Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

文字の大きさ
530 / 787

第530話

しおりを挟む
 「はっ、こいつら大した事ねーナ!」

 中でもシックスセンスを扱っているポンポンは特に処理が早かった。
 レーザーで狙って来る相手は先制して銃撃し、散弾銃持ちは突っ込んで来たタイミングで急旋回をかけて背後を取って拳銃で一撃。 フィールドで防御しようとした相手は薄い部分を狙う。

 「ですね。 数はいますけど思ったほど大した事ないですよ」

 ヨシナリも対処に慣れてきたのでアシンメトリーからアトルムとクルックスに持ち替えて敵機を順番に撃墜する。 狙い目はこちらに意識を向けていない機体だ。
 高出力の兵装を使う関係でフィールドを全面展開ではなく、局所展開しかできないのがかなり致命的だった。 防御に意識を割いた瞬間にがら空きの所に撃ち込めばあっさりと墜とせる。

 そもそも挙動の何割かをチートに頼っているような連中な上、回避、攻撃モーションもホーコートのよりバリエーションが多い程度なので慣れると簡単に回避先を狙えるのも楽な要因だった。
 特にホーコートが多用している右旋回はもはや見慣れたと言っていいレベルなので、使って来たら遠慮なく狩りに行く。 目の前で右旋回した機体の回避先にバースト射撃。

 吸い込まれるようにコックピット部分に命中してそのまま撃破。 
 ヨシナリを脅威と認識したのか赤い機体が急旋回でヨシナリの背後を取ろうとしてきたが、機体を振り回すようにその場で横回転。 鞭のようにしならせた蹴りを放ち、銃身を蹴り飛ばす。

 逸らした所を至近距離から一撃。 敵機が爆散したのを確認せずに意識は次の標的へ。
 運営の狙いとしては戦況を傾けるつもりで投入した機体なのだろうが、思った以上にプレイヤー側が崩れていない。 

 「機体の性能は良いのにもったいないナ」 
 「明らかに使いこなせてませんからね」

 正直、これまでのイベントで一番ヌルいのではないかと思ってしまう。
 加えて――戦場の一か所を見てヨシナリは思わず笑ってしまった。
 何故なら敵の機体の一部が味方の識別信号を出して戦っている。

 これが敵の欺瞞工作等であるなら面倒な事をしやがってと思うが、実際は機体を奪ったプレイヤーが乗り回して敵に襲い掛かっているのだ。 これで笑うなという方が無理な話だろう。
 
 「機体パクられてる奴滅茶苦茶居て笑っちまうな」

 マルメルの言う通りだった。 結構な数の低ランクプレイヤーが例の機体で暴れまわっている。
 
 ――これ、本当に大丈夫なんだろうな?

 上手く行きすぎて不気味さすら感じられる。 
 こうしている間にも味方は敵の船や機体を強奪して戦力を増強しているのだ。
 施設の方はエネミーの無限湧きが収まっていない事もあって一進一退といった様子ではあるが、今の所は一層で抑えられている。 時計を確認すると既に三時間が経過していた。

 イベントは十二時間。 もう四分の一が消化された事になるが、敵の勢いはそのままだ。
 敵は次々と出て来るので楽ではないのは確かだが、畳みかけてこないのが引っ掛かる。
 まるでこの状態を維持したいといった意図が見えるが、何故維持したいのかが分からないのだ。

 ――不気味ではあるが使えるものは有効活用するべきか。

 「気になる事は多いですが補給と整備を兼ねて交代で休憩に入りましょう!」

 まだまだ先は長いのだ。 休める時に休んでおくべきだろう。 
 その後は数名でローテーションを組んで休憩に入り、ヨシナリも機体を戦艦内のハンガーに預けて休息を取る。 ログアウトはせずに何が起きても対応できるように機体の中で眼を閉じた。
 
 アバターではあるが視界を閉ざして力を抜く事で多少は気持ちが休まる。
 だが、思考はこのイベント戦への分析に割かれていた。 
 運営の意図は気にはなるが今は棚上げにし、次は何を仕掛けてくるかだ。

