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#18:A beauty in male attire
A beauty in male attire 05
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物陰がにわかに騒然としている頃、禮は校舎の壁際に追い詰められていた――――。
禮は校舎の壁面に背中をついてしまっており、逃げ場はもうなかった。両肩をしっかりと押さえられ、逃げ出すことはできない。男の身形をしていても中身は歴とした女子高生、力で振り払うことはできない。
美作の顔は面前に迫っていた。
「禮ちゃんゴメン。一遍だけやから!」
「回数の問題ちゃうからッ」
(純くんアリガトウ! 嫌がるノンケの彼の唇を力尽くで無理矢理奪うシチュエーション、最高にオイシーです!🩷)
鼻先が触れそうなほど男子と男子の顔が近づき、一気に高まるボルテージ。瑠里は合掌、目には光るものが。
「瑠里ちゃん、なんか泣いてへん……?」
「んー」
禮の気が瑠里へと逸れた瞬間、美作の唇がさらに近づいた。
禮はパシッと美作の唇に手の平を当て、自分の唇に届くのを防いだ。
「純ちゃん! ほんまあかんてッ……」
ザザッ、と瑠里の真横を何かが駆け抜けた。興奮状態で周りが見えていなかったから、それが何であるか分からなかった。ハッと気がついたときには、美作の背後に危機が迫っていた。
ガゴォオンッ!
後頭部に恐ろしく硬い物が剛速球でぶち当たった。美作は卒倒しそうになり、後頭部を押さえてその場にしゃがみこんだ。
ドボオッ、と美作は腹部を蹴り飛ばされて地面に転がった。
瑠里が「純くん⁉」と悲鳴に近い声を上げた。
「オドレ美作ァ……ッ💢 俺の禮になに盛っとんねん💢💢」
その声を聞いた途端、美作は胸中で「ヒィィイイイッ」と絶叫した。
美作が地面に這い蹲った状態から振り仰ぐと、暴君渋撥が仁王像のような顔で立っていた。
「おっ、近江さん……ッ! 今日休むて言うてはったのに何で放課後になって――」
「オマエが電話で妙にキゲンよかったのが急に気になった」
(野生の勘⁉)
渋撥は禮のほうへチラリと一度目を配った。
「禮は何遍鳴らしても電話出えへんし」
そう言われて、禮は自分のスマートフォンが教室にある女子制服のポケットのなかに仕舞ったままであることを思い出した。
渋撥は指の関節をバキバキッと鳴らした。
「俺が休んどる間に禮に手ェ出すつもりやったかコラァ。よっぽどブチ殺されたいみたいやなァ、あァッ?」
瑠里は渋撥の背後を駆け抜けて美作に近づいた。美作の傍にしゃがみこみ、その背中を揺さぶった。
「純くん大丈夫⁉」
美作は瑠里を心配させないように「大丈夫、大丈夫」と返した。痛む腹部を押さえつつ上半身を引き起こし、地面の上に座りこんだ。
渋撥は「何やあのジャリ」と一言。禮が美作の従妹であると伝えた。
「美作のイトコォ? 何でそんなのがここにいてんねん」
「男子校に美少年いてへんのって言うたら、純くんがめちゃめちゃキレエな男の子おるよって。しかも付き合うてるて言うから見せてもらおいうことになって……」
瑠里は小声でボソボソと経緯を説明した。
しかしながら、正直に明かしたら寛大になるというものでもなかった。渋撥は拳を握り、爪先を美作のほうへ向けた。
「……ワレェ、美作ァ。随分勝手なことしくさったみたいやな」
「スンマセッ! 出来心デシタ!」
美作の謝罪は早かった。が、謝罪程度で渋撥の怒りが下火になるはずがなかった。
美作に向かおうとした渋撥の前に、禮が立ちはだかった。
「わーっ、ハッちゃんたんま! 純ちゃん謝ってるから許したげて」
「何で禮が美作を庇うねん。禮に迫っとったんやぞ。俺が美作ドツいて何が悪いねん」
「怒ってるときのハッちゃんやりすぎるやん! 未遂やから! ハッちゃんもう殴ったし、これ以上は可哀想やと思う」
「巫山戯ろ! 何が未遂や。俺が来おへんかったらキスしとったんやろがッ」
「してませんー! ハッちゃんが来おへんでも純ちゃんとキスなんか何が何でも絶対してませんー!」
禮が放った一言は美作の胸を撃ち抜いた。美作はズキズキと痛む胸を押さえ、片手を地面について打ち拉がれる。
「そこまでハッキリ拒絶されるとモテへん俺でもサスガに傷つくで……」
禮は慌てて美作に向かって両手を合わせた。
「あぁあ~、ゴメン純ちゃん💦」
「気の遣いどころ間違っとるやろ💢 美作なんぞに謝るヒマあったら俺に謝れや」
「純ちゃんは瑠里ちゃんの為に仕方なく……」
「オマエ、仕方なかったら俺以外の男とでもキスするんやなッ」
「そこまでは言うてへんやん。ハッちゃんは極端やよ」
「禮がボケとんねん。あからさまにボーッとしくさって隙だらけやろが。普段は頭のコード一、二本抜けとるんや、禮は」
「ハッちゃん、そんな風に思てたん……! ヒドイっ」
瑠里は肩を怒らせ早足で渋撥に一直線に向かった。先ほど荒菱館高校の一般的な生徒に対してさえ恐れていた女子中学生と同一人物とは思えない。
「ちょっとアナタ誰なんですか! せっかく今ええトコなのに――」
渋撥は瑠里の前にスッと片足を出した。
びたんっ!
