琉球お爺いの綺談

Ittoh

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未来if

歴史if 激変する環境「穢される青」

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 西暦2101年を過ぎた頃、崩壊の序曲は黒く染まった太河の氷が解けて、後に21世紀海進と呼ばれる37mの海面上昇を招いた。
 急激な海面上昇と津波の頻発は、そのまま海岸域に巨大な都市を形成していた世界を汚泥に埋めて、臭気の漂うヘドロの穢れに包まれていったのである。

 海岸という水辺は、居住区でもあったが、海進はヘドロの海を押し上げて、そのまま都市部を呑み込んでいったのである。

 黒き泥濘、黒き雨が降り、川に集まり、流れる先は、海であった。微かな穢れであれば、紺碧の海にシミとなる程度で収まり、海そのものは宇宙から見て青く輝いている。しかしながら、世界各地に穢れが巻き散らされ、紛争の中で処理されることなく増加していった結果、「青い地球」はどす黒く変色していった。

 変色したことで太陽の熱が籠り、氷床は溶け出して、海進が進んでいった。1000万を超える海岸線の都市は、ことごとくが海へと沈んでいって、ヘドロの中に高層ビルが立ち並ぶ腐海へと変貌していった。

 食料事情の悪化は、凄まじい勢いで広がって、病気や飢餓による死者数は、数百万単位の規模で拡大していった。

 金髪碧眼の少女は、そんな世界で、ヘドロに沈む都市を見ながら、
「滅びるって、本当に、あっという間なのね」
呟いていた。
「はい、お嬢様」
応える声は、年配の渋い男が放つ声。
「祇園精舎の鐘の声か・・・」
「盛者必衰ですか、お嬢様。滅びゆくのは、人類そのものにございますよ」
「そうね。・・・建設は、順調なの立花」
「はい、筑波山系に掘り込むように、地下都市建設が進められています」
 百万人ほどを収容する、巨大地下都市の建設、都市そのものを閉鎖空間として活用する巨大な施設、建設計画ですらすさまじい規模となっていた。

 滅び逝く世界へ、抵抗するように、人類は生存圏の確立を急いでいた。当初は、食糧供給を図る、巨大地下農場の建設計画であったが、海進は農場建設だけでなく、都市建設も並行に進められていったのである。

「この都市では、どのくらい延命できるの」
「設備の延命を図っても、二百年というところでしょう」
「広告では、五百年と記載されているけど、間違いってこと」
「地球環境が、百年で回復する、という見積りですから」
「立花は、違う意見ってこと」
「そうですね、ここまで環境が破壊されたとすると、破壊された状態で安定すると考えた方がよろしいかと」
「やはり、人間そのものを、改造するのね」
「はい。もうしわけありません、お嬢様」
 人工心肺装置・・・黒き灰に塗れた空気の中でも、呼吸を可能とし、体液の濾過機能を付加した、人類が生き残るための施術。黒き雨に耐えて、生き残るための生残戦略として、人間の強制的進化と位置付けられていた。
 父の研究成果を示す、そのための手術に、あたしは向かっていた。
「手術が成功すれば・・・弟は、あの建物で暮らせるのね」
「はい・・・」
 手術が成功すれば、人類は、この穢れた世界でも、生残戦略を立てることができるようになる。
「明様は、自分が変わると、言っておられましたが」
「眠ってるんでしょ」
「はい・・・」
「頼むわね、立花・・・明のこと」
「お任せください」
 エレベータの扉が開き、白衣というよりは、防護服に包まれた者達が、あたしを誘導し、立花はそのままエレベータに残り戻っていく。

「人類の矯正進化、可能性と将来」
 父の論文は、環境が激変する世界に、人類そのものが順応するための、矯正進化による方策を示した論文であった。


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