異世界で双子の娘の父親になった16歳DT-女神に魔法使いにされそうですー

バイブルさん

文字の大きさ
198 / 365
6章 DT、出番を奪われる?

176話 宣戦布告らしいです

しおりを挟む
 シホーヌ達の治療を受けながら、ブツブツと呟くホーラは雄一を睨みつける。

「そりゃ、子供達のほうが心配なのは分かるけどさぁ? たまにはアタイを優先するように? やってくる相手が逆でも大丈夫だったんじゃないか、てアタイは思う訳さ」

 それを真横で聞かされるアクアは苦笑しながら雄一を見上げる。

「主様、ホーラはあのドラゴンを操ってる子の心理操作を受けて本音が出やすくなってるだけで大目に見てあげてくださいね?」

 それを聞いて、シホーヌに治療されてるテツを見ると治療中にも関わらず全快したような雰囲気を漂わせて両手を突き上げて叫び出す。

「ティファーニアさん! 大好きです。なので、記憶に残ってないのでもう1回チューをお願いしますっ!!」

 それを見て、ふむ、と納得した雄一はまだ騒ぐテツの首の後ろに手刀を入れる。

 入れられたテツは、ハゥッと声を上げると意識を刈り取られて白目を向いて気絶する。

「ユウイチ! 何をするのですぅ! テツのダメージは本当に危なかったのに鬼なのですぅ」
「まあ、シホーヌもいるし大丈夫だろ? あのまま叫ばしてたら子供達に有害な事を口走る恐れがあったからな」

 そう言われて、そうなのかな? と首を傾げて納得したシホーヌを見て、雄一は笑みを浮かべる。

 勿論、そんなのは建前であった。

 王都の方向に目を向け、城にいるゼクスに報告する。


 任務完了だ、ゼクス!


 力強く頷く雄一を余所にアリアとスゥとホーラと騒いでおり、戦いという空気が一切なかった。

 そんな中、放置されてるジャスミンはヒステリックに叫び、エリーゼは「まだぁ?」と困った顔をこちらに向けてくる。

「ああ、すまん。ドラゴンは始末してくれていい。女の方は生きてさえいればいいが、動けないようにしておいてくれ」
「んっ、分かった」
「ふっ、ふざけないでぇ! どうして、そんな簡単にあしらわれるのよ。私はチート持ちの主人公よ!!」

 そう叫ぶジャスミンの言葉と同時にドラゴンのブレスが止まる。

 目を向きだしたジャスミンがドラゴンを見上げる。

 見上げたドラゴンが縦に真っ二つになって体が分かれていくのを噴き出す血を浴びながら、「嘘だぁぁぁ!!」と叫んだ。

「主人公?」

 訝しい目でジャスミンを見つめて、まさか、と呟く。

 黒髪に黄色人種の特有の肌色などを見て、頭が痛そうにする雄一にアクアが苦笑して告げる。

「お気付きのようですが、主様と同じ所から来た方です」
「やっぱりそうか、だいたいの事情は理解した」

 自分を守るモノがなくなったと我に返ったジャスミンは踵を返そうとするが、踵の方に違和感を感じるとそのまま倒れ込む。

 何かが切れる感じがしたぐらいに思っただけで踵から下の感覚がほとんどない事と怪我らしい怪我もない事に恐怖を覚える。

「何をしたのっ!」
「筋を切った」
「お前に分かりやすい言葉で言うならアキレス腱を切ったと言えば、分かるだろ?」

 自分に置かれた状況に目を剥く。

 体全体を震わせて、握り拳を作ると地面を叩き始める。

「どうして、どうして、どうして! 私はどこにいても力に蹂躙される。どうして、私を容認する世界がないのっ!」

 その後もどうしてを繰り返し続けるジャスミンに雄一は律儀に答えてやる。

「同じ世界にいたから、お前がどんな奴だったか、なんとなく分かる。イジメにあってたんだろ? 俺が解釈するイジめられる奴の種類は2種類あると思ってる」

 目を血走らせたジャスミンが雄一を射殺すように見つめるが雄一は涼しい顔で受け止める。

「たまたま、親の問題、貧富の差、なんでもいい、それが目に付いた運の悪いヤツ、まあ、ここまではもう1つでも言えるかもな。問題は次だ。イジメられても、機会があってもそれをする側になろうとしないヤツ。弱い立場の気持ちになれるお人好しだ」

 このパターンの子がジャスミンのように力を得ても、みんなの為にという考えで力を使うように考える。

 中には行き過ぎる子がたまに現れ、勧善懲悪とばかりに片っ端から悪人を裁くという力づくの行動に出るのもいるが、矯正の可能性が残る。

「だが、もう1つのパターン。そう、お前みたいなのはイジめられるのは嫌だがイジメる側になって優越感は味わいたいと思うタイプだ。お前は同情から手を差し出された手を同情はいらないと手を弾き、間違ってるのは自分でなく、世間だと怨嗟の言葉を吐いて生きてきたんだろ?」

