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謝罪
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帰り道に彼と待ち合わせの約束をしたので、時間を潰すために職場の近くのカフェに入った。
ホットのカフェラテを頼み、お店の外が見える大きな窓の前にあるカウンターへ座り、ひと息ついた。
スマホを取り出しては、健吾の連絡を待つが…届くのはニュースや広告ばかり。
カップを取ると、カウンターにトレーを置き、私の左隣に誰か座った。
「あら、沖田さん」
声の主に覚えがある女の人の声で、冷や汗が出る。
「…山本さん…お疲れ様です」
今日ほのかが、私に『山本さんは部長が好きだから、嫉妬しているのよ』と言っていた、その山本さんだ。
山本さんは、眉を寄せピリピリとした雰囲気を漂わせている。
「お疲れ様、今日は1人なのね」
ドキッとする言葉に、慎重に返さねばと焦る。
「…1人って…いつも1人ですよ」
帰りはいつも1人だし、出社も…途中までは健吾と一緒だが、人気のない所で降りているから、誰も知らないハズだ。
「いやぁねこの間見たわ、出社前に部長の愛車でキス、していたわ」
失態よ、と笑う彼女に、顔がサッと青ざめた。
「っ………それはっっ」
「いいのよ、隠さなくたって…部長の視線の先には、いつも貴方がいるの……知っていたから」
だんだんと声が小さくなり、悲痛な顔をする山本さんを初めて見る。
「…山本さん」
「…今日の事…謝ろうと思って…今までの事も、だってムカついたし…でも八つ当たりは良くないわね」
なんだか変な山本さんの様子に首を傾げるが、とりあえず先を促すように、はいと返事をした。
彼女は顔を上げ、私の方を見てぺこりと頭を下げた。
「だから、その…ごめんなさい…馬鹿だったわ」
そう言った山本さんが顔を上げて、気まずげに窓の外へ視線を戻すと、ひっと小さな悲鳴を上げ、急にガタガタ震え出した。
「あの…山本さん…?」
彼女の肩に触れようとした時、パッと身体を私から離し、トレーを持って立ち上がった。
「っ!これっで、もうお終いよっ!さよならっ」
私に触られる事事態不本意みたいな顔で、立ち去る彼女の背中を見て、呆然と見送った。
ーーなんだったの…?
放心状態のまま、お店の出入り口を見ていたら、健吾がやってきた。
「ごめん、待たせたかな?」
颯爽と現れた背の高いスラッとして、厚手のコートを着こなす男性に、店内の女性達の視線を集める。
「健吾さん、ううん全然待ってないよ」
顔を横に振り、先程までいた山本さんの席に座る彼。
「飲み終わりそう?」
「うん、あっ…何か頼む?」
私のカップを覗いたので、彼のコーヒーを注文するために立ち上がるが…
「いや、俺は要らないよ」
左の腕に触れられ止められたので、ストンと椅子に座り直して、カップを持つ。あと一口で終わるので、飲み干しトレーを返却口へと戻すと、彼は私の荷物を持ち付いてきていた。
「ありがとう」
手を出して彼から私の荷物を持つハズが、彼は私の手を握り指を絡めた。
「っ…あの、健吾さん」
誰か職場の人が見ているかも知れないと、視線を彷徨わせるが、
「大丈夫、誰も気にしないよ」
私の耳に口を寄せて低い声で囁く彼は甘い言葉で、私の手をひき歩き出した。
彼の車は、待ち合わせ場所のカフェを少し歩いたところにある、パーキングにあった。
「…連絡くれたら、すぐにココまできたのに」
僅かな時間でも駐車料金が発生するオフィス街に、停めさせてしまった罪悪感がでてしまい、可愛くない事を言ってしまう。
「う~ん、待つのは疲れたから、迎えに行きたかったんだ」
彼は少し考え込み、待ち疲れたと言った言葉に驚いた。
「そんなに待たせちゃった…?ごめんなさい」
素直に謝ると、違う違うと笑う彼。
「大丈夫…ただの独り言…連絡したけど、なんか繋がらなかったから行った方が早いと思っただけだから」
とそれ以上は何も言わず、助手席のドアを開き私をエスコートすると、私の荷物を後部座席に置き、料金精算所に行ってしまった。
彼が居なくなると、スマホを取り出すが着信もメッセージもなく、
ーー電波悪い場所なのかな
と1人で納得した。
彼が車に乗ると、発進した車はいつもの帰り道へと変わる。
「今日は、このあとどうする?」
「…明日も仕事あるので…帰りたい」
