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第268話
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ヨシナリは自分に惚れている。 これはグロウモスの中では大前提だった。
そんな相手がこういったのだ。 付き合ってください、と。
グロウモスは努めて冷静に思考を回転させる。
――オーケイ、冷静、冷静に対応しろ。
変にキョドったりすると相手に舐められる。
恋愛は駆け引きという漫画で見た実体験を伴わない知識に従って必死に平静を装っていた。
改めてヨシナリを見る。 ほぼ初期アバターなので顔の美醜は分からない。
性格的には悪くないのではないだろうか? 少なくとも自分よりはコミュ力はある。
唐突な告白に舞い上がっていたがよくよく考えてみたらゲームの相手にここまで本気になるのは何なんだ? もしかしたら誰にでも同じ事を言っている?
いや、だったらこんな事は言わないか。 いやいや、言いなれているのかもしれない。
グロウモスはヨシナリをじっと見つめる。 ヨシナリはその反応に小さく首を傾げた。
沈黙している彼女に何かを感じたのか、一歩引く。
「あ、あー、無理にとは言わないんで。 お疲れみたいですし、今日はゆっくりと休んでください。 では、俺はこれで――」
ヨシナリは何かを察して去ろうとする。
「ちょっと待って!」
思わず声が出る。 ヨシナリは驚いたのかその場で固まる。
危ない所だった。 このままだと自分が振ったみたいな事になってしまう。
だが、止めたのはいいのだが、どうすればいいのだろうか?
グロウモスはこの手の経験が圧倒的に足りていなかったので、どうすればいいのかさっぱりわからなかった。 知識は恋愛ものの漫画や小説ぐらいだ。
それでもこの場でヨシナリは見送る事は良くないという事ぐらいは分かる。
彼女は必死に考えた結果、一つの結論を出した。
「あの、少し、話しませんか?」
――会話をしながら突破口を探る。
要は先延ばしだ。 恋は駆け引き、とにかく主導権を得なければならない。
「……はぁ、まぁいいですけど。 改まって話となると話題がぱっと出てきませんね」
そう言ってヨシナリはソファーに腰を下ろす。
グロウモスも近くにあったパイプ椅子に座る。
まずはこちらから話題を振るのだ。 そうする事で主導権を得る!
――話題、話題、話題……。
グロウモスは人生でトップクラスに脳を回転させているだが、噛み合っていないのか人生でトップクラスに空転していた。 ヨシナリは無言、表情のないアバターなので何を考えているかは読み取れないが、やや困惑を浮かべているのは何となくわかる。
「……今回の予選、どうでしたか? マルメルやふわわさんはともかく、グロウモスさんとベリアルはウチでの連携に慣れていない事もあって俺としてはポジションを綺麗に分けて互いに干渉しないようにしたつもりでしたが……」
「うん。 いいと、思う。 私も、やり易かった。 と、思う」
話し慣れてない所為かつっかえるようにしか喋れないが、言葉自体に嘘はない。
少なくともヨシナリは指揮官としては優秀だった。
グロウモスは狙撃や奇襲を得意としているスタイル上、密な連携にはあまり縁がなかったのだ。
味方の戦いを遠くから見て、敵に隙が出来たらそこを狙う。
その為、味方の動きに合わせるという行為をあまりしてこなかったのだ。
「元々、グロウモスさんの狙撃手としてのスキルは同ランク帯では上位でしょう。 正直、あれだけの精密射撃を真似られる奴はそういません。 ただ、失礼を承知で言わせて貰うとそれ以外の距離に関しては格がいくつか落ちます。 特に俺と始めて戦った時のような遭遇戦になると脆さが目立ちます」
言い返せなかった。 まったくもって彼の言う通りだ。
グロウモスのパフォーマンスはメンタルに左右される。
特に突発的な状況に対しては特に脆く、頭が真っ白になって碌に考えず手癖で動かしてしまう。
ヨシナリはその辺りをよく理解しているようだった。
よく見ている。 だからこそ模擬戦で一度も勝てなかったのだろう。
グロウモスは結果だけで考えてもヨシナリは優秀なプレイヤーだと思っていた。
自分もそこそこ見れている方ではあるが、ヨシナリに比べれば浅いと言わざるを得ない。
