Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

文字の大きさ
540 / 786

第540話

しおりを挟む
 ――と、いう話をオープンな通信を用いて行った。

 「フカヤさん。 お願いします。 あ、全速力ではなくていいです、気持ちゆっくり目で」
 「え? うん、分かった」

 戦艦の艦首が上を向き、敵の要塞へと向かっていく。 
 当然ながら敵も黙って通してくれる訳がない――が、ついさっきヨシナリが全プレイヤーに聞こえるように突入するといった言葉を拾った者達が呼応して次々と敵の要塞へと向かい始めたのだ。

 「ヨシナリ君……」
 「お前、いい性格してるナ」

 意図に気付いたタヂカラオはやや呆れ気味に、ポンポンはやや引いていた。

 「弾避けは必要でしょう?」

 単艦で行った所で落とされるのが目に見えているのだ。 
 なら他を巻き込んで被弾リスクを避けるのは当然だった。 
 唆しはしたが行くと判断したのは彼らなのだ。 非難される謂れはないはずだった。

 通信の効果は覿面だ。 特に前回のイベントで決定打を浴びせたヨシナリの言葉なのだ。
 悔しいと感じたものは自分こそが今回のイベントクリアの栄誉を手に入れてやろうと我勝ちにと要塞に殺到する。 

 そして要塞から出撃する艦隊とぶつかり、空中では凄まじい戦闘が繰り広げられてた。
 変化はそれだけで終わらない。 
 どうやら要塞攻略というのは中々に魅力的に聞こえたようだ。
 英雄志願のプレイヤー達の一部が基地の防衛を放り捨てて飛び出してきたのは少し意外だったが。

 ――どう動く。

 ヨシナリはフカヤの操る戦艦を狙う敵機を落としながら要塞をフォーカス。
 距離もあるが何よりも内部のエネルギー反応が多すぎてどうなっているのかが把握できない。
 ただ、目を凝らせばあちこちに砲台らしきものがあるので下手に近寄ると碌な事にならないのは明らかだ。 

 侵入経路に関しては考える必要はないだろう。
 何故なら敵の戦艦を吐き出している穴があちこちにあるのだ。 
 そこから入ればいい。 ただ、どこから入れば中枢に近いのかは見極める必要がある。

 フォーメーションとしては戦艦を中心に甲板にマルメル、グロウモスとヴルトム達。
 左にツガルとポンポン、右にヨシナリとタヂカラオ。
 まんまるはやや後ろで砲撃、ベリアル、ニャーコは遊撃として飛び回る。

 「ヨシナリ君。 君はどう見る?」
 
 数が居るのでタヂカラオのエネルギーリングがかなり有効だ。
 リングを潜った敵機が次々と行動不能になるのでそこを仕留めながらヨシナリが振り返る。

 「あの要塞の防備ですよね」
 「あぁ、まだ距離があるから撃って来ないと思いたいが、上を取っているのに撃たない理由が分からない。 本来なら誤射を嫌ってと思う所だが……」
 「はい、今回に関してはそれは当てはまらない」

 イソギンチャクの砲撃についさっきの隕石落としと明らかに味方を巻き込む事を許容している。
 そんな相手が今更、誤射を気にする訳がなかった。 

 「僕としてはあまりいい予感はしないね」
 「えぇ、撃たないのは単純に届かないからでしょう。 射程に制限がある時点で実弾兵器ではありませんね」
 「同じ理由でレーザーも考え難い。 だが、光学兵器であるとは思うよ」
 「これだけ判断材料が揃ってるんです。 もう察してるんでしょう」

 そう、タヂカラオは質問ではなく確認作業を行っていたのだ。
 この条件に合致する武装に心当たりがあった。 それは――

 『――プラズマキャノン』

 
 ――よし、先行できている。

 コンシャスは遥か下方に居るヨシナリ達の位置を確認して拳を握る。 
 彼と彼の率いるユニオン『カヴァリエーレ』は戦艦を三隻手に入れており、内部にあった敵の量産機の強奪にも成功していた。 

 他と協力してどうにかウツボを撃破した所で敵要塞が出現し、驚いている間にヨシナリがオープンチャンネルで仕掛けに行くと宣言したのを聞いてやる事は決まった。
 あの連中を出し抜いてやるのだ。 