 以前のイベント戦ではどうだったかと記憶を掘り起こす。
 基本的にこの運営の攻め方は数での圧殺だ。 
 それができないなら巨大兵器を繰り出して抉じ開ける。

 だから傾向的にそろそろ大物が出て来るのではないかと思っていたのだが、今回は外してきた。 
 
 「いや、順番が違うだけで次に来るのか?」
 
 思わず呟く。 来るとしたらどこだろうか?
 思考を切り替える。 自分が運営ならどう攻める? 
 目的は基地の破壊だ。 制圧ではなく破壊なので攻撃側のハードルは低い。
 
 ――まぁ、単純に焼き払うのが手っ取り早い。

 さて、ならそれを行うに当たって都合がいいのは何だ?
 これまでに遭遇したエネミーを思い出す。 メガロドン型? それともカタツムリ型?
 いや、有人操作の機体が主戦力であるなら最適なのは――

 不意にズンと衝撃音が響く。 ヨシナリは目を見開き、ホロスコープを起動。
 
 「何があった?」 
 
 通信の相手はマルメル。 返事は即座で声は引き攣るように笑っていた。

 『いやぁ、これまでちょっとヌルいなーとか思ってたんだけど、いきなり本気出してきやがったぞ』
 「何が出てきた?」

 質問しながら外へと飛び出す。 視界に戦場が広がるが、巨大な異物が目を引く。
 
 「まぁ、そう来るよなぁ……」

 この状況での最適解。 最も効率よくプレイヤーを苦しめる事ができる機体。
 数十メートルクラスの巨体、イソギンチャク型だ。
 それが基地を囲むように十数機。 以前の防衛戦で猛威を振るったあの化け物が複数。

 最も厄介なのは基地を取り囲むように配置されている事だ。 
 あのエネミー――システム上は強化装甲扱いなので武装なのだが――にはあの凄まじい破壊力のレーザーがある。 それが意味する所は――

 『クソがっ!! またあいつかよ! 基地の中へ逃げろ! 地上はもう駄目だ』
 
 誰かが通信でそう叫ぶ。 ヨシナリも全くの同意見だった。
 全てのイソギンチャクが口を大きく開き、エネルギーが収束していく。
 
 「あぁ、畜生。 数を繰り出してくるとかありかよ!」

 シックスセンスでエネルギー流動を確認。 
 エネルギーの流れは何も攻撃のタイミングだけでなく、機体の挙動を予測するのにも使える。
 ヨシナリが知りたいのは上か下かだ。 形状的にそこまで深い角度で撃てないとは思うが――

 「フカヤさん! 北東方向へ全速で後退を! 急いで!」
 『わ、分かった!』

 ふざけた事に半分は下。 残りは上を狙ってる。
 明らかに味方ごと葬ろうとしているのは明白だ。 急いで射線から逃れなければならない。
 その間にヨシナリは近くの船にも北東方面に逃げるように促す。

 やがてイソギンチャクのチャージが済み――光が放たれた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

改大和型戦艦一番艦「若狭」抜錨す

みにみ
歴史・時代
史実の第二次世界大戦が起きず、各国は技術力を誇示するための 「第二次海軍休日」崩壊後の無制限建艦競争に突入した 航空機技術も発達したが、それ以上に電子射撃装置が劇的に進化。 航空攻撃を無力化する防御陣形が確立されたことで、海戦の決定打は再び「巨大な砲」へと回帰した。 そんな中⑤計画で建造された改大和型戦艦「若狭」 彼女が歩む太平洋の航跡は