「特に近距離戦は論外ですね。 ご自覚があるからステルス特化なんでしょう?」
「……うん。 まぁ……」
「できない事を無理にやってもストレスがかかるだけなので極端な距離は味方がいるならできる奴に任せればいいし、味方がいないなら避ければいい。 ――ステルス特化は理に適っていると言えます」
ヨシナリはでもと付け加える。
「前にも言いましたが、ステルス性を保つ事にこだわり過ぎていませんか? 俺がとやかく言う事ではないと思うんですが、このゲームは相手を倒す事が目的である以上、隠れているだけでは勝てません」
「前に言っていたどちらかに絞った方がいいって話?」
「絞れは極端でしたね。 必要なのは使い分けでしょう。 次の本戦はチームの総合力が要求される実力勝負になります。 俺としては一撃で敵を仕留める大口径を使って欲しい所ではありますね。 ――あぁ、強要とかはしないんで、判断は任せます」
「ヨシナリはそっちの方がいいの?」
普段ならスタイルを変えろとかふざけるなと思う所なのだが、しっかりと理由を説明された上で反発すると自分が子供みたいではないかと思ってしまうのでそんな返ししかできなかった。
だが、グロウモスはふと気が付いた――いや、気が付いてしまったのだ。
こいつはまさか。 私を自分色に染めようとしているのではないか?と。
あれだ。 彼氏になった瞬間、女を所有物と認識して自分の好みを押し付ける奴!
具体的に言うのならへそにピアスを付けたり髪を染めろとか言って来るタイプ。
エロ漫画で見た! 私は詳しいんだぁ……。
グロウモスの中でヨシナリは自分に対して邪な欲望を秘めており、どうにか自分の思い通りにしようと企んでいるように見え始めた。
――いや、こいつ私の事好きすぎじゃない?
会ってそんなに経っていないのにモーションをかけてきて早々に彼氏面。
そして自分色に染めようとアプローチをかけてくる。
ヤバい。 こいつはこれまでに会って来た男の中でトップクラスにヤバい奴だ。
――お、落ち着け私。 相手にはまだ私が気付いていると知られていないはずだ。
主導権はこちらにある。
冷静、冷静に余裕な態度で会話を勧めるんだ。
そんな相手がこういったのだ。 付き合ってください、と。
グロウモスは努めて冷静に思考を回転させる。
――オーケイ、冷静、冷静に対応しろ。
変にキョドったりすると相手に舐められる。
恋愛は駆け引きという漫画で見た実体験を伴わない知識に従って必死に平静を装っていた。
改めてヨシナリを見る。 ほぼ初期アバターなので顔の美醜は分からない。
性格的には悪くないのではないだろうか? 少なくとも自分よりはコミュ力はある。
唐突な告白に舞い上がっていたがよくよく考えてみたらゲームの相手にここまで本気になるのは何なんだ? もしかしたら誰にでも同じ事を言っている?
いや、だったらこんな事は言わないか。 いやいや、言いなれているのかもしれない。
グロウモスはヨシナリをじっと見つめる。 ヨシナリはその反応に小さく首を傾げた。
沈黙している彼女に何かを感じたのか、一歩引く。
「あ、あー、無理にとは言わないんで。 お疲れみたいですし、今日はゆっくりと休んでください。 では、俺はこれで――」
ヨシナリは何かを察して去ろうとする。
「ちょっと待って!」
思わず声が出る。 ヨシナリは驚いたのかその場で固まる。
危ない所だった。 このままだと自分が振ったみたいな事になってしまう。
だが、止めたのはいいのだが、どうすればいいのだろうか?
グロウモスはこの手の経験が圧倒的に足りていなかったので、どうすればいいのかさっぱりわからなかった。 知識は恋愛ものの漫画や小説ぐらいだ。
それでもこの場でヨシナリは見送る事は良くないという事ぐらいは分かる。
彼女は必死に考えた結果、一つの結論を出した。
「あの、少し、話しませんか?」
――会話をしながら突破口を探る。
要は先延ばしだ。 恋は駆け引き、とにかく主導権を得なければならない。
「……はぁ、まぁいいですけど。 改まって話となると話題がぱっと出てきませんね」
そう言ってヨシナリはソファーに腰を下ろす。
グロウモスも近くにあったパイプ椅子に座る。
まずはこちらから話題を振るのだ。 そうする事で主導権を得る!
