Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第389話

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 「――さて、賭けの報酬も振り込まれた事ですし、ふわわさんが提案してくれたユニオンホームのリフォームでもしましょうか」

 感想戦も終わり、意見や反省点も出尽くし、話が途切れた所でヨシナリが次の話題に移行した。
 
 「前のイベント報酬も来てるからそれで弄るんやんな! どうするん?」
 「あれから考えたんですけど取り敢えず一人一部屋、広さは八畳ぐらいで各自で管理するって感じでどうですかね? 共用部分に関しては話し合いで決めましょう」

 これに関しては理由があった。 賞金が一番多かったのはヨシナリの430Pだったので、彼に権利があった。
 ヨシナリとしては模様替えに欠片も興味がなかったのだが、やらないと言えば角が立つと考えてこうなったのだ。

 ホームのレイアウトに関しては個人で好きに弄れる空間を用意しておけば、緩衝材として機能すると考えた。 共用部分に関しては適当に家具でも置けばいいし、弄りたがる奴が居るのなら申告制にして許可を出す形にすれば揉めないだろうと判断。

 ――それにしても――

 この賞金システムも謎だった。 
 恐らくはイベントでの個々人の立ち回りをスコア化して決めたのだろうが、基準がよく分からない。
 ヨシナリは430だったが、同じチームのホーコートは30P。 この差は一体なんだ?
 
 ちなみにマルメルは早々に脱落した事が響いたのか120。
 最終戦まで残ったふわわは290、同じく残ったグロウモスは235、シニフィエは途中脱落らしく95。
 恐らくは脱落したラウンドで上限が変わってくると思われるが、ホーコートの低さが気になる。

 単に立ち回りの問題か? 思い返してもホーコートは――いや、目立った活躍をしなかったからか?
 
 ――分からん。

 「実を言うともう準備は出来ているので、各自自室を弄って一通り終わったら共用部分の相談しましょう」

 気にはなるが考えても仕方がないとも思うので努めて気にせずに話を続ける。

 「あ、あのー、先輩。 それって俺も貰える感じですか?」
 「あぁ、そのつもりだけど?」

 メンバーである以上、可能な限り公平に扱うつもりなのでホーコートにも部屋を振り分けるつもりだ。 当然、ここに居ないユウヤの分も用意してある。
 ヨシナリの言葉にホーコートは嬉しそうに何度も頷いた。

 「はい、話は決まったのでホームのリフォームを開始するのでいったん出てください」

 全員を外に出した後、ヨシナリはユニオンホームの管理メニューを呼び出す。
 操作してホームの間取りを変える。 基本的にユニオンホームのリフォームは金さえ払えば大抵の事には対応してくれるが、維持費が上がるのでヨシナリとしてはあまりメリットを感じなかった。

 それでも投資する事で士気が上がるのなら安い物だろう。
 他人のやる気は金で買えないからな。 そんな事を考えている内にリフォームが完了。
 円形の共用スペースに扉がメンバーの人数分。 家具はそのままなので広い空間の真ん中にソファーと小さなテーブル、後はパイプ椅子がぽつんと置かれているだけの殺風景な状態となってしまった。

 「広くなると家具のなさが際立つな」

 そう呟くとマルメル達が戻って来た。

 「おー、かなり広くなってるな!」
 「ちゃんと部屋がある! なぁ、ヨシナリ君、好きなの選んでええの?」
 「どれも間取りが一緒なので好きな所をどうぞ」

 ヨシナリがそう言うと全員が散って部屋を選んで入る。 
 全員が部屋を決めた所で余った部屋を貰う。 八畳の何もない空間。
 流石に何も置かないのは良くないと判断してヨシナリはショップを呼び出し、家具の項目をチェック。

 「えーっと、適当にベッドと壁紙と――」

 正直、ゲーム内で寛ぐぐらいならログアウトすればいいといった考えなので安物の家具を揃えるが、一つだけ少しだけ高い家具を購入した。 大型モニターと再生機器だ。
 壁一面を占有するレベルの巨大なモニターを設置し、再生機器でリプレイ映像を再生する。

