Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

文字の大きさ
598 / 786

第598話

しおりを挟む
 開始と同時にモタシラは後方に跳んで距離を取り、ヨシナリはシニフィエへと銃撃。
 アシンメトリーから放たれたエネルギー弾をシニフィエは難なく躱す。
 エネルギーウイング装備だけあって速い。 回避に入るのも滑らかだった。

 ――こりゃ、かなり練習してるな。 

 「いきなりこっちですか?」
 「悪いが今回はふわわさんの討伐がメインでな。 ノイズは早めに処理しておきたいんだよ」
 「上手くいきますかね?」

 視界の端ではふわわがモタシラを追っていくのが見える。
 しばらくはシニフィエに集中できそうだ。

 「そういえばあの強化装甲どうしたんだ? 見覚えのない型だけど?」
 
 捉えきれないと判断してアトルムとクルックスに切り替えて連射。
 シニフィエは加速する事で躱す。 ヨシナリは連射しながら観察に入った。

 「あぁ、アレですか? 前にナインヘッド・ドラゴンのサンプルを送り付けて来た所から追加でもらった新装備のサンプルらしいですよ」
 
 道理で見覚えがない訳だ。 それにしても凄まじい見た目だった。
 ソルジャータイプ専用の追加装備なのかもしれないが、随分とユニークだ。
 性能はこれから観察しなければなれないが、見極めはモタシラが頑張ってくれるだろう。

 そのまま返り討ちにしてくれるのなら楽でいいのだが、モタシラの雰囲気的に難しそうだ。
 予定通り、シニフィエをさっさと落として二対一で袋叩きにする。
 モタシラは勝ちたい訳ではなく、道場に現れる恐ろしい女を目の前から排除できれば何でもいいとの事なので勝ち方にはこだわる必要はない。 

 「道理でお前の機体と装備代金を賄える訳だ」
 「まぁ、そういう事です。 浮いたお金で色々と買って貰いました。 んじゃぁそろそろ私の修行の成果を見て貰いましょうか!」

 シニフィエはエネルギーウイングを小刻みに噴かして加速。 
 一気に噴かさないのはシックスセンス対策だろう。 これをやられると動きが読み辛い。
 挙動に見覚えがある。 恐らくはユニオン対抗戦でホーコートが使っていた動きの応用だろう。

 アトルムとクルックスの連射で対応するが左右に機体を振って回避。 
 近づきながらなのに当たらない。 軽量化しているだけあって流石に速い。
 アトルムの弾が切れたと同時に残ったクルックスに向けて腕に仕込んでいたクナイを投擲。

 上手い。 アトルムは弾切れなので躱してからの反撃がし辛い。
 
 ――まぁ、撃ち分けができるからそこまで大きな問題はないけどな。

 弾種を実体弾からエネルギー弾に切り替えて連射。 シニフィエを狙いつつクナイを撃ち落とす。
 シニフィエは両腕を目の前で立てて防御の構え。 突っ切るつもりか?
 エネルギー流動を視てなるほどと納得する。 

 あのガントレットはシールドの役割も担っているようだ。 
 前面にエネルギーフィールドに似た防御力場が展開される。
 エネルギー弾を防ぎ、無傷で間合いに入って来た。 

 機体の向こうでシニフィエがしてやったりと笑っている姿が簡単に想像できる。 
 咄嗟にクルックスを向けるが払いのけられた。 そのまま拳を握り――

 

 ――入る。

 シニフィエは手応えを感じていた。 
 義兄ヨシナリの動きに関しては彼女なりに研究して来たのだ。
 対策も練って来た。 彼の強みは柔軟な対応力にあるが、どんな人間にも慣れた挙動、癖のような物は必ず存在する。 それは強みでもあるが高確率でそれをするという事は付け入る隙でもあった。

 プラスフレームに変えた事で機動性での差はほぼ解消されている。
 それでもこちらはソルジャー+、ヨシナリのキマイラ+と比べて総合力では劣っている。 
 特にホロスコープは機動性に振っているだけあって簡単に捕まえられない。

 だが、間合いに捉える方法は存在する。 それは戦闘の序盤。
 根拠としてはヨシナリは慣れた相手――要は既知の相手にはすぐに戦い方を組み立てるが、未知の相手は必ず見てから対処を決めるからだ。 

