Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

文字の大きさ
545 / 786

第545話

しおりを挟む
 楽しい! とても楽しい! 
 ジョゼは獲物を狩る快感に酔いしれていた。 彼女の仕事はプレイヤーを試す事。
 事前に提出された評価シートを参考にそれが適切であったかの確認作業も含まれている

 やり方は一任されている以上、好きにしていいという事だ。
 この要塞内部は彼女の機体とリンクしているのでどこにいようが即座に分かる。
 もはや胎内といっても過言ではない。 

 中に入って来た獲物のステータスを確認し、面白そうなプレイヤーの下へと空間転移で向かう。
 要塞の管理者権限で内部に限っては転移に距離の制限がないので好きな時に好きな所へ行ける。

 誰も逃がさない。 そして誰にも渡さない。 
 侵入は比較的、容易にしてあるが出る際には防衛システムが全力で妨害するように設定している。
 この要塞内部で行動しているのはジョゼの機体のみ。 防衛戦力は全て外に吐き出している。

 精製している機体も全て外部の防衛と基地の攻略に費やしているので、要塞内はほぼ空っぽだ。
 中枢を落とされれば困った事にはなるがルートを制限しているので何の問題もない。
 真っすぐに向かう者が居れば彼女が直接対処すればいいのだから。

 Aランクを中心に入って来たプレイヤーを順番に相手したのだが、やはり歯応えがない。
 地域的に日本は後進のサーバーなので全体のレベルが総じて低い。 
 一部、突出した強さのプレイヤーもいるにはいるが数はあまり多くない。

 ジョゼとしてはオーバーSランクと戦えない事が不満で仕方がなかった。
 上の意向としてはもう評価が覆りようがない上、Ωまで与えているので試す必要がないのだ。
 その為、今回――いや、これ以降のほとんどのイベントに対して彼は出場禁止を言い渡された。

 ボビーが負けたという話を聞いていたので是非ともその実力を試したいと思っていたのだが、その機会はしばらくは訪れそうにないだろう。 

 ――あぁ、残念。

 ラーガスト以外にSランクが居ない以上はAランクプレイヤーで我慢するしかないのだが、どいつもこいつも弱すぎる。 
 最初に入って来た集団は特にそれが顕著で弱すぎてかなり遊んでしまった。
 イベントはまだまだ時間があるのでじっくりやればいいと思うが次が来るまでに待たなければならないのは少し苦痛だ。 入って来た順番に遊んでいたのだが、弱い、まぁまぁ、そこそこ。

 そんな評価を降しながらも次々とプレイヤーを駆逐していく。
 目の前のプレイヤー達も変わらない相手だったが、ジョゼからすれば全体的にまぁまぁの動きだった。

 一応は仕事なのでやる事はやろうと思考入力用のメモ帳を開いて評価を開始。 
 気になったプレイヤーにフォーカス。 特にベリアルというプレイヤーは良い。 

 反応、攻撃、防御、回避とどれをとっても平均水準を大きく超えていた。
 短距離転移を使いこなしているのも悪くない。 転移後の攻撃行動に入るのもスムーズだ。
 優れた空間認識能力がなければこうは行かない。 常に死角へと転移をしつつ、慣れたタイミングでリズムを変えるなど、機体の特性を理解し、しっかりと使いこなしている事が窺える。

 充分Sランクに至れる逸材だ。
 
 次、ツガル。 新造の機体という事で武装面は未完成ではあるが、戦い方自体は確立していた。
 ただ、既存の空戦機動の延長でしかないので現状ではあまり興味を惹かれない。
 伸びしろはあると思うが、育つかは現状では何とも言えなかった。

 今の段階ではAの下位で特筆するべき点はない。

 タヂカラオ。 こちらも新造の機体ではあるが、立ち回りによって評価が少しだけ上向く。
 視野が広く、味方との連携を意識している点から、部隊の総合力を引き上げるのに一役買っている点は素直に評価するべきだろう。 

