Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第209話

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 巨大な要塞のようなエネミーが周囲に弾幕を張りながら内部に存在する蟻型エネミーを吐き出して防衛線を構築。 それを切り裂くように一機のキマイラタイプが戦闘機形態で突っ込む。
 接近を阻むべく蟻型のエネミーが襲い掛かるが仕掛ける前に次々と撃ち抜かれて撃墜されていく。

 「ひゅ~、いいねぇ。 ご機嫌な援護だ!」

 そういったのはキマイラタイプを操るプレイヤー――ツガルだ。
 彼は巧みな操作で弾幕を掻い潜り、内蔵されているミサイルをエネミーの内部へと撃ち込む。
 至近距離で放たれたミサイルは全弾、吸い込まれるように内部へと入りそのまま爆発。 

 急所に当たったのか要塞の内部で誘爆が発生し、あちこちでパーツを脱落させながら墜落。
 ややあって耐え切れなかったのか空中で爆散する。
 
 「さーて、次は――おっと、俺達の出番はなさそうだな」

 ツガルが振り返ると遠くでついさっき撃墜した物と同型の要塞型エネミーが爆散しているところだった。
 
 「味方が強いと楽でいいですね」

 そう言って下から上がって来たのはホロスコープーーヨシナリだ。
 アノマリーを構えて生き残った蟻型の掃討を行いながらそんな軽口を叩く。
 ミッションのクリア条件は要塞型の撃破なので実の所、蟻型の撃破はしなくてもいいのだが、全滅させると報酬にボーナスが入るのでしっかりと全滅を狙っていく。

 「まぁ、そりゃいいんだが、お前って結構、図太い奴なんだな」
 「いやーははは」

 ツガルはやや呆れた口調でそういうとヨシナリは笑ってごまかす。
 彼が言っているのは今回の共同ミッションに参加しているメンバーだ。
 ツガルとフカヤは以前にも組んだが、今回は別のユニオンの面子も加わっていた。

 「おーい、こっちも片付いたゾ!」
 「流石、速いですね。 こっちは雑魚の処理をすれば完了です」

 そう言いながら飛んできたのはエンジェルタイプの機体が三機。
 つい先日に対戦した『豹変』の三人だ。 連絡先を交換したのでものは試しにと誘ってみたらあっさりとオーケーしてくれたのは少し意外だった。

 「おい、どうやって『豹変』のメスガキを手懐けたんだ?」
 「手懐けたってなんですか? 前に対戦した後、連絡先を交換したから普通に誘っただけですよ。 ちょっと戦力が欲しかったんで」

 ツガルが小声で尋ねてくるのでヨシナリは肩を竦めて見せる。
 絶望から何とか立ち直ったヨシナリはいい機会だと金を稼ぐ事にしたのだ。
 最初はマルメルも誘ったのだが、ふわわと特訓するとの事だったので諦めた。

 ユニオンメンバーの都合が付かないならユニオン外からメンバーを集めようと考え、ツガルとポンポンに声をかけたのだ。 この二人が来てくれたのなら少々、難易度の高いミッションでも周回できるので資金の獲得効率の良いミッションに決めようと思っており、二人とも仲間を連れての参加だったので更に報酬の大きなミッションに挑める事になった。

 ――金、とにかく金が必要だ。

 貴重なP――元々、エンジェルタイプを購入する為に溜めていたものだったのだが、突然入った臨時収入に欲望を抑えきれなかった。 買ったのはいいが『シックスセンス』の対応機種はキマイラタイプ以上。 つまりソルジャータイプのフレームには対応していないのだ。

 アルフレッドとの同期で機能していたので装備できるものと思い込んでいた自分を殴りたい。
 だが、買ってしまったものは仕方がない。 その為、全ての予定を破棄して全力でキマイラタイプを購入する事を目指したのだ。 当然ながらキマイラタイプのフレームは高額だ。

 ランクFの適性機体ではない事もあって購入のハードルが高い。
 だが、それでもせっかく買った『シックスセンス』を使いたかった。
 その欲望を原動力にヨシナリは金を稼ぐ事にしたのだ。 期限などは特に設けていない。

 イベントに間に合わせるなどといった計算の外の行動だった。
 今のヨシナリの頭にはキマイラタイプを買って最高のセンサーシステムを搭載して気持ちよくなりたい。 そんな思考に支配されていたのだから。

 ――あぁ、本当に俺って奴は勢いで行動すると本当に失敗するなぁ……。

 考えて動けと常日頃から自身に言い聞かせているつもりなのだが、少し気を抜けばこれだ。
 
 「それにしてもFランクで『シックスセンス』を買うなんて早まったナ」
 
 当然、全員に事情は話している。 シックスセンスを買ったのはいいけど今の機体に積めないので新しいフレームを買う金策に協力して欲しいと。
 
 「いや、前のイベント戦で同期って形で使わせて貰ったんですけど、その時の経験が忘れられなくてですね」
 「あのクッソ高いセンサーシステムだろ? あれ買うぐらいだったらキマイラタイプのフレームを買えばよかったのに。 ってか、お前よくそんなにP持ってたな。 どうやって稼いだんだ」

 ヨシナリは無言で指を立てる。 言えないのジェスチャーだ。
 それだけでツガルは察した。

 「へぇ、運がいいんだな」 
 「まぁ、あたしとしてはお前の動きを間近で見るチャンスだしナ。 色々と勉強させて貰うゾ」
 「なんだ~? お前ヨシナリに気があるのかぁ?」
 「ふん、お前よりはナ。 あたしに気にして欲しいなら最低限、勝って見せるんだナ!」
 「ぐ、このクソガキ……」

 ツガルは先日の模擬戦で負けた事を思い出して小さく唸る。

 「ケケケ、それはそれとして『シックスセンス』とはまた癖の強い装備を買ったナ」
 「そうなんですか?」 
 「正直、あんまりお勧めは出来ない装備だゾ。 確かにセンサーシステムとしては最高クラスだが、情報量が多すぎるんだ」

 ポンポンの言う事は正しかった。 
 シックスセンス、その感知範囲、種類は突出していると言っていいが、機体の内部エネルギーまでスキャニングできる上、気温や湿度の変化、風などのデータも取れるので狙撃手などには最高のセンサーシステムと言われている。 ただ、その膨大な情報を取捨選択できる能力が使い手に求められるので、使いこなせるというのであれば非常に強力だがそうでなければ下位互換の装備で充分と判断される代物だ。

 「ウチだとセンドウさんがちょっと気になるってんでボスに頼んで試させて貰ったんだけど、使いこなせそうにないってんでグレードを落とした奴を使ってるぜ」
 
 フカヤ自身は使った事がないので何とも言えないといった様子だったが、話を聞いた限りだと起動すると画面いっぱいに周辺環境や敵機、味方機の詳細なリアルタイム情報が入ってくるので逆に集中できないとの事。 活用できなければ情報もノイズでしかないとの彼女は言っていた。

 ヨシナリの場合は同期した際にアルフレッドの側で必要な情報だけを取捨選択された状態だったのでただただ快適だったが、直接使うとかなり違ってくるようだ。

 「あたし等の認識もそんな感じだナ。 まぁ、お前が使いこなせるか見せてもらうゾ。 後、これは大きな貸しだからナ。 何かあったら協力してもらうから覚悟しておけよ?」
 「そうだそうだ! 貸しだからな!」
 「勿論、感謝してますよ。 このお礼は何かの形で!」

 二人にそう言われてヨシナリは苦笑しつつそう返した。
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