「分かった」
そう返事した健吾は、私の頭を撫でた。
ホットのカフェラテを頼み、お店の外が見える大きな窓の前にあるカウンターへ座り、ひと息ついた。
スマホを取り出しては、健吾の連絡を待つが…届くのはニュースや広告ばかり。
カップを取ると、カウンターにトレーを置き、私の左隣に誰か座った。
「あら、沖田さん」
声の主に覚えがある女の人の声で、冷や汗が出る。
「…山本さん…お疲れ様です」
今日ほのかが、私に『山本さんは部長が好きだから、嫉妬しているのよ』と言っていた、その山本さんだ。
山本さんは、眉を寄せピリピリとした雰囲気を漂わせている。
「お疲れ様、今日は1人なのね」
ドキッとする言葉に、慎重に返さねばと焦る。
「…1人って…いつも1人ですよ」
帰りはいつも1人だし、出社も…途中までは健吾と一緒だが、人気のない所で降りているから、誰も知らないハズだ。
「いやぁねこの間見たわ、出社前に部長の愛車でキス、していたわ」
失態よ、と笑う彼女に、顔がサッと青ざめた。
「っ………それはっっ」
「いいのよ、隠さなくたって…部長の視線の先には、いつも貴方がいるの……知っていたから」
だんだんと声が小さくなり、悲痛な顔をする山本さんを初めて見る。
「…山本さん」
「…今日の事…謝ろうと思って…今までの事も、だってムカついたし…でも八つ当たりは良くないわね」
なんだか変な山本さんの様子に首を傾げるが、とりあえず先を促すように、はいと返事をした。
彼女は顔を上げ、私の方を見てぺこりと頭を下げた。
「だから、その…ごめんなさい…馬鹿だったわ」
そう言った山本さんが顔を上げて、気まずげに窓の外へ視線を戻すと、ひっと小さな悲鳴を上げ、急にガタガタ震え出した。
「あの…山本さん…?」
彼女の肩に触れようとした時、パッと身体を私から離し、トレーを持って立ち上がった。
「っ!これっで、もうお終いよっ!さよならっ」
私に触られる事事態不本意みたいな顔で、立ち去る彼女の背中を見て、呆然と見送った。
ーーなんだったの…?
放心状態のまま、お店の出入り口を見ていたら、健吾がやってきた。
「ごめん、待たせたかな?」
颯爽と現れた背の高いスラッとして、厚手のコートを着こなす男性に、店内の女性達の視線を集める。
「健吾さん、ううん全然待ってないよ」
顔を横に振り、先程までいた山本さんの席に座る彼。
「飲み終わりそう?」
「うん、あっ…何か頼む?」
私のカップを覗いたので、彼のコーヒーを注文するために立ち上がるが…
「いや、俺は要らないよ」
左の腕に触れられ止められたので、ストンと椅子に座り直して、カップを持つ。あと一口で終わるので、飲み干しトレーを返却口へと戻すと、彼は私の荷物を持ち付いてきていた。
「ありがとう」
手を出して彼から私の荷物を持つハズが、彼は私の手を握り指を絡めた。
「っ…あの、健吾さん」
誰か職場の人が見ているかも知れないと、視線を彷徨わせるが、
「大丈夫、誰も気にしないよ」
私の耳に口を寄せて低い声で囁く彼は甘い言葉で、私の手をひき歩き出した。
彼の車は、待ち合わせ場所のカフェを少し歩いたところにある、パーキングにあった。
「…連絡くれたら、すぐにココまできたのに」
僅かな時間でも駐車料金が発生するオフィス街に、停めさせてしまった罪悪感がでてしまい、可愛くない事を言ってしまう。
「う~ん、待つのは疲れたから、迎えに行きたかったんだ」
彼は少し考え込み、待ち疲れたと言った言葉に驚いた。
「そんなに待たせちゃった…?ごめんなさい」
素直に謝ると、違う違うと笑う彼。
「大丈夫…ただの独り言…連絡したけど、なんか繋がらなかったから行った方が早いと思っただけだから」
とそれ以上は何も言わず、助手席のドアを開き私をエスコートすると、私の荷物を後部座席に置き、料金精算所に行ってしまった。
彼が居なくなると、スマホを取り出すが着信もメッセージもなく、
ーー電波悪い場所なのかな
と1人で納得した。
彼が車に乗ると、発進した車はいつもの帰り道へと変わる。
「今日は、このあとどうする?」
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「分かった」
そう返事した健吾は、私の頭を撫でた。
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