Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第241話

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 自分がやられた周囲の状況はある程度把握したので、今度はフォーカスする範囲を大きく広げて戦場全体へ。
 全体的な戦況を確認する為だ。 時計を見ると開戦からざっと三時間ほど経過しており、戦闘に関しては折り返しはもう過ぎてそろそろ終盤に差し掛かるといった印象だった。

 理由は互いの残存戦力だ。 日本側は現在、損耗率は約七割。 アメリカ側は約半数。
 これにはヨシナリも驚いてしまった。 自分の居た辺りは比較的ではあるがやや優勢だったからだ。
 他はそうでもなかったようで特に主戦場となる場所――『思金神』が担当している戦場は酷い有様で露骨に押されていた。 これは彼等が弱いというよりは敵のAランクが多すぎるが故の結果だろう。

 互いに随分と数を減らしてしまっているので正確な所は不明だが、アメリカ側のAランクプレイヤーの数は日本の倍では利かないはずだ。 ヨシナリの見立てでは2.5から3倍。 
 そうでもなければカナタを撃破するのに四機も投入できない。 個人技という点では決して劣ってはいないが、単純な数の差はどうしようもない。 特に日本側は数が少ないのでHやIランクと言った碌に戦えない初心者まで投入しているのだ。 

 ――十中八九負ける。

 それは分かり切っていた事だった。 だが、だからと言って負けるつもりで勝負に来てる奴はいないはずだ。 もしかしたらどこまで通用するのかといった力試しと捉えている者は一定数いるのかもしれないが、負けるのは面白くない。 負けた自分にできる事はもうないが、何かないのかとは思ってしまう。

 「あー、ヤバいな。 前線が崩壊した」

 マルメルがぽつりと呟く。 それを聞いて戦場の中央へフォーカスすると『思金神』のリーダーがやられていた。 十数機のジェネシスフレームに取り囲まれている状態でよく頑張ったといえるが、これは致命的だ。 統制を失った『思金神』は崩壊。 一気に戦況が傾く。

 特に上位のランカーがやられた事による士気の低下も著しく、味方の撃破されるスピードが増加。
 マルメルは「あー」と小さく顔を覆う。 戦場の中央が押し込まれた以上、右翼、左翼に敵が雪崩込む。 後はもう消化試合のようなものだった。

 「うわぁ、もう見てらんねぇよ……」

 あまりにも酷い有様にマルメルが思わずそう呟く。 
 ヨシナリも同じ気持ちだった。 ここまでやられると戦略、戦術でどうにかできるレベルを超えている。 単純な物量という暴力を跳ね返す方法は存在しない――

 『栄光』はカナタこそ辛うじて生き残りはしたが、ほぼ壊滅。 
 後退しながら拠点に立て籠もるつもりのようだ。 『豹変』は壊滅。
 ポンポン達も救援に戻ったが抗える訳もなく、敵の軍勢に呑み込まれた。

 ヨシナリの見知った者達が次々と撃破され、日本側の機体が凄まじい勢いで数を減らす。

 ――そう、存在しないはずだったのだ。

 誰もが日本の敗北を悟った時、主戦場から離れた一つの戦いに決着が着いた。
 同時にそこから光を纏った何かが戦場へと飛来したのだ。 それは文字通り、戦場を切り裂いた。
 
 「は?」
 「え? なに? 何が起こった?」

 見ていたはずなのにヨシナリとマルメルは何が起こったのか本当に理解できなかった。
 辛うじて理解できたのは一撃で凄まじい数の敵機が鉄屑に変わった事ぐらいだ。
 ヨシナリは原因に気付き、戦場の中心――敵のど真ん中にフォーカスするとそこには彼が居た。

 ラーガスト。 敵のSランクを抑えているはずだったのだが、倒してきたようだ。
 エイコサテトラは背のエネルギーウイングを四枚展開している。
 これまでは二枚までしか使っていなかったのだが、更に二枚解放したようだ。
 
 だが、それでも四枚。 
 まだ本気を隠しており、エイコサテトラはそのポテンシャルを全て開放していない。
 だからと言ってこの絶望的な展開を引っ繰り返すなんて事は―― 

 ――その直後に起こった出来事はヨシナリの想像を遥かに超えていて上手く理解できなかった。

 いや、理解したくなかったのかもしれない。 それは戦いだったのだろうか?
 後になって思い返してみるとそんな疑問すら浮かぶ内容だった。
 エイコサテトラは凄まじい機動性を発揮して戦場を文字通り切り刻む。 その軌道と重なった敵機は例外なく破壊された。 ソルジャータイプは掠っただけで撃破され、キマイラタイプはその影を踏む事すらできず、エンジェルタイプの攻撃は一切届かなかった。

 そして精鋭であるはずのAランク――ジェネシスフレームですら彼の道を阻む事が出来なかった。
 前回のユニオン対抗イベントで彼の実力を知った気になっていた自分が恥ずかしいとすら思える。
 ラーガストはあの時、欠片も本気を出していなかった。 何故なら、敵のAランクプレイヤーが一機五秒も保たないのだ。 これはもう強いなんて言葉で括れるものではなかった。

 まさに超越者と言っても過言ではないだろう。 
 どうやったらあれだけの圧倒的な力を振るえるのか? そしてあれだけの動きを可能とする為にどれだけの努力と時間を費やしたのか? いや、それ以前にあの動きは努力でどうにかなるものなのか?

 動き自体は一応ではあるが、理解はできる。
 普段と同じで超スピードで突っ込んで手当たり次第に切り刻むだけだ。 
 それを人外の反射と反応で行っているだけだが、ヨシナリから見れば人間にできる動きから逸脱しているとしか思えない。

 ――というかこれだけ強いのに何で防衛イベントの時は本気を出さなかったんだよ!? 

 六枚全部使えばあの謎のトルーパー相手でも楽勝だっただろうがと思ったが、動きの凄まじさに驚いて見落としていた。 ラーガストの動きにやや違和感がある。
 俯瞰して見ているからこそ見えたのだろうが、普段の彼なら最小の動きで最大の戦果を上げるべく動くだろう。 だが、目の前で広がっている惨劇にはやや感情、それも苛立ちのようなものが乗っているように感じる。 

 ――敵のSランクとの間に何かあったのだろうか?

 ラーガストと交流こそあるが付き合い自体は浅いので何とも言えないが、少しらしくないなというのがヨシナリの感想だった。 

 「おいおい、これ、もう終わるんじゃないか?」

 マルメルの声が震えていた。 気が付けば敵機がごっそりと減っている。
 一秒にダース単位の敵を叩き潰しているのだ当然だろう。 それにより、日本勢が息を吹き返して反撃に転じる。
 敵側にフォーカスするとまさに阿鼻叫喚といった様子で、翻訳機を積んでいる者は「ふざけんな!」「チートだろ!?」「化け物」と理不尽に怒り狂っている。

 ヨシナリも逆の立場なら全く同じ事を言っているであろう事は間違いないので当然の反応だった。 
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