教えてあげなーい。 見たかったらウチに使わせてみ?」
 「だったらもっと頑張らないとですね」

 そう言ってマルメルは立ち上がる。
 ふわわもマイペースではあるが、確実に進化していっていた。
 装備の更新もそうだが、どうすればもっと強くなれるのかを模索しているのだ。

 自分よりも遥かに強い奴も努力してるんだ。 立ち止まっていたら背中も見えなくなってしまう。
 追いつきたいがそれ以上に離されないように必死に食らいついてやる。
 マルメルは小さく拳を握って模擬戦を再開するべく自機を呼び出す。

 「よし、休憩は終わりやねー。 ――ところでヨシナリ君はどうしたん? ここ最近、姿を見かけへんけど……」
 「あ、なんかメール来てちょっとショックな事があったのと金が必要になったとかでしばらくは出稼ぎに出るとか言ってました」
 「新しい装備が欲しくなったんかな?」

 金策にマルメルも誘われたのだが、特訓したいといった旨を伝えると頑張れよと返ってきた。
 以降、連絡がない。 もしかしたらヨシナリも対抗戦に向けて強化を図っているのかもしれない。
 
 ――俺も負けていられない!

 そう決意を新たにしたマルメルはふわわとの模擬戦を続けた。
 ちなみに結果は全敗だったが。
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