和製切り裂きジャック

九十九光

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#12ー3

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える(就活もしてない大学生が言えたものじゃないが)。
 パパはこの頼りない大家に戸惑いながら、自分は警察の人間で、橋本さんに個人的に用があると説明した。それを聞いたやる気のなさそうな大家は、「じゃあ上がってくださいよ。立ち話もなんですし」と、やる気のなさそうな声で私たちを自宅の中へ案内した。会話に一切熱は感じられないが、事は順調に進んだ。
 廊下も階段も、最近の分譲住宅である私たちの家と違って狭い和風建築で、現代の若者が暮らすには不釣り合いな感じがする物件だった。だがそれは建物の造りだけで、私たちが通された一階のリビングでは、小さめの液晶テレビにはプレステ4がつなぎっぱなしになっていた。見た目に反して渋い趣味を持っているとかもなさそうだ。窓から見える苔むしたブロック塀と、その手前に植わっている南天の木とのギャップがすごい。他に気になったものと言えば、テレビの横で写真立てに入っている、氷川さんが橋本さんと楓さんと一緒に写る、どこかの山の見晴らしのいい場所で撮影したらしい写真だった。楓さんが男二人に挟まれて、写真の右側に陣取った氷川さんに肩を回されている。橋本さんにも笑みがこぼれていて、三人の仲睦まじい光景を収めた一枚だった。橋本さんが、ちゃんと楓さん以外の人にも愛想よくできるのだと思った。
 私たちは黒い革張りに似せた化学繊維製のソファに座り、氷川さんがお茶を持ってくるのを待つ。その間に、さっきインターホン越しに聞こえてきた小型犬の声の主がこっちに走ってきた。顔のところだけが黒い乳白色の毛をしたパグだった。赤い首輪をしたそいつは私の足の間に入り込み、かまってほしいのか威嚇しているのか知らないが、こっちの顔を見て吠えている。
「あ、犬、大丈夫でしたか?」
 三人分の麦茶を持ってきた氷川さんが私たちに確認した。私たちは二人とも犬アレルギーじゃないし、犬が嫌いというベタな設定もない。コロと呼ばれた犬は、私たちの向かいに座った氷川さんの足元に行っておとなしくなった。坂上忍が説教するようなダメな飼い主ではなさそうだ。
「で、警察の人が橋本さんに用ってなんですか?」
 氷川さんはお茶の入ったコップをガラステーブルの上に置くと、さっそく疑問視して当然のことを質問した。パパは楓さんが殺される直前に起こった、橋本さんと自分の謹慎処分に関する詳細な話を説明する。氷川さんは終始、「ああ、そういうことだったのか」と言いたげにうなずいて話を聞いていた。
「それで、橋本には本当に申し訳ないと思って、あいつに謝りに来たんですよ」
 パパは困った時にしそうな顔で氷川さんに言った。氷川さんはそれに対して、「なるほど……」と言いながらうなずくだけだった。謝罪に来てテンションの低い男と、元からテンションの低い男。会話のテンポもじれったい。
 そしてパパの話が一通り終わると、今度は氷川さんが足元のコロの頭をなでながら、こ
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