Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

文字の大きさ
321 / 787

第321話

しおりを挟む
 ――しくじった。

 ヨシナリは目の前の事象に内心で小さく舌打ちする。
 何かあるのは読めていたので、動かれる前に破壊してしまいたかったが、未知のシチュエーションに警戒していた事もあって反応が僅かに遅れてしまった。

 ユウヤの散弾砲が反応炉へ向けて火を噴くが、エネルギーフィールドに近い防御力場に阻まれて通らない。 

 「だったらこっちはどうだ!?」

 マルメルがハンドレールキャノンを発射。 
 彼の発射した弾体が反応炉の展開したフィールドに阻まれて停止するが、弾体は赤熱しながらその勢いが止まらない。 最終的には貫通こそしなかったが、大きく強度を落とす事に成功した。
 
 同時に着地したユウヤがハンマーを叩きつけてフィールドを破壊。
 同期したふわわが野太刀を一閃。 覆っていた装置を切り裂き、内部の本体に届きはしたが、両断には至っていない。

 「硬いなぁ。 芯まで届かんかった」

 畳みかけるようにヨシナリとグロウモスが銃撃を繰り返し、アルフレッドが榴弾を撃ち込むが、そこまでだった。 反応炉が床に沈み込み。 周囲のゲートが全て開放され、あちこちから水が入って来る。 

 「どうなった!?」
 「反応炉はとんでもないスピードで潜行中。 外に――いや、シャフトか何かが突き出てるのか? ヤバい事になりましたね」

 さっきからシックスセンスから観測されるエネルギー流動が滅茶苦茶だ。
 大半が反応炉を追う形で下へと向かっている。 そしてその向かう先にはとんでもないサイズの動体反応。 

 ――これはやってしまったかもしれない。

 恐らくこれから現れるのはこのイベント最大にして最後の敵。
 トリガーは反応炉への攻撃といった所だろう。 スキャニングした限り、反応炉を追跡する手段はない。 反応炉が沈んだ箇所もゲートのような物で閉鎖されており、物理的に侵入できる場所がないのだ。

 「お、おい、ヨシナリ。 どうするんだ?」
 「――ああなってしまった以上、出てくるのを待つしかない。 一度地上へ戻ろう」
 「出るって言ってもどこから――」
 「正規ルートのゲートが開いてるだろ? そこから出よう」

 水中用の装備は全て捨ててきたので水に浸かるのは不味い。 最低限の情けなのか、地上への道は開いているのでそこから出ればいい。 

 撃破できなかったのは痛いが、ある程度の手傷は与えたのだ。 ここはこれで良しとしよう。
 ただ、出し抜かれたと知った他のプレイヤーの反応を想像すると少しだけ気が重い。
 ヨシナリは近くのゲートに飛び込み、他のメンバーにも来るように促す。

 グロウモス、マルメル、アルフレッドがゲートに飛び込み、僅かに遅れてふわわとユウヤも合流。
 全員が出た事を確認してヨシナリもその背を追うように加速。
 急がないと通路まで浸水するのでさっさと出る必要がある。 向かうと突き当りに巨大な縦穴。

 エレベーターのようだが、動力の反応炉が地下に行ったので動いていない。
 
 「げ、これそのまま上るのか? きっついなぁ……」
 「急げ、水が来るぞ!」

 全機、急上昇。 背後からは水が迫っているであろう事を示す音と振動。 
 位置的に充分に登れる距離のはずなので、逃げるところまでは問題はない。 
 本当の問題は反応炉をどう処分するかなのだが――
 

 地下での異変は当然のように地上に伝わっていた。
 何故なら巨大な地震が発生し、あちこちにある拠点の機能がダウンしたからだ。 
 エネルギーの供給が途切れ、生産設備の機能が制限。 幸いにもメンテナンス用のハンガーはそのまま扱えるが、装備品の生産速度が大きく落ちたのだ。
 
 通常のプレイではまずお目にかかれない派手な爆発を眺めていたポンポンもその変化にいち早く気が付いた一人だ。 基地のエネルギー供給が大きく減少し、地下に巨大なエネルギー反応。
 基地を破壊し続けた事で変化が起こったかと思ったが、発生源は地下だ。

 やや違和感がある。 
 地下に関しては水路がある事ぐらいしか分かっていなかったが、そう言えばと思い出した事があった。 少し前に地下を調べたいからと姿を消した連中がいた事だ。
 