――話題、話題、話題……。
グロウモスは人生でトップクラスに脳を回転させているだが、噛み合っていないのか人生でトップクラスに空転していた。 ヨシナリは無言、表情のないアバターなので何を考えているかは読み取れないが、やや困惑を浮かべているのは何となくわかる。
「……今回の予選、どうでしたか? マルメルやふわわさんはともかく、グロウモスさんとベリアルはウチでの連携に慣れていない事もあって俺としてはポジションを綺麗に分けて互いに干渉しないようにしたつもりでしたが……」
「うん。 いいと、思う。 私も、やり易かった。 と、思う」
話し慣れてない所為かつっかえるようにしか喋れないが、言葉自体に嘘はない。
少なくともヨシナリは指揮官としては優秀だった。
グロウモスは狙撃や奇襲を得意としているスタイル上、密な連携にはあまり縁がなかったのだ。
味方の戦いを遠くから見て、敵に隙が出来たらそこを狙う。
その為、味方の動きに合わせるという行為をあまりしてこなかったのだ。
「元々、グロウモスさんの狙撃手としてのスキルは同ランク帯では上位でしょう。 正直、あれだけの精密射撃を真似られる奴はそういません。 ただ、失礼を承知で言わせて貰うとそれ以外の距離に関しては格がいくつか落ちます。 特に俺と始めて戦った時のような遭遇戦になると脆さが目立ちます」
言い返せなかった。 まったくもって彼の言う通りだ。
グロウモスのパフォーマンスはメンタルに左右される。
特に突発的な状況に対しては特に脆く、頭が真っ白になって碌に考えず手癖で動かしてしまう。
ヨシナリはその辺りをよく理解しているようだった。
よく見ている。 だからこそ模擬戦で一度も勝てなかったのだろう。
グロウモスは結果だけで考えてもヨシナリは優秀なプレイヤーだと思っていた。
自分もそこそこ見れている方ではあるが、ヨシナリに比べれば浅いと言わざるを得ない。
「特に近距離戦は論外ですね。 ご自覚があるからステルス特化なんでしょう?」
「……うん。 まぁ……」
「できない事を無理にやってもストレスがかかるだけなので極端な距離は味方がいるならできる奴に任せればいいし、味方がいないなら避ければいい。 ――ステルス特化は理に適っていると言えます」
ヨシナリはでもと付け加える。
「前にも言いましたが、ステルス性を保つ事にこだわり過ぎていませんか? 俺がとやかく言う事ではないと思うんですが、このゲームは相手を倒す事が目的である以上、隠れているだけでは勝てません」
「前に言っていたどちらかに絞った方がいいって話?」
「絞れは極端でしたね。 必要なのは使い分けでしょう。 次の本戦はチームの総合力が要求される実力勝負になります。 俺としては一撃で敵を仕留める大口径を使って欲しい所ではありますね。 ――あぁ、強要とかはしないんで、判断は任せます」
「ヨシナリはそっちの方がいいの?」
普段ならスタイルを変えろとかふざけるなと思う所なのだが、しっかりと理由を説明された上で反発すると自分が子供みたいではないかと思ってしまうのでそんな返ししかできなかった。
だが、グロウモスはふと気が付いた――いや、気が付いてしまったのだ。
こいつはまさか。 私を自分色に染めようとしているのではないか?と。
あれだ。 彼氏になった瞬間、女を所有物と認識して自分の好みを押し付ける奴!
具体的に言うのならへそにピアスを付けたり髪を染めろとか言って来るタイプ。
エロ漫画で見た! 私は詳しいんだぁ……。
グロウモスの中でヨシナリは自分に対して邪な欲望を秘めており、どうにか自分の思い通りにしようと企んでいるように見え始めた。
――いや、こいつ私の事好きすぎじゃない?
会ってそんなに経っていないのにモーションをかけてきて早々に彼氏面。
そして自分色に染めようとアプローチをかけてくる。
ヤバい。 こいつはこれまでに会って来た男の中でトップクラスにヤバい奴だ。
――お、落ち着け私。 相手にはまだ私が気付いていると知られていないはずだ。
主導権はこちらにある。
冷静、冷静に余裕な態度で会話を勧めるんだ。
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