Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第214話

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 ――行ける。

 進化した自分の戦い方はふわわにしっかりと通用していた。
 ヨシナリは後退を選択したふわわの姿に大きな手応えを感じており、気持ちはやや高揚していたが油断せず冷静に次の手を打つ。

 うっかり『シックスセンス』を買ってしまったので後に引けなくなってしまったという経緯こそあるが、元々キマイラタイプのフレームの購入は視野に入れていたので前倒しになったと割り切った。

 ――いや、マジできつかったが。

 基本的にキマイラタイプのフレームはPで買う代物だ。
 理由はGだとかなりの高額になるのでまず手が出ない。 文字通り桁が違う金額だったのだが、ヨシナリは空いた時間の全てを費やしてその金額をどうにか賄った。

 ただ、フレームを買ったとしても今度は互換性のあるパーツが必要になる。
 フレームを変えるという事はこれまでに使っていたソルジャータイプのパーツの大半が使用不可となるので、ジェネレーターなどの内蔵パーツなども一から揃える必要がある。

 これにはヨシナリは頭を抱えた。 勢いでキマイラタイプを買うと息巻いた結果、その後の事が頭から抜け落ちていたのだ。 これだから俺は後先を考えると碌な事にならないんだと大きく落ち込んだが、もうやるしかないと前向きに解釈してただひたすらに金策に励んだ。
 
 そんな中、助け船を出してくれた人物がいた。 
 ポンポンとツガルだ。 二人は使っていないパーツを格安で譲ってくれたのだ。
 ツガルは元々、キマイラタイプのヘビーユーザーだけあってかなりの数のパーツを保有していた。
 
 ポンポンはエンジェルタイプに乗り換えていた事もあってキマイラタイプのパーツはもう使わないとの事らしく割と高めのパーツを気軽に「要るか?」と尋ねて来たのだ。
 本音を言えばそのまま貰ってしまいたかったが、必要以上の借りを作るのは良くないと思っていたので格安の値段で売ってもらう事となったのだ。 二人は経験者だけあってパーツの選び方から立ち回りの基本まで色々と教えてくれた。

 キマイラタイプ。 ソルジャータイプの上位互換といった印象が強く、事実として性能は完全に上ではあるが、話を聞けば聞くほどに使い勝手が違うので同じ感覚で扱うと痛い目に遭うと思っており、それは正しかった。 まずは目玉である変形機構。
 
 胸部パーツがめくれ上がるように肩から上へ移動し、戦闘機の機首の部分へと変わる。
 コックピット部分には頭部が収まる形になり、背中に格納した主翼が飛び出し、脚部が引っ込んで足の裏が開いて推進力を得る為の機構――推力偏向ノズルの役割を果たす。

 これがキマイラタイプの変形までの流れで、驚くべき事にこれを一秒前後で行うのだ。
 とんでもないなと思ってしまうが、これはかなり重要な話だった。
 ソルジャータイプは基本的に背中の巨大なメインブースターと各所に取り付けられた、または内蔵している予備のスラスターで推進力を得ている。 対してキマイラタイプは飛ぶ為の力の出所が背中だけでなく足も担うのだ。

 その為、人型での飛行時は足の使い方が重要になって来る。
 ヨシナリの場合は背中はアノマリーを格納する為のアタッチメントを取り付ける関係で内蔵型の出力が低いブースターを採用。 その為、足が最も出力の出る推進装置となった。

 これが何を意味するのかというと、足を破壊される事によるリスクが大きく跳ね上がったのだ。
 片足がやられれば変形してもバランスが取れなくなり、推進力が偏って真っすぐに飛ばなくなる。
 だが、そのリスクを飲み込めるならソルジャータイプでは辿り着けないスピードを得る事が出来、空中戦ではその速さで敵を圧倒する事ができるだろう。

 ――制御できればの話だが。

 実際、飛ばしてみたが、これが中々に難しい。
 真っすぐ飛ばす事自体はそこまで難しくないが、思った軌跡を描かせるのはかなりの練習を必要とした。 本来なら時間をかけてじっくりと慣らしていく必要があるのだが、サーバー対抗戦まで時間がないのでツガルに頼み込んで飛び方を教わった。 基本的に彼にくっついて飛ぶだけだが、ツガルには振り切るように頼んでいるので離されないように飛ぶ必要がある。

 彼は長い期間、キマイラタイプを使用しているだけあって、空戦機動マニューバの扱いもしっかりと心得ており、ヨシナリにとっては良い教師だった。
 機体が変われば戦い方も変わる。 ふわわに模擬戦を挑む事は早い段階で考えていた事だったのでここ数日はひたすらに特訓を繰り返した。

 変形からの攻撃移行、ポジショニング、武器の扱い、機体の制御。
 とにかく自分が満足できるクオリティの動きになるまで黙々と繰り返す。
 そして昨日、ようやく及第点の動きができるようになったのでこうしてふわわに挑む事にしたのだ。

 武装はアノマリーと二挺の自動拳銃、接近された時の保険として用意したエネルギーダガーのみ。 
 本来ならサイドアームとして短機関銃などを持ち込みたかったが、売り払ってもう残っていない。
 冗談抜きで溜め込んだパーツや武器の大半を放棄して今のスタイルを確立したのだ。
 
 ――これだけの代償を支払って手に入れた力を見せてやる。

 そして無理してキマイラタイプを手に入れた最大の理由。
 『シックスセンス』第六感を意味するそのセンサーシステムは以前のイベントで機能を限定的に借り受けた状態でアレなのだ。 完全な状態で使用できた場合の恩恵は凄まじい。

 視える。 これまで理解の及ばなかったふわわの動きが完全に理解できる。
 ふわわの位置、機体の状態――機体を巡るエネルギーの動きまで視えるので、次の攻撃の軌道が分かるのだ。 それはさっきの攻防でも明らかで、以前までなら全く見えずに串刺しにされていたであろうふわわの刺突を引き付けてから躱せるほどだった。

 視力が良くなっただけの話ではない。 機体のエネルギー流動、重心移動、シックスセンスから得られる膨大な情報がふわわの動きを、その刃が描く軌跡を放たれる前にヨシナリに見せつける。
 太刀ではなく、小太刀での刺突を狙っている事は早い段階で気が付いていた。 

 何故ならふわわは攻撃、防御関係なく、アクションに入る前に僅かに武器を持ち上げる。
 恐らくは無意識に最速で動かせるように調整しているからだ。 
 それをいち早く察知できるのなら文字通り、未来予知ともいえる精度で動きを先読みできる。

 ふわわの一撃は神速とも言えるが、来る事さえ分かっていればタイミングを取る事はそこまで難しくはない。
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