 「ヨシナリの奴、何かしたのか?」

 フレンドリストを確認してヨシナリのステータスを確認すると現在地は不明だが、生きてはいるようだ。 通信は不通だったが、不意に可能になった。
 ポンポンは即座に連絡。 同時に位置も特定可能になった。
 
 地下で現在、ポンポンの居る生産拠点から少し離れた位置――というよりさっき消し飛ばした拠点の真下だった。
 
 「ヨシナリ! 無事だったか!」
 『はは、何とか無事です』
 「さて、あたしが何を聞きたいか分かるよナぁ?」
 『あー、ははは』 
 
 笑ってごまかす態度から何か知っているのは明らかだ。
 カマをかけたのだが、ヨシナリは余裕がないのか見事に引っかかった。
 
 「怒らないから正直に言ってみろ」
 『……本当に怒りませんか?』
 「いいから」
 『あー、実はですね。 地下を調べてたら反応炉らしき物を見つけまして……』
 
 ――思った以上に凄い事を言い出したナ!?

 「……そ、そうか。 で、察するに破壊にしくじったって所か?」
 
 努めて平静を装ってそう返したが、経過時間を考えるとかなり早い。
 恐らくは最初から当たりを付けてたなと思い、何で自分を誘わないんだよ少しだけ腹が立った。
 巨大な兵器を生産してはぶっ放すだけの暇な時間を過ごすより、他のプレイヤー達を出し抜いて反応炉撃破。 そちらの方が比べ物にならないほどに面白そうだった。
 
 『はい、多少のダメージは与えたんですけど逃げられまして』
 「逃げた?」 
 『恐らくなんですが、あの反応炉は敵に接近されると下に逃げて正体を現す仕組みになっていたようで……』
 「おい、正体ってまさか」
 『はい、この地震は恐らく反応炉内蔵のボスエネミーが出現する前兆かと』
 「いきなりクライマックスかぁ、あたしら完全に置いてけぼりだナ」
 『ははは』
 
 もう笑うしかないのかヨシナリは乾いた笑い声をあげる。
 ポンポンはふうと小さく息を吐く。 やってしまったものは仕方がない。 
 
 「分かった。 取り敢えずこっちに合流しろ。 後、今の話は他にするな。 何かあったら吊るし上げられるからナ。 知らん顔をしておけ」
 『いいんですかね?』
 「負けた時、戦犯扱いされたいなら好きにしろ。 ただ、おねーたまにだけは報告させてくれ」
 『そこはお任せします』
 「あぁ、心配するな。 お前には助けてもらった借りもあるし、悪いようにはしないからナ!」
 『助かります。 すぐに合流できると思うので詳しくはその時にでも』
 
 ポンポンは気を付けて戻って来いよとだけ言って通信終了。
 ボス戦に関しては楽しみだが、ツェツィーリエにどう説明したものか。
 うーんと頭を悩ませた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

改大和型戦艦一番艦「若狭」抜錨す

みにみ
歴史・時代
史実の第二次世界大戦が起きず、各国は技術力を誇示するための 「第二次海軍休日」崩壊後の無制限建艦競争に突入した 航空機技術も発達したが、それ以上に電子射撃装置が劇的に進化。 航空攻撃を無力化する防御陣形が確立されたことで、海戦の決定打は再び「巨大な砲」へと回帰した。 そんな中⑤計画で建造された改大和型戦艦「若狭」 彼女が歩む太平洋の航跡は

