碧眼の小鳥は騎士団長に愛される

狭山雪菜

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初キス

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頬から離れた手はまた頬に戻った。
天気や好きな季節の話から生まれた月の話をしている間に、ふと沈黙が訪れると唇が重なって、キスが深くなっていく。
小鳥のように啄むキスから、私の唇を喰むキス、彼がペロリと唇をなぞるキス、口内に舌が入る厚いキス、歯列を舐め舌が絡まるキス。
身体が強張り、呼吸を止めてしまう私の背をゆっくりと撫でて呼吸を促す彼の大きな手。
「んっぁ…苦しい…です」
息が出来なくて苦しくなり彼から顔を離すと、彼の唇が私の唇を追いかけ、また口を塞がれる。
「鼻で息をするんだ」
彼の逞しい胸板に両手をつけて寄りかかると、背後に彼の腕が回される。
上半身がぴたりと重なる。舌が絡まるキスが続き、鼻で呼吸をするように意識をするけど、彼の舌の熱さと口内に注がれる吐息に、ぼうっとしてしまい上手く意識が保てない。
「ん…苦しいです…ん」
やっぱり苦しくて顔を背けると、私の頬に触れるだけのキスが落ち、顔のラインを余す事なく唇で触れて耳へと向かう。
「っ…くっ…くすぐったい…です」
耳朶と顎の関節の間に舌を這わし、ちゅうっと強く吸うとチクッとした痛みが出る。
「ハル…と、呼んで…」
耳に響く低音は、彼の名を呼ぶように私に囁く。視線を上げるが、私の首に顔を埋めた彼の肩しか見えない。
頬に掛かる仮面の羽がくすぐったくて身を捩る。
「…は…ハル…私は…アリ…と」
家族にしか呼ばれない愛称を告げると、彼は嬉しそうに首筋を舐めていく。
「アリ…愛おしいアリ」
他の人が言ったら寒くなる愛の告白も、ハルに言われたら、ドキドキとして胸が高鳴る。
ーー私どうしたのかしら
こんな気持ちは初めてで戸惑ってしまうが、それを上回る彼が与えてくれる口づけに溺れてる。

彼は首に埋めていた顔を上げると、私と視線を絡ませて見つめ合う。
「ハル…様…?」
「…アリ、私は…」
苦しそうな表情な彼は両手で私の頬に触れ、仮面の縁に親指の先が触れている。

ーーこの仮面を取ったら…幻滅されてしまうかしら…

口を開こうとすると、突然サイレンが鳴り始め彼はパッと音のする方へ視線を向けた。
「…これは…」
一気に険しい顔つきになる彼の雰囲気に驚き目を見開くと、彼は私の方に顔を戻すと申し訳なさそうな顔をして、
「すまない、行かなくてはいけなくなった」
私の髪を一房手に取り、ちゅっと口づけを落とすと
「…必ず迎えにいく、必ず」
名残惜し気にそう言って私の返事も待たずに、立ち去ってしまったのだった。


「ハル様」

いなくなった途端に寂しくなってしまい、途方に暮れてると、
「アリカ様~」
と私を探すユルアが庭園の周りを歩いていた。
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