 コンシャスにとって『星座盤』は敵だが、足を引っ張るような真似――要は直接的な妨害を行う気はない。
 なら連中に一泡吹かせる為に必要な事は何か? そう、獲物を横取りする事だ。
 これから先行して敵の要塞に突入し、居るであろう敵のボスを叩く。
 
 居ないのなら要塞の動力を破壊して無力化を狙うのだ。 
 その為には誰よりも先に突入し、誰よりも早く中枢を目指す必要があった。
 現在、コンシャス達は先頭で敵の防衛線を切り裂くように掘り進んでいる。

 それが出来たのには理由があった。 戦艦の力だ。
 戦艦にはエネルギーフィールドが展開可能なのだが、三隻を密集させてフィールドを前面に集中する事で密度を大幅に引き上げたのだ。 
 
 戦艦を盾にする形になっているのでかなり無理をさせてしまうが、内部に入ってしまえば使えなくなる可能性が高いのだ。 最悪、使い潰しても問題はない。
 
 「要塞の各所から高エネルギー反応。 追加じゃない! 攻撃が来る!」

 索敵担当からの警告が飛ぶ。 センサーシステムをリンクさせて観測結果を確認。
 数が多い点からも大砲はない。 つまりこのままゴリ押しで行ける。
 
 「フィールドへのエネルギー割り振りを増やせ! 中にさえ入ってしまえばどうにでもなる!」

 何を飛ばしてくるのかは読めていた。 
 そして彼の予想は正しく、要塞から弾速の遅い無数の球体が飛んでくる。
 
 プラズマキャノン。 類似武装であるプラズマグレネードというものも存在する。
 榴弾に近い運用のされる武装でレーザーやエネルギー弾と比較して射程が短いが、炸裂する事で広い範囲を焼き払える事と発射前に爆発のタイミングをある程度決める事ができる事もあって慣れれば使い勝手は良い。 

 ただ、エネルギーフィールドとの相性が余り良くないので防御を固めた戦艦なら突破は可能と睨んでいた。 
 無数の光球が炸裂し、高熱が範囲内に撒き散らされる。 当然のように味方が居てもお構いなしだ。
 プレイヤーが使用しているそれとは威力が段違いではあったがそれだけだった。
 
 戦艦のエネルギーフィールドはプラズマを完全に防ぎきった――が、次の瞬間に飛んで来たレーザーに細切れになった後に爆発。
 コンシャスは咄嗟に躱して無事だったが、今のでユニオンメンバーの半数以上が脱落した。

 戦艦を中心に鋒矢の陣に近いフォーメーションで進んでいたのが仇になり、レーザーだけでなく戦艦の爆発に巻き込まれた機体が多かったのだ。
 
 「く、やってくれる」

 何故、最初から使わなかったという疑問は畳みかけるように仕掛けられた次の攻撃の前に霧散した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【なろう490万pv!】船が沈没して大海原に取り残されたオッサンと女子高生の漂流サバイバル&スローライフ

海凪ととかる
SF
離島に向かうフェリーでたまたま一緒になった一人旅のオッサン、岳人《がくと》と帰省途中の女子高生、美岬《みさき》。 二人は船を降りればそれっきりになるはずだった。しかし、運命はそれを許さなかった。  衝突事故により沈没するフェリー。乗員乗客が救命ボートで船から逃げ出す中、衝突の衝撃で海に転落した美岬と、そんな美岬を助けようと海に飛び込んでいた岳人は救命ボートに気づいてもらえず、サメの徘徊する大海原に取り残されてしまう。  絶体絶命のピンチ! しかし岳人はアウトドア業界ではサバイバルマスターの通り名で有名なサバイバルの専門家だった。  ありあわせの材料で筏を作り、漂流物で筏を補強し、雨水を集め、太陽熱で真水を蒸留し、プランクトンでビタミンを補給し、捕まえた魚を保存食に加工し……なんとか生き延びようと創意工夫する岳人と美岬。  大海原の筏というある意味密室空間で共に過ごし、語り合い、力を合わせて極限状態に立ち向かううちに二人の間に特別な感情が芽生え始め……。 はたして二人は絶体絶命のピンチを生き延びて社会復帰することができるのか?  小説家になろうSF(パニック)部門にて490万pv達成、日間/週間/月間1位、四半期2位、年間/累計3位の実績あり。 カクヨムのSF部門においても高評価いただき90万pv達成、最高週間2位、月間3位の実績あり。  