 それはこれまでのランク戦、ユニオン戦を見て来た事から明らかだった。
 距離があるならアシンメトリー、機動力に優れた相手ならアトルムとクルックスで牽制を入れて様子を見る。 恐らくだが、不確定な要素を可能な限り取り除く事で勝利を確実なものにする為だろう。

 ――勝利に対して貪欲。

 そこまで付き合いが長い訳ではないが、それなりに濃い時間を共にしたのだ。
 何となくその気性は見えてくる。 ヨシナリは簡単に言うと極度の負けず嫌いだ。
 だから、負けない為にできる事を可能な限り実行する。 情報収集はその最たるものだろう。

 普段であるならヨシナリは距離を取ってアシンメトリーで仕留めにかかるはずだが、機体を乗り換えたシニフィエのデータはない。 つまり高い確率で様子を見てくる。
 こちらの機体構成から間合いを詰める事は読まれてくるので使って来るのはアトルムとクルックス。

 ただ、注意したのは今回、ヨシナリの目的は勝つだけでなくモタシラを勝たせるというもう一つのタスクがある。 
 その為、様子を見るにしても時間は余りかけてくれない。 
 
 ――以上を踏まえると対応を決めるよりも早く、速攻をかけて間合いを詰めるのが最善手。

 エネルギーウイングの扱いはかなり力を入れて練習してきた。
 お手本も多かったので形になるまでそう時間はかからず、充分に通用するレベルで仕上げて来たつもりだ。 
 小刻みに吹かす事でシックスセンスによるエネルギー流動を観測を難しくして、挙動を読み取らせない事を意識。 

 そうなるとヨシナリは目視に頼らざるを得ない。 
 今の自分が勝っている部分は接近戦のみ。 中距離以上の距離に持っていかれると勝ち目がない。 
 特に距離を維持されると脆いという点は前のイベント戦で嫌というほどに思い知らされたからだ。
 
 ――だから相手の得意な距離で勝負なんてしてやらない。

 常に自分の得意な距離を維持し、相手にそれを押し付けるのだ。
 機体の装備構成もそれを実行できる物を揃えた。

 ――姉の金で。
 
 武器も一通り試しはしたがやはり自分には格闘戦が一番合っている。
 その強みを最大限に活かす為に色々と揃えたのだ。 
 特にヨシナリ相手に有効なのはこのガントレットだろう。
  
 打撃の補助だけでなくエネルギーシールドの発生装置を兼ねており、盾としても扱える。
 範囲はあまり広くないがその分、強力な盾を局所的に展開できる事もあって拳銃程度のエネルギー弾なら何の問題もなく防ぐ事が可能だ。

 その甲斐あってか間合いに入る事が出来た。

 ――ここからですよ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【なろう490万pv!】船が沈没して大海原に取り残されたオッサンと女子高生の漂流サバイバル&スローライフ

海凪ととかる
SF
離島に向かうフェリーでたまたま一緒になった一人旅のオッサン、岳人《がくと》と帰省途中の女子高生、美岬《みさき》。 二人は船を降りればそれっきりになるはずだった。しかし、運命はそれを許さなかった。  衝突事故により沈没するフェリー。乗員乗客が救命ボートで船から逃げ出す中、衝突の衝撃で海に転落した美岬と、そんな美岬を助けようと海に飛び込んでいた岳人は救命ボートに気づいてもらえず、サメの徘徊する大海原に取り残されてしまう。  絶体絶命のピンチ! しかし岳人はアウトドア業界ではサバイバルマスターの通り名で有名なサバイバルの専門家だった。  ありあわせの材料で筏を作り、漂流物で筏を補強し、雨水を集め、太陽熱で真水を蒸留し、プランクトンでビタミンを補給し、捕まえた魚を保存食に加工し……なんとか生き延びようと創意工夫する岳人と美岬。  大海原の筏というある意味密室空間で共に過ごし、語り合い、力を合わせて極限状態に立ち向かううちに二人の間に特別な感情が芽生え始め……。 はたして二人は絶体絶命のピンチを生き延びて社会復帰することができるのか?  小説家になろうSF(パニック)部門にて490万pv達成、日間/週間/月間1位、四半期2位、年間/累計3位の実績あり。 カクヨムのSF部門においても高評価いただき90万pv達成、最高週間2位、月間3位の実績あり。  