瑠里は渋撥の出した長い足にまんまと引っかかり、無様に地面に張りついた。目標物しか見えない性格らしい。
禮は慌てて瑠里を助け起こした。
「ハッちゃんソレはヒドイ! 相手は女のコやよっ」
瑠里は立ち上がるとすぐに渋撥をビシッと指差した。
「リアル美少年のキスシーンいう奇跡が拝めるところなんですから邪魔せんといてください! 恐いの我慢して今日この為だけにここに来た言うても過言ちゃうんですから! これがどんだけ貴重なことか分かれへんかもしれんけど、ごくごくフツーの学校に通う中学生には何事にも代えがたいんです! 生ける奇跡であるレイくんにはお金をお支払いしたいくらいの所存ですッ」
「イヤ、いいデス……」
瑠里は禮の手を両手でぎゅーっと握り締めた。
禮は瑠里からそっと顔を背けた。何かを期待したキラキラした目を向けないでください。
渋撥はチッと舌打ちした。手刀を振り落とし、バチンッと禮から瑠里の手を剥がした。それから禮の胸座を掴んで自分のほうへ顔を向かせた。
渋撥は禮が抵抗する間もなく柔らかな唇に自分のそれを重ねた。
唇が3秒程度触れ合うだけの掠め取るようなキス。スンと煙草のニオイがしたと思ったら、体を跳ね返そうとする前に離れた。
渋撥は何事もなかったような無表情で、呆気にとられている禮から瑠里へと目線を移した。
「コレで満足か、ジャリん子。俺は禮と話しとる。ちょお黙っとけ」
「ありがとうございまふぅぅうううっ‼」
瑠里は顔の前で合掌して崩れ落ちた。
「あ。近江さん危――!」
バシィンッ!
渋撥は瑠里のほうへ顔を向けていたのに、視界外から跳ね上がってきた禮のハイキックを完全にガードした。美作の忠告が飛び出す前には察知していた。渋撥にはこの情況で禮のやりそうなことなど想定できる。
「アホー! 何で人前やのに平気でこゆことするんッ?」
「禮も人前で蹴ったりするやろ。人前でキスしても何の罪にもなれへんけどな、怪我さしたら傷害罪やで」
「急にマトモなこと言う~~💢」
禮は、キックはガードされるし正論で返されるし、業腹が治まらなかった。
瑠里はしゃがんだ体勢から渋撥を見上げた。
「アナタはもしかしてレイくんの……」
「禮と付き合うてるのはそこのダボちゃう。俺や」
「え……美少年を巡って男子校で三角関係――! 美味すぎ✨✨」
瑠里はハッと息を呑んで両手で口を隠した。
「そもそも美少年て何やねん。禮は女や」
瑠里は目を見開いて禮の顔を凝視した。
禮はただただ気まずそうに苦笑するしかなかった。美作は額を押さえて項垂れた。女であると渋撥が言明したのが決定打。しかし、本日は休みだと宣言していたのに放課後になって出現した時点で計画はほぼ失敗していたのだ。
「お、男の子じゃ……ない……?」
「禮が男に見えるてどんな目玉してんねん。こんなカワイイ男がこの世に存在するわけないやろ」
渋撥はむんずと禮の胸座を両手で捕まえた。学生服を力任せに左右に引いた。
ビチビチビチッ、とボタンが外れ、ハリのある白い肌と細かなドット柄のブラジャーが露わになった。これを見せつけられては、どのように夢見がちな少女でも美少年と信じるのは不可能だ。
禮は急いで学生服を綴じ合わせて背を屈めた。羞恥と憤怒が滲む目で渋撥を睨む。