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

改大和型戦艦一番艦「若狭」抜錨す

みにみ
歴史・時代
史実の第二次世界大戦が起きず、各国は技術力を誇示するための 「第二次海軍休日」崩壊後の無制限建艦競争に突入した 航空機技術も発達したが、それ以上に電子射撃装置が劇的に進化。 航空攻撃を無力化する防御陣形が確立されたことで、海戦の決定打は再び「巨大な砲」へと回帰した。 そんな中⑤計画で建造された改大和型戦艦「若狭」 彼女が歩む太平洋の航跡は

異世界転移魔方陣をネットオークションで買って行ってみたら、日本に帰れなくなった件。

蛇崩 通
ファンタジー
 ネットオークションに、異世界転移魔方陣が出品されていた。  三千円で。  二枚入り。  手製のガイドブック『異世界の歩き方』付き。  ガイドブックには、異世界会話集も収録。  出品商品の説明文には、「魔力が充分にあれば、異世界に行けます」とあった。  おもしろそうなので、買ってみた。  使ってみた。  帰れなくなった。日本に。  魔力切れのようだ。  しかたがないので、異世界で魔法の勉強をすることにした。  それなのに……  気がついたら、魔王軍と戦うことに。  はたして、日本に無事戻れるのか?  <第1章の主な内容>  王立魔法学園南校で授業を受けていたら、クラスまるごと徴兵されてしまった。  魔王軍が、王都まで迫ったからだ。  同じクラスは、女生徒ばかり。  毒薔薇姫、毒蛇姫、サソリ姫など、毒はあるけど魔法はからっきしの美少女ばかり。  ベテラン騎士も兵士たちも、あっという間にアース・ドラゴンに喰われてしまった。  しかたがない。ぼくが戦うか。  <第2章の主な内容>  救援要請が来た。南城壁を守る氷姫から。彼女は、王立魔法学園北校が誇る三大魔法剣姫の一人。氷結魔法剣を持つ魔法姫騎士だ。  さっそく救援に行くと、氷姫たち守備隊は、アース・ドラゴンの大軍に包囲され、絶体絶命の窮地だった。  どう救出する?  <第3章の主な内容>  南城壁第十六砦の屋上では、三大魔法剣姫が、そろい踏みをしていた。氷結魔法剣の使い手、氷姫。火炎魔法剣の炎姫。それに、雷鳴魔法剣の雷姫だ。  そこへ、魔王の娘にして、王都侵攻魔王軍の総司令官、炎龍王女がやって来た。三名の女魔族を率いて。交渉のためだ。だが、炎龍王女の要求内容は、常軌を逸していた。  交渉は、すぐに決裂。三大魔法剣姫と魔王の娘との激しいバトルが勃発する。  驚異的な再生能力を誇る女魔族たちに、三大魔法剣姫は苦戦するが……  <第4章の主な内容>  リリーシア王女が、魔王軍に拉致された。  明日の夜明けまでに王女を奪還しなければ、王都平民区の十万人の命が失われる。  なぜなら、兵力の減少に苦しむ王国騎士団は、王都外壁の放棄と、内壁への撤退を主張していた。それを拒否し、外壁での徹底抗戦を主張していたのが、臨時副司令官のリリーシア王女だったからだ。  三大魔法剣姫とトッキロたちは、王女を救出するため、深夜、魔王軍の野営陣地に侵入するが……

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

勇者辞めます

緑川
ファンタジー
俺勇者だけど、今日で辞めるわ。幼馴染から手紙も来たし、せっかくなんで懐かしの故郷に必ず帰省します。探さないでください。 追伸、路銀の仕送りは忘れずに。

If太平洋戦争        日本が懸命な判断をしていたら

みにみ
歴史・時代
もし、あの戦争で日本が異なる選択をしていたら? 国力の差を直視し、無謀な拡大を避け、戦略と外交で活路を開く。 真珠湾、ミッドウェー、ガダルカナル…分水嶺で下された「if」の決断。 破滅回避し、国家存続をかけたもう一つの終戦を描く架空戦記。 現在1945年夏まで執筆

処理中です...