 個人戦闘能力が高いプレイヤーは多いが、集団戦闘で一定以上のクオリティを出すプレイヤーは比較的少ないので上としては期待したいタイプといった所だろうか?
 ジョゼの個人的な所感としてはツガルより少し高いといったぐらいだった。

 ポンポン。 Aランクに昇格したばかりで機体は製造中なので最終評価は保留。
 立ち回りに関してはタヂカラオと同様にバランスのとれた個人技に高い指揮官適性。
 以前のトライアルでも好成績を残していたので、将来性は高い。

 他はB以下なのであまり評価に値するプレイヤーはいないのだが、一機だけ面白いのがいた。
 プレイヤーネーム『ヨシナリ』。 ランクはCだが機体が特にユニークだった。
 動力と武装の一部にジェネシスフレームの物を使用しているので、機体の総合力が部分的に既存機を越えているのだ。 

 非常に珍しいケースだった。 
 少なくとも既存機をここまで魔改造するプレイヤーをジョゼは見た事がない。
 エーテルリアクターを兼ねたジェネレーターにアダマンタイト・・・・・・・の剣。

 加えてセンサー系はシックスセンスを扱っている。 
 ポンポンも扱っていたが、ノイズを嫌ってかフィルタリングがされていた。
 対してヨシナリはフィルタリングを完全に無効にしている。 これは少し驚くべき事だった。

 シックスセンスはジェネシスフレームのオーダーメイド品を含めても屈指の探知項目、探知精度を誇る最上級のセンサーシステムだ。 
 いくつか弱点は存在するが、使いこなせれば大抵の攻撃に対処できる優れ物である。

 反面、その情報量の多さによって活かしきれずにノイズになってしまうという欠点もあった。
 要は使いこなせなければ無用の長物でしかない代物なのだ。
 本来なら性能的にあんな安値で売りに出していい代物ではないのだが、使いこなせる奴を見たいといった製造メーカーの意図もあってあの値段で落ち着いたという話を聞いた事があった。

 プレイヤースキルだけを切り取るのなら充分にB上位からA下位で通用するレベルだ。
 加えてシックスセンスを用いてこちらを観察するような挙動も面白い。
 徐々にだがこちらの動きに対応してきている点からも明らかで、非常に興味深いプレイヤーだ。

 視野が広いという事もあるが、意識のフォーカスが上手い。
 意図してやっている訳ではないのだろうが、思考のリソースを上手に振り分ける事でパフォーマンスを上げている。 

 ――面白い子だ。 覚えておこう。

 片鱗は充分に感じられる。 期待は出来そうだが、今の段階ではそこまでではない。
 少し勿体ない気もするがそろそろ終わりに――しようとしてジョゼは溜息を吐いた。
 中枢に侵入者が接近。 隔壁を次々と突破している。

 どうやら水入りのようだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【なろう490万pv!】船が沈没して大海原に取り残されたオッサンと女子高生の漂流サバイバル&スローライフ

海凪ととかる
SF
離島に向かうフェリーでたまたま一緒になった一人旅のオッサン、岳人《がくと》と帰省途中の女子高生、美岬《みさき》。 二人は船を降りればそれっきりになるはずだった。しかし、運命はそれを許さなかった。  衝突事故により沈没するフェリー。乗員乗客が救命ボートで船から逃げ出す中、衝突の衝撃で海に転落した美岬と、そんな美岬を助けようと海に飛び込んでいた岳人は救命ボートに気づいてもらえず、サメの徘徊する大海原に取り残されてしまう。  絶体絶命のピンチ! しかし岳人はアウトドア業界ではサバイバルマスターの通り名で有名なサバイバルの専門家だった。  ありあわせの材料で筏を作り、漂流物で筏を補強し、雨水を集め、太陽熱で真水を蒸留し、プランクトンでビタミンを補給し、捕まえた魚を保存食に加工し……なんとか生き延びようと創意工夫する岳人と美岬。  大海原の筏というある意味密室空間で共に過ごし、語り合い、力を合わせて極限状態に立ち向かううちに二人の間に特別な感情が芽生え始め……。 はたして二人は絶体絶命のピンチを生き延びて社会復帰することができるのか?  小説家になろうSF(パニック)部門にて490万pv達成、日間/週間/月間1位、四半期2位、年間/累計3位の実績あり。 カクヨムのSF部門においても高評価いただき90万pv達成、最高週間2位、月間3位の実績あり。  