「学ラン着たぐらいで何で男に見えるのか俺には分からん」
「こんなトコで制服ひん剥く神経のほうが分かれへん!」
瑠里は口を半開きにして弱々しく禮を指差した。
「ほ、本当に……女の……子?」
禮は申し訳なさそうに眉を八の字にして「ゴメンね」と告げた。
瑠里は足元に目を落として黙りこんだ。それきり一声も上げなくなった。禮は瑠里が泣き出してしまうのではないかと思い、心配そうに何度も謝った。
渋撥は腕組みをして、何故お前がそこまで構うのだと、あからさまに不服な表情。美作やその従妹を気遣うくらいなら、恋人である自分への配慮ももう少しあってもよいと思うのだが。
「アリやわ!」
突然、瑠里は顔を上げた。ぐぐぐ、と拳を握って力説する。
「男装の麗人を攻める強面の大男――――設定としてアリやわ! モチロン美少年を無理矢理いう展開が大好物やけど、こーゆー設定も好き🩷 は・か・ど・る~~」
瑠里はキャーキャーと高い声を上げて飛び跳ねた。嗚呼、逞しき哉、乙女のイマジネーション。
美作は、テンションが上がっている従妹を見てガクッと脱力した。
「瑠里ちゃん……。この世にたったひとりの従兄の俺を少しは心配してくれへんか……?」
――――一方、物陰。
虎徹は禮がいる方角へ一心に手を合わせ拝んでいた。
幸島は虎徹の後ろ姿を冷ややかな視線で見ていた。
「……なに拝んでんねん虎徹」
「家に帰らんでよかった。ええモン見れた✨」
「泣くな鬱陶しい」
パーンッ、と幸島が虎徹の後頭部を叩いた。
由仁は鼻を押さえて廊下に蹲っていた。大鰐が爪先で由仁を突いた。
「やっぱ鼻血噴いたな、ゆん」
「ア、アホか! コレは抱きつかれるのとはレベルがちゃうやろッ……!」
「大樹は女の生チチなんか見慣れてねーからなー」
脩一は禮のバストをじーっと凝視しながら放言した。禮が素早く学生服の下に隠してしまったバストを脳裏に思い出そうとしていた。
脩一が「Dくらいか?」と言うと、大鰐が「盛りのええCちゃうか」と答えた。
「具体的に言うな~~! ゲハッガフッガフッ」
「バカ、興奮すんなって。鼻血止まんねーぞ」
「ギャッハッハッ」
禮は校舎の壁面に背中をついてしまっており、逃げ場はもうなかった。両肩をしっかりと押さえられ、逃げ出すことはできない。男の身形をしていても中身は歴とした女子高生、力で振り払うことはできない。
美作の顔は面前に迫っていた。
「禮ちゃんゴメン。一遍だけやから!」
「回数の問題ちゃうからッ」
(純くんアリガトウ! 嫌がるノンケの彼の唇を力尽くで無理矢理奪うシチュエーション、最高にオイシーです!🩷)
鼻先が触れそうなほど男子と男子の顔が近づき、一気に高まるボルテージ。瑠里は合掌、目には光るものが。
「瑠里ちゃん、なんか泣いてへん……?」
「んー」
禮の気が瑠里へと逸れた瞬間、美作の唇がさらに近づいた。
禮はパシッと美作の唇に手の平を当て、自分の唇に届くのを防いだ。
「純ちゃん! ほんまあかんてッ……」
ザザッ、と瑠里の真横を何かが駆け抜けた。興奮状態で周りが見えていなかったから、それが何であるか分からなかった。ハッと気がついたときには、美作の背後に危機が迫っていた。
ガゴォオンッ!