 正直、ウインドウの可視化でも充分に対応できる上、不満がなかったので気が向いたらこれで再生しよう。 そんな事を考えて飾りつけは完了だ。
 壁紙は特に飾り気のないコンクリートの打ちっ放しを再現した物にした。

 正直、十分もかからなかったが、一応は片付いたので外に出る。
 共用スペースにはホーコートがソファーに座っていた。 

 「早いな。 もういいのか?」
 「あぁ、先輩。 いや、金ねーんで選ぶ余地がないんですよ」
 「はは、だったら稼がないとな」

 ホーコートは苦笑し、ややあって沈黙。 
 ヨシナリもこれは良くないと思いつつもパッと話題が出てこなかった。
 
 「……先輩、どうやったら強くなれますかね」
 
 不意にホーコートがそんな事を言い出した。 
 抽象的な質問だったので即答は難しい。

 「明確な答えのない質問だから、人それぞれとしかしか言えないな」
 「はは、そっすよねー。 参考までに先輩達がどうやって強くなっていったのかを聞かせてくださいよ」
 「どうやってねぇ……」

 ホーコートの質問にヨシナリは小さく首を傾げる。 
 ヨシナリはこういった事はトライ&エラーの繰り返しで、自分なりの答えを手探りで見つけて来た。
 その為、どうやって強くなるんだと聞かれても必要なもの、必要かもしれないものを買う。

 技術であるならできるようになるまで反復練習しかない。
 ただ、他人を見て、そいつがどういった事に適性があるのかはぼんやりと見えるのでやんわりと「これは向いてるんじゃないか?」と勧める事は出来る。

 それで言うのならホーコートに足りないのは地力だ。 
 最低限、例のチートの半分ぐらいまで他の動きのクオリティを上げる事が彼の課題と言えるだろう。
 何度もホーコートの訓練に付き合った事で彼の実力に関しては凡そ知れた。
 
 碌に考えず、勢いだけで弾をばら撒くだけの戦い方。 
 そんなスタイルの為、繊細な立ち回りが要求される近、遠距離の適性は非常に低い。 
 勢いだけなので自分なりの戦い方の組み立てもないので、今の戦闘スタイルも消去法の結果だ。

 初めて会った頃のマルメルも似た傾向にあったが、今の彼は中衛としての戦い方を確立している。
 始めた初期からの付き合いなので一緒に強くなって来たという思いもあって、ヨシナリはマルメルの事を特に信頼していた。 少なくとも誰に背中を守って欲しいかと聞かれれば真っ先に名前を挙げるだろう。 

 「きつい言い方になるとは思うけど、今のお前には圧倒的に地力が足りていない。 まずは自分に何が出来て何ができないのかを知る事から始めたらどうだ?」

 流石に口には出さないが、ヨシナリは今のホーコートにはあまり多くを期待していなかった。
 だからと言って見放すような真似はしないが期待していない分、どんな失敗をしても何の感情も抱かないだろう。
 そこまで考えてはて?と内心で首を傾げる。 我ながら随分と薄情な考えだったからだ。

 ホーコートの事を嫌っている訳ではないのだが、どうにも対応が塩っぽくなってしまう。
 何故だろうと考えたが理由はさっぱり分からなかった。
 当の本人はヨシナリの言葉をどこまで理解できているのか考え込むように沈黙したが、ややあって立ち上がる。

 「よく分からないんでランク戦に行ってきます」
 「あぁ、それでいい。 何となくでもやってれば何か見えてくるかもしれないし、場数を踏むのは悪い事じゃないと思う」

 ホーコートはそっすねと応えるとウインドウを操作してランク戦に参加。
 マッチングが成立するとさっさと移動してしまった。 アドバイスはするが強要、強制はしないので好きにすればいい。 楽しみ方は人それぞれだ。 
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