Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第259話

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 本来ならフカヤがさっさとマルメルを潰してふわわ、ヨシナリの順に潰して完了の戦いだった。
 その為にセンドウが力を貸してくれる流れだったのだが、謎のスナイパーにセンドウが抑えられていて機能しなかったのが大きな誤算だった。

 どうやら星座盤はいつの間にか追加のメンバーを入れていたようだ。
 しかも厄介な事にステルスに長けた狙撃仕様の機体を。 何処から連れて来たのかプレイヤースキルも高いので低ランクではないだろう。 何しろあのセンドウが捉えきれていないのだから。
 
 結果、フカヤ達がマルメルを仕留めなければならなくなったのだが、相手は随分とフカヤの事を研究して来たのか仕掛けようとするタイミングで銃撃。 見えていないのは何となくわかるのだが、当たりの付け方が秀逸だ。 フカヤは何度も被弾しかけた。

 恐らくはフカヤの行動の癖、武器の射程の二つが重なる瞬間を狙って弾をばら撒いていると見ていい。 
 その為、かなり攻め辛い。 元々、フカヤは味方の援護――目くらましと言い換えてもいいそれに乗じて敵を狩る事が最も得意な戦い方だ。 彼の最大の強みは敵に存在を悟らせない事にあるのだが、最初からいると分かっている状態ではその効果は半減する。 

 それに関しては仕方がないと思っていた。 
 彼等はライバルではあるが何度も合同ミッションやイベントで死線を潜って来た戦友でもあるのだ。 
 手の内がバレている程度は何とも思わない。 寧ろ、自分の事をしっかり評価してくれていると思えて少し嬉しいぐらいだ。 それによりこの状況が生まれているので気持ちは少し複雑だが。

 ズンと空で衝撃音。 見上げると戻って来たヨシナリが味方のキマイラタイプと交戦に入った。
 不味い。 これで制空権が取れなくなり、マルメルが上を警戒しなくてもよくなった。
 
 「フカヤ君。 勝負に出よう」

 そう言ってマルメルを釘付けにしていたイワモトが前に出る。
 盾を捨てて大型の散弾銃を構えて発砲。 抑えに専念していた事もあって使用を控えていたが、こうなってしまった以上、決めに行かなければ返り討ちに遭うと判断したからだろう。

 マルメルの戦い方は銃撃、移動の繰り返しだ。 その際、イワモトの射程外、フカヤが狙い難いポジションという二つの条件をある程度満たした場所に移動している。
 明らかに時間を稼ぐ為の戦い方だが、そろそろ行動パターンが読めてきた。

 木々が密集しているお陰で辛うじて捉えられる状態だが、見失ってはいない。
 射程は短いが貫通力に優れた合金製のボルトを喰らわせる。 身を隠すのはトルーパーが完全に隠れられる巨木。 ならばギリギリまで肉薄し、樹の裏側からボルトを撃ち込んで機体ごと貫通させ、そのまま縫い留める。 

 ――虫の標本にしてやる。

 フカヤは小さく呼吸し、身を低くしながら接近。 
 その間にイワモトの散弾銃が派手に火を噴き、嫌がったマルメルが応射しながら近くの樹へと移動。
 イワモトが銃撃。 巨木が大きく抉れる。 

 ――ここだ。 

 フカヤはイワモトの前に出てボルトを――打ち込む前に巨木を貫通して何かが飛んできた。
 完全にタイミングを合わせられた形になったフカヤは回避ができずそのまま胴体を撃ち抜かれ、機体は爆散。 脱落となった。

 フカヤの意識は即座にユニオンホームに戻される。 
 何があったと振り返るといつの間にかイワモトまでいた。
 
 「え? イワモトさん?」
 「はは、まいったねぇ。 やられてしまったよ」

 イワモトは苦笑。 
 何が起こったのか今一つ理解していないフカヤは困惑するだけだったが、イワモトはそうでもなかったようだ。

 「さっきの彼、マルメル君だったかな? 恐らくずっと狙ってたんだろうね」
 「何をですか?」
 「我々が重なる瞬間を」

 それを聞いてそう言う事かとフカヤは顔を手で覆う。
 マルメルは腕に装着されたハンドレールキャノンで二枚貫きを行った。
 あの武器は威力だけは絶大だが、使用は非常にリスキーだ。 外すと出力低下でパフォーマンスが大きく落ちる。 つまり外したらまず負けるのだ。

 だが、当てさえすれば一発で終わる。 
 この乱戦で使うとは思っていなかったのでフカヤは無意識で選択肢から除外していたのだが、恐らくマルメルはずっと一発を狙っていたのだ。 フカヤとイワモトを同時に仕留められる瞬間を。

 撃つタイミングは二人が重なっていて、発射の瞬間を見られないという二つの条件が揃った時。
 だから彼はイワモトに対して巨木を盾にするような立ち回りをしていたのか。
 そして業を煮やしたフカヤが強引に仕留めに来るのを手ぐすねを引いて待っていたのだ。

 「はは、いやぁ、これは相手を褒めるしかないよ。 大した忍耐力だ」
 「……はぁ、そうですね」

 悔しさはあるがここは素直に相手が上手である事を認めよう。
 それにまだカナタもセンドウも残っている。 「栄光」はまだ負けていないのだから。


  
 ――捉えられない。

 センドウは愕然としていた。 彼女の仕事はイワモト、フカヤがマルメルの動きを制限し、いい位置に来たらコックピット部分を撃ち抜いて完了といった簡単な仕事のはずだった。
 イワモトが上手に追い込んでいい位置に来たので少し離れた山の上から狙いを付けていたのだが、逆に狙撃されメインで使用していた狙撃銃が破壊されてしまったのだ。

 流れ弾を疑ったが、その後も執拗にセンドウを狙って来ている所を見ると星座盤の関係者だろう。
 小口径の狙撃銃だが、武器を破壊するぐらいなら充分だ。 狙撃手と言えばヨシナリの印象が近かったが、彼は空中だ。 そもそも彼は小口径の狙撃銃は使用しない。

 小口径の狙撃銃の最大の強みは発射の痕跡が分かり辛い事にある。
 その時点で身を隠す事に重きを置いた狙撃手である事が窺えた。
 センドウも似たスタイルなので、そういった相手の行動は良く分かっているつもりではあったがステルスに関しては相手の方が一枚上手だ。 センドウは予備の狙撃銃を構えながら山肌を滑り降りて森の中へ。 

 味方の援護をしたいところだがこいつを排除しなければ何もできない。
 次の発射で位置を掴んで二射目を撃ち前に撃ち返す。 彼女は自分の射撃精度には自信があった。
 森の中であろうと相手の位置さえ分かれば一発で仕留められる。

 だから、さっさと撃って来いと言わんばかりに森の中を進む。
 確実に仕留めたいのなら距離を置いて膠着を狙う手もあったが、彼女にはそれができない理由があった。
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