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

改大和型戦艦一番艦「若狭」抜錨す

みにみ
歴史・時代
史実の第二次世界大戦が起きず、各国は技術力を誇示するための 「第二次海軍休日」崩壊後の無制限建艦競争に突入した 航空機技術も発達したが、それ以上に電子射撃装置が劇的に進化。 航空攻撃を無力化する防御陣形が確立されたことで、海戦の決定打は再び「巨大な砲」へと回帰した。 そんな中⑤計画で建造された改大和型戦艦「若狭」 彼女が歩む太平洋の航跡は

異世界転移魔方陣をネットオークションで買って行ってみたら、日本に帰れなくなった件。

蛇崩 通
ファンタジー
 ネットオークションに、異世界転移魔方陣が出品されていた。  三千円で。  二枚入り。  手製のガイドブック『異世界の歩き方』付き。  ガイドブックには、異世界会話集も収録。  出品商品の説明文には、「魔力が充分にあれば、異世界に行けます」とあった。  おもしろそうなので、買ってみた。  使ってみた。  帰れなくなった。日本に。  魔力切れのようだ。  しかたがないので、異世界で魔法の勉強をすることにした。  それなのに……  気がついたら、魔王軍と戦うことに。  はたして、日本に無事戻れるのか?  <第1章の主な内容>  王立魔法学園南校で授業を受けていたら、クラスまるごと徴兵されてしまった。  魔王軍が、王都まで迫ったからだ。  同じクラスは、女生徒ばかり。  毒薔薇姫、毒蛇姫、サソリ姫など、毒はあるけど魔法はからっきしの美少女ばかり。  ベテラン騎士も兵士たちも、あっという間にアース・ドラゴンに喰われてしまった。  しかたがない。ぼくが戦うか。  <第2章の主な内容>  救援要請が来た。南城壁を守る氷姫から。彼女は、王立魔法学園北校が誇る三大魔法剣姫の一人。氷結魔法剣を持つ魔法姫騎士だ。  さっそく救援に行くと、氷姫たち守備隊は、アース・ドラゴンの大軍に包囲され、絶体絶命の窮地だった。  どう救出する?  <第3章の主な内容>  南城壁第十六砦の屋上では、三大魔法剣姫が、そろい踏みをしていた。氷結魔法剣の使い手、氷姫。火炎魔法剣の炎姫。それに、雷鳴魔法剣の雷姫だ。  そこへ、魔王の娘にして、王都侵攻魔王軍の総司令官、炎龍王女がやって来た。三名の女魔族を率いて。交渉のためだ。だが、炎龍王女の要求内容は、常軌を逸していた。  交渉は、すぐに決裂。三大魔法剣姫と魔王の娘との激しいバトルが勃発する。  驚異的な再生能力を誇る女魔族たちに、三大魔法剣姫は苦戦するが……  <第4章の主な内容>  リリーシア王女が、魔王軍に拉致された。  明日の夜明けまでに王女を奪還しなければ、王都平民区の十万人の命が失われる。  なぜなら、兵力の減少に苦しむ王国騎士団は、王都外壁の放棄と、内壁への撤退を主張していた。それを拒否し、外壁での徹底抗戦を主張していたのが、臨時副司令官のリリーシア王女だったからだ。  三大魔法剣姫とトッキロたちは、王女を救出するため、深夜、魔王軍の野営陣地に侵入するが……

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

勇者辞めます

緑川
ファンタジー
俺勇者だけど、今日で辞めるわ。幼馴染から手紙も来たし、せっかくなんで懐かしの故郷に必ず帰省します。探さないでください。 追伸、路銀の仕送りは忘れずに。

If太平洋戦争        日本が懸命な判断をしていたら

みにみ
歴史・時代
もし、あの戦争で日本が異なる選択をしていたら? 国力の差を直視し、無謀な拡大を避け、戦略と外交で活路を開く。 真珠湾、ミッドウェー、ガダルカナル…分水嶺で下された「if」の決断。 破滅回避し、国家存続をかけたもう一つの終戦を描く架空戦記。 現在1945年夏まで執筆

処理中です...