後頭部に恐ろしく硬い物が剛速球でぶち当たった。美作は卒倒しそうになり、後頭部を押さえてその場にしゃがみこんだ。
ドボオッ、と美作は腹部を蹴り飛ばされて地面に転がった。
瑠里が「純くん⁉」と悲鳴に近い声を上げた。
「オドレ美作ァ……ッ💢 俺の禮になに盛っとんねん💢💢」
その声を聞いた途端、美作は胸中で「ヒィィイイイッ」と絶叫した。
美作が地面に這い蹲った状態から振り仰ぐと、暴君渋撥が仁王像のような顔で立っていた。
「おっ、近江さん……ッ! 今日休むて言うてはったのに何で放課後になって――」
「オマエが電話で妙にキゲンよかったのが急に気になった」
(野生の勘⁉)
渋撥は禮のほうへチラリと一度目を配った。
「禮は何遍鳴らしても電話出えへんし」
そう言われて、禮は自分のスマートフォンが教室にある女子制服のポケットのなかに仕舞ったままであることを思い出した。
渋撥は指の関節をバキバキッと鳴らした。
「俺が休んどる間に禮に手ェ出すつもりやったかコラァ。よっぽどブチ殺されたいみたいやなァ、あァッ?」
瑠里は渋撥の背後を駆け抜けて美作に近づいた。美作の傍にしゃがみこみ、その背中を揺さぶった。
「純くん大丈夫⁉」
美作は瑠里を心配させないように「大丈夫、大丈夫」と返した。痛む腹部を押さえつつ上半身を引き起こし、地面の上に座りこんだ。
渋撥は「何やあのジャリ」と一言。禮が美作の従妹であると伝えた。
「美作のイトコォ? 何でそんなのがここにいてんねん」
「男子校に美少年いてへんのって言うたら、純くんがめちゃめちゃキレエな男の子おるよって。しかも付き合うてるて言うから見せてもらおいうことになって……」
瑠里は小声でボソボソと経緯を説明した。
しかしながら、正直に明かしたら寛大になるというものでもなかった。渋撥は拳を握り、爪先を美作のほうへ向けた。
「……ワレェ、美作ァ。随分勝手なことしくさったみたいやな」
「スンマセッ! 出来心デシタ!」
美作の謝罪は早かった。が、謝罪程度で渋撥の怒りが下火になるはずがなかった。
美作に向かおうとした渋撥の前に、禮が立ちはだかった。
「わーっ、ハッちゃんたんま! 純ちゃん謝ってるから許したげて」
「何で禮が美作を庇うねん。禮に迫っとったんやぞ。俺が美作ドツいて何が悪いねん」
「怒ってるときのハッちゃんやりすぎるやん! 未遂やから! ハッちゃんもう殴ったし、これ以上は可哀想やと思う」
「巫山戯ろ! 何が未遂や。俺が来おへんかったらキスしとったんやろがッ」
「してませんー! ハッちゃんが来おへんでも純ちゃんとキスなんか何が何でも絶対してませんー!」
禮が放った一言は美作の胸を撃ち抜いた。美作はズキズキと痛む胸を押さえ、片手を地面について打ち拉がれる。
「そこまでハッキリ拒絶されるとモテへん俺でもサスガに傷つくで……」
禮は慌てて美作に向かって両手を合わせた。
「あぁあ~、ゴメン純ちゃん💦」
「気の遣いどころ間違っとるやろ💢 美作なんぞに謝るヒマあったら俺に謝れや」
「純ちゃんは瑠里ちゃんの為に仕方なく……」
「オマエ、仕方なかったら俺以外の男とでもキスするんやなッ」
「そこまでは言うてへんやん。ハッちゃんは極端やよ」
「禮がボケとんねん。あからさまにボーッとしくさって隙だらけやろが。普段は頭のコード一、二本抜けとるんや、禮は」
「ハッちゃん、そんな風に思てたん……! ヒドイっ」
瑠里は肩を怒らせ早足で渋撥に一直線に向かった。先ほど荒菱館高校の一般的な生徒に対してさえ恐れていた女子中学生と同一人物とは思えない。
「ちょっとアナタ誰なんですか! せっかく今ええトコなのに――」
渋撥は瑠里の前にスッと片足を出した。
びたんっ!
瑠里は渋撥の出した長い足にまんまと引っかかり、無様に地面に張りついた。目標物しか見えない性格らしい。
禮は慌てて瑠里を助け起こした。
「ハッちゃんソレはヒドイ! 相手は女のコやよっ」
瑠里は立ち上がるとすぐに渋撥をビシッと指差した。
「リアル美少年のキスシーンいう奇跡が拝めるところなんですから邪魔せんといてください! 恐いの我慢して今日この為だけにここに来た言うても過言ちゃうんですから! これがどんだけ貴重なことか分かれへんかもしれんけど、ごくごくフツーの学校に通う中学生には何事にも代えがたいんです! 生ける奇跡であるレイくんにはお金をお支払いしたいくらいの所存ですッ」
「イヤ、いいデス……」
瑠里は禮の手を両手でぎゅーっと握り締めた。
禮は瑠里からそっと顔を背けた。何かを期待したキラキラした目を向けないでください。
渋撥はチッと舌打ちした。手刀を振り落とし、バチンッと禮から瑠里の手を剥がした。それから禮の胸座を掴んで自分のほうへ顔を向かせた。
渋撥は禮が抵抗する間もなく柔らかな唇に自分のそれを重ねた。
唇が3秒程度触れ合うだけの掠め取るようなキス。スンと煙草のニオイがしたと思ったら、体を跳ね返そうとする前に離れた。
渋撥は何事もなかったような無表情で、呆気にとられている禮から瑠里へと目線を移した。
「コレで満足か、ジャリん子。俺は禮と話しとる。ちょお黙っとけ」
「ありがとうございまふぅぅうううっ‼」
瑠里は顔の前で合掌して崩れ落ちた。
「あ。近江さん危――!」
バシィンッ!