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

異世界転移魔方陣をネットオークションで買って行ってみたら、日本に帰れなくなった件。

蛇崩 通
ファンタジー
 ネットオークションに、異世界転移魔方陣が出品されていた。  三千円で。  二枚入り。  手製のガイドブック『異世界の歩き方』付き。  ガイドブックには、異世界会話集も収録。  出品商品の説明文には、「魔力が充分にあれば、異世界に行けます」とあった。  おもしろそうなので、買ってみた。  使ってみた。  帰れなくなった。日本に。  魔力切れのようだ。  しかたがないので、異世界で魔法の勉強をすることにした。  それなのに……  気がついたら、魔王軍と戦うことに。  はたして、日本に無事戻れるのか?  <第1章の主な内容>  王立魔法学園南校で授業を受けていたら、クラスまるごと徴兵されてしまった。  魔王軍が、王都まで迫ったからだ。  同じクラスは、女生徒ばかり。  毒薔薇姫、毒蛇姫、サソリ姫など、毒はあるけど魔法はからっきしの美少女ばかり。  ベテラン騎士も兵士たちも、あっという間にアース・ドラゴンに喰われてしまった。  しかたがない。ぼくが戦うか。  <第2章の主な内容>  救援要請が来た。南城壁を守る氷姫から。彼女は、王立魔法学園北校が誇る三大魔法剣姫の一人。氷結魔法剣を持つ魔法姫騎士だ。  さっそく救援に行くと、氷姫たち守備隊は、アース・ドラゴンの大軍に包囲され、絶体絶命の窮地だった。  どう救出する?  <第3章の主な内容>  南城壁第十六砦の屋上では、三大魔法剣姫が、そろい踏みをしていた。氷結魔法剣の使い手、氷姫。火炎魔法剣の炎姫。それに、雷鳴魔法剣の雷姫だ。  そこへ、魔王の娘にして、王都侵攻魔王軍の総司令官、炎龍王女がやって来た。三名の女魔族を率いて。交渉のためだ。だが、炎龍王女の要求内容は、常軌を逸していた。  交渉は、すぐに決裂。三大魔法剣姫と魔王の娘との激しいバトルが勃発する。  驚異的な再生能力を誇る女魔族たちに、三大魔法剣姫は苦戦するが……  <第4章の主な内容>  リリーシア王女が、魔王軍に拉致された。  明日の夜明けまでに王女を奪還しなければ、王都平民区の十万人の命が失われる。  なぜなら、兵力の減少に苦しむ王国騎士団は、王都外壁の放棄と、内壁への撤退を主張していた。それを拒否し、外壁での徹底抗戦を主張していたのが、臨時副司令官のリリーシア王女だったからだ。  三大魔法剣姫とトッキロたちは、王女を救出するため、深夜、魔王軍の野営陣地に侵入するが……

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-

すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン] 何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?… たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。 ※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける 縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は…… ゆっくりしていってね!!! ※ 現在書き直し慣行中!!!

If太平洋戦争        日本が懸命な判断をしていたら

みにみ
歴史・時代
もし、あの戦争で日本が異なる選択をしていたら? 国力の差を直視し、無謀な拡大を避け、戦略と外交で活路を開く。 真珠湾、ミッドウェー、ガダルカナル…分水嶺で下された「if」の決断。 破滅回避し、国家存続をかけたもう一つの終戦を描く架空戦記。 現在1945年夏まで執筆

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

処理中です...