Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第596話

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 モタシラの機体、ジェネシスフレーム『イシクナギ』
 人体の動きを再現する事を意識したのか非常にすっきりとした人型という印象を受ける。
 推進装置は全身に搭載されている小型のスラスター。 

 エネルギーウイングを小型化した代物らしく、機体の動きを補助する役割を主としている。
 足を踏み出す時、剣を振る時に任意で加速させる事により、挙動に緩急を付ける事を可能としていた。
 欠点としては小型という事で空中戦は余り得意ではない事だ。 
 
 その為、彼は基本的に空中の敵は叩き落して自身の土俵に持ち込む所から始める。
 
 「まったくできないという訳ではないが、長時間は厳しい」

 最低限、どんな地形でもある程度戦えないとAランクで生き残るのは厳しい。
 本人はそこそこと言っていたが、Aランク帯でのそこそこだろう。
 ヨシナリが個人的に面白いと思ったのが全身の可動域だ。

 人体に近い構造をしておきながら人体を逸脱した動きができる。
 手足だけでなく上半身も360°回転できる事もあって、形状に囚われない挙動を可能としていた。
 軽く手合わせしたのだが、間合いに入られるとどうにもならなくなるパターンが多い。

 三日しかないが、裏を返せば三日もあるとも取れる。
 基本的に模擬戦を行って互いの動きを確認し、連携のパターンをいくつか作っておく。
 モタシラは連携に慣れていない事もあって、パターンは分かり易い物に絞り、ヨシナリがサポートに専念する形にした方がお互いにやり易い。

 「――対策は頭に入りましたか?」
 「あぁ、一通りはな」
 
 ふわわは圧倒的な近接能力が目を引くが、裏を返せば攻撃手段を刀剣による斬撃に依存している。
 武器によって間合いが違うが、そこの見極めを間違わなけば対処は可能だ。
 まずは太刀と小太刀。 

 これは基本的に彼女の近接能力に依存しており、モタシラであるなら何の問題もないはずだ。 
 太刀は攻撃に小太刀は銃弾などを叩き落とす際の防御に使用している。
 
 「それにしても銃弾を打ち落とすはあの女は人間なのか?」
 「あー、普通できませんよね?」
 「漫画の読み過ぎだ」

 それを聞いてヨシナリは少しだけほっとする。 
 あぁ、彼女がおかしいだけで普通は銃弾やエネルギー弾は剣で切り払えないんだなと自分の常識が間違っていなかったと再確認できただけでも収穫だったかもしれない。

 「――問題は他の武装か」
 「大丈夫だとは思いますが、まともに喰らえば即死するので気を付けてくださいね」

 液体金属刃の野太刀。 転移刀。
 前者は分かり易く攻撃範囲が広く、一度抜き放たれてしまえば次の瞬間には両断されてしまう。
 
 「イベント戦の時には結局、使わなかったがアレを捌く事は難しい」
 「溜めがあるので下手に隙を作らなければ使ってこないでしょう」

 鞘のエネルギー充填に間がある関係でヨシナリが視ればそう簡単に喰らう事はないはずだ。
 
 「問題は転移刀の方ですね。 こちらも転移先の座標指定をさせる隙を与えなければどうにでもなりますが、裏を返せば座標の指定さえできてしまえば出が速い。 あの人が弱点をそのままにしておくとは思えないので警戒はしておいた方がいいと思います」

 液体金属刃はともかく、転移は使い方次第でいくらでも応用が利く事もあってヨシナリとしてはかなり警戒している。
 後は牽制用のクナイとグルーキャノンぐらいだが、刀に比べれば脅威度は低い。

 「後は今の技量ですかね。 リアルで見た時はどんな感じでした?」

 武装の対策は出来てはいるが、当人の技量に関しては時間が空いている事もあって分からない事が多い。

 「門下生相手にしている姿しか見ていないが、動き自体はそこまで大きく変わっていない。 ただ、雰囲気が完全に別人だった」
 「……うーん、ちょっとよく分かりませんね。 あの人は普段から妙な迫力を出す人なのは知っているつもりですが、そんなに違うんですか?」

 正直、モタシラの説明に関しても分かり辛い点が多い。
 怯えている点からも以前と比べて大きく技量を伸ばしていると見ていい。
 
 「すまんが、アレを口で説明するのは少し難しい」
 「なるほど」

 これ以上は直接見ないと何とも言えない。 
 会うのが怖いような気もするが、こういった事は先延ばしにするのも良くない。
 次のイベントへの対策もある。 ここらでふわわには戻ってきて貰おう。

 これ以上はこの話題は広げようがない上、モタシラの精神面の心配もある。
 
 「それよりも俺としてはモタシラさんの剣に興味があるので少し話を聞かせて貰ってもいいですか?」

 見様見真似で練習はしてみたのだが、どうにも完全に再現できない。
 当人に聞ければ何かわかるかもしれないと期待しているのも話を受けた理由の一つだった。
 
 「そんな事で良ければいくらでも」

 興味を持たれた事が嬉しかったのかモタシラの声が少しだけ明るくなった。


 「後の先というのはご存じかな?」
 「えーっとカウンターって認識してますけどあってます?」 

 モタシラの質問に漫画とかでよくある奴だなと思いながら答えると概ね正しいと苦笑された。

 「俺の剣は基本的に防御に重きを置いている。 相手に手を出させてそれをいなす事で反撃に繋げるんだ」

 簡単に言うと相手の攻撃を防ぐ事で体勢を崩しそのまま反撃に繋げるというもので口で言うのは簡単だが、実行は非常に難しかった。
 以前のイベントでふわわの攻撃を捌き続けたのは凄まじい。

 「何かコツとかあるんですか?」
 「これは俺の場合なのであくまで参考程度に聞いて欲しい」

 そう言うとモタシラは剣を真っすぐに構える。
 ユニオン対抗戦のリプレイ映像でみたのと同じ構えだ。 
 
 「この時、俺の視線は何処に行ってると思う?」
 「……相手ではないんですか?」

 モタシラは否定するように首を振り、何も言わない。
 自分で考えろという事だろう。 ヨシナリは無言でモタシラを観察する。
 少しの間そうしているとふと脳裏に理解が広がった。

 「もしかして切っ先ですか?」
 「正解だ。 正確には切っ先から刀身の半ばまでだ」
 「あぁ、なるほど。 その範囲までを防御に使うんですね」

 よくよく思い返してみれば巻き取る動作はその範囲でしか使っていないような気がする。
 
 「基本的に切っ先に意識の焦点を当てて相手は視界の端に捉える形にする。 そうすると相手の攻撃に対して素早く反応できるという訳だ」
 
 単純に剣だけ見るのではなく、中心に据えるだけ。
 ヨシナリは納得しつつも真似できるかと脳裏で剣を振るう自分の姿をイメージした。
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