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

異世界転移魔方陣をネットオークションで買って行ってみたら、日本に帰れなくなった件。

蛇崩 通
ファンタジー
 ネットオークションに、異世界転移魔方陣が出品されていた。  三千円で。  二枚入り。  手製のガイドブック『異世界の歩き方』付き。  ガイドブックには、異世界会話集も収録。  出品商品の説明文には、「魔力が充分にあれば、異世界に行けます」とあった。  おもしろそうなので、買ってみた。  使ってみた。  帰れなくなった。日本に。  魔力切れのようだ。  しかたがないので、異世界で魔法の勉強をすることにした。  それなのに……  気がついたら、魔王軍と戦うことに。  はたして、日本に無事戻れるのか?  <第1章の主な内容>  王立魔法学園南校で授業を受けていたら、クラスまるごと徴兵されてしまった。  魔王軍が、王都まで迫ったからだ。  同じクラスは、女生徒ばかり。  毒薔薇姫、毒蛇姫、サソリ姫など、毒はあるけど魔法はからっきしの美少女ばかり。  ベテラン騎士も兵士たちも、あっという間にアース・ドラゴンに喰われてしまった。  しかたがない。ぼくが戦うか。  <第2章の主な内容>  救援要請が来た。南城壁を守る氷姫から。彼女は、王立魔法学園北校が誇る三大魔法剣姫の一人。氷結魔法剣を持つ魔法姫騎士だ。  さっそく救援に行くと、氷姫たち守備隊は、アース・ドラゴンの大軍に包囲され、絶体絶命の窮地だった。  どう救出する?  <第3章の主な内容>  南城壁第十六砦の屋上では、三大魔法剣姫が、そろい踏みをしていた。氷結魔法剣の使い手、氷姫。火炎魔法剣の炎姫。それに、雷鳴魔法剣の雷姫だ。  そこへ、魔王の娘にして、王都侵攻魔王軍の総司令官、炎龍王女がやって来た。三名の女魔族を率いて。交渉のためだ。だが、炎龍王女の要求内容は、常軌を逸していた。  交渉は、すぐに決裂。三大魔法剣姫と魔王の娘との激しいバトルが勃発する。  驚異的な再生能力を誇る女魔族たちに、三大魔法剣姫は苦戦するが……  <第4章の主な内容>  リリーシア王女が、魔王軍に拉致された。  明日の夜明けまでに王女を奪還しなければ、王都平民区の十万人の命が失われる。  なぜなら、兵力の減少に苦しむ王国騎士団は、王都外壁の放棄と、内壁への撤退を主張していた。それを拒否し、外壁での徹底抗戦を主張していたのが、臨時副司令官のリリーシア王女だったからだ。  三大魔法剣姫とトッキロたちは、王女を救出するため、深夜、魔王軍の野営陣地に侵入するが……

貞操逆転世界に転生してイチャイチャする話

やまいし
ファンタジー
貞操逆転世界に転生した男が自分の欲望のままに生きる話。

勇者辞めます

緑川
ファンタジー
俺勇者だけど、今日で辞めるわ。幼馴染から手紙も来たし、せっかくなんで懐かしの故郷に必ず帰省します。探さないでください。 追伸、路銀の仕送りは忘れずに。

If太平洋戦争        日本が懸命な判断をしていたら

みにみ
歴史・時代
もし、あの戦争で日本が異なる選択をしていたら? 国力の差を直視し、無謀な拡大を避け、戦略と外交で活路を開く。 真珠湾、ミッドウェー、ガダルカナル…分水嶺で下された「if」の決断。 破滅回避し、国家存続をかけたもう一つの終戦を描く架空戦記。 現在1945年夏まで執筆

【なろう490万pv!】船が沈没して大海原に取り残されたオッサンと女子高生の漂流サバイバル&スローライフ

海凪ととかる
SF
離島に向かうフェリーでたまたま一緒になった一人旅のオッサン、岳人《がくと》と帰省途中の女子高生、美岬《みさき》。 二人は船を降りればそれっきりになるはずだった。しかし、運命はそれを許さなかった。  衝突事故により沈没するフェリー。乗員乗客が救命ボートで船から逃げ出す中、衝突の衝撃で海に転落した美岬と、そんな美岬を助けようと海に飛び込んでいた岳人は救命ボートに気づいてもらえず、サメの徘徊する大海原に取り残されてしまう。  絶体絶命のピンチ! しかし岳人はアウトドア業界ではサバイバルマスターの通り名で有名なサバイバルの専門家だった。  ありあわせの材料で筏を作り、漂流物で筏を補強し、雨水を集め、太陽熱で真水を蒸留し、プランクトンでビタミンを補給し、捕まえた魚を保存食に加工し……なんとか生き延びようと創意工夫する岳人と美岬。  大海原の筏というある意味密室空間で共に過ごし、語り合い、力を合わせて極限状態に立ち向かううちに二人の間に特別な感情が芽生え始め……。 はたして二人は絶体絶命のピンチを生き延びて社会復帰することができるのか?  小説家になろうSF(パニック)部門にて490万pv達成、日間/週間/月間1位、四半期2位、年間/累計3位の実績あり。 カクヨムのSF部門においても高評価いただき90万pv達成、最高週間2位、月間3位の実績あり。  

処理中です...