 雄一が言った言葉を聞いたジャスミンは悔しげに歯を食い縛り、視線を逃がす。どうやら心当たりはあったようである。

 良くいる寝取りはしたいが寝取られは嫌だという理不尽な考えと似ている。

 想像するぐらいまでは趣向だから致し方がないが、そこで実行するかどうかが分水嶺である。

「お前はたまたま、イジメられる側になっただけのイジメをするヤツと同じ存在だ。俺はイジメる側には容認する領域はないと考える。例え、自分がイジメられるのが嫌だからイジメるヤツの側にいただけ、と言う奴も認めない」

 雄一が言うように実行してしまったジャスミンは進退窮まったようで、半笑いを浮かべると「死ね、死ね、死ね」と壊れた玩具のように呟き続ける。

 もう言葉が無意味と諦めの溜息を零した。

 それと別に先程から目に映る変なモノが気になってたのでジャスミンを放置してシホーヌに声をかける。

「なぁ、シホーヌ。あの女から出てる糸みたいなの、天に伸びてるヤツはなんだ?」
「見えるのですぅ? あれはあの女にチートを与えてるヤツに繋がってるのですぅ。あの糸を切れたらチートは勿論、この世界に存在できず、元の世界に強制送還ですぅ」

 シホーヌの声が聞こえたようで死ねと呟いていたジャスミンが驚愕の表情で凍らせてこちらを見ていた。

「それができたら、あの女には一番堪えるだろうな」

 そう言うと雄一は手にある巴に話しかける。

「巴、いけると思うか?」
「別にわっちの力を貸さんでもご主人なら1人でもできるとは思うが……」

 雄一の肩に銀髪のキツネ耳と尻尾を生やした花魁姿の幼女が現れる。

 現れた巴を見たアリアとミュウが「ああっ!!」と大声を上げたのでびっくりして雄一は振り返るが巴は余裕の笑みで手を振ってみせる。

「じゃが、ご主人とわっちの力を合わされば糸の先のヤツに宣戦布告替わりのキツイのを送る事はできるじゃろうな?」
「それはいいな、さすがは巴だ、俺の事をよく理解してる」

 巴に笑みを見せる雄一からアリア達に視線を向けて悪戯をする子の笑みを浮かべる巴。

「当然じゃろ?」

 そう言うと雄一の頬に唇を当てる。

 それを見たアリアとスゥとミュウは大声を上げて騒ぎ出す。

「巴、子供達で遊ぶな」
「すまんのじゃ、小娘達が良い反応するのでな」

 コロコロとした笑い声を零す。

 緩んだ表情から一転、獰猛な笑みを浮かべる雄一は巴に声をかける。

「いくぞ、巴」

 雄一の言葉に頷くと巴は青竜刀に戻る。

 そして、左手に抱くレイアを治療の終えたアクアに預けると雄一は自分の中のリミッターを解除していく。

 瞳を金と青に輝かし、それが溶けあうようにして混じり合う。混じり合った色はイエローグリーンライトな色に落ち着くと全身をその色のオーラで包む。

 その姿を嬉しげに見つめるシホーヌとアクア。

 普段は緩い瞳をして感情の起伏が乏しいエリーゼが頬を紅潮させる。

「綺麗、ユウイチのその魂の色、好き」

 そのオーラを巴にも纏わすと雄一は天を睨みつけて叫ぶ。

「こっちの世界で何かやる気ならまずは北川家に菓子折り1つでも持って挨拶にきやがれぇ!!」

 そう言って巴を振り抜くと雄一のオーラの色をした衝撃波がジャスミンと繋ぐ糸の根元を狙うように飛んでいくと糸が霧散する。

 霧散したと同時にジャスミンが切なげな声を上げて目尻に涙を浮かべる。どうやら力の喪失を感じたようである。

 体も透け始め、「嫌だぁ!」と騒ぎ始める。

「もう手遅れまで進行してるかもしれんが、自分からも歩み寄って理解者を作れ。みんながみんな、自分を受け入れてくれる素晴らしい世界なんてない。今度は少数でいい、友達と呼べる存在を作る努力をしろよ?」

 消える間際まで雄一に怨嗟の声をぶつけきたジャスミンを見送った雄一は目を伏せる。

「やり切れないな……」

 自分の不甲斐なさと、届かない言葉に溜息を零す事で気分を切り替えて、心配げに雄一を見る者達に笑みを浮かべた。
しおりを挟む
感想 128

あなたにおすすめの小説

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~

津ヶ谷
ファンタジー
 綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。 ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。  目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。 その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。  その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。  そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。  これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

【村スキル】で始まる異世界ファンタジー 目指せスローライフ!

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前は村田 歩(ムラタアユム) 目を覚ますとそこは石畳の町だった 異世界の中世ヨーロッパの街並み 僕はすぐにステータスを確認できるか声を上げた 案の定この世界はステータスのある世界 村スキルというもの以外は平凡なステータス 終わったと思ったら村スキルがスタートする

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

処理中です...