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

異世界転移魔方陣をネットオークションで買って行ってみたら、日本に帰れなくなった件。

蛇崩 通
ファンタジー
 ネットオークションに、異世界転移魔方陣が出品されていた。  三千円で。  二枚入り。  手製のガイドブック『異世界の歩き方』付き。  ガイドブックには、異世界会話集も収録。  出品商品の説明文には、「魔力が充分にあれば、異世界に行けます」とあった。  おもしろそうなので、買ってみた。  使ってみた。  帰れなくなった。日本に。  魔力切れのようだ。  しかたがないので、異世界で魔法の勉強をすることにした。  それなのに……  気がついたら、魔王軍と戦うことに。  はたして、日本に無事戻れるのか?  <第1章の主な内容>  王立魔法学園南校で授業を受けていたら、クラスまるごと徴兵されてしまった。  魔王軍が、王都まで迫ったからだ。  同じクラスは、女生徒ばかり。  毒薔薇姫、毒蛇姫、サソリ姫など、毒はあるけど魔法はからっきしの美少女ばかり。  ベテラン騎士も兵士たちも、あっという間にアース・ドラゴンに喰われてしまった。  しかたがない。ぼくが戦うか。  <第2章の主な内容>  救援要請が来た。南城壁を守る氷姫から。彼女は、王立魔法学園北校が誇る三大魔法剣姫の一人。氷結魔法剣を持つ魔法姫騎士だ。  さっそく救援に行くと、氷姫たち守備隊は、アース・ドラゴンの大軍に包囲され、絶体絶命の窮地だった。  どう救出する?  <第3章の主な内容>  南城壁第十六砦の屋上では、三大魔法剣姫が、そろい踏みをしていた。氷結魔法剣の使い手、氷姫。火炎魔法剣の炎姫。それに、雷鳴魔法剣の雷姫だ。  そこへ、魔王の娘にして、王都侵攻魔王軍の総司令官、炎龍王女がやって来た。三名の女魔族を率いて。交渉のためだ。だが、炎龍王女の要求内容は、常軌を逸していた。  交渉は、すぐに決裂。三大魔法剣姫と魔王の娘との激しいバトルが勃発する。  驚異的な再生能力を誇る女魔族たちに、三大魔法剣姫は苦戦するが……  <第4章の主な内容>  リリーシア王女が、魔王軍に拉致された。  明日の夜明けまでに王女を奪還しなければ、王都平民区の十万人の命が失われる。  なぜなら、兵力の減少に苦しむ王国騎士団は、王都外壁の放棄と、内壁への撤退を主張していた。それを拒否し、外壁での徹底抗戦を主張していたのが、臨時副司令官のリリーシア王女だったからだ。  三大魔法剣姫とトッキロたちは、王女を救出するため、深夜、魔王軍の野営陣地に侵入するが……

貞操逆転世界に転生してイチャイチャする話

やまいし
ファンタジー
貞操逆転世界に転生した男が自分の欲望のままに生きる話。

勇者辞めます

緑川
ファンタジー
俺勇者だけど、今日で辞めるわ。幼馴染から手紙も来たし、せっかくなんで懐かしの故郷に必ず帰省します。探さないでください。 追伸、路銀の仕送りは忘れずに。

If太平洋戦争        日本が懸命な判断をしていたら

みにみ
歴史・時代
もし、あの戦争で日本が異なる選択をしていたら? 国力の差を直視し、無謀な拡大を避け、戦略と外交で活路を開く。 真珠湾、ミッドウェー、ガダルカナル…分水嶺で下された「if」の決断。 破滅回避し、国家存続をかけたもう一つの終戦を描く架空戦記。 現在1945年夏まで執筆

【なろう490万pv!】船が沈没して大海原に取り残されたオッサンと女子高生の漂流サバイバル&スローライフ

海凪ととかる
SF
離島に向かうフェリーでたまたま一緒になった一人旅のオッサン、岳人《がくと》と帰省途中の女子高生、美岬《みさき》。 二人は船を降りればそれっきりになるはずだった。しかし、運命はそれを許さなかった。  衝突事故により沈没するフェリー。乗員乗客が救命ボートで船から逃げ出す中、衝突の衝撃で海に転落した美岬と、そんな美岬を助けようと海に飛び込んでいた岳人は救命ボートに気づいてもらえず、サメの徘徊する大海原に取り残されてしまう。  絶体絶命のピンチ! しかし岳人はアウトドア業界ではサバイバルマスターの通り名で有名なサバイバルの専門家だった。  ありあわせの材料で筏を作り、漂流物で筏を補強し、雨水を集め、太陽熱で真水を蒸留し、プランクトンでビタミンを補給し、捕まえた魚を保存食に加工し……なんとか生き延びようと創意工夫する岳人と美岬。  大海原の筏というある意味密室空間で共に過ごし、語り合い、力を合わせて極限状態に立ち向かううちに二人の間に特別な感情が芽生え始め……。 はたして二人は絶体絶命のピンチを生き延びて社会復帰することができるのか?  小説家になろうSF(パニック)部門にて490万pv達成、日間/週間/月間1位、四半期2位、年間/累計3位の実績あり。 カクヨムのSF部門においても高評価いただき90万pv達成、最高週間2位、月間3位の実績あり。  

処理中です...