渋撥は瑠里のほうへ顔を向けていたのに、視界外から跳ね上がってきた禮のハイキックを完全にガードした。美作の忠告が飛び出す前には察知していた。渋撥にはこの情況で禮のやりそうなことなど想定できる。
「アホー! 何で人前やのに平気でこゆことするんッ?」
「禮も人前で蹴ったりするやろ。人前でキスしても何の罪にもなれへんけどな、怪我さしたら傷害罪やで」
「急にマトモなこと言う~~💢」
禮は、キックはガードされるし正論で返されるし、業腹が治まらなかった。
瑠里はしゃがんだ体勢から渋撥を見上げた。
「アナタはもしかしてレイくんの……」
「禮と付き合うてるのはそこのダボちゃう。俺や」
「え……美少年を巡って男子校で三角関係――! 美味すぎ✨✨」
瑠里はハッと息を呑んで両手で口を隠した。
「そもそも美少年て何やねん。禮は女や」
瑠里は目を見開いて禮の顔を凝視した。
禮はただただ気まずそうに苦笑するしかなかった。美作は額を押さえて項垂れた。女であると渋撥が言明したのが決定打。しかし、本日は休みだと宣言していたのに放課後になって出現した時点で計画はほぼ失敗していたのだ。
「お、男の子じゃ……ない……?」
「禮が男に見えるてどんな目玉してんねん。こんなカワイイ男がこの世に存在するわけないやろ」
渋撥はむんずと禮の胸座を両手で捕まえた。学生服を力任せに左右に引いた。
ビチビチビチッ、とボタンが外れ、ハリのある白い肌と細かなドット柄のブラジャーが露わになった。これを見せつけられては、どのように夢見がちな少女でも美少年と信じるのは不可能だ。
禮は急いで学生服を綴じ合わせて背を屈めた。羞恥と憤怒が滲む目で渋撥を睨む。
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「こんなトコで制服ひん剥く神経のほうが分かれへん!」
瑠里は口を半開きにして弱々しく禮を指差した。
「ほ、本当に……女の……子?」
禮は申し訳なさそうに眉を八の字にして「ゴメンね」と告げた。
瑠里は足元に目を落として黙りこんだ。それきり一声も上げなくなった。禮は瑠里が泣き出してしまうのではないかと思い、心配そうに何度も謝った。
渋撥は腕組みをして、何故お前がそこまで構うのだと、あからさまに不服な表情。美作やその従妹を気遣うくらいなら、恋人である自分への配慮ももう少しあってもよいと思うのだが。
「アリやわ!」
突然、瑠里は顔を上げた。ぐぐぐ、と拳を握って力説する。
「男装の麗人を攻める強面の大男――――設定としてアリやわ! モチロン美少年を無理矢理いう展開が大好物やけど、こーゆー設定も好き🩷 は・か・ど・る~~」
瑠里はキャーキャーと高い声を上げて飛び跳ねた。嗚呼、逞しき哉、乙女のイマジネーション。
美作は、テンションが上がっている従妹を見てガクッと脱力した。
「瑠里ちゃん……。この世にたったひとりの従兄の俺を少しは心配してくれへんか……?」
――――一方、物陰。
虎徹は禮がいる方角へ一心に手を合わせ拝んでいた。
幸島は虎徹の後ろ姿を冷ややかな視線で見ていた。
「……なに拝んでんねん虎徹」
「家に帰らんでよかった。ええモン見れた✨」
「泣くな鬱陶しい」
パーンッ、と幸島が虎徹の後頭部を叩いた。
由仁は鼻を押さえて廊下に蹲っていた。大鰐が爪先で由仁を突いた。
「やっぱ鼻血噴いたな、ゆん」
「ア、アホか! コレは抱きつかれるのとはレベルがちゃうやろッ……!」
「大樹は女の生チチなんか見慣れてねーからなー」
脩一は禮のバストをじーっと凝視しながら放言した。禮が素早く学生服の下に隠してしまったバストを脳裏に思い出そうとしていた。
脩一が「Dくらいか?」と言うと、大鰐が「盛りのええCちゃうか」と答えた。
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